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第133回:Rolandグループが新製品を発表
~ 24bit/192kHz対応低価格FireWireインターフェイスなど ~


 ここ何年か、年に3、4回という早いペースで新製品をリリースし続けているRolandグループだが、今年も2月10日にRolandグループ3社の発表会が行なわれた。

 今回発表された製品は、1月にアメリカで開催されたNAMM Show 2004で発表されたものの国内でのお披露目という位置付けだ。FireWire対応のオーディオインターフェイスや、17万円という低価格ながらCD-RWドライブ搭載で20トラックを装備したDAWなど興味深い製品がズラリと勢揃いした。Roland、EDIROL、BOSSの3社で発表したのは計20製品にもおよぶ。


■ 低価格FireWireインターフェイス「FA-101」

FA-101

 今回の新製品の中で最も興味深かったのが、EDIROLのFireWire対応のオーディオインターフェイス「FA-101」だ。FireWire AUDIO Captureの略でFAとのことだが、最大24bit/192kHzでの録音・再生を実現したという製品。独立で10chの入出力を備えている。

 以前にも紹介したUSB 2.0対応のオーディオインターフェイス「UA-1000」が24bit/96kHzで10in/10outだったので、スペック的にはFA-101のほうが上に見える。また、価格的にはオープン価格ながら店頭で5万円台半ばになるとのことで、割安感がある。

 ただし、UA-1000が1Uのラックマウントサイズになっているのに対してFA-101はハーフラック。FA-101はadatインターフェイスが搭載されていなかったり、ファンタム電源対応でマイクプリアンプ内蔵の入力端子が2つなどUA-1000より劣る面もあるので、一概にどちらが上とはいえないようだ。

FA-101のブロックダイアグラム

 ブロックダイアグラムを見ると、入出力の構成がよくわかるだろう。アナログが8in/8outでOpticalのS/PDIFの入出力も備えるとともに、MIDIも1系統の入出力が搭載されている。

 ドライバはMac OS X用のCoreAudio、CoreMIDI、そしてWindows XP用のWDM、ASIO 2.0に対応している。このうち、CoreAudioはOS標準のドライバで動作するが、実は現在のOSでは未対応で、近日中のOSアップデートにより動作するようになる予定。これによって、FA-101に限らず、先日NAMM Showで発表された各FireWireオーディオ製品が動作するようになると思われる。なお、FA-101の発売は4月中旬が予定されている。


 さて、ここで気になるのが24bit/192kHzでの同時入出力チャンネル数だ。24bit/96kHzではフルスペックの10in/10outが確保されているが、24bit/192kHzではフルスペックでの対応は難しいという。現在ドライバを調整中とのことで、最終的に何チャンネルまで行くかは未確定。どれだけうまくいっても6in/6outが限界で、おそらくそれも難しいとのことで、4in/4outは何とか確保したいが、それについても完全確定とはいえないようだ。

 ではなぜ、24bit/192kHzにするとチャンネル数の制限がでるのだろうか? ビットレートについて単純計算すると、24bit/192kHzなら1チャンネルあたり4.5Mbpsとなる。つまり10chで45Mbpsとなる。入出力同時ということでこれを倍にしても90Mbps、400MbpsというFireWireの転送速度を考えても十分余裕がある値のようにも思える。

 これについて、開発担当者に話を聞いてみたところ、ネックとなるのはFireWireの速度ではないという。それよりもHDDのアクセススピードなどコンピュータ側にいくつかのボトルネックがあり、その限界が超えられないそうだ。24bit/192kHzの需要がどこまであるのかは分からないが、これが標準的に用いられるようになるには、まだまだ時間がかかるかもしれない。


■ SONARを中心としたEDIROL新製品

PCR-1

 EDIROL製品としては、このFA-101のほかにUSBオーディオインターフェイス内蔵のMIDIキーボードコントローラーの「PCR-1」、およびPCR-1とSONARをセットにした製品、そしてDTV関連製品が3種類発表されていたので簡単に紹介しておこう。

