バーテックスリンクから、DivXの再生に対応したプログレッシブDVDプレーヤー「KiSS DVDプレーヤー DP-450」が発売された。世界初のDivX対応プレーヤーということで、注目度も高く、ニュース記事も5万近いpvを記録した。 直販価格で49,800円という価格は、現在のプログレッシブ対応DVDプレーヤーの水準からはやや高く、SACD/DVDオーディオ対応のマルチプレーヤーも買える水準だ。「DivX対応」という新機軸は果たしてどこまで使えるものなのか、価格に見合うメリットがあるのか、テストした。 ■ なかなか格好いい本体とリモコン
「KiSS DP-450」は、デンマークのKiSS Technologyが開発したDVDプレーヤー。本体は、ブラックとシルバーのツートンカラーで、AV機器的にはちょっと珍しいデザイン。といっても奇をてらったものでは無いので、比較的どんな状況でも違和感なく設置できるだろう。本体背面には、S映像端子やコンポジット端子のほか、SCART端子を搭載する。SCART端子はヨーロッパで多く使われている規格で、「DP-450」に付属のコンポーネント変換ケーブルを利用することで、コンポーネント出力が可能となる。また、音声出力として、アナログ音声、同軸デジタル、光デジタル出力端子を装備している。
リモコンは黒ベースのごくシンプルなもの。上部の10キーと、中央の十字ボタンを中心にしたボタンレイアウトで、正直操作性はあまりよくないのだが、これがなかなか格好いい。 ボタンはやや弾力のあるゴム調のもので、押しごこちがよく、他のグレー調のボタンに対し、電源ボタンだけが赤くなっている。リモコン自体は、プラスチックベースで質感はとりたて高いものでもないが、ちょっとした「舶来感」があってなかなか好感が持てる。デザインに関しては、好みの問題もあるが、とりあえず、日本でも台湾でも韓国でも出てこなそうなデザインではあると思う。
■ プログレッシブ出力にはちょっとした裏技が必要
早速、画質をチェックするために、コンポーネント経由でテレビに出力。しかし、どうもプログレッシブ出力されていない模様……。 プログレッシブ出力は、メニュー画面で「SCART」出力を選択し、付属のSCART-コンポーネント変換ケーブルを利用すれば行なえるはずなのだが、どうもテレビ側はインターレースと認識しているようだ。とりあえず取扱説明書を読んでも何も書いていないので、バーテックスリンクに問い合わせたところ、なんと裏(?)メニューで設定しないといけないという。 その方法は、以下の通り。
2.CLEARを押す 3.すぐに[2]、[7]、[6]とボタンを押す
上記操作を行なうと確かに「Advanced Setup」の項目が表われ、プログレッシブ出力設定が行なえる。なんだか、いにしえのゲームの裏技みたいだが、これを行なうことで確かにプログレッシブ出力になったようだ。出力は「480p」、「720p」、「1080p」が選択できる。これを見る限りプログレッシブのみならず、ハイビジョン出力も可能のようだ。なお、1080pといえば「D5」に相当するが、D3対応のテレビでも表示できた。「1080i」の誤植ではないかと思うのだが……。 なお、「DP-450」は25日より発売開始されているが、バーテックスリンクによると、初回出荷分にはコンポーネントケーブルが同梱されず、また、プログレッシブ化についての説明が一切行なわれていないとのこと。既に購入済みのユーザーにはケーブルと、プログレッシブ化などの設定法をまとめた紙を同梱し、後送するという。 まず、ビクターのプログレッシブDVDプレーヤー「XV-D721」と比較して、スパイダーマンのチャプター17あたりを見てみると、DP-450ではビクターより彩度で高めで、若干輪郭の強調が見られたが、そんなに遜色ない印象。NExtWaveの「Win3023DH」と比較すると、ノイズの押さえもよく効いており、赤の弱さや疑似輪郭の目立つNExtWaveよりは数段上の画質を実現している。
■ DivXは音声のMP3化が必須
