■ 北米版より2カ月以上も早く、日本でDVD発売!
今回取り上げるのは、「X-MEN2」。5月に世界同時公開され、日本でも駅の構内に大型ポスターが貼られるなど、大々的にPR活動が行なわれたので、記憶に残っている方も多いだろう。映画の方は、「マトリックス」、「スパイダーマン」を抜いてオープニング世界興収新記録樹立したとのことだ。 そのX-MEN2の劇場公開から約4カ月。驚くほどの早さでDVD化された。さらに、北米版は11月25日の発売が予定されており、地元より2カ月以上早く入手できるという、かなり異例の事態だ。 また価格も通常版は3,980円と設定されているが、初回限定で3,300円で販売される。音楽系のDVDでは、初回プレス限定で低価格に設定されることはちょくちょくあるが、映画のDVDではかなり珍しい。
加えて、先着でオリジナル・キューブリックがプレゼントされるなど、「X-MEN2」のDVDでは色々な販促手法を取り入れている。
また、大量にTV CMを投入しており、目にしている人も多いだろう。それだけこのDVDに力を入れていることの現われだと思うのだが、TV CMで使われている映画のシーンが、シネマスコープの映像をビスタサイズ程度にリサイズしているため、正常なアスペクト比より少し縦長になっているようなのが気になった。
■ VFX満載で描く、人類から迫害されたミュータントの戦い X-MEN2はタイトルからもわかるとおり、2000年に公開され全世界で興収3億ドルに迫るメガヒットとなった、ブライアン・シンガー監督の「X-MEN」の続編。 原作のコミック「X-MEN」が生み出されたのは、人種差別に反対する公民権運動が高まり、それに対しての偏見や恐怖も生まれた'63年。そういった時代背景もあり、アメリカンコメックと聞いて想像しがちな、スーパーヒーローものの世界とは趣を異にするストーリーとなっている。 映画版のパート1では、メインストーリーが「いいミュータントと悪いミュータントの戦い」だったが、今回のパート2では「人間 対 ミュータントとの戦い」が主に描かれる。個人的には、パート2の方がストーリーが多層化し、より深みがでていると思う。上映時間も105分だったパート1から、パート2では134分とかなり長くなっている。 パート2だけを見てもある程度内容を理解できて、そこそこ楽しめると思う。しかし、パート2に出てくるキャラクタのほとんどが、パート1で紹介されているので、パート1を見ておいたほうが、より作品世界に入り込みやすいことは間違いない。 ――今から遠くない未来。遺伝子の突然変異により超人的パワーや、特殊能力を持って生まれたミュータントは、その能力から社会から疎外されている。しかし、社会から追放されたミュータントは、ホモ・サピエンスから進化した次世代の種族「ホモ・スペリオール = 超人類」だった。 人類はミュータントを忌み嫌い、その存在すら否定する。ミュータント達は偏見や、人類の一員と認めない扱いに抵抗しながら、自分たちの能力を役立たせる方法を身につけ、最強のミュータントと呼ばれ人類との共存を説くプロフェッサーXによってチーム「X-MEN」を組織。人類とミュータントが平和共存する社会の実現を目指して、戦い続ける。 前作でX-MENは、ニューヨークのリバティー島を舞台にした最終決戦で、ミュータントのマグニートーによる人類抹殺計画の野望を未然に防ぐことに成功。マグニートーは、プラスチック監獄に囚われの身となる。 彼らの孤独な戦いは終結するかに見えたが、人類にとっては彼らもまた同じミュータントでしかなく、ミュータントたちに対する偏見は変わる事はなかった。超人的な能力を持っているミュータントも、心は普通の人間と変わりなく、自分たちに向けられる嫌悪に苦悩する。 そこに凄まじい能力を持つ謎の襲撃者が出現し、一般市民をも巻き込んだ惨劇となった。ミュータント登録法案を求める政治運動や、世論を一気に呼び起こす。 新たな運動の先頭に立ったのは、元陸軍司令官でミュータントへの生体実験も噂される大富豪 ストライカーだった。謎に包まれたウルヴァリンの生い立ちも、ストライカーとの関係とともに明らかにされる――。
