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第109回:北村監督による142分のSWORD ACTION!
特典を満載した「あずみ デラックス・エディション」

怒涛のように発売されつづけるDVDタイトル。本当に購入価値のあるDVDはどれなのか? 「週刊 買っとけDVD!!」では、編集スタッフ各自が実際に購入したDVDタイトルを、思い入れたっぷりに紹介します。ご購入の参考にされるも良し、無駄遣いの反面教師とするも良し。「DVD発売日一覧」とともに、皆様のAVライフの一助となれば幸いです。


■ 公開後6カ月でDVD化!

あずみ
デラックス・エディション
価格:5,800円
発売日:2003年11月19日
品番:ASBY-2381
仕様:片面2層2枚
本編収録時間:約142分
画面サイズ(本編):ビスタ(スクイーズ)
音声:日本語(ドルビーデジタル5.1ch)
   日本語(ドルビーサラウンド)
   日本語(DTS)
字幕:日本語、英語
発売元:小学館/東芝エンタテイメント
販売元:アミューズソフト販売
 今回は取り上げるDVDは、「あずみ」。映画版あずみは、総発行部数約800万部の漫画を原作にして、北村龍平監督が上戸彩主演で撮るという、旬な布陣で制作された映画だ。

 劇場公開が5月10日なので、わずか半年余りでDVD化されたことになる。DVDの初期の頃からするとかなりのスピードリリースのような気もするが、昨今の新作映画のDVD化ペースを考えると、群を抜いて早いというわけでもない。

 最近のDVDリリースは、「世間に忘れられる前にDVDを発売しておきたい」というような意図が透けて見える部分もある。DVDの消費者としては、安く・早く入手できることは歓迎すべきことだが、なんとなく売り急いでいる感もある。映画が凄い勢いで“消費”されている寂しさも、感じないではない。

 話をあずみのDVDに戻すと、最近のDVDの傾向どおりに「スタンダード・エディション」(4,800円)と、初回限定生産の「デラックス・エディション」(5,800円)の2種類が用意されている。本編ディスクについては、スタンダード・エディションとデラックス・エディションともに同じ仕様。デラックス・エディションには映像特典を収録した「DISC2」がセットになっているというのが、最大の相違点になる。加えて、デラックス・エディションはデジパック、特製クリアケース仕様で、封入特典も収められている。

 4,800円/5,800円という価格は、ハリウッド映画のDVDに比べると割高ではあるが、邦画のDVDとしては妥当な価格設定だろう。妥当だと思う時点で、DVDメーカーの思う壺なのかもしれないが……。

 実際にショップに買いに行ったところ、そこの店頭にはデラックス・エディションしか並んでいなかった。「セルDVDの購入層だとデラックス・エディションしか買わない」という判断なのだろうか。確かに、千円の価格差で「この作品名ならスタンダード・エディションでかまわない」と思う人の大半は、レンタルで済ましてしまいそうだ。

 結局、ショップの思惑通り、デラックス・エディションを購入した。



■ 北村監督による、142分の「SWORD ACTION」

 あずみは、'94年からビックコミックスペリオール(小学館)で連載が開始され、現在も連載が続く小山ゆうの漫画。単行本の総発行部数は約800万部(1巻~25巻)を越える、ベストセラーとなっている。映画化にあたって、小山ゆうは「アニメ化、実写映画化の打診があり、迷わず実写映画化を希望した」という。

 戦国時代末期。徳川家康は将軍の座に君臨するために、豊臣秀吉の遺児である秀頼に最後の攻勢を行なった。しかし、そこで生き残った豊臣方の兵は、秀頼が成人するのを待って再度蜂起する夢を持っていた。

 家康に近い南光坊天海は、「世の中から権力奪取の夢を見る者を取り除かない限り戦が終わることはない」と考え、その芽をすべて摘み取るべく、小幡月斎に少数精鋭の暗殺集団を育てるという密命を与えた。

