自宅で音楽を聴くときは、大抵ステレオを利用するのだけれど、目当てのCDが見つからなかったりするとストレスが溜まるもの。「じゃあ、目当ての曲が入ったiPodで聞くかな~」といって、ヘッドフォンで聞くのも今ひとつだし、ステレオにつなぐのも面倒。要するにライン入力を備えていて、簡単に使えるアクティブ型のスピーカーがあればいいな、などと思っていたら、ヤマハからちょっと変わった製品が4月1日に発売されていた。 この「AA5」、スピーカーというよりはモニターアンプという位置づけの製品で、上記のようなアクティブスピーカーとして使えるほか、ギターなどの楽器用アンプとしても利用できる。今回ヤマハから製品をお借りしたので、早速試用してみた。 ■ ユニークな形状のモニターアンプ
本体サイズは172×158×158mmと、立方体では無いが、遠目にはサイコロ形状に見えるアンプ/スピーカーユニット。特徴的なのは、本体の2面にスピーカーを配置し、CDプレーヤーやMDプレーヤーなどを接続してステレオ出力できること。一見、ギターアンプなど楽器風のデザインだが、ポータブルプレーヤーと組み合わせて、持ち運び可能なオーディオセットとしても利用できる。 入力端子は楽器用の標準モノフォンと、オーディオ機器接続用のAUX入力(ステレオミニ)をそれぞれ1系統装備、出力端子は標準モノフォンを1系統備えている。 上面には、電源スイッチのほか、ボリュームコントローラと、トーンコントローラを備えている。ただし、両コントローラを利用できるのは標準モノ入力を利用した時だけで、AUX入力では出力機器側でボリューム調整を行なわなければいけないので注意が必要だ。また、電池ボックスを備えており、単3電池4本を利用して駆動することもできる。
本体底面には三脚用のカメラネジも(三脚穴)備えており、カメラ用三脚にセットして、高さや向きを調節することもできる。本体重量は1.8kgで、持ち運び用のベルトもついていて、持ち運ぶ際にはさほど苦にならない。といってもサイコロ型なので、バックなどには入れにくい。 ■ 音質は良好。楽器練習用アンプとしても使いやすい AA5のアンプは、自社開発のデジタルアンプで、出力は4W(モノラル)/2W×2W(ステレオ)。スピーカーは12cm径のユニットを2個搭載している。このデジタルアンプ、他社のポータブルMDなどでも採用されているとのことで、音質も期待されるが、出力の小ささはやや気になるところ。 まずは、iRiverのポータブルCDプレーヤー「iMP-350」を接続して聴いてみる。プレーヤーのライン出力と「AA5」のAUX入力を接続して再生。いきなり大音量で再生されたので、驚いてAA5のボリュームをまわすと……「反応なし」。焦って電源をOFFにしてしまった。 先にも書いたが、AUX入力の際は本体側でボリュームコントロールが行なえないため、プレーヤー側でコントロールする必要がある。アンプ/ステレオとして利用する場合は、当たり前だがあらかじめプレーヤー側のボリュームを絞らないといけない。 ということで、プレーヤーのボリュームを絞って再チャレンジ。とりあえずジャズ系のソースを聞いてみるとなかなか好印象だ。90度に開かれたステレオスピーカーは、「きちんとステレオで聴けるのか?」とやや疑問に感じていたが、左右のスピーカーを体の中心に向かうようにセットすればきちんとステレオ感が感じられて、なかなか面白い。ディスクを変えたり、iPodにつなぎ変えたりとさまざまなソースに変えて再生してみると、やや中域が厚めで、ソースによってはもっさりとした印象を受けたが、全体的に素直な音だ。 特に、ロック系のソースを利用してみると、低音も程良く出るし、ファズギターの伸びる音などもいい具合に出力される。開発裏話のページを見ると、もともとサイレントギターの練習用として企画されたということなので、ギターの音にはかなり気を使っているのだろう。
iMP-350のボリュームを最大にすると、ノイズの発生などの破綻も目立ち、出力の弱さを感じさせてしまう。しかし、筆者の木造アパートではちょっとためらわれるぐらいの音は出るので、室内用のオーディオシステムとして申し分ない。ただ、2面スピーカーは、3m以上距離をとると、正面では音が聞きづらくなってしまうので、ニアフィールド専用と考えたほうがいいだろう。 折角なので、標準モノ端子にギターを接続してみる。普通にギターアンプとして使え、モノラル出力なのだが、2面にスピーカーがついているので、なんとなくステレオ的に感じられるのが面白い。なお、スピーカーユニットとして利用する際にも言えることだが、床置きだと、今ひとつ音が聞こえずらいので、できれば台や、三脚を用意したほうがいいだろう。 ちなみに、標準モノとAUXの同時入力も可能となっている。CDに合わせて、ギターなどの練習ができるので、楽器の練習にはかなり便利。練習用アンプとしてとてもよくできている。 また、ライン出力(標準モノ)も装備しており、2台のAA5を接続して2W×4ch(4W×2ch)のスピーカーシステムも構築可能だ。ただし、ヘッドフォン出力としては利用できない。 ■ 実際に持ち運んでみる また、もうひとつの大きな特徴として、可搬性を考慮して、単3電池駆動が可能という点が上げられる。カタログ値では単3乾電池4本で連続60時間の利用が可能とのこと。約10時間程度利用したが、特に問題なく利用できている。
ただ、実際に屋外で利用すると出力的に結構厳しいものがある。比較的静かな公園などでも、ややパワー不足。ストリートミュージシャンの弾き語りなどの用途では、場所を選べばそれなりに使えるかもしれないが、基本的に室内で使ったほうが本機の実力を発揮できると思う。 屋外での利用より、現実的に便利と感じだのは、乾電池駆動のため部屋中どこでも音楽を聞けるということ。たとえば、枕元に設置し、布団に寝転がりながら音楽を聴くこともできる。きちんとしたオーディオシステムだと、きちんとしたリスニングポイントで聞きたくなるのものだが、AA5は頭の正面あたりに適当に設置するだけでOKという気軽さがある。BGM的に音楽を聴きたいときなど、ルーズかつ適当に音楽が聴けるというのは結構重要だ。また、オーディオ機器の無い部屋へ、ポータブルプレーヤーとAA5を持ち込んで音楽を聴くといった利用方法も考えられる。 ■ 基本は楽器用だがモノとしての満足度は高い 当初はちょっと変わったアクティブスピーカーという感じで試用して見たAA5だが、基本的には、ポータブルスピーカーとしても使える楽器用アンプといった位置づけの製品だ。そうした意味では、同時入力対応など楽器練習用機器として、とてもうまくまとめられていると思う。 アクティブスピーカーとしては、AUX入力でボリューム操作ができないといった不満はあるが、設計思想が楽器用、特にサイレントギター用のアンプと考えれば納得できる。2面ステレオなどやや扱いが難しい点もあるが、それより、「どこでも使える」というのは大きな魅力。特にHDDオーディオプレーヤーのユーザーには、外部スピーカーとしてかなり訴えかけるものがある。 価格も標準価格で12,800円と安く、音質も好感が持てる。1万円強のアクティブスピーカーは各メーカーから発売されているが、「ちょっと変わったモノ」が好きな人や、ギターや電子楽器などを所有しているが、カジュアルに利用したいといった人にはかなりいい製品に仕上がっている。そうしたユーザーには、お勧めできるし、個人的には、このサイコロ形状と、2面スピーカーには結構なインパクトを受けた。「モノとしての魅力」も強く感じさせる製品だ。 □ヤマハのホームページ (2003年4月11日)
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