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第69回:アクションファンにお勧めの戦争大作
「ウインドトーカーズ」

怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。


■ DVDソフト売り場でやたらとプッシュ中

ウインドトーカーズ

価格:3,980円
発売日:2003年2月7日
品番:FXBA-22896
仕様:片面2層2枚
収録時間:本編約134分
       特典約91分
画面サイズ:シネマスコープサイズ(スクイーズ)
音声:1.英語(DTS)
    2.英語(ドルビーデジタル 5.1ch)
    3.日本語(ドルビーデジタル 5.1ch)
字幕:1.日本語
    2.英語
発売元:ムービーテレビジョン株式会社
販売元:20世紀フォックス ホーム エンター
     テイメント ジャパン株式会社

 「ウインドトーカーズ」は、第二次世界大戦当時、日本軍に暗号を破られ続けたアメリカ海軍が、より強度な暗号を求めて採用した、ナバホ族の通信兵と、「暗号を守るため」に彼の護衛を命ぜられた兵士を中心にした、戦争大作だ。監督はジョン・ウー。護衛役のジョー・エンダースをニコラス・ケイジが、ナバホ族の通信兵のベン・ヤージーをアダム・ビーチが演じている。

 昨夏の公開当初は大々的な宣伝にも関わらず、あまり話題にならなかったように記憶している。しかし、DVDの注目度は高く、先週の売上ランキングでも初登場1位を記録するなど、人気タイトルとなっている。実際に先週末に小売店のDVDソフトコーナーなどを見てみると、20世紀FOXの戦争映画キャンペーンとあわせて大々的に展開されている。今最も注目のタイトルといえるかもしれない。

 価格は3,980円。特典ディスクやデジパック仕様などを考えれば、納得できる価格といえそう。

 個人的には、ジョン・ウー監督のファンなので大抵の作品は見ているし、戦争映画は好きなので、昨夏の公開時の期待度もかなり高かった。しかも、昨年はサイモン・シンの「暗号解読」や、スティーブン・レビー「暗号化」など、暗号関連で話題を集めた書籍が多く刊行され、その中でナバホ族のコードトーカーの話も読んでいたので、タイムリーに面白そうな作品が出てきたと感じていた。

 公開時には、原作本も読んでかなり行く気だったのだが、ちょっと忙しく数週先送りにしていたら、公開が終わっていたという「注目していたけれど、見ることがかなわなかった」タイトル。もちろん、購入予定に入っていたので、発売翌日の2月8日に購入した。



■ ナバホ族がコードトーカーに抜擢されたわけ

 映画の舞台は第二次世界大戦中の米海兵隊によるサイパン攻略。ガダルカナルの激戦で、部隊の中で唯一生き残った主人公ジョー・エンダース(ニコラス・ケイジ)が、障害を負いながらも戦線に復帰、サイパン攻略の任に就く。しかし、そこで命ぜられたのは、ナバホ族の暗号通信兵、ベン・ヤージーの護衛の任務だった。

 ナバホ族は、ネイティブアメリカンの一部族だが、彼らが暗号通信兵として採用されたのにはわけがある。それは、彼らの言語が難解で発音が難しい上に、書き言葉を持たないため、外部に知れ渡っていなかったからだ。そのため、たとえ日本軍が通信を傍受できても、ナバホ語の話者でなければ聞き取れないし、また、たとえナバホ語の話者であっても、暗号化が施されているため、訓練を受けていなければ意味を理解できないといった具合だ。実際、この暗号は第二次大戦の終結まで破られることはなかったという。

 エンダースの役割は、「暗号を守ること」。基本的には、作戦中のヤージーの護衛にあたるというものだが、上官からは、「いかなる事態においても暗号を守れ」と伝えられる。つまりのところヤージーの命より暗号を守ることが優先されるわけだ。暗号をどうしても解読したい日本軍は、コードトーカーを生け捕りにすることを狙っている。どうしても守れない事態が発生したら、その時は自らの手で通信兵を殺してでも暗号を守れということである。本作では、命令に順ずるため、あえてヤージーを遠ざける「くそ優秀な海兵隊員」であるエンダースが、戦闘の中で徐々にヤージーと心を通わせ、命令と友情の間で苦悩する姿を中心に描かれていく。


■ 戦争を扱ったアクション映画

 ストーリーの中心となるのは戦争描写と、それにともなう、エンダースとヤージーの2人の関係の変化だ。冒頭のガダルカナルでの敗戦、エンダースの負傷シーンのほかは、基本的にサイパン島での戦闘が描かれる。

 特に500人のエキストラを配したという、上陸シーンは圧巻。出演者の多くがハワイの海兵隊基地で新兵訓練を受けたとのことで、陣形や俳優の動きもリアリティがある。

 ただ、戦闘の模様を忠実に再現するというよりは、迫力あるアクションが見所だ。とにかく爆発シーンが多く、攻撃を受けたジープが反転しながら中を舞い、火柱の中で兵士が回転しながら吹き飛んだり、撃たれて倒れこんだら、体で地雷を踏んで大回転といったようなアクションはもとより、はじめて人を殺すヤージーが、銃を構えた日本兵と至近距離で向き合ったまま動かないといったシーンなど、ジョン・ウーらしい、派手な演出が目白押しだ。監督自身は、「リアリティを求めるため、スタイリッシュなアクションは抑える必要がありました」とメイキングで語ってはいるものの、目を見張るアクションシーンには圧倒される。

