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液晶リモコンで使ってみた
60GB HDDオーディオプレーヤー
クリエイティブメディア 「NOMAD Jukebox Zen 60GB」
発売日:6月下旬発売
標準価格:オープンプライス
店頭予想価格:49,800円(Zen)
          6,980円(リモコン)


■ 液晶リモコン付きHDDオーディオプレーヤーを探して

 初代iPodユーザーの筆者としては、そろそろ新しいオーディオプレーヤーを新調したい頃。今年はHDDオーディオプレーヤーの市場拡大期とにらんでおり、各社から続々新製品が発売されると妄想していたのだけれど、さして盛り上がりも無く、どうやらiPodの一人勝ち状態は続いているようだ。

 個人的に第3世代iPodの15GBモデルはかなり有力な選択肢。もし「今」買うとしたらこいつなのだが、一点だけ気に入らない点が……。それは液晶リモコンが無いということ。iPod付属のリモコンはやや力不足。「これだけ小さければ本体でコントロールできる」という人もいるのだが、iPodを電車内で出したりするのは「デバイス自慢」しているみたいで恥ずかしい。iPodユーザーの多くはそうやって使っているし、実際に自分もその中の一人。しかし、次のモデルではもうこれはイヤだな……などと考えているわけで。

NOMAD Jukebox Zen 60GB

 しかし、いまさら128MBとか256MBのシリコンオーディオプレーヤーには食指が動きづらいし……。液晶リモコン対応で1.8インチHDD対応のiRiverの「iHP-100」に期待大だったのだが、4月発売予定が大幅に遅れている。ということで、iPod買い替え計画は頓挫中。

 と考えている間に、Media2GOやら、Windows Mobileやら、なんだか、動画再生に対応した複合型のHDDプレーヤーの声も聞かれはじめた。でも私がほしいのは単機能のオーディオプレーヤーですよ。

 ということで、ふと思い出したのがクリエイティブの「Nomad Jukebox Zen」。既に初代機の発売時に小寺氏によるレビューも掲載しているが、その後、液晶リモコンが発売された。「個人的には条件満たしているかも?」 ということで最大容量の60GBモデルの発売に合わせて、液晶リモコンと一緒にクリエイティブメディアから借りてみた。

 実売価格はZen 60GBが約49,800円、リモコンが6,980円なので、トータルで57,000円弱といったところ。iPod 30GB(59,800円)に比べて、HDD容量が倍で価格はやや安い程度。


■ リモコンは小型MP3プレーヤー級の大きさ

 早速パッケージを開封。本体は従来モデルと同様のアルミ製のボディを採用している。外形寸法は75.9×24.5×112.6mm、重量は約268g(電池含む)。iPodと比べるとやや大きめだが、2.5インチHDDを採用していることを考えれば、この大きさは納得いくところ。アルミの質感もあり、モノとしての魅力もなかなか高いのだが、サイドのプロテクタのグリーンのプラスチックが、やや安っぽいような印象を受ける。

本体右側面。ダイヤルやメニュー、停止ボタンなどを装備 上部にUSB 2.0端子やヘッドフォン端子を備える 左側面。電源ボタンとボリュームに加え、再生キューボタンを装備。曲情報の詳細画面とリスト画面の切り替えが行なえる

リモコン

 今回の本題ともいえるリモコンは、直販と一部ショップのみで購入可能で、直販価格は6,980円。

 第一印象は「デカイ……」。外形寸法は82.5×19.9×27.8mm(幅×奥行き×高さ)、重量は28.6gで、単4電池駆動の単体シリコンオーディオプレーヤー並の大きさ。シャツの胸ポケットにクリップで留めると、ポケットが「ヘナ」っと下を向いてしまう。

 このリモコンにより、FMラジオ機能や、ボイスレコーディング機能が追加される。ということはつまり、FMチューナやマイクを内蔵しているということで、そのため本体サイズがやや大きめになってしまっているのだ。液晶ディスプレイは、80×12ドットのELバックライト付きとやや表示スペースが狭く、ディレクトリ表示などは行なえない。