それでは、本題というべきDivX再生についてもチェックしてみる。まず、テレビ番組をキャプチャした720×480/640×480ピクセルのDivXファイル(全てCBR。ビットレートは780kbpsや288kbpsなど)をDVD-Rに焼いて再生してみると……。うーん結構いい具合で再生される。テレビで見てもビットレートの割にDivXって綺麗だな、とコーデックの優秀さに関心。 ただし、早送りや巻き戻しなどは行なえないので、大きなデータを作成するときは気をつけたほうがいいだろう。次のデータへのスキップや、400%までのズーム機能は利用できた。 なお、DivXファイルの再生には何点か注意点がある。まず、音声をリニアPCMにしたDivXファイルは音声なしで再生されてしまう。バーテックスリンクでは、音声をMP3にすることを推奨している。 また、DivXとMPEG-2の混載ディスクを入れたところ、即座にMPEGファイルの再生がスタートしてしまい、DivXの再生が行なえなかった。DVD/CD-Rに焼くときはDivXファイルのみのディスクを作成したほうがいいだろう。なお、現在のところDivX収録のDVD-R/RWの作成時には、ISO9660形式で書き込まないと再生できない。UDFでは利用できないので注意が必要だ。 なお、バーテックスリンクの推奨している各ファイル別の推奨ビットレートは以下の通り。
■ DivX以外にも様々な圧縮オーディオに対応 この「DP-450」のメインチップには、Sigma Designsの「EM8500」を搭載している。このチップはDVDデコードのほか、MPEG-4、MP3、WMAの再生に対応している。 「DP-450」では、MP3を焼いたCDの再生も可能だが、日本語ファイルの表示はできない。また、CD-Rでも、MPEGとMP3を混在したCD-RだとMPEGの再生しか行なえない。MP3の再生時にはフロントパネルに「MP3」ロゴが光るのだが、MPEGファイルが混じっていると「MPEGモード」になってってしまう。 また、バーテックスリンクではサポート外としているが、OggVorbisの再生にも可能だ。OggVorbisの場合、MP3モードで再生されるのだが、MP3ではID3タグに日本語などの2バイト文字を利用していても、表示こそされないものの再生は可能だった。しかし、OggVorbisでは、ID3タグに2バイト文字を利用した場合、再生できず、ファイルを選択し、再生しようとするとフリーズしてしまった。 なお、チップレベル(EM8500)では、WMAは対応しているが、「DP-450」にWMAディスクを入れてみたところ認識しなかった。また、XviDファイルも試してみたが、一部のファイルで、再生停止したり、音ズレが発生した。
■ 互換性テスト 互換性チェックを行なってみた結果、公式にはDVD+R/+RWに非対応のことだが、どちらも再生できた。サポートの対象外ではあるが、DVDビデオ記録の+R/+RWで再生できなかったものはなかった。
【再生互換性一覧】
■ DivX再生に価値を見出せる人向け DVDプレーヤーとしては、標準的な機能は一通り搭載しており、付加価値に魅力を感じればメインのDVDプレーヤーとして検討してもいいだろう。しかし、価格的にはパイオニアのSACD/DVDオーディオプレーヤー「DV-S757A」や、ソニーのSACD/DVDビデオプレーヤー「DVP-NS915」などが、もう一息で購入できる。国産メーカーのプログレッシブDVDプレーヤーは3万円程度からあるので、単なるDVDプレーヤーとしてはやや割高感が残る。 こうしたオーソドックスなプレーヤーと競合するよりは、ヘビーなPCユーザーで、DivXファイルを大量に持っている人が、PCとの親和性を考慮して選択するプレーヤーというのが、最もはまるユーザー層であるように思う。 しかし、そうしたユーザーに対しても、早送りや巻き戻しができないなど、使い勝手はまだまだだ改善の余地がある。また、CD-RやDVD-Rに焼くときの制限が厳しいのも、やや敷居の高さを感じてしまう。DP-450はファームウェアのアップデートにも対応しているので、このあたりで機能改善が行なわれていくことを期待したい。 TIが、今後のDVDプレーヤー用のデコーダチップではDivXへの対応を強化していくことを明らかにしているなど、オーソドックスなDVDプレーヤーでも今後DivX対応機が増えてくることも予想される。「今すぐDivXをテレビで楽しみたい」といったユーザーは、積極的に購入を検討してもいいだろうが、まだまだ色物感があるのは否めない。ただ、本体やUIのデザインのオリジナリティは高く、これらが気に入った人には愛着の湧くプレーヤーになるのではないだろうか。 □バーテックスリンクのホームページ (2002年12月27日)
[ AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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