■ 今週はCES特集 いつも水曜日更新のElectric Zooma!であるが、今週はCES取材のため、ラスベガスから変則的なスタイルでお送りする。 筆者はNAB(National Association of Broadcasters)では何度もラスベガスに来ているが、CESは今回が初めてである。人気急上昇中のコンベンションというだけあって、出展規模や来場者数もNABを上回っているようだ。コンシューマエレクトロニクスを扱うショーなだけに、AV Watchを始めPC Watchなどから沢山のライター陣が取材に来ている。ちゃんとした(?)レポートはそちらの皆様にお任せするとして、ここではZooma! テイストのCESレポートをお送りしよう。 一般会場初日となる本日は、3ブロックに分かれるLVCCのうち、中央部のセントラルホールのブースから、筆者の琴線に触れた数々の製品をお伝えする。
■ 侮れないSamsung
セントラルホールのほぼ中央に位置するSamsungブースはかなりの面積を占めており、ユニークな製品も多い。 ●DVR-R4000
今回のCESでは、DVDレコーダの低価格競争が表面化しており、各社500ドルクラスの製品が注目されている。DVD-R4000の価格は明らかになっていないが、そのラインに向けて調整されることになるだろう。 ●SDC5000 ビデオカメラは、沢山のラインナップを展示していた。どのモデルもかなりコンパクトにまとまっており、SONYとPanasonicの中間のようなデザインが多い。おそらく両社をかなり研究しているのだろう。 そんな中、決して小さくはないものの、かなりユニークなカメラが登場した。DuoCamと名付けられた「SDC5000」は、ビデオカメラ用とスチールカメラ用の光学部を2つ持つ、マルチフォーマットカメラ。ボディ横の光学部分には、頭とお尻にそれぞれ別のレンズがあり、これをぐるっと回転することで、ある時はDVカメラ、ある時はデジカメとシーンによって使い分ける。この設計ならば、双方のスペックに無理や妥協が生じない、ユニークなアイデアだ。
デジカメ光学部は413万画素のCCDを搭載し、2,272×1,704ピクセルの画像が撮影可能。光学ズームは3倍、デジタルズームは6倍。記録はメモリースティックに行なうほか、USB出力もできる。一方DVカメラ光学部は68万画素のCCDを搭載し、光学ズーム10倍、デジタルズームは破格の800倍。記録はMiniDVのほか、メモリースティックにMPEG-4のムービーが記録できる。 液晶モニタはレンズの後部に配置されており、計らずしもSONYがMicroMVのカメラ「DCR-IP220」で行なった「インラインレイアウト」(光学軸とモニタが同一線上にある)と同じ効果が得られる。 光学部を外してデジカメとして使う「NV-EX21」という製品がPansonicにあり、レンズ部が回転するという製品は先日シャープが「Viewcam Z」を発表したばかりだが、光学部が2つあって回転させるというものはない。かなり厚みがあるのでかっこよくはないが、なかなか面白い。 ●ITCAM-7 カメラで気になったのがもうひとつ、デジタルカムコーダ「ITCAM-7」である。なかなかスマートな外観を持つこのカメラは、PanasonicのD-Snapを強烈にしたような製品だ。1.5GBのHDDを搭載し、動画、静止画撮影および再生が可能なのに加えて、MP3プレーヤー、ボイスレコーダとしても機能する。CCDは35万画素で、レンズは光学10倍ズーム。動画は1.5~3MbpsのMPEG-4で、VGAサイズの30fpsが撮影可能。
インターフェースはUSB 2.0で、約1時間の動画を5分で転送できるという。もちろんパソコンのデータストレージとしても使用でき、さらにメモリースティックポートまである。 ソリッドメディアを使うMPEG-4カメラの場合は、メディアの速度が問題になったりするわけだが、ITCAM-7では小型ながらHDDを使用しているため、スピードの点では問題ない。今回のCESでSDカードが1GBのものを発表したばかりだが、1.5GBという容量はそれをわずかに上回っているところがニクい。ここ米国ではあまり受けていないようだが、日本で発売されれば間違いなく受けることだろう。 ●HEC-1000
さらにDVD/CDプレーヤーとしても使え、ネットワークはEthernet 10/100、USB 1.1ポート2つ、さらに802.11aも備える。