作品のイメージどおり、CGを含めVFXが多用されるが、違和感無く自然に使われていて、馴染んでいる。もしかしたら、そんな特殊能力があるかも、と思わせる。
■ 特典は少ないが、DTSのサラウンド感は良質 本編は、シネマスコープサイズをスクイーズ収録。音声は、英語をドルビーデジタル5.1chとDTSの2種類、日本語をドルビーデジタル5.1chで収める。 DVD Bitrate viewerで見た本編の平均ビットレートは本編の収録時間が134分と長いこともあり、6.37Mbpsと若干低め。画質は暗部で多少のザラツキを感じるところはあるが、全体的にはなかなか良好。今っぽいクリアでシャープな画質だ。 音声のビットレートは、英語、日本語のドルビーデジタル5.1chが、どちらも448kbps。英語のDTSは768kbps。主にDTSで聞いたが、ドルビーデジタルと聞き比べてみると、かなりの差があった。低音はもとより、薬莢が転がり落ちる音など高音の抜けがDTSの方が圧倒的にいい。サラウンド感も、DTSの方がいいように思う 戦闘シーンや、ジェット機の飛行シーン、マグニートがプラスチック監獄を破壊するシーンなどの派手なサラウンドも迫力があるが、「セレブロ」の幻想的な取り囲まれ感もよくできている。オーディオ環境のサラウンドテストに使用できそうなソフトだ。はっきりいって、サラウンド環境で観ないと、この作品の魅力の半分も楽しめないだろう。
一方、1枚組みということもあり、FOX TVスペシャル「ミュータントのすべて」(約22分)、「未公開シーン集」(11シーン)、「スティル・ギャラリー」(約90枚)、予告編集と、ハリウッドの大作DVDとして特典は少なめ。オーディオコメンタリもない。なお、この映画のためにマツダのRX-8をベースに製作された「MAZDA RX-8 X-MEN CAR」のプロモーション映像(2分4秒)も収録されている。 「ミュータントのすべて」は、ドキュメンタリ番組のようなつくりで、メイキングというよりは、「公開直前紹介特番」といった内容だ。単独の番組として見れば面白いが、DVDの特典としてはもう少し突っ込んだ内容にしてほしかった。 未公開シーン集は11シーンと多いが、1シーンずつは短く、なぜカットされたのかなどの解説もないので、前後のつながりがよくわからないのもある。特典の中で特に気になったのが、予告編集に収録されている予告編で、本作の予告編はなく「デアデビル」などの他の作品のもののみというのは、さすがに残念だった。 全部見る人がいるのだろうかと思うほどの特典満載のDVDが素晴らしいとは思わないが、このDVDについては本編のデキがいいだけに、特典がちょっとさびしく思ったことも確かだ。
■ 北米版なみの特典満載仕様が出るかも……? 北米版より、2カ月も早くDVDされたこと喜びたい。がしかし、北米版は2枚組みで、オーディオコメンタリー2本や、メーキングなども充実。価格も29.98ドル(実売18ドル程度)ということを知ると素直に喜べないところもある。 日本でも、「どうせ後からアルティメット エディションとか出るんじゃないの」かと思ってしまうと、作品のファンだと買い控えしてしまいそうだ。米国より原作自体の知名度が低く、興行収入もそれほどよくなかったので、忘れられる前にDVDを発売しようという判断なのかもしれないが……。 とはいえ、本家より早くDVDで見られるというメリットも確かにある。価格も3,300円なら、納得できる範囲。また、DVDがそれほど熱心なファンではなく、前作も未見で少しでも安く入手したいというなら、「X-MEN 1&2 DVDダブルパック」も、邦画のDVD1本分の4,980円で用意されている。
□20世紀フォックスのホームページ (2003年9月16日) [AV Watch編集部/furukawa@impress.co.jp]
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