■ CESで見えた米国コンシューマーの姿 AV Watch取材陣一同無事に火曜日に帰国し、筆者は本日水曜日にこの原稿を書いているところである。これの意味するところはすなわち、いつもZooma! は水曜日更新であるが、はなっからそれには間に合わねえということなのである。毎週楽しみにご覧いただいている方には申し訳なかった。 さて今回のElectric Zooma! は、今までのInternational CESレポートで出てきていない製品をいくつかご紹介するとともに、家電業界における日米差みたいなことを考えてみたい。
■ 珍しいモノを見た CESのAV機器関係を一堂に集めたセントラルホールに出展しているのは、ほとんどが日本や韓国をはじめとするアジア系企業である。欧米企業もないではないが、展示しているのは量産型製品がほとんどであった。日本では見られそうにない製品を探していたわけだが、そんな中PhilipsのAV機器が見られたのは幸いであった。 国内でPhilips製品というと、電気シェーバーやコーヒーメーカーといったものぐらいだが、欧米ではAV機器やPC用モニタなど幅広い製品を販売している。 DVDR80は、DVD+RWを採用したDVDレコーダの上位モデルだ。ちょっとわかりにくい写真で申し訳ないが、ボタン操作を行なった瞬間のみドライブの周りと円形ボタンの中心が赤く光るようになっている。AV製品に赤いライトを持ち込むというセンスは、日本ではあまり見かけないものだ。またリモコンのボタンやフォルムも、シンプルな中に力強さがあるデザインで、感覚の違いを印象付ける。
またPhilipsがNIKEブランドで発売するFMラジオ、MP3プレーヤー、MDプレーヤー、CDプレーヤーは、すべてのラインナップでラウンドフォルムを採用している。CDはもともとメディアが丸いので形が丸くなるのはわかるが、メディアが四角いMDも丸の中に入れてしまうというのは珍しい。 スポーツモデルということで、すべてのモデルにアームバンドが付属しており、腕に機器を固定して使用する。まあMDぐらいまでなら腕にはめてもおかしくないが、結構デカいCDプレーヤーを腕に付けるというのはちょっと行き過ぎのように思うのだが。
同じく日本に入ってこない製品としては、Polaroidのビデオ機器が面白い。DVRH1は40GBのHDDを搭載したHDDレコーダ + DVDプレーヤーのハイブリッドモデル。高機能になれた我々の目からすれば機能的な新しさはないが、フロントパネルには電源ボタンしかないというシンプルさは珍しい。
Aeon Digitalと共同開発したDVR700は、CD-R/RWとDVD-ROMの2ドライブを搭載したユニークなレコーダ。録画・再生機能はかなりPC寄りで、WMV9やWMA9のリアルタイムエンコード及びデコードに対応している。WMV9でエンコードすれば、CD-R1枚に約2時間の録画が可能ということだ。またEthernet端子を装備し、内部にブラウザも持っている。ネットから音楽をダウンロードして保存したり、インターネットラジオを聞いたりもできる。まだプロトタイプということで、カタログに載っている写真とはずいぶん違う機体が動いていた。デモンストレーションの途中でハングアップしてしまったが、完成すればなかなか面白い製品だ。 DT500は、液晶モニタ付きのDVDプレーヤー。写真で見るとそんなに大きく見えないかもしれないが、ドライブ部からだいたい大きさを想像できるだろう。まったく普通の19インチラックサイズのデッキに15インチモニタが付いているのである。これだけデカいもの、今さら折りたためるから何だヨという気がしないではないが、ベッドルームに置くのだという。
■ DVDレコーダを考えてみる 今回のCESでは多くのDVDレコーダが出品されたが、そのほとんどがHDDを搭載しない、記録型DVDドライブのみを搭載した製品である。その理由はシンプルで、米国市場ではビデオレコーダに対してあまりお金をかけないという現状がある。低価格にするためには、HDDとのハイブリッドは難しい。それならHDDだけ搭載していればいいのではと思われがちだが、これではメディアを何も消費しないから、メーカーとしては困るのである。 そうすると必然的に選択肢としては、DVDレコーダしかあり得ない。今回のCESでは、500ドル前後のDVDレコーダの登場が話題だったわけだが、現在100ドル以下のVHSデッキが主力商品の米国に置いてVHSからのリプレースを狙うのであれば、この値段でもまだ苦しい。テレビを録画することに関して画質に対する関心が薄い米国では、もっと別な意味でDVDで録ることのメリットがうまく訴求できなければならないだろう。
DVDの開発は日本企業が中心となって行なわれてきた。従って製品数も相当量を持っているし、米国からの期待も大きい。しかしここに来て日本企業は、価格の面で苦戦を強いられることになる。コストパフォーマンスにシビアな米国では、日本と同じ製品でもだいたい1万円ほど低い値付けをしなければ売れないという。デフレが進む日本においては、各製品ともかなり価格設定が低くなっているわけだが、それからさらに1万円安となると、かなり苦しい現状は想像できる。
