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リモコンでPCのオーディオファイルを操作
新バーチャルサラウンド対応USBオーディオ
オンキヨー 「MA-700U」/「MS-700」
発売日:7月中旬
標準価格:39,800円(MA-700U)
       10,000円(MS-700)


■ 一風変わったUSBオーディオレシーバが登場

 先週、オンキヨーから一風変わったUSBオーディオレシーバ「MA-700U」が発表された。MA-700Uは、DTSやドルビーデジタルなどの5.1chサラウンドフォーマットをバーチャルサランドで再生できるオーディオレシーバで、セットでの使用を想定した2ウェイスピーカー「MS-700」も用意されている。価格は「MA-700U」が39,800円、「MS-700」が10,000円。

 MA-700Uは2chのオーディオアンプだが、独自のバーチャルサラウンド機能「Theater-Dimensional」を搭載。また、「MS-700」はホーン型ツィータを搭載するなどPC周辺機器としてはかなり本格的。リモコンでパソコン上のオーディオファイルの操作も可能で、パソコン周辺機器ならではの機能も大幅強化されているようだ。ということで、今回はオンキヨーから「MA-700U」、「MS-700」をお借りしてレポートをお送りする。


■ 独自バーチャルサラウンド搭載。ホーンツィータ採用のスピーカー

MA-700U

 「MA-700U」は15W×2chのアンプを内蔵したオーディオレシーバ。特徴的なのは、Dolby LaboratoriesとDTSから認可を受けたという独自のバーチャルサラウンド機能「Theater-Dimensional」を搭載していること。本体の液晶パネルでTheather-DimensionalのON/OFFを確認できる。

 入力端子は、アナログを2系統、光デジタルを3系統、モノラルマイクを1系統用意。出力端子は、プッシュターミナルのスピーカー端子、サブウーファ出力、アナログ、光デジタル、ヘッドフォンを各1系統装備する。また、USB端子、RI端子も各1系統備える。

 外形寸法は、110×256×245mm(幅×奥行き×高さ)、重量は3.5kg。縦置き型で、パソコンやディスプレイ脇などに設置するにはちょうどいいデザイン。

 操作は、本体のボタンと付属のリモコンのほか、USB接続したパソコンの専用ソフト「CarryOn Master」でパソコンのオーディオファイルの再生などが行なえる。


背面 リモコン

MS-700

 「MS-700」は、新開発のエクスポネンシャル型ホーンツイータを採用した2ウェイスピーカー。中央部のホーンツィータを挟み込むように、8cm口径の「A-OMFダイヤフラム」ウーファを2個搭載している。ツィータは90kHzまでの高域再生に対応。

 エンクロージャはMDFを採用。バスレフ型だが、背面のダクト部をスリット型にすることで、ダクトを通る空気に適度な粘性を持たせ、弾みのある心地良い低音再生を実現したという。外形寸法は96×178×245mm(幅×奥行き×高さ)、重量は1本1.8kgと、MA-700Uにマッチした外観、サイズを実現している。


MS-700前面/背面 ホーンツィータを採用 スリット状のダクトを採用



■音質は良好。Theater-Dimensionalの実力は?

 まずは、ビクターのDVDプレーヤー「XV-D721」と光デジタル接続し、CDを視聴。解像感やスピード感はさほど高くないものの、高域までしっかりと出て、広がりのある艶やかな音質。PC用オーディオデバイスとしてはちょっと異色の雰囲気を持っており、気持ちいいサウンドだ。

 DVD「マトリックス」を視聴してみてると、LFEの低音域はやや物足りないが、印象はCDの時と変わらず、安定した音質を楽しむことができる。今回はテストできなかったが、別売のサブウーファ「SW-10A」も8月中旬に発売される予定なので、DVD視聴を楽しみたい人は、こちらを購入するのも手だろう。

Theather-Dimensional/STEREOボタンで切り替え可能

 DVD視聴で最も気になるのが、新たに開発されたサラウンド機能「Theater-Dimensional」(以下TD)。5.1chソースを2chで擬似的にマルチチャンネル再生する技術で、DTSやドルビーデジタルソースのバーチャルサラウンド化が可能となっている。