リモコン。液晶は80×12ドット。丸いコントローラボタンで再生や停止などの基本操作を行なう 右側面にボリュームボタンを装備 左側面にメニュー、EAX、ロックボタンを備える
iRiverのシリコンオーディオプレーヤー「iFP-190T」よりは、やや小さい


■ 本体の操作性は良好だが、リモコンだけの操作にはやや難あり

Creative Play Center

 パソコンとの接続はUSB 2.0で、付属の「Creative Play Center」で、CDからのリッピングやファイルのインポート/エクスポートが行なえる。対応ファイル形式はMP3とWMA、WAV。

 Zenを接続すると自動的に認識され、「Audio Sync」ボタンでファイルの同期が行なえる。プレイリストの作成も簡単で、操作もシンプルなので使い勝手はなかなかいい。3.35GBのファイルを転送した際の転送時間は約9分。

 本体には、本体右側面にメニュー操作用ダイヤルや、再生/停止ボタン、曲送りボタンなどが用意されており、左側面には電源ボタンやボリュームボタンを備えている。メインメニューのライブラリから、[プレイリスト]、[アルバム]、[アーティスト]、[ジャンル]などの分類ごとに分けられており、選択するだけで、再生が始まる。

本体のメインメニュー

 ちょっとわかりにくい点もあるが、慣れてしまえば本体液晶を見ながら比較的容易に操作できる。iPodに比べると若干曲送りなどのレスポンスが遅いが、そんなに気になる程ではない。

 ということで、いよいよ本題のリモコン操作を行なってみる。音楽再生系の操作は、再生/一時停止と、曲送り/飛ばし、巻き戻し/早送りのほか、ボリュームのアップダウン、3DサラウンドのEAXのON/OFFと本体電源のON/OFF。モードボタンでモード切替を行なうことで、FMチューナ機能や、ボイスレコーダ機能を利用できる。

 動作速度は、本体操作時と同じであまり速くないが、さほどストレスを感じない程度にきびきび動いてくれる。ただ、個人的に残念だったのは、リモコンからアルバムやアーティストをまたいでの再生ができないこと。つまり、本体で選択したアルバムから、次のアルバムに移動したり、あるいは、アルバム再生からプレイリスト再生に切り替えたりといったことがリモコン単体ではできないのだ。

 リモコンでのモード変換は、専用の[MODE]ボタンを利用し、[ミュージック]、[ボイス録音]、[FMラジオ]の3つのモードが選択できる。

 リモコンに搭載したFMチューナ機能は、リモコンもしくは本体でモード変更することで利用可能となる。放送局のオートスキャンは、リモコンでは行なえず、Zen本体を利用する。FMモードにした後、本体側で[オートスキャン]を実行すると、各プリセットチャンネルに登録が行なわれる。局の変更はリモコンの丸型のコントロールボタンの上下で行なえる。

 また、ボイス録音モードでは、最高10時間(1ファイル)の録音が可能。記録形式はモノラル/16kHz/64kbpsのADPCM。FMラジオの録音も可能で、ステレオ/22kHz/176kbpsのADPCM形式で記録できる。録音データはCreative Play Center経由でPCに転送可能だ。

FMラジオモード 録音したファイルは、本体の[ライブラリ]→[レコーディング]以下に収納される

 なお、録音時のゲイン設定はリモコンでは行なえず、本体側で行なう。録音したファイルは録音後に再生ボタンを押すか、本体の[ライブラリ]→[レコーディング]以下に生成されたファイルを選択することで再生可能。内蔵マイクの性能が今ひとつなのと、リモコン側でゲイン設定ができないので、例えば会議の録音などではあまり適していないかもしれない。逆にFMチューナからの録音は音質もよく、かなり利用価値は大きいと思う。また、再生速度を0.25倍刻みで0.5倍から1.5倍の間でコントロールできる「タイムスケーリング」も備えているため、テープ起こしなどには役立ちそうだ。