 ヤージーが救援を呼んだ後の、海上からの砲撃や空爆がやたらと正確だったり、やけに低空から爆撃していたりと、戦闘のリアリティを削いでしまうようなシーンもある。とはいえ、アクション映画として文句なしに楽しめるし、兵士の様子や服装、装備などもリアリティがある。

 また、相手が日本軍ということで、日本兵の描かれ方も気になるところ。結論から言うと結構ちゃんと描かれているという印象で、意味の通る日本語を言っているし、なにより、ハリウッド映画の敵役としてはかなり強いのが意外だった。ジャップ、ジャップと連呼されるのがイヤかどうかは、人それぞれだと思うが……。また、(日本人に似ているということで)ヤージーが日本の軍服を着て捕虜を装ったエンダースを連れ、「ホリョダ」、「ホリョダ」と叫びながら、日本軍の無線機を奪いに行くシーンがあるのだが、「ちょっとそれはばれるだろう?」というような、いかにも「ガイジン」の発音だったのが気になった。


■ 画質、音質は良好

 本編は134分で、シネマスコープサイズをスクイーズ収録している。音声は、英語がDTS(1,536kbps)と、ドルビーデジタル5.1ch(448kbps)。日本語がドルビーデジタル5.1ch(448kbps)となっている。

 画質はかなり好印象で、暗いシーンも多いのが暗部ノイズは少なく、輝度差の多いシーンでややチラつくかな? という程度。大きな違和感を感じることは無かった。DVD Bit Rate Viewer Ver.1.4でみた平均ビットレートは7.11MB/Sec。

DVD Bit Rate Viewer Ver.1.4でみた平均ビットレート

 音声のクオリティも高い。DTSで視聴したが、戦闘シーンでは、爆風で飛ばされた砂礫が降ってくる様まできっちり再現されており、「戦争をモチーフにしたアクション映画」ともいえそうな本作にぴったりの迫力だ。全般的に派手目な音作りで、銃声や弾着音も倍音が誇張された迫力あるもの。戦闘シーンになると音量が大幅にアップするので、深夜の視聴には覚悟が必要だ。

 特典は、本編ディスクにトレーラを収録するほか、特典ディスクに、ドキュメンタリー「ナバホ通信兵の偉大なる功績」と、「ジョン・ウー リアリズムへの挑戦」、インタビュー集「キャスト」、「戦闘シーンの舞台裏」、「俳優のための新兵訓練所キャンプ」、「ブラボー・スペシャル」、構想段階のストーリーボードと実際のシーンを照らし合わせた「マルチアングル・シークエンス」などを収録している。

 特に、戦闘シーンの舞台裏は面白い。実際の撮影時の模様が解説されているのだが、スタッフに爆発の危険性を知らせるために、実際にスタッフを集め、その場で爆破して注意を喚起する(スタッフからは驚きの声と、歓声、拍手が沸くが……)など、現場の模様が垣間見えて面白い。また、500人のエキストラを使った上陸シーンを俯瞰で映した映像も、映画の迫力とは別の意味で圧巻なので是非見てみて欲しい。

 また、ナバホ通信兵について知りたければ、「ナバホ通信兵の偉大なる功績」が良くまとまっている。当時の通信兵の体験談と、俳優たちの体験が交互に語られる形で進行していく。通信兵としてのトレーニングは厳しく、420人を選考したがほとんど残らなかったエピソードなどが紹介されている。

 ナバホ語については、幾つかの具体例と運用例などが紹介されているが、個人的には暗号化についてもう少し詳細な解説が見たかった。なお、ナバホ通信兵については、国家機密として'69年までその存在を明かされることはなく、通信兵は家族や他の軍関係者などにもその任務を話すことができなかった。その後、彼らの地位回復が行なわれ、2001年には、勲章が授与されている。

 また、エンダースと同様にナバホ通信兵の護衛を命ぜられたオックス(クリスチャン・スレーター)と、ヤージーの親友でもある通信兵ホワイト・ホースとの絡みも本作の見所なのだが、スタッフ紹介を見て、ナバホ族出身でホワイト・ホース役のロジャー・ウィリーが、本作が俳優としてのデビュー作で、そもそも俳優志望ですらなかったと知った。静かながら深みのある演技が印象に残っていただけに、なおさら驚きだった。彼によれば、「ナバホのことを正確に伝えるために参加したかった」とのことで、アダム・ビーチのナバホ語の教師としても活躍したという。


■ ストーリーもアクションも秀逸

 個人的には、「戦争を扱ったアクション映画」という印象が強いものの、エンダースとヤージーの愛憎や、兵士たちの描写などで人間ドラマとしての深みも存分に感じた。

 戦争を緻密に再現という方向でなく、戦争をベースにしたアクション大作として多くの人が楽しめるだろう。ニコラス・ケイジは「戦争ドラマ」だ、と語っているが、DVDビデオとしてのクオリティも高く、戦争映画ファン、アクションファンのみならず、様々な人が楽しめる作品だ。

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(2003年2月18日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]



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