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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第103回:NAB2003レポート
~ 速報性の高いニュースをピックアップ ~


■ 今年は来場者減のNAB2003

例年になく閑散としたメインコンコース入り口付近
 筆者は今、ラスベガスはAladdin Resortの一室にいる。本日のElectric Zoomaはかねてからの予告通り、毎年この時期に開催される世界最大規模の放送機材展、「NAB2003」のレポートをお送りする。

 現地時間の月曜日からNAB2003がスタートしたわけだが、今年は会場がLas Vegas Convention Center 1カ所のみで、例年コンピュータ・マルチメディア関係の展示を行なっているSands Expo Centerは使用しない。LVCCのSouth Hallが本格的に稼働したため、必要なくなったようだ。

 大方の予想通り、この有事に渡米する日本人は非常に少なく、会場でも街中でもほとんど出会わない。また新型肺炎SARSの影響で、テロとは別にすべての東洋人が妙に警戒されるというような珍事も起こっている。ただ会場警備に関しては全くいつも通りで、戦争中の国という感じは全くない。

 まだ初日を終えたばかりであるが、やはりアジア圏からの参加が激減ということで、来場者の出足は例年に比べて6~7割といったところだ。まだこれから取材が続くわけだが、まずは本日仕入れた主だったニュースをお伝えしておこう。


■ Panasonic メモリー記録型報道用カムコーダ発表

いつものひな壇上に陣取ったPanasonicブース
 Panasonicは次世代DVCPRO機器として、従来の記録媒体であるテープやディスクではなく、メモリーに映像を記録する報道用カムコーダのコンセプトモデルを発表した。4枚のSDメモリーカードをPCIカードアダプタに装着し、それを記録媒体として録画を行なう。記録フォーマットはDVCPRO25、DVCPRO50と互換性があり、同ラインナップのノンリニアシステムとの組み合わせが可能だという。また将来的にはDVCPRO HDでの記録も可能であるとしている。

 このようなコンセプトは長らく想像はされていたが、これだけ具体的な形として発表されたのは初めてということで、ブース内は多くの人で賑わっていた。

 論理値では、16GBのメモリーにDVCPROで72分、DVCPRO50で36分、DVCPRO HDで18分の記録が可能となる。ただ現在SDメモリーカードは、今年のCESで1GBのものが発表になったばかりであり、これを4枚集めても4GBにしかならない。16GBのメモリーとなるには、ロードマップで2005年とされている4GBのSDメモリーカードの発売を待つことになる。

Solid state memory camcorder。ただしモック 側面にはPCスロットが4つ見えるが……

 映像記録にメモリー媒体を使った場合、駆動部分がないため、大幅な低消費電力が実現できることだろう。また振動にも強く、10万回を超える書き換えが可能であるため、ランニングコスト低減に効果があると予想される。

 ブースに展示されているカメラは2種類あるが、いずれもまだモックアップの段階。PCスロットが4つ見えるところから、PCカードアダプタも複数枚の連続使用を想定しているようだ。

 報道用以外にもコンシューマーレベルでの製品投入も予定されているということなので、将来が楽しみだ。


■ Pioneer、業務用HDD/DVDレコーダを展示

PRV-LX1が中心のPioneerブース
 既にAV Watchにも記事が出ているが、Pioneerは120GB HDDを搭載した業務用DVDレコーダ「PRV-LX1」を中心にデモンストレーションを行なった。

 PRV-LX1は、Linuxで動作するスタンドアローンのHDD/DVDレコーダ。本体にキーボード、マウス、PC用モニタを接続して使用する。業務ユースを意識して、RS-422AによるVTRのリモート操作により、ベータカムなどの業務用アナログVTRからバッチデジタイズが可能。ビデオ入力は現在のところ、アナログコンポジット、アナログコンポーネント、DVをサポートしている。一方音声は、アナログXLRおよびRCA。

 入力した映像をハードウェアエンコーダでMPEG-2にエンコードしながら記録し、映像のトリムなども可能。そこからオーサリング、DVDに書き込みという一連の作業を、完全に本体のみで行なうことができる。米国ではの発売予定は6月で、価格は4,000ドル程度になるという。

 入力ソースからすると、国内では主にブライダル市場に受けそうな構成だが、プロ用の標準デジタル映像インターフェイスであるSDIデジタルオーディオインターフェイスのAES/EBUへの対応は、今年の第4四半期頃を予定しているという。そうなればプロユーザーにも注目されることだろう。

デッキとPCの中間的なイメージのPRV-LX1 アナログ系の入力を中心に構成される背面パネル部 ソフトウェアの機能はかなり豊富

□関連記事
【4月7日】パイオニア、120GB HDDを搭載した業務用DVDレコーダ
―ドライブを2台まで増設でき、ディスク2枚へ同時録画が可能
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030407/pioneer.htm


