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第105回:盲目の弁護士がレーダーセンスで悪と対決!
DTSで視覚を聴く「デアデビル アルティメット・エディション」

怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。


■ 結局、アルティメット・エディションを購入

デアデビル
アルティメット・エディション
価格:4,700円
発売日:2003年10月3日
品番:FXBU-23789
仕様:片面2層2枚組
収録時間:本編約104分
画面サイズ:シネスコ(スクイーズ)
音声:(1)英語(ドルビーデジタル5.1ch)
   (2)日本語(ドルビーデジタル5.1ch)
   (3)日本語(DTS)
発売元:20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント

 今回取り上げるのは、「デアデビル」。10月3日発売のDVDなので、発売から結構時間がたっているかなとも思ったのだが、スタッフの1人から「面白いので、取り上げた方がいい」との声が上がった。

 ちなみに、「X-MEN2」と「デアデビル」を2枚買うと、対象タイトル30作品の中からDVD2枚をプレゼントするというキャンペーンを2003年12月31日まで行なっている。両作ともアメコミ原作ということもあって、20世紀フォックスとしては、同種のタイトルという分類なのだろう。

 ただ、「X-MEN2」とは異なり、デアデビルは通常版(初回出荷限定価格3,300円)のほか、初回出荷限定の「アルティメット・エディション」(4,700円)も用意されている。

 20世紀フォックス以外でも、通常版以外に値段が高い特別版のブランドを持っているDVDメーカーは多い。SPEの「SUPERBIT」や、ポニーキャニオンの「Hi-Bit Edition」、アスミックの「SUPER HI-BIT EDITION」などが有名だ。

 これらのブランドは、本編映像の画質や音質にこだわったことをウリとしている。一方、20世紀フォックスの「アルティメット・エディション(THE ULTIMATE SERIES)」は、DTS音声と豊富な映像特典の入った2枚組みというのが同社の定義だ。

オリジナル・キューブリック

 今回のデアデビルは、通常版もディスク1枚だがDTS音声が含まれており、仕様を見る限りアルティメット・エディションのDISC1と同じようだ。実際に、通常版とアルティメット・エディションのDISC1の本編のビットレートを、DVD Bitrate viewer 1.4で比較したところ、グラフは完全に一致した。

 つまり、通常版とアルティメット・エディションは、本編の画質や音質に違いはなく、特典満載のDISC2と、パッケージのみが相違点と見て良さそうだ。パッケージは通常版がクリアトールケース、アルティメット・エディションは紙製ケースにデジパックという仕様となっている。

 本編だけ見たいのであれば通常版でも何の問題もないだろう。しかし、今回はせっかくなので1,400円で特典ディスクを買うつもりで、アルティメット・エディションを購入した。

 ちなみに、予約特典として、オリジナル・キューブリックも用意されていた。


■ 昼は弁護士、夜はデアデビルとして正義の制裁!

 デアデビルは、スタン・リーとライターのビル・エベレットによって生み出されたキャラクタ。'64年に、「X-MEN」や「スパイダーマン」、「ハルク」などで知られるマーヴェル・コミックからコミックが発行され、コミック版では、'80年に新たな原作者フランク・ミラーを迎えている。

 ――12歳のマット・マードック少年は、落ちぶれたかつての名ボクサーの父親ジャックとともに、ニューヨーク、マンハッタンのヘルズキッチン地区に暮らしをしていた。ある日、マットは父親が恐喝をしている現場を目撃し、動転。走ってその場から立ち去る。

 その時。運悪く有毒な廃棄物を目に浴びてしまい、視力を失ってしまう。しかし、視力を失ったことで、視覚以外の四感が超人的に鋭くなり、音の振動によって「見る」ことが出来るレーダーセンスが目覚める。さらに、肉体と精神と感覚を鍛えるために、トレーニングを開始した。

 父親のジャックも立ち直り、ボクサーとしてカムバックに成功。しかし八百長の指示に従わなかったために、試合後に殺されてしまう。その父親の死が引き金となり、マットは自分の特殊な能力を、正義のために捧げる事を誓う。

 成長したマット(ベン・アフレック)は弁護士となり、親友のフランクリン・“フォギー”ネルソン(ジョン・ファヴロー)とともに弁護士事務所を開業。昼は弁護士、夜はデアデビルとして、司法の目をすり抜けた犯罪者に正義の制裁を加えていた。

 ある日、マットが担当したレイプ事件の裁判でニューヨークの犯罪王という謎の人物キングピンが暗躍により、敗訴する。その夜、マットの怒りは納まらず、もう1人の自分の姿「デアデビル」となって、レイプ犯たちを急襲。死のジャッジを下す。

