■ キャプチャカードの最近
2000年の後半ぐらいから昨年末ぐらいまでは、パソコン関連のトレンドといって真っ先にあげられたのがテレビ録画。 特にテレビキャプチャカードは2001年の夏に、市場の牽引役ともいえるカノープスの「MTV1000」が登場以来、市場の拡大は目覚しく、弊誌のアクセスランキングでも大手メーカーがキャプチャカードが発表するとほぼ間違いなく上位にランクインしていた。 その勢いがやや鈍ったと感じたのは同じくカノープスの最高位機種「MTV3000W」の発表時。アクセスランキングでは4位に食い込んだが、従来モデルなどと比較するとやや物足りず、「この市場もやや踊り場かな? 」と感じさせた。 また、パソコンのスペック向上や、DivXやWindows MediaなどMPEG以外のマルチコーデック対応が容易ということもあり、低価格なソフトウェアエンコードタイプのキャプチャカードに人気が集まっているというのも最近の傾向。一方で、パソコンをビデオサーバーとして活用するホームサーバー用途に各メーカーが力を入れだしている。
ソニーが昨秋よりバイオシリーズに搭載している「VAIO Media」や、NECのSmartVisionシリーズなど、各パソコンメーカーや周辺機器メーカーが、ホームサーバー機能を有したソフトを開発。単体ソフトでは、カノープスの「HomeEdge」もリリースされている。こうしたホームサーバー機能がテレビ録画の次のトレンドといえそうだ。HomeEdgeもまだ価格的にはやや高め(16,800円)で、これだけのためにバイオなどメーカー製PCをそろえるのもちょっと厳しい。 そんな矢先にノバックから興味深い製品「PrimeTV 7133 Pro」がリリースされた。従来から販売していた「PrimeTV 7133」のハードウェアをそのままに、新開発のソフト「PrimePVR」をバンドル。 PrimePVRには、サーバーマシンに蓄積したビデオデータを、他のマシンから視聴できる機能を搭載。しかもエンコーダには、カスタムテクノロジー製の「CINEMA CRAFT ENCODER」エンジンを搭載しているということで画質にも期待がかかる。しかも1万円強と低価格。ということで秋葉原にて、11,800円(税抜き)で購入した。 ■ カード自体に目新しさはない
キャプチャカード自体は昨年11月より販売している「PrimeTV 7133」と同じもので、Philips製の9bit A/Dコンバータ・音声多重デコーダ統合チップ「SAA7133」を搭載。日本仕様のTVチューナの採用により、画質の安定化を図っているという。 入力端子は、S映像×1、コンポジット×1、ステレオライン(ミニジャック)×1、リモコン端子×1。なお、リモコン端子がセンターからややずれた位置にあり、ケースによってはシャーシ部にふさがれて使えないことがあるのが、ちょっと気になる。
■ 新ソフト「PrimePVR」の実力は?
ウリは新開発のソフト「PrimePVR」で、サーバーPC上で録画したデータを、クライアントPCで専用ソフトを用いて視聴できるほか、予約や追っかけ再生などが行なえるというもの。しかし、インストールしてはみたもののサーバー上のファイルの共有がうまくできなかった。 とりあえずデフォルト設定のままサーバーをインストールすると[ C:\Program Files\NOVAC\PrimePVR ]にexeファイルや、[PPVR_Info]と[PPVR_Data]という2つのフォルダが生成される。この、[PPVR_Info]と[PPVR_Data]が自動的に[PPVR_Info]、[PPVR_Data0]という名前で共有される。クライアントソフト側でこの[PPVR_Info]のフォルダをサーバーの位置として指定すればいいはずなのだが[サーバーが見つかりません]というメッセージが……。 クライアント/サーバーともに、Windows XP Professionalで、おそらくWindowsの共有設定でうまくいっていない箇所があると推測されるが、本当のところは良くわからない。とりあえず上記フォルダの1つ上の階層[PrimePVR]を共有するとサーバーの指定は行なえた。 これでクライアント側でのソフトの起動が行なえるようになったのだが、テレビ視聴などの操作は行なえず、ソフトの終了も不能。クライアントをインストールするとPrimePVRのほか、PrimePVRスケジューラというソフトがインストールされるので、こちらを起動するとiEPGを利用した録画予約が行なえ、サーバー側で予約設定ができた。しかし、クライアントのPrimePVRからのコントロールは行なえず、サーバー側のファイルを視聴することはできなかった。 何度もインストールし直し、マシンも変更してみたが、症状は変わらなかった。ノバックのサポートセンターに電話しても解決できなかったので、目当ての機能なだけに残念だが、今回はこの機能の検証は見送った。