■ SONY、HDCAMの新フォーマットVTRを発表

 SONYはHDCAMの新フォーマット、「HDCAM SR」で記録するスタジオVTR、SRW-5000を発表した。昨年のNABでは参考出品となっていたが、今年正式デビューとなった。

 従来のHDCAMが1/7圧縮+帯域圧縮であったのに対し、HDCAM SRでは帯域圧縮を行なわず、MPEG-4スタジオプロファイルにより、10bit 4:2:2の1/2.7圧縮で記録する。またオプションとして、4:4:4での記録も可能。HDCAMのハイエンド規格という位置づけになるだろう。またSRでは帯域圧縮を行なわないため、従来のHDCAMの問題点であったダビングによる画質劣化が軽減される。

 またオーディオトラックが12chにまで拡張され、サラウンド収録にも十分対応できるという。なにせSONYブースはNAB2003で最も巨大なブースである。現在もまだ取材中であるため、詳細に関しては後日改めてお送りする。


■ Media100、新HD対応ノンリニアシステムを参考出展

844/XがメインのMedia100ブース
 Media100は、Macintosh用のHDノンリニアシステムとして、Media100 iHDを参考出展した。基本的なアーキテクチャは現状の844/Xと同じで、HDの入力ソースを内部でダウンコンバートし、10bit非圧縮のSDで編集を行なった後、アップコンバートしてHDとして出力するというもの。

 844/XはWindowsベースの製品であるが、Media100の既存ユーザーはほとんどがMacintoshを使用しているため、Macintosh用のHD対応製品の開発に着手したという。まだ参考出展の段階であるため、将来的に製品名などは変わる可能性がある。

 予価として9,995ドルと発表されており、844/Xよりも若干低価格に設定されるようだ。

MacintoshベースのHD対応機 Media100 iHD


■ Canopus、新編集ソフトEDIUSのデモが好評

EDIUSのデモが好評のCanopusブース
 Canopusブースでは、新開発のビデオ編集ソフト「EDIUS」のデモで賑わっていた。この新編集ソフトは、ビデオトラック、タイトルレイヤー、オーディオトラックが無制限に使用でき、かつアンドゥも無制限という特徴を持っている。

 従来カノープス製品には、RexEditやStormEditといった独自アプリケーションが付属していたが、ビデオトラックがMainとInsertの2つであったり、中間のクリップを削除すると、隙間が自動的に前方へ詰まっていくといった初心者向けの仕様となっており、高度な編集を行なうにはAdobe Premiereを使用することが推奨されてきた。これがCanopusオリジナルソフトで高度な編集が行なえるようになるのは、ユーザーにはうれしいニュースだ。

EDIUS
 編集機能として3ポイント編集はもちろんのこと、素材のIN/OUTとタイムラインのIN/OUTの4点を指定する4ポイント編集も可能になった。時間的につじつまが合わない場合は、素材クリップが自動的にスピード調整されて挿入される。

 対応ハードウェアは、DVStormシリーズ、DVRex RT、DVRex RT Professionalがあげられている。特にDVRex RTは既に販売が終了し、編集ソフトのアップデートも止まっていたが、EDIUSで息を吹き返すことになる。

 なお推奨マシンスペックは、Athlon、Pentium 4ともに2GHz以上となっている。カノープスでは早くからCPUパワーの向上に対して性能もアップする「スケーラブルテクノロジー」を提唱していたが、ここにきてようやくその技術が結実したと言える。

 デモに集まった人のほとんどが現Canopusユーザーで、プロ/業務レベルにおける米国での浸透は、日本よりも数段早いようだ。

□関連記事
【4月3日】カノープス、NAB 2003出展製品に関する説明会を開催
-新開発のビデオ編集ソフト「EDIUS」を近日発売
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030403/canopus.htm


■ 総論

 本日は、割と速報性の高いニュースから先にピックアップしてお送りした。今年は行けなかったという業界人でレポートを楽しみにしている方も多いとは思う。でもあんたネ、1人でラスベガスに来て全ホール1人で取材して毎晩レポート書くって、死んじゃう死んじゃうテロとは別に死んじゃう。  そんなわけでNAB2003の詳しいレポートは、来週のElectric Zooma!でお送りする。お楽しみに。

□NAB2003のホームページ
http://www.nab.org/conventions/nab2003/
□関連記事
【2002年4月17日】【EZ】米国ブロードキャストに何が起こったか
~ NAB2002に現われた大きな変化を考える ~
【リンク集】NAB2002レポートリンク集
http://av.watch.impress.co.jp/docs/link/nab2002.htm

(2003年4月9日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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