その一方で日本企業を脅かす存在が、韓国企業だ。Samsungの盛況ぶりはすでにお伝えした通りだが、Zenithも大型ディスプレイやレコーダなど、ものすごい規模の展示を行なっていた。Zenithは元々米国の老舗テレビメーカーだが、'95年にLG Electronicsの傘下となり、'99年に100%子会社化されている。事実上LG Electronicsの米国ブランドと言っていいだろう。
国内ではデフレという爆弾を抱え、背後から韓国企業が迫ってくるというのでは、うまく立ち回らなければ米国市場はモノにできない。そういう現状を見越して、敢えてCESに出展せず一部の限られた人だけに決め打ちでプライベートショーを行なった日立の方法はうまい手だ。有り体に言えば、今は米国では金持ちしか相手にしない商売で行く、と割り切ったのである。
■ ポータブルオーディオを考えてみる 今度はオーディオの市場に目を向けてみる。日米のポータブルオーディオの体温の違いは、ライフスタイルの違いによるところが大きい。例えば我々日本人がポータブルデバイスを利用するシーンを想像してみよう。都市部に住む多くの人は、日常の通勤・通学時に利用するバスや電車などの公共交通機関に乗っている姿を連想するはずだ。ポータブルオーディオデバイスというのは、パーソナルなものである。すなわち、一人ぼっちの時間をいかに有効に楽しく過ごすか、という発想に基づいている。
今回のCESで感じたことは、米国ではカーオーディオのマーケットがとてつもなくデカいという点だ。日本で車がドッコンドッコン鳴るほどのどでかいスピーカーを積んでいると、ああ年末にはアレですか中央道通って富士山まで行かれるんですか大変ですなぁといった偏見の目で見られがちだが、米国では割と一般的なホビーであるという印象だ。この現象を上記の発想に当てはめるならば、米国では交通手段として車への依存度が高く、したがってカーオーディオは、音楽を持ち出すという意味でポータブルデバイスに近い扱いとなっていると考えられる。
では、米国人がポータブルオーディオを必要とするのはどういうときなのか。その答えは、国内で未発売のモデルデザインに見いだすことができる。米国市場では、いわゆる「スポーツモデル」が非常に多い。例えばSONYが今回発表したCDウォークマンシリーズやNet MDの新ラインナップには、共通デザインのスポーツモデルがある。またPhilipsがNIKEブランドで発売するFMラジオ、MP3プレーヤー、MDプレーヤー、CDプレーヤーは、当然ながらスポーツモデルのみである。さらに一般に市販されているヘッドフォンのラインナップにも、必ずスポーツモデルが含まれている。
すなわち米国でポータブルオーディオが必要とされるのは、ジョギングやフィットネスなどスポーツを行なう時ぐらいだ。実際にスポーツを好み、スポーティなイメージにあこがれる彼らの行動にもそれが現われている。CES会期中にスーパーボウルが始まれば、自分のところの展示そっちのけで別ブースの大型プロジェクションの前に群がり、どうみてもスポーツマンとは思えない体型の人がNIKEのウェアに身を包み、ラスベガスの街を闊歩する。 ただ歩きながら音楽を聴くという人を、米国ではあまり見かけない。日本であれば、家を出るときヘッドフォンを装着たら、そのまま電車に乗って、降りてもそのまま目的地まで歩いていく。一度の装着で目的地までそのままなのである。しかし米国では目的地近くまで車で乗り付けるため、日常的にポータブルオーディオを身につける瞬間がない。地下鉄網が発達しているニューヨークなどに行けば事情がまた違うのかもしれないが、今度は治安の問題でうかうか音楽なんか聴いてたらヤられちまうという話もある。いずれにしろ米国でのポータブルオーディオ市場は、日本のユーザー層とはかなり違うようだ。 ちなみにこれらSONYの新Net MD、CDのスポーツモデルはすでに店頭に並んでおり、共通デザインのウォークマン(カセット)もあった。またPhilipsのNIKEブランドモデルも、全種類販売されていた。せっかく来たんなら市場調査もしないとネとゴーインに理由付けして、大手家電量販店「Best Buy」に行ったときに見つけたのである。
■ 総論 いつもは総論でまとめをやらかすところだが、まあ今回は全部が総論みたいなもんなんでそれはやめてだな、また読者プレゼントをお送りしてみたい。今回のグッズは、CES会場で貰ったモノや筆者が個人的に買ったモノなどを提供する。 あらかじめ断わっとくが、ラインナップを知らせたところ担当が「それあきらかに送料のほうが高いんですけど」と難色を示したほどのモノなので全然欲しくないとは思うが、応募者がいなかった場合は前回のプレゼント応募者の中から選んで無理矢理送りつけたりしようか(嫌がらせかよ)とも考えているのでよろしく、なのである。 ではそのラインナップをご紹介しよう。希望するプレゼントを1つ選んでほしい。
【応募方法】
応募締切:1月23日(金)16:00まで ※ 応募フォームの送信はSSL対応ブラウザをご利用ください。SSL非対応のブラウザではご応募できません。ご回答いただいた内容(データ)は、当選者の選考および、プレゼントの発送にのみ使用し、その他の目的で使用することはありません。 □2003 International CESのホームページ http://www.cesweb.org/ (2003年1月16日)
[Reported by 小寺信良]
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