■ とうとう出たUSBストレージ対応の小型HDDプレーヤー 新しいタイプのHDDオーディオプレーヤーとして、にわかに盛り上がりつつあるのが、1インチHDDを搭載した小型プレーヤー。第1弾として登場したRio Japanの「Rio Nitrus」については既にレポートした。iPodやgigabeat G20など1.8インチHDD搭載のHDDプレーヤーと比較して大幅な小型化が図れるため、大容量と小型化のバランスが非常に良く取れており、1インチHDDプレーヤーの今後に大いに期待を抱かせる仕上がりだった。 Nitrusにやや遅れて登場した、クリエイティブメディアの「NOMAD MuVo2(ノマド ミューボ スクウェア)」は、同様に1インチHDDを搭載したオーディオプレーヤーながら、USBストレージクラスに対応するという、強力な特徴を備えている。
通常のHDDオーディオプレーヤーでは、著作権管理への配慮から、データとオーディオをシームレスに転送できるストレージクラス対応の機種はほとんど無い。しかし、ユーザー側からすれば、転送時の使い勝手がいいという点では、USBストレージ対応ほど楽なものは無い。 さらに交換可能なバッテリを採用するなど興味深い特徴も多い。しかし、当初10月上旬発売予定としていたが、ファームウェアの改良などで発売を延期。そのため約2カ月遅れの11月28日に発売となった。 実売価格は約28,800円。当初は競合製品となるRio Nitrusが実売39,800円(発売時に約34,800円に値下げ)と高価だったこともあり、割安感があったが、NitrusもMuVo2の発売に合わせて29,800円まで値下げしたため、価格的アドバンテージはほとんど無くなった。そのため、購入を左右するのは、USBストレージクラス対応など、MuVo2の特徴にどこまで魅力を感じるか、といった点になるだろう。
■ 小型/軽量の筐体。バッテリ交換に対応
パッケージは小型のブリスターパック。同梱品は、USBケーブルや保護ケース、USBケーブル、ACアダプタ、ネオジウムマグネット採用イヤフォンなどが付属する。 外装はプラスチックを利用しており、とても軽量だが、ややチープな手触り。外形寸法は67×20×66.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約71g(本体のみ)/93g(バッテリ搭載時)。操作ボタンは、メニュー操作や曲送り/戻りなどの操作が行なえる[MENU]ボタンと、再生コントロールボタンの2つとシンプル。 本体上面にヘッドフォン端子と、USB 2.0コネクタ、電源コネクタを装備。左端にはストラップホールも備えている。ヘッドフォン端子には、リモコン用のコントロール端子も備えており、ファームウェアのアップデートにより、Zen NXシリーズなどと共通のFMチューナ内蔵ワイヤードリモコン「DAP-WR0003」(6,980円)に対応する。 本体の液晶はシリコンオーディオプレーヤー「MuVo NX」などとほぼ同サイズで、最近のHDDプレーヤーとしては小型のもの。バッテリは交換式で、容量は900mAh。オプションバッテリ「DAP-MVAB1」の単体販売も、同社直販サイトで行なっており、価格は5,700円。
■ USBストレージ対応で転送は高速。動作も軽快
パソコンとの接続は、USB 2.0で行なう。転送は付属のソフトウェア「Creative MediaSource」のほか、PCからのドラッグ&ドロップにも対応する。対応OSはWindows 98 SE/Me/2000/XP。 「MediaSource」は、CDDBをサポートし、WMA/MP3/WAVE形式でのリッピングに対応。プレイリストの作成も行なえる。1.16GBのデータの転送速度は、MediaSourceが12分21秒、USB 2.0が8分30秒。 USB 2.0/1.1で本体とPCを接続すればデータドライブとして認識されるため、パソコンとの親和性は非常に高い。そのままドラッグ&ドロップで、フォルダ階層を維持したまま転送が行なえるので、パソコンユーザーには非常にわかりやすい。対応オーディオ形式は公式にはMP3/WMAとなっているが、WAVEファイルを転送したところ、特に問題なく再生された。
