■ DivXNetworks初のエンコーダソフト 5月21日に発表された同社初となるエンコーダソフト「Dr.DivX」。簡単な操作でさまざまなメディアファイルからDivXエンコードが行なえるのが特徴で、ダウンロード販売価格は49.99ドル。 今までDivXNetworksでは、コーデックの公開・販売は行なっていたが、エンコードソフトは提供していなかった。そのため、DivXでエンコードするには、「Premiere」や「TMPGEnc」など動画編集ソフトをフロントエンドとして別途用意する必要があり、初級者には結構敷居が高かった。 しかし、このDr.DivXは「3ステップでDivXコンバートが可能」ということをウリにしており、このソフトによりぐっと敷居は下がるかも。また、MPEG-1/MPEG-2/MPEG-4/AVI/WMV/AVS形式のファイルを直接DivXファイルにエンコードできるほか、DVカメラや、アナログビデオキャプチャカードから、DivX形式で録画することも可能となっている。 これなら使えそうということで、とりあえず使ってみた。DivX.comにて体験版が公開されており、15日間フル機能を試すことができる。対応OSはWindows 98 SE/Me/2000/XPで、Pentium III 1GHz以上での利用が推奨されている。 ■ DivXトランスコードのほか、DV・アナログキャプチャも可能
Dr.Divxは、エンコード用フロントエンドの「Dr.DivX Encoding Application」のほか、プロファイルエディタ「Dr.DivX Profile Editor」、DivXファイル解析ツール、「Dr.DivX EKG」、コーデック「DivX Pro Codec」、ユーザーマニュアルなどから構成される。 インストールして、起動してみると、VIDEO FILE/DIGITAL VIDEO/LIVE CAPUTRE/CUSTOM PLUGINの4つの操作ウィザードの選択画面が現れる。アイコンを見ればわかるとおり、VIDEO FILESが、PC上のMPEGなどのビデオファイルをDivX化、DIGITAL VIDEOがDVのDivX形式でのキャプチャ、LIVE CAPTUREはアナログキャプチャとなっている。 ・ビデオファイルのエンコード 早速、VIDEO FILEをクリックすると、ビデオ/オーディオファイルの選択画面の後、HIGH DEF、HOMETHEATER、PORTABLE、HANDHELDの4種類のプロファイルの選択画面が現れる。
それぞれプロファイルにHigh/Medium/Lowの3モードが用意されており、計12種類の設定が行なえる。また、プロファイルを選択した後、容量を指定してビットレートを調節することも可能だ。たとえば、HOMETHEATERプロファイル/Highモードでファイルサイズ46MBと試算されたファイルを、40MB以内にしたいといったときに、40MBと指定すれば、ビットレートを自動的に落として40MBに収まるように設定される。 プロファイルを設定した後は、アウトプット先を指定するだけで自動的にエンコードが開始される。ということで、謳い文句どおりに3ステップでDivXエンコードが行なえる。
Dr.DivXではインターレース/プログレッシブや3:2プルダウンなどソースを自動判別し、最適なエンコード形式を自動的に設定してくれる。基本プロファイル選択時のエンコード方式は2Passとなる。ソフトウェアエンコードなので、エンコード時間はマシンスペック次第だが、Pentium 4 1.6GHzのテストマシンでHOMETHEATER/Mediumで6分9秒のMPEG-2ファイルをコンバートしたところ、約16分20秒で完了した。 なお、プロファイルに沿った設定のほか、3ステップ目のビデオ出力先設定「Encode Video」の画面で「Modify Settings」をクリックすると、「Basic Settings」設定画面が表示され、アスペクト比や画面サイズのリサイズ、オーディオビットレートのマニュアル設定などが可能。さらに「Advanced Settings」で、より詳細な設定が可能で、プログレッシブ/インターレースや2Pass/1Pass/クオリティベースの1Passエンコードなどの設定などが行なえる。 また、Dr.DivX Profile Editorで好みのプロファイルを作成することもでき、個人設定をデフォルトプロファイルとして登録することも可能。ビットレートはビデオが1~8,000kbps、オーディオはMP3で32~192kbpsまで選択できる。