 しかし、マットはデアデビルとして悪に裁きを下すことに、「正義は罪悪なのか?」と悩む。デアデビルは「THE MAN WITHOUT FEAR(恐れを知らぬ男)」と呼ばれるが、空を飛ぶわけでもなく、銃弾をも撥ね返す強靭な肉体をもっているわけでもない。生身の体に受ける痛みを、鎮痛剤で静めていた。

 そんなマットの人生にも、格闘技の達人でもある女性エレクトラ・ナチオス(ジェニファー・ガーナー)と出会い、転機が訪れる。いつしかマットとエレクトラは恋に落ちた。海運王であるエレクトラの父親は、企業家のウィルソン・フィスク(マイケル・クラーク・ダンカン)との縁を切りたがっていた。しかし、フィスクは、殺し屋のブルズアイ(コリン・ファレル)に、エレクトラの父親殺しを命じる……。

 今回の映画でデアデビルを演じる、ベン・アフレックはコミックス版「デアデビル」の熱狂的なファンとして知られ、「今までに出版された原作は全部読んだと思う。演技プランとして、このシーンは原作のディティールにもぴったり合うだろうか、という点にこだわり続けた」と言う。

 監督のマーク・スティーヴン・ジョンソンも、コアなファン。「10歳の時から、発売日には本屋の前で開店するのを待っていた。デアデビルは、かっこいいヒーローであると同時に、人間性がある。人間臭さと欠点が道徳上のジレンマにもなる」と語っている。

 エレクトラ役は、「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」でレオナルド・ディカプリオと共演したジェニファー・ガーナー。また、キングピン(ウイルソン・フィスク)役にマイケル・クラーク・ダンカン、スキンヘッドの暗殺者ブルズアイは、コリン・ファレルが初の悪役に挑戦している。

 今回の映画は全体的に、登場キャラクタの紹介という印象で、ストーリーが薄く感じる。それに、主要な登場人物があまり多くないわりには、かなりの確立で死んでしまう。エンドロールの中ごろでも、Part.2への伏線が張られているので、おそらくPart.2を製作することが前提で製作されたのが本作なのだろう。



■ 画質良好。サラウンド感充実のDTS音声

 DVD Bitrate viewer 1.4でみた本編の平均ビットレートは7.15Mbps。実写映画としては、高めのビットレートだ。画質も総じて高く、本編は暗いシーンの連続だが暗部ノイズもほんど目に付かない。DVDとしては、高画質といえるだろう。また、チャプタも本編が約104分にもかかわらず、32と細かく設定されている。

 音声は、オリジナル(英語)がDTS(768kbps)と、ドルビーデジタル5.1ch(448kbps)、日本語吹替がドルビーデジタル5.1ch(384kbps)。聴覚で見るという映像が作り上げられているので、音響もリアスピーカーやLFEを効果的に使い、非常に迫力のある音場ができあがっている。また、DTSとドルビーデジタルの音質にはかなり差があり、DTSの方が全体的に厚みがある。是非とも、DTSで聞きたいDVDだ。

DVD Bitrate viewer 1.4でみた本編のビットレート

 また、本編ディスク(DISC1)は、通常の劇場公開版本編に加え、映像特典として「超感覚VFXモード(特別モード)」も収録されている。

 超感覚VFXモードとは、VFXを使用している8つのシーンをマルチアングルで楽しめるというもので、収録時間は計約32分。各VFXシーンには音声解説も加えられている。ただ、本編の途中で、突然このメニューが表示されるというスタイルなので、超感覚VFXだけを直接呼び出すことができない。できれば、普通にメニューから、個別に飛べるようになっている方が便利だったと思う。

 本編ディスクには、監督/脚本のマーク・S・ジョンソンと、製作のゲイリー・フォスターによる音声解説に加え、映画の製作過程、ストーリー、キャラクター、マーヴェルに関する字幕解説も収録されている。

 マーク・S・ジョンソンと、ゲイリー・フォスターの音声解説では、マーヴェル・コミックのスタン・リーが出演していることや、劇中に出てくるボクサーの名前に、コミックの関係者の名前を使っていることなどが語られており、興味深い内容となっている。また、ボディーガード役に、ジェイソン役で有名なK・ホッダーが出演しているが、そうとは知らずに起用したことも明かされている。

 その他にも、撮影中に上からものを投げられるので、ネットを張って対処したなど、撮影時の苦労も語られる。また、製作技術として興味深かったのは、「デジタル処理で赤い色を付け直した」とのコメント。「今はまだ、あまり使われていないが、かなり便利。これを使えば、映画全体の色を変えることができる」という。今後、多用されそうな技術だ。


