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第107回:転がる丸い岩、跳ねるトロッコ、猿の脳みそ
「インディ・ジョーンズ コンプリートDVDコレクション」

怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。


■ 最後の大物? 皮革風のケースで登場

アドベンチャーズ・オブ・
インディ・ジョーンズ
コンプリートDVDコレクション
価格:9,800円
発売日:2003年11月7日
品番:PDSA-1062
仕様:片面2層4枚
収録時間:計10時間以上
画面サイズ(本編):シネスコ(スクイーズ)
音声:(1)英語(ドルビーデジタル5.1ch)
   (2)日本語(ドルビーサラウンド)
発売元:パラマウントホームエンタテ
    インメントジャパン
 DVD市場が本格化したためか、「未知との遭遇」、「E.T」、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」など、ここ数年で'80年代の大物タイトルが出揃ってきた。そして2003年末、いよいよパラマウントが「インディ・ジョーンズ」3作品を投入。ずいぶん長く待たされただけに、クオリティが気になっているファンも多いだろう。

 パッケージは特典ディスク1枚を含む4枚組みで、ボックス内に4組のデジパックで収められている。標準価格は13,800円。ただし、年内は期間限定価格の9,800円で出荷されており、1枚あたり2,450円と廉価な設定だ。中には7,000円台前半で販売しているショップもある。

 出荷数も比較的多いようで、同じくファンが待ちに待った2002年9月発売の「バック・トゥ・ザ・フューチャー トリロジー・ボックスセット」と比べて、店頭で見かける頻度は高い。旧作かつボックスのみという製品形態ながら、しっかりと供給量を確保したパラマウントに、DVD市場への意気込みを感じてしまう。

 アウターケースは使い古された皮風のエンボス加工が施されており、作品のイメージに合った高級感を漂わせている。中のデジパックも紙質・デザインとも良い。イラストは同シリーズのポスターデザイナー、ドゥルー・ストゥルーザンの書き下ろしだそうだ。細かい意匠にも思い入れが感じられ、ファンにとって付加価値の高いケースとなっている。

 ただし、アウターケースにぴったりと巻きついている帯には苦労した。通常の帯と異なり、ケースの小口に挟み込む切れ目がない(両端が糊付けされている)ため、取り外すにはビリリと破るか、上下どちらかにずらすしかない。ずらすにしてもケースに密着しているため、なかなかスムーズにはいかない。折り目に沿ってカッターナイフで切り離すことも考えたが、万が一、ケースに傷が付いては大変だ。結局、時間を掛けながら、ちょっとずつ下にずらして外した。

 発売元では、こうした帯をビリっと破って捨てるものだと考えているのだろうか? 本ボックスの場合、帯にしか仕様の表記が見当たらないので、なるべくきれいな形でとっておきたかったのだが……。細かい話で恐縮だが、趣味性が高く高額な商品なので、DVDボックスはパッケージのすべてが思い入れの対象となるもの。帯を小口に折り込む手間とコストは理解できるが、もう少し考慮して欲しかった。



■ THXリマスタリングで蘇った画質。音声は今風のサラウンドに

 作品の公開は、「レイダース失われたアーク<聖櫃>」が'81年、「魔宮の伝説」が'84年、「最後の聖戦」が'89年。公開当時に大ヒットし、地上波でもこれまで何度も放映されたので、ストーリーについては、今さら説明するまでもないだろう。

 今回、DVD化の品質管理をルーカス・フィルムのTHXで行ない、マスターにはデジタル修復が施されたという。「スター・ウォーズ エピソード I ファントム・メナス」においても、丁寧なデジタルリマスターを行なったルーカス・フィルムだけに、クオリティ面での期待は高い。

 実際、3タイトルとも予想以上の高画質だ。最近の公開作ほどではないものの、輪郭がきりっとしており、それほど年代を感じさせない。ノイズについても、平均輝度の低いシーンや単色面以外では、さほど気にならないレベル。コントラストも高く、地上波放送やレンタルVHSでは得られない抜けの良い画質を楽しめる。

 もっとも、にじみや圧縮ノイズを感じるシーンも一部で見受けられる。とくに、ワイドショットでの煮詰まったような画質は、マスターの古さからくるものだろうか。とはいえ、年代を考えれば驚くほど高画質なので、購入を考えている方は安心して欲しい。

 あえて順位をつけるなら、公開年が近い最後の聖戦が最もきれい。レイダースはマスターの古さからか、輪郭の甘さを感じるシーンが多い。しかし、ミドルショットやクロースアップだと、最近の作品と見違えるほどのコントラストに驚く。もっとも厳しいのは暗いシーンの多い「魔宮の伝説」だが、それでも赤の鮮やかさや、岩肌などに見られる豊かな階調性に感心した。

 なお、3タイトルともセットアップメニューにTHXオプティマイザーを収録している。内容はスター・ウォーズ エピソード IIなどに入っていたものと同等。DVD Bitrate viewer 1.4で見た平均ビットレート(映像+音声)は、レイダースが8.8Mbps、魔宮の伝説が7.44Mbps、最後の聖戦が6.83Mbpsだった。

「インディ・ジョーンズ レイダース失われたアーク<聖櫃>」の平均ビットレート
「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」の平均ビットレート
「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦」の平均ビットレート
※すべてDVD Bitrate viewer 1.4で計測

