~ その1:特徴とmLANの設定~ |
FireStation |
先日ドイツの「Music Messe(ムジークメッセ)」でYAMAHA自身も「01X」という24bit/96kHz対応のマルチチャンネルmLAN対応のDAWコントローラを発表していたが、今回試したのは米Presonus Audio Electronicsの「FireStation」という製品。
アナログ8in8outにADATインターフェイスも装備した豪華な1Uラックタイプのモジュールだが、これでどんなことができるのだろうか? かなりいろいろな機能を持った製品なので2回に分けて、第1回目の今回は、FireStaitonの概要について紹介する。
■ 増えてきたmLAN製品
筆者がmLANのプロトタイプのシステムを最初に見たのは'97年8月だから、もう6年も前のことになる。mLANのことを知り、かなり画期的なシステムだと思った覚えがある。IEEE 1394のケーブル1本で100チャンネルものオーディオ信号を送ることができるのとともに、256ポートものMIDIデータのやり取りもできる。しかし、実際にはなかなか対応した製品は出てこなかった。ようやく製品となったのは約2年前のこと。しかも登場したのは、非常に原始的なインターフェイスが数種類で、値段もかなり高価なものばかり。また扱えるオーディオチャンネル数も8チャンネル程度と、当初のスペックをかなり下回るものだった。その後、シンセサイザなどに組み込むmLANインターフェイス、つまりIEEE 1394インターフェイスなどがいくつか登場した程度だったため、「もうmLANは実質終わってしまったのでは……」という印象を持っていた。
ところが、最近になって、色々な製品が登場しだした。中でも目を引いたのがPresonus Audio Electronicsの「FireStation」という製品だ。Presonusといえばマイクプリアンプなどで有名なメーカーであるが、そこがマイクプリアンプ内蔵のmLAN製品を出したというのだから、ちょっと驚いた。Presonus製品は国内では日本エレクトロハーモニックスが扱っているのだが、同社のサイトを見ると、このFireStationの特徴として、以下の項目が挙がっている。
背面 | 動作状況をLEDで確認可能 |
■ ADATにも対応
実は、筆者自身mLAN製品を自分のPCに接続して使うのは初めて。とはいえ、たかがオーディオインターフェイス、そんなに複雑なこともないだろうと思っていたのだが、触ってみるとmLAN未経験ということと、FireStationの機能が多すぎて、かなり混乱してしまった。マニュアルによると、まずIEEE 1394とFireStationを接続する前にmLANのドライバやアプリケーションをインストールしておく。インストール操作自体は簡単ではあるが、ハードウェアをまったく接続せずに、いろいろなドライバをインストールしており、何度も似た作業を繰り返す。これがどんな意味を持っているか、最初よくわからなかったのだが、IEEE 1394が搭載されているだけでmLANを使うスペックが整っているので、すぐ使えるように各種ソフトを入れていたわけだ。
準備が整ったので、IEEE 1394インターフェイスとFireStationを接続して、すぐに音が出せるかと思って、出そうとしたのだが、さっぱり音を出すことができない。音を出すという以前に、アプリケーションから見て、FireStationのポートすら見つからないのだ。だいぶ後になってわかったのだが、mLAN Control Panelというソフトにおいて、インターフェイスタイプをWDMに設定しておかなくてはならなかった。デフォルトではこれがオフになっており、その結果各ソフトともに、出力先を認識できなかったのだ。
セットアップタイプの選択 | なぜかFireStationのポートが見つからない | 先に「mLAN Control Panel」でWDMに設定する必要がある |
仕方ないので、ASIOなら使えるだろうと考えて、Cubase SXを起動してみたところ、確かにこちらならインターフェイスを認識はできている。よし! とすぐに音を出してみようとしたのだが、どうもうまくいかない。FireStation上にはさまざまなボタン類があるので、適当に操作してみるのだが、やはり音はでない。ASIOコントロールパネルのボタンを押して設定画面を開いてもよくわからない。マニュアルも読まずに音を出そうとしたのが間違いだったのかもしれないと、マニュアルを見てもやはりよくわからない。
デバイス設定 | ASIOコントロールパネル |
FireStationにはハードの操作が書かれた英文マニュアルとA4の紙2枚に印刷された日本語の簡易マニュアルのみ。いずれを読んでもあまりうまくいかず、困っていたところ、YAMAHAのサイトで、mLANのマニュアルを発見。これをもう一度じっくり読んでみたところ、mLAN Patchbayというソフトを使うことで、解決できそうなことがわかってきた。そう、これを使って物理的なインターフェイスとmLANとしてのドライバ側を仮想的に結びつけることができるのだ。この設定をした後、再度Cubase SX側で音を鳴らしたところ、無事再生することができた。
mLAN Patchbay。入出力の設定はここで行なう。右はMIDIを設定したところ | ミキサー |
一方、入力はどうなっているのだろうか? FireStationのマイク入力端子にマイクを接続してみたところ、こちらは簡単にレコーディングすることができた。とりあえず入出力ともに8ポートまで扱えることが確かめられた。なお、ASIOコントロールパネルにはバッファサイズの調整項目がある。これを見ると、デフォルトでは2msecとなっていたが、これが最小値のようだ。実際に音を鳴らすとほぼその数値通りで動作していることも確認でき、最大は100msecまで設定可能だった。
一方MIDIの設定も行なってみたところ、こちらは簡単にうまくいった。MIDIの場合はオーディオと違って、Windowsのコントロールパネルからも選択することができ、ほかのアプリケーションからも簡単に使うことができる。
では、FireStationの大きな特徴であるADAT対応というのは何を意味しているのだろうか? このFireStaiton、単なるmLANのオーディオインターフェイスというだけではない。ADATのAD/DAとしても動作する。試しにRME 96/8 PSTというADAT対応のオーディオインターフェイスを経由してPCと接続してみた。この場合、IEEE 1394でPCと接続しておく必要もなく、ADAT用の光ケーブルを接続し、ADATボタン押すだけだ。
なお、フロントパネルにはADAT TO mLANというボタンがあるのだが、これをオンにしておくと、ADATから入力された信号をmLAN経由でPCに送ることができる。この際すべてを同じサンプリングレートに設定しないとうまく動作しない。
FireStationについてここまでで気づいたのは、最大で24bit/48kHzまでしか対応していないことだ。ADATの規格もそこまでなのだが、今後24bit/96kHzをサポートするのかは気になるところだ。次回は、音質チェックなどを予定している。
□Presonus Audio Electronicsのホームページ(英文)
http://www.presonus.com/
□Firestationの製品情報(英文)
http://www.presonus.com/html/products/firestation.html
□日本エレクトロハーモニックスのホームページ
http://www.electroharmonix.co.jp/
□Firestationの製品情報
http://www.electroharmonix.co.jp/presonus/fires.htm
(2003年3月24日)
= 藤本健 = | ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase VST for Windows」、「サウンドブラスターLive!音楽的活用マニュアル」(いずれもリットーミュージック)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。 |
[Text by 藤本健]
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