■ ミニコンポ初のDVDチェンジャ搭載機 AV機器といえば、日本メーカーのお家芸とも言える分野。日本市場は、DVDレコーダなど先端製品がいち早く登場し、世界の市場をリードするようなマーケットを築いている。 しかし、各国の市場特性というものが当然あるわけで、例えば北米では、リアプロジェクションテレビの人気が高く、ショップの大きなスペースを割いて販売しているが、日本ではソニーの「グランドベガ」シリーズを大手量販店でちらほら見る程度。あまり一般的な製品とはいえない。 これには、もちろん家屋や部屋のサイズというお国柄を反映した事情があるわけだが、個人的に解せないのが国内での「DVDチェンジャ」の人気の低さ。海外では300枚クラスの製品を始め、結構な数のDVDチェンジャが発売されているが、日本ではカーナビ製品で5~10枚程度のDVD/CDチェンジャがいくつかある程度。ほとんど市場が無いといってもいいぐらいの寂しいものだ。 このDVDチェンジャを取り巻く寂しい状況には、レンタル市場が大きい日本の事情があるのだろう。しかしDVDソフトの内外価格差も小さくなっており、積極的にDVDソフトを買うユーザーも多い。ということで、もう少しこの市場、もう少し盛り上がってもいいのではないだろうか? 弊誌にも2年前にSonyの300枚DVDチェンジャ「DVP-CX860」を個人輸入してレポートしているスタッフもいるし、編集部近辺でも「何でないんだろうね? 」という声が結構聞かれるのだが……。 ということで、DVDチェンジャの日本での盛り上がりにはそれなりに期待していたのだが、思わぬところから、新製品が現れた。それが、パナソニックの「SC-PM2DVD」だ。「思わぬところ」というのはこの製品「DVD/MDミニコンポ」なのだ。「ミニコンポ」と言えば、ある意味日本のドメスティック製品。出てくるとしたら単体デッキと思っていただけに、やや驚いた。 しかし、考えて見れば、パナソニックは以前からミニコンポのCDチェンジャ化には力を入れており、ミニコンポの次の「一手」としては、確かにアリだろう。 ■ 5DVDチェンジャとバイアンプ駆動スピーカーのミニコンポ
「SC-PM2DVD」は、5DVDチェンジャとMDデッキを統合したアンプ部と、スピーカーから構成される。 アンプ部の最大の特徴は、5DVDチェンジャを搭載していることで、MD部はMDLPに対応する。本体部の外形寸法は200×365×149mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約5.6kgと、正面から見ると小ぶりだが、奥行きはかなり長め。奥行きの短いラックなどに設置しようとしている人は注意が必要だ。 例えばシャープのミニコンポ「Auvi」など、縦置きのスロットインドライブの採用などで薄型化を図りインテリアとの相性のよさをアピールしている製品もあるが、以前HighMATの発表会で尋ねたところ、パナソニックのミニコンポでは「チェンジャを最大の売りにする」という姿勢とのこと。こうしたメーカーの視点の違いにより、製品の特徴に大きな差が出てくるのもミニコンポの面白いところだ。 DVDチェンジャ部はDVDオーディオにも対応する。しかし、2スピーカーシステムなので、マルチチャンネル再生は行なえない。出力は25W×2ch。映像出力端子は、D2端子、S映像、コンポジットを装備、音声出力は光デジタルやアナログ出力2系統などを備えている。
スピーカーは、100mmウーファと60mmツイータからなる2ウェイ2スピーカー。振動板にはPPマイカを採用したほか、ツイータには50kHzの高域再生が可能という「リングシェープドドームツィータ」を使用。また、底面に配置されたバスレフポートは空気の流れに配慮し、ポートに対して斜めに配置している。 スピーカーの外形寸法および重量は、145×232×274mm(幅×奥行き×高さ)、2.6kg。防磁設計となっている。ちょっと気になるのは、スピーカーケーブルが直出しとなっており、ウーファとツイータを別入力で駆動するバイアンプ方式となっていること。通常に使う分には問題は無いし、音質向上にも寄与するのだろうが、ケーブルの変更やスピーカーの変更はできないため、アップグレードして楽しむことはできない。もっとも、そういう位置づけの製品ではないということなのだろうが……。
■ 充実した機能と高い基本性能 早速CDやDVDをチェンジャ部にセットしてみる。ディスクの切り替えは10秒弱程度とやや時間がかかり、動作音もそれなりにするが、ディスクがマウントされてからの操作は快適だ。ただ、やはりCDチェンジャ兼DVDチェンジャとして併用するにはもう少し枚数がほしい。 なお、ディスクの再生中でもほかの4枚の交換は可能となっており、実際に使ってみるととても便利。また、本体左脇の[DISK CHECK]ボタンで収納中の全ディスクをチェックする機能もついている。チェックの際はディスク交換などは行なえないが、「チェンジャを使っている」という気分が簡単に得られるので、ちょっとうれしい機能だ。