 音声は全タイトルともドルビーデジタル5.1ch。最近は、古い作品をDVD化する際、5.1chへのリミックスが盛んに行なわれているが、単純に残響が増しただけの中途半端なものが見受けられるなか、そのクオリティが気になる。音声ビットレートは、3タイトルとも英語が448kbps、日本語はドルビーサラウンドの192kbps。

 結果的には、3タイトルとも十分満足できるレベルだった。レイダースでは前方から後方、または後方から前方に抜ける効果音が多いが、まるで最新のサウンドステージのような移動感が得られている。最後の聖戦では、後方から包み込むように迫るプロペラ機の低音が大迫力。レイダースと最後の聖戦でアカデミー音響効果賞を受賞したほか、幾分誇張された効果音で有名な同シリーズだが、今回の5.1ch化についてもファンの期待に十分こたえたといえるだろう。また、全周囲から鳴るジョン・ウィリアムスのテーマ曲も、張りと厚みがあって大迫力。これを聴くだけで、ファンなら感激してしまうはずだ。

 なお3作品とも、公開版と比べていくつか修正点が見られる。正確な数と場面は公表されていないが、たとえば、レイダースでハリソン・フォードとコブラを仕切っていたガラスの映り込みなどが、自然な形で修正されている。公開時と異なる画を気にする向きもあるが、フィルムの傷修正を含め、作品のクオリティを向上させる努力として、個人的には歓迎したい。

 それでいて、ベロックの口の端にハエが入っていくシーンはそのまま収録。左手前から右奥に移動するかすかなハエの羽音にもにやりとさせられる。わざわざ音を入れた(残した?)ということは、THXも公認のアクシデントなのだろう。



■ 完成度の高いメイキング映像

 特典ディスクの大半を占めるのは「Indiana Jones:Making the Trilogy」というコンテンツ。基本的にはスティーブン・スピルバーグ(監督)とジョージ・ルーカス(脚本・製作総指揮)のコメントをメインに、当時の撮影風景やストーリーボードなどを紹介したもので、内容はとても充実している。詳細は見てのお楽しみだが、舞台裏紹介のコンテンツとしてはとても真摯な内容で、資料性も高い。

 両人以外にも、フランク・マーシャル(製作)、マイケル・カーン(編集)、ハリソン・フォード(インディ役)、カレン・アレン(マリオン役)、ケイト・キャプショー(ウィリー役)、キー・ホイ・ウァン(ショート・ラウンド役)、ショーン・コネリー(ジョーンズ教授役)、リバー・フェニックス(ヤングインディ役)など、主だったスタッフや役者が顔を出す。それぞれ相応に年をとった中、スピルバーグとショーン・コネリーだけあまり変わっていないのが可笑しい。

 また「インディジョーンズの特殊効果」では、ちょっぴり太ってしまったILMの御大、デニス・ミューレンが登場。CG処理が一切なかった頃に作られた同シリーズの特殊効果を解説する。たとえば、魔宮の伝説の見せ場の1つ、トロッコシーンはミニチュアセットで撮影されており、人形を乗せたトロッコの模型を走らせていた。問題は撮影方法だが、トロッコに乗せるための小型カメラがない。そこで、改造した35mmのスチルカメラを取り付けて撮影したという。こうしたアイデア勝負のテクニックのほか、「猿の脳みそ」の原料など、ユニークな製作秘話が聞ける。

 そのほか、スタントや効果音にスポットを当てたコンテンツもある。ストーリーボードやアニマティクス(アニメーションやCGによるプレビジュアライゼーション)を単体で扱ったコンテンツはないが、基本コンテンツのMaking the Trilogyでいくつか見られる。

 残念だったのは、2005年ともいわれる最新作の情報がほとんどなかったこと。唯一、ジョン・ウィリアムスが「4作目にも関われたらいいねえ」と、思わせぶりなコメントをしただけだ。期待していただけに少しがっかりした。また、ルーカス、スピルバーグコンビによる3作品の長大なコメンタリーなどあれば、感激だったのだが……。

 なお、DVD-ROMコンテンツは、DVDをパソコンにセットしていないと閲覧できない、公式サイト(英語)の隠しページ。内容は、「Behind the Scenes」(撮影風景のスチル)、「Concept Art」、「Poster Art」、「Animatic」など。アニマティクスはレイダースから、ゲシュタポのトードが溶けるシーンをQuickTime形式で視聴できる。



■ 待ったかいはあった……

 画質、音質とも満足できる内容で、特典も充実。オマケがついてないことに寂しさを感じるが、価格も含め、ボックス物としては完成度の高いパッケージといえる。'80年代アクション作品のファンには間違いなくお勧めのボックスだ。エンコード技術の進歩により、待たされた方がかえって良かったのかもしれない。

 大作のDVD化もあらかた出尽くした感があるが、残るはスター・ウォーズ3部作か。20世紀FOXには、次世代パッケージメディアの足音が聞こえる現在、早めのリリースを期待したい。

TM & (C) 1981, 1984, 1989, 2003 Lucasfilm LM. All Rights reserved.Used Under Authorization. Paramount logo (R) is a registered trademark ofParamountPictures. Pacage Design Copyright (C)2003 by ParamountPictures.All Rights Reserved.

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(2003年11月11日)

[AV Watch編集部/orimoto@impress.co.jp]



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