基本操作は、MENUボタンと、電源/再生ボタンで行なう。MENUボタンを押し込むとメインメニューが立ち上がり、上下左右で設定メニューを選択、再生モードやイコライザなど、各種の設定が行なえる。 再生タイプはフォルダモードとプレイリストモードが選択できる。フォルダモードで、MENUボタンの左右を操作することで、アルファベット順→かな順で、フォルダを順次表示でき、ボタンの長押しでフォルダ選択。そこで、再生ボタンを押すと再生がスタートする。再生曲順はタグ情報の順となっている。
プレイリスト再生も同様に、任意のプレイリストを選択し、再生ボタンを押すだけで再生が行なえる。プレイリストはM3U形式で、転送したオーディオデータの中からMediaSourceを利用してリストを作成する。 再生中にMENUボタンの上下を押すことで、ボリュームコントロールが可能。大容量のデータを転送した後や、USBモードからの復帰後に最初に起動する際は、10数秒程度のロード時間が必要だが、その他の操作で待たされることは皆無といってよく、非常に軽快に動作する。 操作自体は、同社のUSBメモリ型オーディオプレーヤー「MuVo NX」などに非常に良く似た印象。本体の液晶は日本語表示にも対応するが、2行(ステータス表示含め3行)までしか表示できないため、アルバムなどの一覧性は低い。しかし、操作自体がシンプルなので特に戸惑うことは無かった。 再生モードは、リピート再生やシャッフル再生に対応するが、フォルダ階層をまたいだシャッフル再生ができないのがやや残念なところ。イコライザは、ロック/ポップス/クラシック/ジャズの4タイプと、カスタムモードが用意される。
■ 音質はまずまずだが、付属のヘッドフォンはダメ
付属のヘッドフォンは、ネオジウムマグネットを採用したというインナーイヤー型。まずはこれを利用して聞いてみたが、SN比が悪い。特に低域が出ないだけでなく、音の質感、再現性など非常に不満の残るものだ。 ヘッドフォンを変更して聞いてみると、本体の再生性能は悪くなく、さまざまなタイプのソースをそつなくこなす印象。ZenやMuVo NXなどに付属のものと比較してもMuVo2付属のものはかなり性能が低いように感じた。普段の利用でもヘッドフォンを変更したほうが音楽をより楽しむことができるだろう。 また、ACアダプタのほか、USB経由でも充電が行なえるというのも特徴。MuVo2をパソコンと接続し、パソコンのエクスプローラ画面から右クリックで[取り出し]を選択すれば、充電が開始される。充電時間は約5時間。なお、USBからの充電中はプレーヤーの操作は行なえない。 バッテリは交換可能で、付属バッテリの再生時間はカタログ値で10時間。実際にテストしたところ、8時間強の連続再生が可能だった。
■ 結構違うRioとMuVo2の位置づけ 機能的にはシンプルで、軽快な操作感は、HDDオーディオプレーヤーの中でも最良の部類に入るだろう。また、USBストレージクラス対応による、高速な転送などパソコンユーザーにとっては非常にわかりやすいシステムも使い勝手の向上に寄与している。 競合となるのは、Rio Nitrus/Eigenだろうが、それらと比較すると、設計思想に大きな違いを感じた。Rio Nitrusは、現在の1.8インチHDD搭載のオーディオプレーヤーの市場を侵食していくものという印象で、大容量化も期待がかかる。一方、MuVo2は、軽快な動作感と小型の液晶ディスプレイから、“シリコンオーディオプレーヤーの上位モデル”という印象だ。 MuVo2の小型の液晶の小ささからは、5GB/10GBなど大容量化された際のデータの一覧性は期待できない。しかし、この動作の軽快さはHDDプレーヤー随一のもの。ストレスなく利用できるというのは大きいと思う。 実売価格は28,800円程度で、256MBのシリコンオーディオプレーヤーと比較してやや高い程度の手の届きやすい価格だ。とはいっても競合のRio Nitrus/Eigenも実売29,800円と値段を下げてきており、どちらを選ぶかは悩みどころだ。 結局、購入の決め手となるのは、MuVo2のストレージクラス対応の気軽さ/動作の高速性にどこまで魅力を感じるかというところだろう。Rioも対抗して値下げするなど、1インチHDDプレーヤー市場でも本格的な競争をスタートさせたという意味でも重要な製品だ。 □クリエイティブメディアのホームページ (2003年12月5日)
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