DVDプレーヤーとしてはプログレッシブ出力に対応。また、シネマ1/シネマ2/ノーマルの3つの画質モードが用意されている。「スパイダーマン」のチャプタ17のアクションシーンを見てみると、発色は素直だが、時折ノイズが目立ちにごりがちな印象がある。さほど気になるようなものでもないが、最新のプレーヤーと比べるとやや力不足を感じるところはある。 また、映画のセリフを聞き取りやすくする「ダイアログエンハンサー」も搭載している。リモコンの[D .ENH]ボタンを押すだけで、ON/OFFが可能で、試しにDVD「マイノリティ・リポート」でテストしたが、ステレオスピーカーでも、センター定位がきっちり決まり、大幅にセリフが聞き取りやすくなった。小さな音で聞くときにも効果はあるので、かなり重宝すしそうだ。
音質はかなり良く、全体的には素直な音作りだが、やや特徴的なのがボリュームある低域。比較的小さな音でも、誇張されたような量感が感じられる。ウーファの無しのDVDシステムとしては、気持ちよく感じられたが、CDやDVDオーディオを聞いた際には、ソースによっては少し気になる場合もあった。もっとも、打ち込みベースのポップスなどとの相性はとてもよいと思う。 DVDオーディオの再生でも素直な音質が得られたが、クラシック系のソースなどではユニットの小ささもあり、音場感が足りない印象もある。しかし、全体的にソツが無くまとまっており、ミニコンポとして見れば、基本性能は非常に高い。 また、音質補正機能「ダブル リ.マスター」も搭載する。これは、DVDビデオやDVDオーディオ、CDなどでの44kHz/48kHzソースをアップサンプリングするほか、WMA/MP3などの圧縮オーディオ再生時には、高域補間処理を行なうもの。ソースに合わせて3つの効果が用意されており、詳細は下表のとおり。
CDやDVDに適用した際は微妙に音の広がりが感じられる程度で、どのモードでもあまり大きな違いを感じられなかったが、圧縮オーディオの場合、[中]、[強]だとかなり差が出てくる。高域の補正に伴い、音場感の向上という形で効果が現れているように感じた。 また、音楽再生時にビデオ回路をOFFにする「オーディオオンリー」や、サラウンド機能「アドバンスドサラウンド」を搭載している。アドバンスドサラウンドは、音に広がりを持たせる「ADV SURR1」と、奥行きや音場感が強調されれる「ADV SURR2」の2モードが用意されており、DVD視聴時の効果は大きい。 CDからMDへのダビングは最大6倍速で、「世界最速」とのこと。早速試してみたが61分40秒のCDを約12分強でダビングできた。また、DISC1から5枚連続でMDダビングする「5CDイッキ録り」機能も搭載している。もともと同社のチェンジャ搭載ミニコンポの「売り」の機能だけにMD部のブラッシュアップにもぬかりない。
また、HighMATにも対応している。基本的に5月に発売されたDVDプレーヤー「DVD-S75」とほぼ同様のインターフェイスで、使い勝手も同じだ。対応レベルはHighMATレベル2で、WMA/MP3とJPEGの再生ができる。そのほかにも、本体ディスプレイ部の明度を調整できる「ディマー機能」なども備えている。 ■ 意欲的な「全部入り」ミニコンポ 製品企画としては、CDチェンジャの延長線上で、新機能としてDVDビデオ/オーディオにも対応した、という位置づけだと思う。そのため、本格的にDVDチェンジャとして使うには、収納枚数などの点で、もう一息というところもあるが、DVDチェンジャにもなるミニコンポとしては申し分ない。 音質についても、「ミニコンポ」に対して、個人的に抱いていた音質面の偏見を払拭するに十分で「いまどきのミニコンポ」の性能の高さを感じた。また、MDとの連携機能や、DVD関連の細かい機能についても、とにかく考えられる機能は全て一台に凝縮。特に「これを追加してほしい」という機能が思いつかないほどに充実している。そのため、リモコン操作などで、やや戸惑うこともあったが、「一台に何でも集約したい」というユーザーにはうってつけの製品だろう。 価格は実売で55,000円程度と、5CDチェンジャ搭載で同等の機能を備える同社の「SC-PM77MD」の約1万円のプラスとなるが、DVDビデオ、DVDオーディオの再生機能を考えれば、1万円の価格差は安いと言える。この夏の「ミニコンポ市場」の目玉製品といえそうだ。 唯一気になるのは、同社のバイアンプ駆動ミニコンに共通している、スピーカー直付けのケーブル。アップグレードできないというのは、製品の性質上我慢できる。しかし、仕上げが安っぽいのを、どうにかしてほしいところだ。 □松下電器のホームページ (2003年6月20日)
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