 まずPCR-1は従来からあったUSB-MIDIキーボードシリーズの1つなのだが、とにかくコンパクトというのが特徴。それでいて、ミニキーボードではなくフルサイズの25鍵。

 なぜ、そんなにコンパクトなのかというと、新開発の薄型タッチセンス付き鍵盤「S.L.I.M(Short-strok Low-profile Impact Mechanism)」キーボードを採用したからだ。その結果1,500gで薄さ28mmというボディーに、他のPCRシリーズと同等のコントローラ、さらに24bit/96kHz対応のオーディオインターフェイスまでも統合されている。

 実際に触ってみると確かに非常に薄いが、しっかりとしたストローク感があって、弾いてみて気持ちいい鍵盤だった。他のPCRシリーズよりコントローラー操作子は少ないが、SHIFTキーなどを組み合わせることで、同等のスペックを実現させている。2月14日より発売されており、実売価格は33,000円前後。

SONAR Perfect Solution PCR-1モデル

 このPCR-1とSONAR3 Studio Editon(下位モデル)、さらにGM2対応のソフトシンセサイザであるHyper Canvasをセットにした「SONAR Perfect Solution PCR-1モデル」も3月中旬に発売される。店頭予想価格は63,000円前後。SONAR単体に1万円程度上乗せすると買える価格帯なので、コストパフォーマンスは高そうだ。

 SONAR関連ではもうひとつ、参考出品という形での発表があった。新バージョンSONAR 3.1のアナウンスだ。すでに英語版はリリースされているのだが、3.1では、192kHzに対応するとともに、マルチプロセッサのPCで快適に動作するようにチューニングされているという。また、サンプリングレートコンバータ機能が向上したなど、いくつかの強化点があげられている。

 日本語版は今月中にリリースされる模様で、EDIROLのサイトから無償でダウンロードできる。


V-1

 そのほかの「V-1」、「P-1」、「VMC-1」というDTV製品3つを簡単に説明しておこう。

 V-1は4チャンネルのビデオミキサーで、コンポジットおよびSビデオの映像入力を備え、簡単に4チャンネルの入力が切り替えられるようになっている。不安定な映像信号を入力しても的確に映像の同期信号を補正する2系統の独立したフレーム・シンクロナイザーを搭載したり、映像の中にさらに1つの小さな映像を表示するピクチャー・イン・ピクチャー機能、切り抜いた映像を別の映像に合成するスーパー・インポーズ機能などを装備している。2月下旬より発売され、店頭予想価格は80,000円前後。

P-1 VMC-1

 P-1は映像演出やプレゼンテーションに活用できる簡単操作のフォト・プレゼンター。静止画像、WAV/MP3、SMFデータを簡単に記録/再生できるようになっている。タッチ・スクリーン機能付きのカラー液晶パネルを装備しており、レイテンシーのない高速な静止画の切り替えが可能になっている。こちらは3月発売予定で、店頭予想価格は13万円前後。

 そしてVMC-1はアナログビデオとDVの相互変換を可能とした高機能のビデオ・オプティマイザ/メディア・コンバーターだ。ここにはアナログビデオ再生時のヘッドやテープの回転むら、信号劣化で生じるジッターを除去できるTBC/フレーム・シンクロナイザを搭載。明るさ/色の濃さ/色相/コントラストを、4つのつまみでリアルタイムに色補正可能にするなど、さまざまな機能が搭載されている。これも3月発売予定で、店頭予想価格は50,000円台半ばとなっている。


■ RolandはDAWの「VSシリーズ」をアピール

VS-2000CD

 今回の発表でRolandが最も力をいれていたのがDAWのVSシリーズの最新版、「VS-2000CD」だ。

 従来からあるVS-2480CDなどより一回り小さく、24bit/44.1kHzでのレコーディングに対応し、18トラック+マスタリング専用の2トラックという構成。ミキサー部は内部処理56bitの40ch。さらにVS8F-2と同等のオンボード・エフェクトを搭載しているほか、拡張用に2スロットが装備されている。