 リモコンにより、大きな機能向上が図れるわけだが、機能向上に主眼を置きすぎて、ややリモコンとしての操作性が損なわれているように感じた。

 リモコンの採用には、「大型の液晶ディスプレイを搭載し、本体と同様の操作性を実現する」と、「ボイスレコーディングやFMチューナなどの機能向上」という2つの方向性があると思う。しかし、操作性の向上においては、先に書いたように再生モードの変更などが行なえいなど、液晶がついているメリットを感じさせないのが残念。

 また、追加されたFMチューナやボイスレコーディングもリモコンと本体を組合わせないとうまく操作ができず、全体的にリモコン側の操作体系と、本体側の操作体系がうまくまとまっていない印象を受けた。

 FMラジオをよく聴くユーザーにとっては、録音機能も含め、リモコンの追加により、かなり重要な機能強化を果たしたと言えるだろう。しかし、個人的には機能強化よりは、操作性の向上に特化したほうが良かったと思う。



■ 圧倒的な60GBのディスクスペース

付属のヘッドフォン

 付属のヘッドフォンは、解像度はそれなりだが、やや癖のある音作り。全体にコンプレッサをかけたようなレンジの狭さを感じさせ、特にボーカルものなどでは、独特の質感で再生してしまう。ポータブルプレーヤーについてくるヘッドフォンの最低ランクよりはいいが、音質にこだわる人であれば、気になるクオリティだ。

 しかし、ヘッドフォンを交換して、同じヘッドフォンでiPodとZenで同じMP3ファイルを比較してみると、Zenの方が全レンジをきっちり鳴らしている印象で、特に低域の差はかなり顕著に感じられる。比較するとiPodの高域の癖がやや気になった。個人的にはiPodよりZenの方が好みの音質だ。また、独自のEAXによる、イコライザや、3Dスペシャライザーなどのエフェクトも充実している。


WAVファイルにも対応する

 特筆すべきはやはりHDDの容量と、コストパフォーマンスの高さ。価格は実売で5万円を切り、単純に容量辺りの単価で言えば、他のオーディオプレーヤーの追従を許さない。例えば、30GB HDD搭載のiPodの最大容量モデル「M8948J/A」の価格は59,800円と、Zen 60GBより1万円高い。

 もっとも60GBというHDD容量を全てMP3/WMAで埋め尽くすというのは結構大変だ。Zenの音質を生かすためにも、WAVで録音しておくというのもありかもしれない。MP3(128kbps)とWAVで聞き比べてみると、ポップスなどでも高域の広がりなどには確かな差を感じることができるので、「音にこだわるユーザー」であれば、こうした選択もありだと思う。

 なお、Windows Media Audio9に対応しているが、LossLessやProfessionalといったコーデックには非対応となっている。



■ まとめ

 リモコンに関しては期待していただけに「やや中途半端」という印象はぬぐえない。操作性と機能向上の両方を狙いつつ、どちらもうまくまとめ切れていない。また、そのためにリモコンサイズが大きくなってしまったというのも、残念なところ。

 本体操作のほうが統一された操作性となっているので、FMチューナやボイスレコーディングを必要としない人は本体のみで使ったほうがいいだろう。

 購入時のポイントとなるのは、やはりそのHDD容量とコストパフォーマンス。50GB超の圧縮オーディオライブラリを有している人や、コストパフォーマンス重視派には「これしかない」個性を放っているのも確かだ。

□クリエイティブのホームページ
http://japan.creative.com/
□ニュースリリース
http://japan.creative.com/company/press/2003/030612-zen.asp
□製品情報
http://japan.creative.com/products/digitalaudio/zen/
□関連記事
【6月12日】クリエイティブ、HDDプレーヤー「Zen」の60GBモデル
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030612/creative.htm
【2002年10月28日】クリエイティブ、NOMAD Jukebox Zen/3用液晶リモコン
-FMチューナ、ボイスレコーダ機能も搭載
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20021028/creative.htm
【2002年10月2日】【Zooma!】「Apple iPod」 VS 「Creative Zen」
ベストバイはどっちだ!!
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20021002/zooma77.htm

(2003年6月27日)

[usuda@impress.co.jp]


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