 本体のTheather-Dimensional/STEREOボタン、もしくはリモコンのSTEREOボタン、Theather-Dimensionalボタンで、「Theater-Dimensional」モード、「STEREO」モードの切り替えが行なえる。TDをONにすると本体の液晶パネルにインジケータが点灯する。

 TDでは、Wide/Normal/Narrowの3つのリスニングアングルが設定可能。視聴者とスピーカーの距離にあわせてWideは40度、Normalが30度、Narrowが20度となっており、視聴しながら簡単に最適なアングルを選択できる。なお、ヘッドホン使用時には、TDを利用することはできない。

 TDをONにしてDVDを視聴してみると明らかに音場感が向上。当初はサラウンド感の向上が感じられるものの、後方チャンネルなどが、明確に認識できるわけではなかった。しかし、少し視聴していると後方からも音を感じることができる。アクションシーンなどで、銃弾が通過する移動感もきちんと感じられ、なかなか面白い。

 正直、ドルビーバーチャルスピーカー(DVS)などの、他のバーチャルサラウンドと比較して具体的な効果の差はあまりよくわからない。しかし、サラウンド感を感じるまで慣れるのにかかる時間も、あまりかからず好印象。大きな音質劣化も感じないし、ドルビーデジタルだけでなく、DTSソースでも利用できるというのはポイントが高い。

 また、夜間など、大きな音が出せない場合に、ダイナミックレンジを狭め、小さな音量でも映画のセリフなどを聞きやすくする「レイトナイト」機能を搭載する。同機能はドルビーデジタルソース再生時にのみ適用可能で、リモコンの「LATE NIGHT」ボタンで適用できる。


■ 強力なPCユーティリティ「CarryOn Master」

 Theather-Dimensionalに加え、もうひとつの大きな特徴といえるのが、USB接続によるPCとの親和性。付属のオーディオライブラリソフト「CarryOn Master ver.3.70」では、従来バージョンでサポートしていたWAVEやMP3、WMA、MIDIファイルに加え、新たにmp3PRO、Ogg Vorbisなどのメディアファイルのエンコード/デコードが行なえる。

CDパネル

 インターフェイスは[DISK]、[CD]、[LINE]、[DVD]の4つのパネルが用意されている。[CD]パネルではCDの再生が可能で、再生するCDにイコライザ設定が行なえる。また、CDからのリッピングが可能で、MP3やWAVE、WMAのほか、mp3PROやOgg Voribisへのエンコードに対応。WMA9のLosslessとVoiceコーデックもサポートしている。また、CDDBを利用した曲名/アーティスト名の自動取得もできる。設定は簡単で、CDプレーヤー風のユーザーインターフェイスもわかりやすい。


MP3、WMA、WAVE、OggVoribisでのエンコードに対応 CDのリッピング/エンコードが可能

DISKパネル

 エンコードしたファイルはライブラリに登録され、[DISKモード]で、蓄積したオーディオファイルが管理できる。アルバム単位やアーティスト単位で振り分けられ、ランダム再生やリピート再生やイコライザ設定などが行なえる。

 また、オーディオデータのCD-R/RWへの書き込みも可能。対応するデータはMP3とWAVEでWMAなどはサポートしていない。

LINEパネル

 LINEパネルでは、ライン入力を録音したり、MA-700UのFM/AMラジオの録音が行なえる。ラジオのタイマー録音もできる。録音は入力を選択して、RECORDINGボタンを押すとレベル設定が開始され、後は再度録音ボタンを押すだけだ。シンクロ機能も装備しており、レベル設定時に[SYNCHRO]ボタンを押してインジケータを点灯させておくと、入力ソースの再生に同期して録音が開始される。