■ 収録時間約235分の特典ディスク

 アルティメット・エディションの特典ディスクには、「メイキング・オブ・『デアデビル』」(約59分)、「デアデビル コミックから映画へ」(約11分)、「デアデビルを生んだ恐れを知らぬ男たち」(約56分)、「シャドウ・ワールド・ツアー」(約6分)、「キングピンの魅力:マイケル・C・ダンカン」(約22分)、「キャラクター・プロフィール」5種、格闘シーン集(6シーン、マルチアングル対応)、「トム・サリバン(視覚コンサルタント)」のインタビュー(約11分)、「ジェニファー・ガーナーのスクリーンテスト」(約4分)、「スティル・ギャラリー」、「オリジナル劇場予告編集」など盛りだくさんの内容となっている。

 さらに、ミュージックビデオ3本(約4分)も収録。ただ、ミュージッククリップの音声が、ドルビーデジタル2ch 192kbpsとなっているのが残念なところ。加えて、なぜ隠しメニューにしているのかわからないが、隠しメニューとしてNG集が7分入っており、映像特典は計約235分に及ぶ。

 特典ディスクのメインコンテンツは、やはり「メイキング・オブ・『デアデビル』」。冒頭で、デアデビルの映画化を廻って、製作会社や監督が二転、三転していることが示される。また、デアデビルの舞台はニューヨークだが、ロサンゼルスをニューヨークに仕立て上げて撮影されていることがわかる。個人的に興味深かったのは、CGのペイント作業にPhotoshopが使われていることだ。

 悪役キングピン役を演じるマイケル・クラーク・ダンカンは、「デアデビルは裕福な地区で育ったわけでない。ぼくの生い立ちも似ているので、すごく共感が持てた」と語っている。ダンカンは、キングピンを演じるにあたり、さらに体重を増やすように言われ、食事とパワーリフティングで、さらに筋力と筋肉をつけたという。

 ベン・アフレックは、撮影開始の3カ月前から、格闘とフィットネスとトレーニング・プログラムを開始。ベン・アフレック、ジェニファー・ガーナー、コリン・ファレルの3人は、「チャーリーズ・エンジェル」などを手がけた香港のマーシャル・アーツ・アクションの専門家、ユエン・チュンヤンから、武術とワイヤーアクションの特訓を受けた。通常なら3カ月かかるところを、3人は数週間でマスターしたという。ガーナーとベンとファレルは、ほとんどのアクションシーンを自ら演じているとのことだ。

 メイキングの中では、アクション指導のチームが、こういうアクションをするという模範演技を役者に見せるために、撮影したビデオも出てくる。それを見ると、本編で役者が実際にやっているのに比べると、動きの切れがまったく違い、本職のすごさを垣間見ることができる。

 「スチルギャラリー」には、ストーリーボードなどを収録。通常、ストーリーボードはラフな絵で書かれていることが多いが、デアデビルのストーリーボードはアメコミ調でそのまま出版できそうなしっかりした仕上げがされている。

 しかし、DVDのパッケージの中には、「お詫び」と書かれた紙が入っおり、スチルギャラリーのメニューで「撮影風景」とあるのが、実際には「製作過程のデザイン画」となっているほか、ページ1、9、15が同じデザインになっていると訂正されている。初回限定なので、改訂されることもないだろうから残念だ。


■ パート2に期待

 はっきりいって、ストーリー的にはちょっと納得のいかない終わり方をしているが、「全米2週間連続No.1ヒット」(同社)ということなので、パート2が製作されることは間違いないと思う。映画版のストーリーの完成はそれを待ちたい。しかし、パート2が米国で公開されても、日本でも公開されるかどうかはわからないが……。

 デアデビルのDVDは、とりあえず本編だけ見たいのであれば、3,300円の通常版でまったく問題ない。しかし、デアデビルに多少なりとも興味があるのであれば、約235分もの映像特典を収録したディスクとセットになったアルティメット・エディションを購入しても、差額の1,400円分の価値を見出せるだろう。

 とはいえ、通常版でも、特典らしい特典がほとんど収録されていなかった「X-MEN2」に比べれば、音声解説が収録されているデアデビルの方が、DVDを購入したという充実感があることは確かだ。

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□20世紀フォックスのホームページ
http://www.foxjapan.com/
□「デアデビル」のオフィシャルサイト
http://www.foxjapan.com/movies/daredevil/

(2003年10月28日)

[AV Watch編集部/furukawa@impress.co.jp]



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