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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第115回:新市場を開拓するTV録画ソフト「DigiOnTVR」
~珍しいVR編集ソフト登場~


■ フォーマットを繋ぐもの

 Watchの読者はそんなことないと思うが、世の中の人の大半は、数あるDVDのフォーマットはいつか一つにまとまって行くもんだと思っている。まあ10年とか20年とか長い目で見れば、いくつかのメディアは何らかの事情で衰退するかもしれないが、現実はあと1、2年でその「何らかの事情」が起こらない限り、このままいろんな問題を積み残したまま次世代メディアへ突入していきそうな気配が濃厚である。

 しかし、今更DVDが一つにまとまるとは考えられないが、数あるDVDフォーマットを意識せずに使える方向には向かいつつある。ハードウェア面、すなわちDVDドライブはほとんどマルチフォーマット対応に漕ぎ着けた感じだ。次なる課題は、ソフトウェアだろう。

 DVD系のビデオフォーマットとしては、DVDビデオ、DVD-VR、DVD+VRがある。DVDオーサリングソフトでは、この3つに対応しているものは多い。しかしテレビ録画やメディア編集となると、今のところメディア単位できっぱり派閥が分かれている。DVD-RAMは「DVD-Movie Album」、DVD+RWは「neoDVD」、DVD-RWはうーん、何かあったかな?

 そんな状況の中、DigiOnからなにやら期待できそうなソフトが発売される。VR編集&TV録画ソフト「DigiOnTVR」だ。筆者は以前から、もっと手軽にDVD録画を行なうためにはVRフォーマットの普及が重要だと言い続けているが、このDigiOnTVRはDVD-VRとDVD+VR、両方のフォーマットでテレビ録画や編集が可能だ。

 今回は7月4日に発売が迫った、このDigiOnTVRを試してみることにしよう。


■ メディアにテレビをダイレクト録画

 DigiOnTVRの売りは、DVDレコーダで録画したメディアを、PC上でCMカットなどの処理ができるところだ。そういう見方をすれば、すでにDVDレコーダを持っているユーザーのための補助ツールということになるかもしれない。しかしこのソフト自体もテレビ録画機能を持っている。TVキャプチャカードとドライブがあれば、PC単体で完結することもできるようになっているのだ。この機能から見ていこう。

 まず対応TVキャプチャカードだが、基本的にハードウェアエンコーダを搭載しないものに限られる。最近ではハードウェアエンコーダ搭載のカードが主流になっているが、エンコーダの制御をDigiOnTVRに任せて貰わなければならない関係上、ソフトウェアエンコーダタイプになってしまうわけだ。具体的な製品に関しては、DigiOnのサイトに掲載されているので、気になる人は見て欲しい。

 TVキャプチャソフトとしての作りは、比較的オーソドックスだ。メイン画面はテレビ画面表示部とコントローラ部に分かれている。このコントローラ部は一見するとビデオデッキのように見えるが、注目すべきは左側のModeのところだ。

一見すると普通のテレビ録画ソフト モードによって動作が変わる

モード録画先
Video FileHDD
DVD-VRDVD-RAM
DVD+VRDVD+RW

 DigiOnTVRでは、いろいろなDVDフォーマットに対応するために、モードという考え方を採用している。赤い録画ボタンを押せば現在表示中の番組が録画できるわけだが、現在どのモードを選んでいるかで録画メディアが変わる。

 ちなみにDVD-VRは本来DVD-RWでも使えるフォーマットだが、DigiOnTVRではDVD-RWのVR記録には対応していない。メディアの対応にはバラツキがあるようだ。


どのフォーマットでどのドライブを使うかをあらかじめ指定しておく iEPG対応ページからの番組予約もできる

 その場で録画ボタンを押すだけでなく、もちろん予約録画も可能だ。手動で予約情報を入力することができるほか、iEPGにも対応し、さらにケータイなどからメールで予約できるreserMailも使える。ただ予約録画の場合は、録画先をDVDメディアにすることができず、HDDへの録画になる。

メディアへのダイレクト録画ではドルビーデジタルも選択可能

 なおオーディオではドルビーデジタルエンコードを搭載しているので、テレビ録画も最初からドルビーデジタルでメディアに録ることができる。ただし、メディアには録れるんだが、なぜかHDDに録画するときはドルビーが選択できなくなっている。HDDに録ってからメディアに書き出すというケースもあるはずだが、このあたりの奇妙な機能制限は、理由がよくつかめない。

 またリアルタイムでメディアに書くのが不安な場合は、設定でリアルタイム録画しないようにもできる。動作としては、HDDに一時的に録画しておき、録画終了後、自動的にメディアへの書き込みを行なう。



■ PCでVRメディアを編集

CMカットはあらかじめ範囲指定を行なう

 次に各メディアの編集はどんな感じだろうか。モードを選んで[Edit]を押すことで、各メディアの編集モードに入る。まずDVD-RAMに録画した番組でCMカットを試してみよう。

 基本的な操作は、ビデオ編集ソフトを使ったことがある人なら簡単だ。現在位置を示すポイントを使ってCM部分を探し、コマ送りでカット替わりを探す。カットしたいポイントでCM CutのStartとEndをクリックして範囲指定する。

 範囲指定しただけではまだ編集は実行されていないので、プレビューで編集点を確認できる。GOP単位での編集なので、あまり細かくフレームで切ることはできないが、多くの場合カット替わりでIフレームを立てているはずなので、CMカットでは大きな問題はないだろう。CM部分をいくつか指定しておいて、[Go]ボタンを押すと、一括で選択部分の削除が行なわれる。

