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[週刊] デバイス・バイキング
小さくなった新ネットワークウォークマン
首下げ型で、DuoやATRAC3plusに対応
ソニー 「NW-MS70D」
発売日:2月10日
標準価格:オープンプライス
店頭予想価格: 約4万円

■ ネットワークウォークマン新モデル

 ソニーのATRAC3オーディオプレーヤー「ネットワークウォークマン」の新製品「NW-MS70D」が2002年12月に発表された。2月10日発売予定で、前モデルの「NW-E10」、「NW-MS11」の2001年10月の発売以来1年4カ月ぶりの新製品となる。

 その特徴的なデザインに加え、新コーデックATRAC3plusに対応したほか、メモリースティックDuoスロットを搭載するなど、大幅なモデルチェンジとなっている。AV Watchでもニュース記事が7万近いpvを集めるなど注目度も高く、その実力、使い勝手が期待される。発売に先立ち、今回ソニーからほぼ量産品に近い製品を借りることができたので、早速レポートする。


■ 高級感の高い本体。ネックストラップで吊り下げて利用

36.4×18×48.5mm、54gと小型で軽量

 まず、本体を見るとその素材感というか高級感に驚かされる。筐体はチタン製で、金属板を絞り込んで成型することで、継ぎ目のない筐体を作る「深絞り加工」や、イオン化した金属を基材正面に蒸着し、高硬度な金属膜を形成する「イオンプレーティング」処理などを採用しているという。能書きはともかくとして、オーディオプレーヤーでは文句なく最高に手が込んだ外装だというのは、一目見て触ってみれば理解できる。

 最初にニュースリリースを読んだときに疑問に思ったのが、「どういうスタイルで聞くのか」ということ。本体サイズ36.4×18×48.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量54g(内蔵充電池含む)と小型軽量であるけれど、さすがに付属のイヤフォンを差し込んだ耳だけでは本体を支持できない。そのため、付属のネックストラップをイヤフォンに組み合わせて、首から本体を吊るすようにして利用する。

 このスタイル、机に向かいながら聞いたりすると、なんとなく首が疲れるような気がしてしまう。個人差もあるのだろうけれど、慣れるまではちょっと時間が必要かもしれない。もっとも「外で聞きながら最新デバイスを見せびらかしたい」といった人には最高に適したスタイルといえそうだ。

 イヤフォンで本体を吊り下げる形になるので、接続時の強度に若干不安があるが、このあたりも良く考えられており、プラグカバーを利用して本体ときっちり接続する形になっている。プラグカバーはゴムパッキンによりイヤフォンを固定する形で、思いのほか強度は高い。なお、イヤフォンジャックはストレートタイプのステレオミニピンのものでないとプラグカバーにはまらないが、ストレートの変換ケーブルも付属するので、L字型コネクタを採用した汎用のイヤフォンでも一応利用できる。

 付属のイヤフォンは、ポータブルプレーヤーに標準添付のものとしては結構良くできているように感じる。おそらく同社の世界最薄MDプレーヤー「MZ-E10」についてきたものと同等のものと思われる。

 PCとの接続はUSBクレードル経由で行なう。本体には一見接続端子が見当たらないが、本体脇のエアダクトのようなものが、クレードルとのインターフェイスになっている。また、本体下部にメモリースティックDuoスロットを搭載し、最高128MBまでの拡張も可能。


メモリースティックDuoスロットを装備 USBクレードルでPCとの連携や充電が可能に 付属品(メモリースティックDuoは別売)
ネックストラップ イヤフォンをはさんで利用する クビにぶら下げイヤフォンを装着
イヤフォンは本体右脇に専用のプラグカバーで固定 イヤフォンはプラグカバー内のゴムパッキンで固定。ストレートタイプのイヤフォンであれば交換できる 付属の延長ケーブルを利用すればL字コネクタのイヤフォンも使用可能


■ 一新された操作系は慣れれば使いやすい

 まずは、操作系を中心に見てみる。理解するまでは若干わかりにくいのだが、本体の左側にボリュームコントローラを、右側にシャトルスイッチを備えている。

 シャトルスイッチは外側に引っ張り出すことでアルバム名などのグループ選択が可能となり、内側に押し込むと曲名などの選択が行なえる。シャトルスイッチ側面のボタンで再生と停止のコントロールが行なえ、シャトルスイッチを上下することで、グループの選択や曲(上が送り/下が戻り)の選択になるというのが基本的な操作体系だ。内蔵メモリとメモリースティックDuoの間もシームレスに選択できる。

左側にボリューム、右側にシャトルダイヤルを備える。大きな棒状のスイッチをスライドさせるとホールドとなる 液晶部はブルーのバックライトを備える

 また、本体裏の「MENU」ボタンとシャトルスイッチを組み合わせて操作することで、シャッフル、リピートなどの再生モード設定や、表示モードの切り替えなどが行なえる。イヤフォンコネクタ下にはSOUND/AVLSボタンを装備しており、BASS/TREBLEの音質設定や、0.5秒間長押しすることで、音量を一定以内に抑制することができる。また、本体の大きめなレバーを右側にスライドさせることで「ホールド」となる。

 最初に触れた際にはやや戸惑ったが、少し触っているうちに大体どこにどんな機能があるのかは見当が付くのでそんなに苦労することは無いと思う。かなり考えて作りこまれたインターフェイスと感じた。