 戦乱で親を失った、幼子「あずみ」。小幡月斎はあずみに素質を見出し、その目的のために選ばれた9人の仲間とともに、過酷な修練のもとで育てた。10年後。あずみは、名実ともに最高の剣の使い手に育ち、女性剣士あずみが誕生した。機は熟し、小幡月斎は10人に今後の使命を宣言。10人は希望に燃えるが、彼らには残酷な最初の使命が待ち受けていた――。

 主役のあずみを上戸彩が演じ、監督は「VERSUS - ヴァーサス -」で世界中の注目を集め、最近では「ALIVE」や、「スカイハイ(劇場版)」などを監督している、北村龍平という豪華な顔合わせ。そのほかの出演者も、石垣佑磨、成宮寛貴、金子貴俊、永山瑛太の若手の注目株に加え、オダギリジョー、佐藤慶、原田芳雄、松本実など充実した布陣だ。

 北村龍平監督ということで、とにかくカッコイイ殺陣がふんだんに盛り込まれている。ハリウッド映画のアクションシーンにない、日本的な動きのカッコよさが繰り広げられる。ほとんどのシーンは吹き替えなしで、本格的な殺陣は初めての上戸自身が演じているのだが、想像以上に決まっている。

 さらにほとんど背景の説明もなく登場する美女丸を演じるオダギリジョーが、バラを片手にオネエ言葉をあやつり、見事な切れっぷりを見せるのも、この映画の見所だ。ただ、全体的なCGや合成技術は高く使われていることを感じさせないのだが、一部の炎の合成がリアルさに欠けているのが残念なところ。また、本編の時間は142分と最近の映画としてはかなり長いが、それでもあずみの世界観を描くには足りなかったように思う。

 なお、原作の漫画では時代設定上、10人全員が黒髪なのだが、映画ではほとんどが茶髪だったりするので、「時代劇」としてみると辛いかもしれない。やはり、「時代劇」ではなく、「SWORD ACTION」として見るのが正しい鑑賞方法だろう。


■ 3時間を越える特典を満載

 DVD Bitrate viewer 1.4で見た本編のビットレートは、142分と長尺なこともあり6.58Mbpsとそれほど高くはない。映像はビスタサイズをスクイーズ収録する。2002年の撮影ということで画質は総じてクリアだ。そのため、回想シーンでは本筋と見分けがつくように、あえてザラつきのある映像にしていることも、如実にわかる。

 ただ、フィルムの質感よりは、シャープで高彩度な画質を志向しているためか、一部の炎の合成などでは一見しただけで合成したことがわかってしまった。また、血の色に深みがなく、うそっぽい色調になっているのも気になった。

 映画の中ではアクションシーンが多いので、MPEG-2圧縮が苦手とする登場人物もカメラも高速で移動するシーンが数多くある。そんなシーンでも破綻することはほとんどなかったので、エンコード自体は優秀だ。

 音声はドルビーデジタル5.1ch(448kbps)、ドルビーサラウンド(224kbps)、DTS(768kbps)の3種類を収録する。ドルビーデジタル5.1chとDTSの差は、聞き比べてもほとんどなかった。それはドルビーデジタルの5.1chの質が高いというよりも、全体的に臨場感満点で大迫力という印象がなく、5.1chを使い切っているという感じがなかったためだろう。

 また、わずかに高音がかすれ気味で、あずみのセリフで聞きづらいところがあった。アクションシーンの多い映画なので、サウンド面では、もう少し迫力のある聞きどころを用意して欲しかったというのが正直なところだ。

 本編が入っているDISC1には、本編が2時間を越えていることもあり、映像特典としては劇場予告、TVスポット、北村龍平監督監修のシーンチャプタ&アクションチャプタのみが収録されている。シーンチャプタ&アクションチャプタでは、北村監督が選んだ見どころシーンに、直接ジャンプできるようになっている。

DVD Bitrate viewer 1.4でみた平均ビットレート

 一方、デラックス・エディションにのみ付属する特典ディスクのDISC2には、3時間を越えるコンテンツが収録されている。その中でもメインコンテンツは、原作者・スタッフ・キャスト13名の映像証言を交えた「BATTLE ON THE WILD SIDE」(85分)と、上戸彩、オダギリジョーのインタビューも満載した「Making of AZUMI ~ Fighting on the Edge」(41分)の2つだ。DVDの特典映像というと、ありものの映像を適当につないだだけの面白くないものも多いが、あずみの特典ディスクは見ごたえのある、内容に仕上がっている。