DivX 5.03から導入されて、いろいろと議論を呼んでいるプロファイル方式だが、改めてこういうソフトになるとわかりやすくていいなという印象。こうした用途にあわせて、好みで選べる設定があるのは心強い。
また、マルチパスエンコードしたDivXファイルを解析するツール「Dr.DivX EKG」も搭載。フレームごとのMotion Complexity、Texture Complexity、ビットレートなどが時間軸に沿って折れ線グラフで表示されるほか、Key/B/Pフレームはそれぞれ赤色、水色、青色と色分けして識別できる。データの任意フレームごとの編集も可能となっている。 「Encode Video」画面で、エンコードボタンを押す前に、「Defer job for Batch Encode」にチェックしておくことで、複数ファイルをそれぞれのプロファイルで一気にエンコードできるバッチエンコードにも対応する。別フォーマットのファイルを一気にコンバートしたいときなどには非常に便利な機能だ。
・アナログキャプチャ 「LIVE CAPTURE」では、アナログ入力を介したキャプチャにも対応している。MTV1000シリーズを搭載したテストマシンでLiVE CAPUTREを選択し、キャプチャデバイスを選ぶと、アナログキャプチャ設定画面が現れる。 MTV1000ではチューナ入力とコンポジット入力、S映像入力が選択できるのだが、チューナの設定の仕方が良くわからず、テレビのリアルタイムキャプチャはできなかった。 操作自体は、キャプチャデバイスを選択した後、キャプチャ時間を設定。プロファイルを選択して出力先を指定すれば、エンコードが開始される。リアルタイム記録なので2Passなどと比べると画質的に不利だが、手持ちのビデオのDivX化などの用途では十分使える。 また、USBカメラでも同様に時間を指定してキャプチャすることが可能だ。試しにCreativeのWebCamを接続してみたが、簡単に利用できた。設定は通常のアナログキャプチャと同様で、解像度とフレームレートを設定後に、記録時間を指定しエンコードする。
・DVキャプチャ DVからのキャプチャも可能。基本操作は、DVカメラを接続し、デバイスを選択。あとはイン点/アウト点を設定し、コントラストや明るさの調整を行なうだけで、キャプチャが行なえる。リアルタイムエンコードのため、2Passのビデオエンコードよりは画質的には劣るし、最適なプロファイルを作成するのがやや難しいが、さまざまな人の要求に応えるという意味ではなかなかうれしいサポートといえる。
■ 使いやすさは文句なし。日本語版の発売が待たれる ということで、一通りの機能を使ってみた印象では、とにかく「全てのムービーファイルをDivXへ」ということに主眼を置いた製品と感じた。あらゆるフォーマットのビデオデータをDivX圧縮して保存しておきたいという人にはうってつけだろう。 DivX Networksとしては、Windows Media 9などほかのフォーマットとの生存競争の中で、こういったユーティリティのリリースにより、デファクトスタンダード化を推し進めていくという方針なのだろう。初級者ならずとも、例えば、もともと録画データをDivXへコンバートしまくっているユーザーにも、バッチ機能の提供などで目配せが効いている。 気になるのは価格と、現状英語版のみでの提供となっていること。49.99ドルという価格は、19.99ドルのDivX ProコーデックのバンドルやEKGなどDivXユーザーに魅力的なツールがあることを考えれば、高くないと思う。しかし、英語のみでのオンライン購入に限られるというのは、抵抗がある人もいるだろう。せっかくも良質なフロントエンドを提供し、より初級者でも扱いやすくなっただけに、この辺りの敷居の高さはまだ否めない。 もっとも同社では、今後Dr.DivXの小売販売を世界的に展開するほか、ハードウェアへのバンドルも行なう方針を明らかにしているので、同社のライセンスを受けた会社が日本での販売を行なうというケースが考えられる。また、同様のエンジンを詰んだ日本企画製品というのも出てくるかもしれない。 今は「高機能DivXコンバートユーティリティ」という感じだが、日本のメーカーによるカスタマイズが進めばiEPGによる録画予約対応なども可能になるかもしれない。本当の意味で、敷居の高さが払拭されるのはそうしたときだろう。とりあえず15日間体験版を使用して気に入ればもちろん買えばいいし、不安を感じるならそうしたソフトを待つというのもひとつの手だとは思う。 □DivXのホームページ(英文) (2003年5月30日)
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