中身としてはほとんどパソコンと言ってよく、CPUはVIAのEden 667MHz、OSはLinuxであるという。キューブ型PCを自作して同じようなものを作っている人もいるかと思うが、これが家電として使えるのであれば、これはこれでなかなか便利なシロモノだろう。搭載HDDが40GBというのはちょっと物足りないが、この路線で第二弾、三弾と続くのであれば、かなり強力なものになるだろう。 ●SPH-i330 SPH-i330は携帯電話とPDA(Palm)が一緒になったもの。日本では携帯でPDA機能という発想はiモードの出現以降一気に沈静化したが、これで通信速度の速いPHS版が出たら面白いのではないだろうか。
またSPH-i330には、カメラユニットやキーボードが装着可能だ。このキーボードがまたコンパクトで、しかもゴム製なので丸めることができるというもの。秋葉原でも以前フルサイズのゴム製キーボードが発売されて話題になったが、このキーボードはあれよりもストロークが浅めなのでガクガクせず、なかなかしっかりしている。 韓国メーカーの製品というと、今まではどうしてもデザインテイストが日本人の感覚に合わない部分があったわけだが、Samsung製品はどれをとってもスマートな印象を受けた。日本企業のテイストをうまく取り込んで独自に消化している感じだ。実際に使ってみないと耐久性や使い勝手など細かいところはわからないが、かなり期待できるメーカーであることがわかった。
■ KOSSは今年50周年
さてそのKOSSは今年で50周年となった。セントラルホールの奥まったところにちんまりと存在するブースでは、新旧関わらずほとんどの製品が展示されており、日本では見ることができないモデルもいくつかあった。 「QZ/50」もその1つ。ノイズリダクションヘッドフォンである。単4電池を内蔵するため若干パッド部に厚みがあるが、軽量でなかなかしっかりした作りだ。音を聞いてみると、劇的なリダクション効果があるわけではないが、ホワイトノイズが増えるわけでもなく、ナチュラルな効き具合だ。 「KTXPro/1」も、日本では見かけないモデル。見た目は安っぽいが、低音の伸びはなかなかいい。値段も安いのでお買い得感のあるモデルだが、日本のこのレンジではイヤークリップ式が主流であるため、あまり受けないと思われる。
KSC/17は、コンパクトモデルの新製品。周波数特性では下は40Hzからとあるが、全体のバランスが低域寄りなのか、音はしっかりKOSSの音がする。折りたたむと丸くなり、持ち運びには便利だったりそうでもなかったり。
■ 別の意味でラジカセがアツい セントラルホールをぐるっと回ってみて気づいたのは、なんだかやたらとCDラジカセが目に付く。今まではまったくノーマークだったのだが、気が付けばCDラジカセってのはなんだかもんのすごいことになっているようだ。 まず軽くジャブから攻めていくと、これ。
UNIREXというメーカーのものだが、となりのDaewooブースと同じモデルが多くあり、おそらくOEM関係にあるメーカーではないだろうか。一見すると「鼓」のようなフォルムのスピーカーの配置である。しかしこれがパカッと開いて正面に向くという……。それなら最初から正面向きに付けてればいいじゃねえかとか思ってはイケナイのである。ラジカセとの出会いは最初のインパクトが重要らしい。 さて次のブツは、これ。
Panasonicブースに展示してあったものだが、なんというかこの、パチンコ屋みたいなあきらかに不必要と思われる派手派手なイルミネーションといい、オートバックスのホイール売り場かよと突っ込みたくなるスピーカーグリルといい、明らかに日本人的なベクトルとは全然違う。 一方そういうベクトルではなくて、筆者のハートをある意味がっちり掴んだのが、これ。
SPIRIT OF St.LOUISというメーカーのものだが、なぜトランクに。てかこの激しいスイッチとかダイヤルが激しくかっこいい。メーター類も「怪奇大作戦」(若い人は知らないだろうな)に出てくる怪しい科学者が作りそうなキカイのようである。 このヒトたちはどうしてもトランクに入れたいらしく、電話機とかも入れてしまう。いや普通有線の電話持ち歩かねえし。てかこれでプッシュホンなのかよ。
さて筆者が用意した最終兵器がこれ。
KNG Americaというブースで展示されていたものだが、ラジカセの両側にボール状の照明器具(なんていうのこれ?)が取り付けられ、激しい勢いでグルングルン回る。グルグルグルグルー! 隣で中国人らしきおじさまが何かに取り付かれたように見入っていらっしゃいましたが、あり得ねぇよ素で。てかもうラジカセじゃねえよ。
■ 総論 いや年末年始特集では今年はオーディオに力を入れるとか宣言しておきながらこの始末かよとか突っ込まれると、返す言葉もないのだが。すいません。いやぁそれにしても、CESってすげぇなぁ。
(2003年1月10日)
[Reported by 小寺信良]
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