 BATTLE ON THE WILD SIDEの内容は、北村監督と山本プロデューサのとても男臭いやり取りがメイン。北村監督は「あずみのファンで、是非とも映画をやりたかった」とのことで、「『戦国版 マッド・マックス』をやりたかった。娯楽活劇を作りたい、いい映画なんて作りたくない」と、強烈なまでのエンターテイメント至上主義を展開する。

 あずみのキャスティングについては、北村監督と山本プロデューサ、原作の小山ゆうの3人とも、上戸彩でいくことで一致したという。北村監督は「最初から、なるべくスタントなしでやる」と決めていて、実際アクションシーンの90%以上は上戸自身が演じていることや、最初に出来上がった編集では3時間7分だったが、監督とプロデューサの激しいやり取りの上で、142分になったことも明らかにされる。

 ちなみに、小山ゆうの背後のラックにソニーの「コクーン」と東芝の「RD」らしきものが見える。本人曰く、「映画好きが高じて、自宅にプラズマテレビを持っている」ということなので、おそらく自宅で撮影されているのだろう。また、「映画から漫画に影響を受けた部分もある」と話していた。

 Making of AZUMI ~ Fighting on the Edgeでは、この映画の最大の見せ場、史上最大という「200人斬り」の裏側が紹介されている。冒頭には、撮影初日1カット目に、上戸が額を怪我をするシーンが収録されている。監督は「これで終わりか」と思ったそうだが、上戸は「大丈夫です。すぐやります」とすぐに撮影に戻ってきたという。上戸が「1回当たったので、その後はどうにでもなれと思った」と話していたのが、印象に残る。

 200人斬りのシーンの撮影には、座頭市で使われたオープンセットを改装して利用、国内最大のクレーン「ストラダ」も使用されている。「衣装は、普通の時代劇だとNGだということをやる」ということで、奇抜なファッションも多い。撮影シーンをみていると、実際にかなり速い速度で殺陣をやっているのがわかって興味深い。

 ちなみに、200人のほとんどは京都の撮影所のベテランだが、最大の注目は、メタルギアシリーズでお馴染みの小島秀夫も出演していること。「見学に来ていたんだけど、記念に出てみた」という。

 映像特典としては、この2本のほかにも、劇場公開時にTBSで放送された「あずみ 解体真書~あずみの戦国時代クイズ」や、山陽放送の「国司憲一郎の元気一番~みろくの里 あずみロケレポート」、主題歌「ねがい」(我那覇美奈)プロモーションビデオ、静止画資料集なども収録されている。



■ もう少し安ければ薦められるのだが……

 デラックス・エディションは4面開きのデジパック仕様で、特製のクリアケースに収納されており、なかなか高級感のある仕上がりだ。さらに、カラーフォトブックレット(16ページ)に加え、特別試写会などで配布された、ビッグコミックスペリオールの連載初回を収録した「あずみ」特別編集号(44ページ)も封入されている。

デジパックを開いたところ

 パッケージングとしては価格分の価値を見出せるだろうが、やはり邦画で5,800円となると購入する人が限られると思う。邦画に積極的に取り組むアミューズとしては、価格を低くして邦画のDVD市場を広げてほしいのだが……。

 また、DVDの仕様として残念なのは、オーディオコメンタリーが収録されていないこと。熱い北村監督としては、語りたいことがいっぱいありそうなので、その思いを音声解説として聞きたかった。


●このDVDについて
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前回の「風の谷のナウシカ」アンケート結果
総投票数1,655票
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835票
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買いたくなった
634票
38%
買う気はない
186票
11%

□アミューズソフト販売株式会社のホームページ
http://www.amuse-soft.co.jp/
□製品情報
http://www.amuse-soft.co.jp/azumi/index.html
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-通常版は4,800円、2枚組みのデラックス版は5,800円
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030811/amuse.htm

(2003年11月26日)

[AV Watch編集部/furukawa@impress.co.jp]



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