 録音したデータは、波形で表示される。ここで、アルバムタイトルやアーティスト名、ラジオなどの場合は番組名などを入力できるほか、ファイルの分割や削除などが行なえる。また、フェードインや、フェードアウトなどの曲間設定や、ファイルの音量を平均化するノーマライズ機能、ノイズリダクション機能なども搭載している。録音形式はWAVEだがWMAなどへのコンバートも可能となっている。

 [DVD]パネルではWinDVDが起動し、パソコン上でDVDの視聴が可能。付属のWinDVDは、ドルビーヘッドフォンに対応している。


専用のインターフェイスを利用し、リモコンでのコントロールが可能

 これらのパソコン連携機能のうち、再生系の操作がリモコンで行なえるというのも大きな特徴。パソコンをオーディオジュークボックス代わりに使えるわけで、特に圧縮オーディオを多く溜め込んでいるユーザーには魅力的だ。

 パソコン起動時には専用のインターフェイスで、再生している曲情報がPC画面にオーバーレイ表示され、自分が再生している曲が確認できる。ただし、表示できるのは曲名/アーティスト名だけで、全曲表示やアルバム表示などは選択できない。また、DISKモードのアルバム移動などもできない。基本的にパネルの変更と、曲(チャプタ)送り/戻し、TDのON/OFFなどしかできないのがやや残念なところ。


マクロ機能は自由に設定できる

 インターフェイスの表示位置は上と下、サイズは大、中、小から選択できる。 また、リモコンにはマクロボタンを装備。M1~M4の4つのボタンが用意されており、初期設定では、[M1]でCarryOn Masterの終了、[M2]でスクリーンセーバーの起動、[M3]で、PCをスタンバイ状態に移行、[M4]でMDへの録音(同社製MDデッキを接続している場合)が行なえる。タスクトレイ上の「CarryON Launcher」上で、マクロ登録が行なえ、各ボタンへの割り当てが可能となっている。

 スタンバイからの復帰がリモコンで行なえないのがやや悩ましいところだが、使ってみるとかなり便利。スクリーンセーバーを立ち上げながら専用UIから、オーディオ再生操作などが行なえる。

 なお、「CarryOn Masterの、DVD再生モジュールを内蔵しないバージョン(CarryOn Music Ver3.50)は、7月中旬にリモコン、リモコン受光部をセットにしたパッケージで発売される。価格は6,800円。また、Ver2.70を対象にしたアップグレードプログラムも3,400円で発売予定。


■ とにかくPCオーディオを重視するユーザーへ

 一通りの機能を使ってみて、とにかくパソコン周りのオーディオ機能強化をするため、良く考え抜いて機能を加えていった製品と感じた。パソコンをホームシアターの中心にという方向性と、オーディオサーバーとして活用するという2つのアプローチをうまく纏め上げていると思うが、ホームシアターとして利用する際にはやはり5.1chリアル対応も待たれるところ。個人的にはオーディオジュークボックスとしての洗練を期待したい。

 また、従来のパソコン用スピーカーと傾向の異なる音作りも本機のスタイルによくマッチしていると感じる。ちょっとした造りの品質感などが、使ってみると結構新鮮。

 購入を検討するとなると、価格が気になるところだが、本体39,800円とスピーカー1万円とあわせて、5万円弱、実売でもおそらく約4万円程度となるだろう。単に「PCのオーディオを強化しよう」という用途にはやや高額に感じる。しかし、PCスピーカーの音質向上に加え、CarryOn Masterで実現されるパソコンとの連携機能のような付加価値を考えれば、面白い選択肢といえそうだ。とにかくPCにオーディオ機能を統合したいと考えているユーザーにとってはかなり魅力的な製品に仕上がっている。

□オンキヨーのホームページ
http://www.onkyo.co.jp/
□ニュースリリース
http://www2.onkyo.co.jp/what/news.nsf/view/avsystem700?OpenDocument
□関連記事
【6月3日】オンキヨー、DVDサラウンドを2chで再生するUSBレシーバ
-単体でも使用可能、組み合わせを想定したスピーカーなども発売
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030603/onkyo.htm

(2003年6月13日)

[usuda@impress.co.jp]


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