本体はチタン製 側面に再生/停止ボタンやクレードル接続用のコネクタを装備 Duoスロット開閉用のボタンと、AVL/SOUNDボタンを備える


■ 音質は良好。長時間を求めるのであればATRAC3plusも悪くない

 それでは、早速ATRACファイルを転送してみよう。内蔵メモリは256MBで、別売のメモリースティックDuo 128MBで拡張すれば、最大搭載メモリは384MBとなる。オーディオファイルはSonicStage Ver.1.5を利用して作成する。

SonicStage Ver.1.5

 SonicStage自体は、ソニーおなじみのジュークボックスソフトだが、この「NW-MS70D」は、SonicStage Ver.1.5から採用された新コーデックATRAC3plusに対応したのが特徴。早速ATRAC3 132/108/66kbpsとATRAC3plus 64/48kbpsのファイルを作ってみた。

 Athlon 800MHzという今となってはかなり遅めのPCを使って、JVCの「xrcd」のサンプラーCD(61:09)をATRAC化したところ、ATARC3 132kbpsが4分5秒、ATRAC3plus 64kbpsが7分28秒かかった。より低ビットレートということもあって、ATRAC3plusのエンコード時間は総じて長めになっているようだ。

 オーディオファイルは、ATRAC3が132/105/66kbps、ATRAC3plusは64/48kbpsが利用できる。まず最高音質の132kbpsで音質をチェックしてみると、ひとことで言うと圧縮オーディオプレーヤーとしてはかなり高音質といっていいと思う。付属のイヤフォンが最初から戦力になる品質のものであるというのもポイントが高い。

 試しに、個人的に常用しているiPod(イヤフォンをSennheiserのMX500に変更)の128kbpsのMP3ファイルと同じ曲を聞き比べてみる…… うーん個人的にはiPodのほうが好みかも。「NW-MS70D」のほうが分解能も高くて、音の分離も綺麗なのだけれど、中域はiPodのほうが素直に出ているように感じる。このあたりは、プレーヤーというよりはATRACとMP3の差のような気もする。ただ、日本の最近のポップスなどを聞く分には「NW-MS70D」のほうが、好印象かもしれない。

ATRAC3plusでのエンコード データストレージとしても利用可能

 期待のATRAC3plusはというと、64kbpsでも十分満足できる品質。ATRAC3の132kbpsと比べると、ちょっと高域とアタック感が弱いような気はするが、聞き比べなければ特に不満も感じないくらいなので、より多くの曲を持ち歩きたければplusの64kbpsでも問題ないだろう。より高音質で利用したい人はATRAC3の132kbpsで、より長時間を求める人はATRAC3plus 64kbpsという使い分けでいいのではないだろうか。

 転送速度については、体感的には通常のNet MD機器などと同等に感じる。試しに、上記のAthlon 800MHzのテストマシンで、宇多田ヒカルのアルバム「DEEP RIVER」(132kbps/52MB)を転送してみたところ、内蔵メモリで2分29秒、メモリースティックDuoで2分33秒という結果になった。そんなに速いわけでもないが、とりたて不満を抱くような速度でもない。

 なお、USBクレードルに挿入している際には、PC側からUSBストレージとして認識される。そのため、オーディオ以外のデータファイルなどのストレージとして利用することができる。

 バッテリは内蔵ニッケル水素電池で、低電力半導体技術「Virtual Mobile Engine」を採用した新LSIを採用し、バッテリ駆動時間を向上させたという。再生の公称値はATRAC3再生時33時間、ATRAC3plus時28時間で、充電時間は約90分ということだが、今回の試用期間では、バッテリを使い切ることができなかった。


■ ずば抜けた高級感と所有感。問題は価格

 ということで、ATRAC3ポータブルプレーヤーとしては、とてもよくまとまっているし、なによりこの小ささと高級感は他の追随を許さないクオリティだ。それだけで「買い」という人も多いだろう。

 ただ、ポータブルオーディオプレーヤーとしてほかの機器と比べて購入を検討すると。実売で4万円という価格はちょっと高価。例えば、256MB内蔵メモリ搭載と、スペック的に近いiRiverのWMA/MP3プレーヤー「iFP-190TC」は実売で約28,000円、また、HDDオーディオプレーヤーではiPodの5GBモデルが36,800円(直販価格)。競合モデルと比べると割高感は否定できない。モノとしてのクオリティは申し分ないだけに、そこに幾ら払えるかということが、問題になると思う。

 また、ソニーが推奨する首から吊り下げスタイルだと、「最新デバイスを持ち歩いています」と、見せびらかしながら使うにはもってこいなのだが、「ちょっと恥ずかしい」という人にはお勧めできない。

 もう一点気になったのが、ネックストラップがプラスチック製の硬いタイプなので、取り外した際の収納が難しいこと。ちょっとはずしてデスクに置いておくときなど本体は小さいのにやたらとスペースを取るというのは考えものだ。

 とは言っても、ポータブルオーディオ市場の中でも、個性や高級感、そして所有したときの満足感という点では群を抜いている。従来モデルのユーザーも含め、その質感を見て「欲しい」と思ったら即買って満足できる製品だと思う。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200212/02-1210/
□製品情報
http://www.walkman.sony.co.jp/news/ms70d.html
□関連記事
【2002年12月10日】ソニー、メモリースティックDuo対応新ネットワークウォークマン
--圧縮率を向上させた新コーデック「ATRAC3plus」に対応
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20021210/sony.htm
【2002年8月12日】買い物山脈(PC)
ネットワークウォークマン「NW-MS9」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0812/kai04.htm
【2000年10月13日】ソニー、10時間再生可能なメモリースティックウォークマン(ケータイ)
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/0,,1520,00.html

(2003年1月17日)

[ AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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