~Quintessential Playerを検証する~ |
Quintessential Player。機能的には一通り何でも揃っている |
さてそんな状況の中、フリーウェアのMP3ユーティリティソフトという面白いソフト、Quinnwareの「Quintessential Player」、通称QCDプレイヤーが登場した。現在4.0というバージョンとなっている。
バージョン番号からもわかるとおり、このソフト自体は結構古いもので、米国ではかなり人気のソフト。そのソフトが今回のバージョンにおいてさまざまな機能強化するとともに、はじめて日本語対応した。筆者がこのソフトを知ったのはGracenoteからのプレスリリースで、Quinnwareは正式にGracenoteとライセンス契約を結んでいるパートナーとなっている。
実際にインストールしてみたが、非常に軽いソフトでありながら、機能的には一通り何でも揃っている。まず、CD-ROMドライブにCDをセットすると自動的にGracenoteのCDDBに接続し、アーティスト名やアルバム名、曲名などがすぐに表示される。こうして手に入った情報はユニコード対応ID3タグエディタで編集することが可能だ。これらの曲を簡単にMP3へエンコードすることもできてしまう。
CDDBからアーティスト名やアルバム名、曲名などを自動で取得してくれる | 楽曲の情報を編集可能。非常に手軽だ |
エンコードしたファイルを保存するフォルダや、エンコードエンジンの選択は設定画面から行なうのだが、これらはすべて日本語化されている。デフォルトの設定ではMP3とWAVのいずれかを選択するようになっており、MP3を選択した場合、ビットレートなどの設定も可能だ。画面を見ても分かるように、メニューから若干深い階層に入ると、モジュールが異なるためなのか英語表示になってしまうこともあるが、まあ、あまり気にすることなく利用することができる。
設定メニューも日本語化されている | 深い階層に入ると英語表示になってしまうが、困ることはないだろう |
また、スキンの変更にも対応しており、いろいろな画面に変更することができる。さすがに4.0とバージョンを重ねているだけあって、かなりのライブラリが揃っている。それらスキンは簡単な操作でQCDプレイヤー上からダウンロードできるのも便利なところだ。
様々なスキンが用意されている | スキンはQCDプレイヤー上からダウンロードできる |
■ MP3エンコーダの特性を検証する
とりあえず一通り使ってみて、機能的な不足を感じることはない。動作も軽く、プレイヤーソフトとしてみても結構使えるソフトだ。また、拡張性も優れており、プラグイン方式でさまざまな機能を追加できる。例えば、エンコーダのプラグインとしてOggVorbisやWindows Media Audio(Ver.7)などが用意されていたり、デコーダも数多くのものが公開されている。これらプラグインはQuinnwareのサイトへ行けば、誰でも無償でダウンロードすることが可能だ。さて、せっかくなので、このQCDプレイヤーに搭載されているMP3エンコーダの特性を調べてみることにした。方法は以前行なっていたのと同様で、「1kHzのサイン波」と、「スウィープ信号」、そして「TINGARAというバンドの夜間飛行という曲の冒頭」の3つの素材をエンコードするとともに、それをefu氏のWaveSpectraというソフトで周波数特性などを検証した。
ビットレート128kbps、通常のステレオ音声を選択してテストを行なった |
問題はQCDプレイヤーソフト側でのMP3の設定だが、デフォルトではCBR 128kbpsで、ジョイントステレオとなっていた。以前行なっていた実験ではジョイントステレオではなく、通常のステレオで行なっていたので、ここではそのように変更。
素材の3つは、以前CD-DAに焼いておいたCD-Rを利用して、そこからリッピングする形で実験を行なった。
本来こうしてできあがったデータはQCDプレイヤー上のデコーダを利用してWAVファイルに変換すべきだが、このソフトは曲の頭にフェードイン、曲の終わりにフェードアウトがごく短い時間がかるようになっているため、曲のニュアンスが少し変わってしまう。そこで、このデコーダは利用せず、波形編集ソフトSoundForgeに内蔵されているFraunhofer IISのデコーダでWAVに変換した。その結果は以下の通り。
元ファイル | エンコード後 (サンプルデータ数:8,192) |
エンコード後 (サンプルデータ数65,536) |
|
夜間飛行 | |||
1kHzサイン波 | |||
スイープ信号 |
これを見てみると、やはり16~17kHzあたりで、ちょうどローパスフィルターをかけたような感じで高い音が消えている。また1kHzのサイン波の場合、前後の周波数にもある程度の影響が出ているが、まずまずといったところだろう。
なお、従来からこの測定にFFTのサンプルデータ数を8,192に設定していたが、さらに細かく65,536に設定してみたところ、1kHzでキレイに1本の線が立っていることは確認できたが、やはり前後の周波数帯に影響を及ぼしていること自体は間違いないようだった。
では、実際の音はというと、人によって感じ方は違うかもしれないが、Fraunhofer-IISのエンコーダにかなり近い音のように思えた。極めていいとまではいかないが、複数あるMP3エンコーダの中ではかなり上位の音質である。波形自体は以前のFraunhofer-IISの結果とはやや異なるが、音的には似ているようだ。
オリジナル | エンコード後 |
original.wav(7.57MB) | qcd128k.mp3(702KB) |
■ 総括
プラグインの「LAME MP3 encoder v1.01」を使えば、さらに細かな設定ができるようになる |
QCDプレイヤーのプラグインのエンコーダにはOggVorbis、WindowsMediaAudioのほかにもうひとつ「LAME MP3 encoder v1.01」というものも用意されている。今回はこれの実験は行なわなかったが、こちらのエンコーダの設定画面では、さらに細かな設定ができるようになっていた。このように、こだわりがある場合はエンコーダエンジンを交換してライブラリを構築していくことも可能となっている。
実際に使ってみたところ、QCDプレーヤーは機能的にも豊富で、拡張性にも優れたなかなかいいソフトだった。これだけのものがフリーウェアで配布されているというのは非常に嬉しいところ。まずは、ダウンロードして使ってみてはいかがだろうか。
□Quinnwareのホームページ
http://www.quinnware.com/
(2003年8月25日)
= 藤本健 = | ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL」(リットーミュージック)、「MASTER OF REASON」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。 |
[Text by 藤本健]
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