とりあえず、サーバーマシンで操作してみると、チャンネルの切り替えに2秒強かかるなど、ややもっさりとした動作。サーバーマシンはPentium 4 1.6GHzを搭載しているので、それなりのスペックだとは思うが、高画質モードの推奨スペックがPentium 4 2.0GHzなのでまあこんなものだろうか。 インターフェイスはシンプルで、テレビ/予約/ビデオ一覧/番組表/設定/スタンバイ/終了という7つのタブとビデオコントローラを模した操作部を備えており、初めて使うユーザーでも戸惑うことは無いだろう。 TVチューナは地上波(VHF/UHF)1~62ch、CATV C13~C63chに対応。録画モードは録画ボタン下のボタンで切り替えられ、「高画質」、「標準」、「長時間」の3モードが選択できる。上位2モードはMPEG-2記録で、高画質は720×480ドット/6Mbps、標準は640×240ドット/3Mbps。長時間はMPEG-1記録で352×240ドット/1.15Mbpsとなっている。
画質はビットレートなどから考えればまずまずといった印象。3次元Y/C分離や、GRTなどの高画質化回路は搭載していないが、受信環境がよければ特に問題はなさそうだ。 ただし、上記3モード以外の画質設定は行なえない。CCEのエンコーダの詳細設定を目当てに購入しようとすると、ちょっと肩透かしを食ってしまうだろう。もう少し細かい設定ができたらよかったと思うが、価格を考えればしかたがないか。 再生は追っかけ再生にも対応し、クライアントでも同様に追っかけ再生ができるはずなのだが、前述の理由によりテストできなかった。 録画予約はiEPGに対応。デフォルトではSo-netの「TV王国」が利用できる。予約自体はシンプルでiEPGサイトで、録画したい番組を選択し、画質モードなどを決定するだけ。 なお、「PrimeTV 7133Pro」には、「PrimePVR」のほか、従来版で同梱されていた「honestech TVR」もバンドルされている。PrimePVRの後、honestech TVRをインストールするとiEPG設定がhonestech TVRに引き継がれてしまう。両ソフトの同時利用はできず、メインで利用するソフトを後にインストールする必要がある。また、リモコンも付属するのだが、これはhonestech TVR専用となっており、PrimePVRでは利用できない。このあたりはの制約の多さからも、PrimePVRがまだ発展途上のアプリケーションと感じるところ。 もう一点気になったのはハイバネーション(休止状態)からの予約録画に対応していないこと。カノープスのMTVシリーズなどではサポートされている機能だけに今後の対応を期待したい。
また、「PrimePVR」は携帯電話を利用した録画予約サービス「iCommand」に対応している。これはiEPGサイト「テレビ王国」でユーザー登録と、iCommandサービス登録をすれば、携帯電話やPCから、録画予約設定が行なえるというもの。サーバー側の設定は、登録時のIDとパスワードを入力して、テレビ王国のサーバーにチェックに行く時間を10分/30分/60分/2時間/6時間/12時間/1日から選択、録画画質を設定するだけで完了する。 特にPCではブラウザさえ使えれば、外部から簡単に予約が行なえるので、出先からの録画にはかなり便利な機能といえそうだ。 ■ 従来バージョンの録画ソフトhonestech TVRもバンドル
録画ソフトは、前述のとおりPrimePVRのほか「honestech TVR」も同梱されている。キャプチャ設定などはこちらのほうが詳細に行なえるほか、DivXやHuffyuvといったコーデックを利用したAVIキャプチャにも対応する。 実際に使ってみると、こちらのほうが動作レスポンスが早く、リモコン操作にも対応するなどメリットは大きい。高ビットレート設定などマニュアル設定も行なえるので、PrimePVRの機能が必要なければ、こちらの方がいいかもしれない。
また、動画編集ソフト「honestech MPEG Editor 5.0 SE」も同梱されている。こちらは、PrimePVRで録画したデータを、PrimePVRのビデオ管理画面でロックを行ない、honestech MPEG Editorにドラッグアンドドロップするだけで編集可能となる。CMカットなどの用途には非常に便利なソフトウェアだ。
■ 価格は安いけれど……
PrimePVRでの録画画質は、高画質モードはネムさを感じるもののまずまずの高画質。また、標準にするとブロックノイズがやや目立つ。 なお、PrimePVRは要求スペックが高く、高画質モードでキャプチャする場合はPentium 4 2.0GHzが必須となる。自宅のAthlon XP 1700+機では大きなコマ落ちを感じなかったのだが、編集部のPentium 4 1.60A GHzマシンではフレーム落ちが発生しがちだった。 今回はネットワーク機能がうまく使えなかったということもあるが、期待していたPrimePVRの使い勝手については、不満の残るところ。レスポンスの鈍さも含め、まだまだhonestech TVRのほうが使い勝手が良いと感じることが多かった。
ただ、実際にPrimePVRがフル機能を発揮するならば、約12,000円という価格の安さは魅力的。きちんと利用できれば「ホームサーバー機能付きキャプチャカード」の入門機として、かなりいい線をいっていると思える(だから購入したのだが)だけに残念だ。このあたり、今後さらなる熟成を期待したい。 □ノバックのホームページ (2003年5月2日)
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