 このような作業は、DVDレコーダ本体でも行なうことができる。PC上で行なうメリットは、ひとえにマウス操作による利便性ということになるだろう。ドラッグしたり編集範囲を拡大、縮小したりといったことが自在に行なえるので、手早い設定が可能だ。今までリモコン操作でまどろっこしい思いをしてきた人には、メリットがあるだろう。

DVD+VRでは、CMカットができない

 一方これまたちょっと扱いが違うのが、DVD+VRだ。メディアは以前DVDレコーダ「SONY RDR-GX7」で録画したものがあったので、これを使ってみた。DVD+VRのメディアでは、DVD-VRのようなCMカットはできない。その代わり、と言ってはなんだが、メニューデザインの変更、メディアのデフラグやダイレクトに番組追記といったことができる。

 DVD+VRではメディア内にメニュー情報が書き込まれているわけだが、DigiOnTVRでメニューを読み込むと、その前にメニューを作り直す作業が始まる。追記するたびにいちいち前のメニュー情報を生かしてビルドするよりも、自分とこでメニュー作り直した方が早い、ということだ。この動作は以前DVD+RWアライアンスが行なったデモンストレーションでも同じようなことだったので、今後現われるであろう他のDVD+RWレコーダでもやはりメニュー再構築は行なわれることになるだろう。

メニューの上書きを確認するダイアログが出る DigiOnTVRのテンプレートを使ってメニューを再構築する

 メディアを直接編集できるのがDigiOnTVRの特徴だが、それ以外にもHDDやDVDメディアに録画した番組をDVDビデオにするという機能も備えている。HDDで録画したものはそのままDVD-VRのような調子で編集できるが、DVDメディアに収録した番組は、いったん[DVD取り込み]という別ソフトを使ってHDDにリッピングしてやることで、編集が可能になる。

付属のDVD取り込みソフトでメディアからHDDにリッピング

 オーサリングソフトとしては、GOP単位でのCMカットが複数箇所同時に行なえるというのは強力だ。ただしメニュー作成機能は一般的なオーサリングソフトまでは細かいカスタマイズはできず、機能的にはDigiOnVideoクラスとなる。

 気になるのは、DVDレコーダで行なっているような再圧縮なしでDVDビデオが作れるかどうかだ。再圧縮にならない条件はいろいろあるが、基本的にはフレームサイズやfps、シーケンスヘッダの有無、ビットレートなどが変わらなければ再圧縮にはならないようだ。ビットレートをピッタリ合わせるのは難しいが、DigiOnTVRの設定を大きめにしてやれば、再圧縮にはならない。つまり無駄にデカくする方向では動かないのである。



■ 総論

 いつもながらDigiOnには、他がまだできないところを一番乗りでやっちまうだけの技術力がある。各フォーマットに全部対応していくのは大変だったろうと思うが、マルチVR対応の先陣として、新しい道を切り開いた功績は大きい。

 ただソフトウェアとして、先発ならではの荒削りな部分があるのは否めない。モードの選択イコールメディアの選択という発想はわからなくもないが、ユーザーとしてはメディアや記録フォーマットの垣根を区別なく扱えるというのが、こういった中間ソフトウェアのあるべき姿だろう。

 また機能的には現時点で可能ないっぱいいっぱいのところは押さえているのだろうが、やはりこうやって一つのソフトで横並びにして比べてみると、フォーマットやメディア規格の差で、できることにかなり差がある。各社や団体の軋轢がソフトウェアの仕様に現われてしまうというのは、なんとなく他人の醜態を垣間見てしまったようで、居心地が悪い。

 もちろんこれはDigiOnもっとガンバレっていう問題ではなく、こういった部分はそれぞれのフォーマットを押しているメーカーなり団体なりが、もうちょっとしっかりソフトウェア製作会社に対してフォローしてくれるような体制が欠けているのではないだろうか。

 まず、自分たちが推進するフォーマットなりを多くのソフトウェアで採用して欲しいならば、ブックをお金出して買いなさいネってんじゃなく、その反対に開発援助金を出すぐらいのことはしないと。仕様だけ決めれば、あとは勝手にあちこちからソフトが生えてくるわけじゃないと思うんだが……。

 DigiOnTVRの出現によって、今後はDVDレコーダとPCをスムーズに連携しようとする動きが活性化するかもしれない。また今までPCにマルチフォーマットDVDドライブを搭載しながらどう使っていいのか、あるいはどう使い分けるべきなのか今ひとつしっくり来なかったわけだが、フォーマットを跨いで使うことができるこういったソリューションの登場は、歓迎すべき方向だ。

 もうDVD規格がバラバラになっちゃってるのはしょうがないが、その代わり今度はそれをボーダレスに繋いでみせる技術の開発が必要だろう。そしてそんなアプリケーション開発に協力の姿勢を見せないフォーマットが、衰退の道を歩むことになるだろう。


□デジオンのホームページ
http://www.digion.co.jp/
□製品情報
http://www.digion.com/pro/dr_main.htm
□関連記事
【5月20日】デジオン、VRモード対応のビデオ編集/テレビ録画ソフト「DigiOnTVR」
-ドルビーデジタル音声記録をサポート
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030520/digion.htm

(2003年7月2日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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