【2月5日追記】
今年の初めだったろうか、ある友人からこんなのあるけどどうかなぁと相談されたレコーダがあった。PC自作派にはお馴染み、ガチャポンシステムでHDDが入れ替えられるのだという。そのときはスペックを見て、DVDがレコーダじゃないということで勧めなかったのだが、同じ頃、編集部でもこのレコーダを発見、チェックを入れていたらしい。 そのレコーダとは、家電量販店ノジマのEコマース会社「株式会社イーネットジャパン」(い~でじ!!)が楽天などで販売する「PVR-80HD」である。当初39,800円で予約を受け付けていたが、現在は49,800円で販売しているようだ。 デジタルレコーダで録画した番組は、定期的に消去するか、マメにDVDに保存するしかない。このHDDが簡単に交換できたら、とは誰しも考えることだ。実際に市販のレコーダのHDDを載せ替えたという例もWEB上で見かけたりすることから、そのような需要はあると考えていいだろう。 もちろん普通は箱を開けてHDDを交換すれば、当然保証対象外になるわけだが、最初から交換できることを前提にしたレコーダならば、思う存分交換できる。リテールHDDの価格を知っている人からみれば、わざわざ手間をかけてDVDに焼くよりも、リーズナブルに思えるかもしれない。 今回はそんなPVR-80HDをテストした。 ■ 思ったより普通のデザイン
ガチャポンでHDDを交換できることから、かなり荒っぽい作りを想像したのだが、本体の外観はそれほど悪くない。大きさとしては普通のDVDレコーダとほぼ同等だ。 フロントパネルはシルバーの樹脂製で、左側にDVDドライブ、右側にHDDを格納する。左右対称のデザインだが、扉が開くのは右側だけ。HDD部分には青く光るFL表示部がある。 左角にあるのがSTANDBYボタン、右角には上から、DVDドライブのOPEN/CLOSE、PLAY、STOP、FUNCTIONボタンがある。本体は中国製だが、元々欧州向けの製品ということで、表記は全部英語になっている。
FL表示部を引っ張ると扉が開き、リムーバブルHDDケースが取り出せる。使用できるHDDはIDEだが、コネクタは昔の50Pin SCSIと同型。余ったピンで電源も供給するという、リムーバブルケースにはよくあるタイプだ。
ケースの上蓋は後ろにずらすと簡単に開く。標準で80GBのHDDが入っているが、中身は日立の「Deskstar HDS722580 VLAT20」、7,200rpmのものだ。前面には冷却用ファンが付いている。ちなみにこのHDD、まったくネジ止めされておらず、ひっくり返すとポロッと簡単に出てくる。輸送中にはそうとうガタガタしたと思うが、こんなんで大丈夫だろうか……。 それ以外にはRF入力とそのスルー、そしてPCとのリンク用にUSB 2.0端子がある。ヨーロッパで多く使われているSCART端子もあるが、ケーブルが付属しないため、そのままでは使用できない。ていうかそもそも付属ケーブルはコンポジット+オーディオLRの3ラインおよびRFケーブルのみで、それ以外の端子で接続を行なう際は、自分でケーブルを用意しなければならない。
リモコンも見てみよう。一見すると普通のHDDレコーダ用リモコンと大差ないが、OSDやPBCといった略号ボタンがある。またワールドワイド仕様であるため、NTSCとPALの出力切り替えもリモコンの目立つ部分にあるのは珍しい。もちろんこれも表記は全部英語だ。 ■ こっ、これは……
では実際に使ってみよう。起動すると画面には「TOP MENU」が表示される。「Play DVD」はDVD再生、「SmartNAVI」がHDDの録画コンテンツにアクセスするメニューだ。「Live Video」はOA中の番組をそのまま表示する。 まずは「Setup Menu」でチャンネル設定を行なう必要がある。というのもPVR-80HDは日本国内専用の製品ではないため、地域別チャンネルプリセットみたいなものがないからだ。 「Auto Scan」で見つかったチャンネルには、周波数の低い方から見つかった順で番号が振られる。つまり東京ならば日本テレビは4とか固有の数字があるわけだが、そういうものとは全然関係ないチャンネル番号が振られることになる。
もちろんそれでは不便なので、「Channel Setup」で数字と放送局を合わせるために順番を移動させる必要がある。だがそのままでは「Channel 3」とか適当な名前が付いているだけなので、どれがどのチャンネルなのか実際に映してみて、名前を付けておかなければならない。初期設定は結構めんどうだ。 録画品質はXPからEPまでの4段階。実際に録画して解像度を調べてみたところ、マニュアルの記述と違っている。そーら雲行きが怪しくなってきた。