 USB 2.0端子も搭載されているので、PCと接続しての高速データ転送も可能。1月下旬より発売されており、実売価格は17万円前後となっている。

VS8F-3

 このVS-2000CDに関連して、ちょっと面白い製品もリリースされた。「VS8F-3」という拡張用のエフェクトボードで、VS-2000CDのほか、VS-2480/2400で利用でき、VS-1680/VS-1880/VS-1824でも今後のファームウェアアップデートで利用可能になるというもの。2月下旬発売で実売価格は3万円前後。

 これの何が面白いかというと、ソフトウェアでエフェクトを変化させられるプラグイン型のエフェクトボードなのだ。あらかじめRolandのプラグイン・エフェクトを5種類装備。具体的には帯域分割コンプレッサーを含むマスタリング・ツール・キット、MIDIクロックにも同期できるテンポ・マッピング・エフェクト、コンプレッサーやディエッサーなどボーカルに特化したボーカル・チャンネル・ストリップ、入出力ステレオ仕様のステレオ・リバーブ、アンプ特有の周波数特性や歪みを忠実に再現するプリアンプ・モデリングなどだ。


マスタリング・ツール・キット ステレオ・リバーブ

 プラグインソフトのインストールはCDドライブ経由で行なうとのことだが、今後Roland以外のメーカーからもプラグインのエフェクトがいろいろとリリースされるとのこと。名前があがっているのはANTARES、IK MULTIMEDIA、UNIVERSAL AUDIO、Massenburg Design Works、Cakewalk、McDSP、Soundtoys、t.c.electronicなどプラグインメーカーとして著名なところばかり。つまりハードウェアとしてVS8F-3と各社のソフトを利用すれば、VSシリーズのエフェクトを自由に拡張できるというわけである。

 VS8F-3には、ProToolsと同様にMotorolaのDSPを採用しているので、先ほどあげたプラグインメーカーも比較的簡単にリリースできるだろうとのこと。実際にサードパーティーから製品が発表されるのは4月ごろからの見込み。

Fantom-X6

 もう一つRolandが力を込めてリリースしたのがシンセサイザ「Fantom」シリーズ。キーボード製品として61鍵の「Fantom-X6」(実売20万円前後)、76鍵の「Fantom-X7」(実売24万円前後)、88鍵の「Fantom-X8」(実売30万円弱)の3つと、ラックマウントタイプの「Fantom-XR」(実売13万円前後)の計4つ。

 新開発の音源LSIを装備し、128ボイスを実現。また88鍵マルチ・サウンプリング・ピアノをはじめ、ストリングス、ドラムなどギガ・クラスのウェーブメモリを搭載しているというのが最大のポイントとなっている。キーボードの各製品が2月下旬、Fantom-XRが3月の発売予定だ。

Fantom-X8 Fantom-XR

MICRO CUBE

 そのほかにもRolandからは電池駆動も可能な小型なDSPギターアンプ「MICRO CUBE 」や、開閉式のV-Hi-Hatに新V-Padを導入したV-Drumの最高峰モデル「TD-20K-S」という50万円程度のドラムやその下位モデル、ギターシンセサイザの「GR-20」、またBOSSからはコンパクトエフェクタ感覚で利用できるベース用マルチ・エフェクター「ME-50B」など、さまざまな製品が発表された。

 すべてを細かく紹介しきれないが、製品リリースのスピードには本当に圧倒されるばかり。また3月にドイツで行われるMUSIK MESSEが終わると次の新製品が登場しそうだ。次にどんなものが飛び出てくるのか楽しみである。

TD-20K-S GR-20 ME-50B

□ローランドのホームページ
http://www.roland.co.jp/

(2004年2月16日)


= 藤本健 = ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL」(リットーミュージック)、「MASTER OF REASON」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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