いつもの画質評価サンプル画像ではわかりにくいかもしれないが、実際の番組を録画してみると非常にS/Nが悪い。エンコーダのブロックノイズなどは感じないが、最高画質のXPでも色むらを感じる。おそらくチューナの性能が低いのではないかと思われる。
またこのチューナ、ステレオ放送が受信できず、すべてモノラルになってしまう。国内製品では、いまどきあり得ない仕様だ。オーディオ出力は5.1chだが、これはDVD再生のためにある。なお設定にはドルビープロロジック IIがあり、これがONになっていると一瞬ステレオで録画できたかと誤解してしまう。 予約システムを見てみよう。もちろんEPGなど付いているはずもないので、予約はすべて手動で入力する。「Create Record」メニューで日時とチャンネルなどを入力していくのだが、チャンネルには入力した名前でなく番号しか出てこないので、最初にきちんと放送局とチャンネル番号を合わせておかないとエラいことになる。また番組ファイル名は自分で決めることができず、録画日時となる。 録画された番組は、「SmartNAVI」から再生する。番組名は日付と時刻になっているが、ファイルを選ぶとサムネイル画像が音声付きで再生されるので、番組を探すにはさほど不便はない。
■ やっぱり「超禁断」
HDD内部には自由にフォルダを作ることができ、MP3を記録したCD-Rなどから音楽ファイルをHDDへ転送して聴くことができる。もっとも搭載ドライブがDVD-ROMなので、それから何かが焼けるわけでもなく、本当にただ聞くだけだ。 またコピーの仕方もちょっと特殊で、あらかじめ「SmartNAVI」でコピー先のフォルダを設定してからいったんメニューを抜け、それから「Play DVD」メニューでファイルを選んで「OSD」ボタンでコピー、という、なんだか箸1本で飯を食うみたいな使い勝手だ。3日も経てば忘れちゃいそうな手順である。 DVDの再生機能は、さすが中国製を思わせる内容だ。まず、ガツーンとリージョンフリーである。筆者がUSから買って来たリージョン1のDVDもあっさり再生された。さらに、ここに書くのははばかられるような驚く機能もあり、さすが自ら「超禁断」を謳うだけのことはある。 ただし録画映像は、コントラストが乏しく、セットアップは浮き上がって潰れ気味、白も飛び気味の映像となる。我慢すれば見られないこともない、という程度だ。
またこのレコーダは、USB 2.0でPCと接続できる。あらかじめUSBケーブルでPCと接続しておき、「PVR Control」の「Disk Tools」から「Use USB」を選ぶと、レコーダが再起動してUSB動作モードになる。 PCからはUSB接続のHDDという形でマウントされ、ファイルの転送などもまったく自由だ。だがこの間、本体はまったくリモコン操作を受け付けなくなる。 ■ 総論
いろいろ試してみた結果、控えめに言ってもPVR-80HDはあまり素性がよろしくないと言えよう。これだけレコーダ製品が高度に発展した日本で、ここまで豪快な製品が平気で手に入ること自体、ある意味「貿易国家ニッポン」の底力を見る思いだ。 HDDが交換できるところなど、目の付け所は悪くないが、それ以外の部分がまったく使えない。画質も良くないし、音声がモノラルなどチューナの品質も低すぎる。これならば、そこそこ名の知れたキャプチャカードを使って自作PCで同じような仕様のものを作った方が、まだちゃんとしたものができるだろう。 そう言う意味では、このぐらいの製品なら今のアキバのショップなら独自ブランドで作って出せるのではないだろうか。レコーダと割り切れば大した性能はいらないし、一番コストがかかりそうなのはケースだろう。日本で作ったら人件費などが高いが、それでも頑張ればPVR-80HDと同スペックでヨンキュッパぐらいはイケルのではないか。 しかし改めて思うに、やはり日本製のレコーダというのは国内事情に合っているのは当然ながら、製品としてレベルが高いことを改めて認識させられた。安心して使うには、国産でちゃんと話がわかるところの製品を買ったほうが無難、という結論に行き着いたのだが、どうだろうか。分解してみました(編集部)
□ノジマのホームページ (2004年2月4日)
[Reported by 小寺信良]
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