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1,000を超えるパッチを搭載 |
起動すると、画面右側には、数多くのパッチ名が表示される。Acoustic Pianos、Natural Drums、Synth Bases、Organs、Orchestral……と、さまざまなジャンルが表示されており、その中にパッチが表示されている。その数、なんと1,000。まあ、GS/XG、GS2音源などでも1,000を越える音色を持ったものが出ているので、それほど珍しくないともいえるのかもしれないが、やはり、数のインパクトは十分にある。
実際に使ってみて驚くのは、その音色切り替えのスピードの速さ。選ぶと瞬間に切り替わり、音を出すことができる。ソフトシンセは数多くでているが、とくにサンプラー系ソフトでは、このデータの読み込みに結構時間がかかるものが多い。その点でハードの音源がいいという人が結構いるが、Hypersonicはハード顔負けの速度だ。
16パートのマルチティンバー音源となっている |
画面を見てもわかるとおり、Hypersonicは16パートのマルチティンバー音源となっており、1パートずつ音色を読み込むことができるほか、複数のパートを一気に読み込むために、いくつかの音色をまとめたCombisというものも用意されているが、こうしたものでも一瞬で読み込めて音が出せる。そのためライブ用途でも十分に使えそうだ。
スペック的には最大同時発音数が1,024ボイス(各パッチの最大発音数は64ボイス)。そして、これを鳴らす際のCPU負荷が非常に小さいものとなっている。
パッチの検索機能を搭載 |
1,000も音色があると、目的のものを見つけ出すのが面倒。しかし、Hypersonicは音色の検索機能もあるので、適当に検索したい文字列を入力すると、一瞬でそれに関連する音色名が表示される。
これは、必ずしも音色名である必要はない。たとえば、明るい音ならBright、アコースティック系の音ならAcoustic、テクノ系の音ならTechnoと入力すればいい。このように簡単に検索できるのは、各音色に説明のテキストが入力されており、そこからも同時に検索ができるからだ。単純な機能ではあるが、これは非常に便利。従来のソフトシンセやハードシンセでもできなかった機能である。
音を出してみると、どれも結構使えるサウンドだ。曲のメインとして使える音かというと、微妙なところだが、バッキング用音色としては十分すぎるほどのクォリティーを持っている。ちなみに、このHypersonicは単なるWaveTableシンセというわけではない。
ここには、以下の5つの音源が入っている。
各プリセット音では、それらのうちの1つを使っていたり、組み合わせて1つの音色を構成していたりする。もちろん、複数のマルチサンプル音源を使っていたり、バーチャルアナログシンセシスとFMシンセシスを組み合わせているなど、音色によっていろいろだ。
この中のスライスウェーブループシンセシスというのは、ReCycle! に代表されるスライス対応の音源。ここには、フレーズデータが入っているのだが、そのフレーズのテンポがシーケンスソフト側のテンポによってコントロールできるようになっている。こうしたシンセ自体、いまそれほど珍しいものではないが、このようなマルチティンバー音源で採用しているのは初ではないだろうか。
■ プリセット音が基本の音色作り。音色の拡張も可能
音色パラメータを表示 |
ところで、シンセ好きにとっては、こうした音源が使えるのであれば、ぜひゼロから音を作ってみたいと思うところ。しかし、このHypersonicはそうした面での割り切りが非常にハッキリしている。基本はプリセット音を使うことを前提としており、ゼロからの音色作りはできず、多少いじれる程度。
画面右側のEditというボタンをクリックすると、音色パラメータが表示される。試しにFMシンセシスの音源を読み込んでエディットしようと思ったが、オペレータの数が何個あるのかすらわからないし、モジュレータや、キャリアといった表記もないくらいなのだ。あるのはフィルタとエンベロープジェネレータ、それに音量、パンの設定くらいだが、それでも出てくる音は確かにFM音源そのものという音になっていた。
キーボード上のColorなどのコントローラで音色の変化が可能 |
逆にシンセをそれほど知らない人でも簡単に音色変更ができる仕様になっているのも面白いところ。キーボードの上にColor、Tone、Chorusなどの表示があるが、ここをいじることで、いろいろと音色が変化する。
ここに表示される項目は音色によって異なり、簡単に効果的な音色調整ができるように作られている。また、1つのパラメータに複数のパラメータが割り付けられている場合もある。このように簡単にかつ効果的に音色変更ができるというのは大きなメリットといってもいいだろう。
また面白いのは、この音源自体にエフェクトが搭載されているということ。リバーブ、コーラス、ディレイ、フランジャー、ディストーション、EQ、コンプレッサ、アンプシミュレータ……と、一通りのエフェクトが備わっており、それらを自由に組み合わせて使うことができる。
音源に多くのエフェクトを内蔵 |
ただし、これらはVSTプラグインとはまったく関係なく、あくまでもHypersonicで使うために用意されたもの。したがって、これの読み込みもストレスなく行なうことができ、各音色を読み込むのと同時にこれらエフェクトも起動するようになっている。このエフェクトに何を使うかについては、ユーザーも自由に変更したり、追加することもできるので、それなりの音色作りができそうだ。
音色の拡張も可能 |
ところで、このHypersonicの特徴として、音色を拡張することができるということが挙げられる。コンセプト的には、シンセに音色カードを追加して音を増やすというイメージ。見た目的にも、電子基板に音色のICを刺して追加するという感じのものになっており、今後そうした音源が比較的安い価格で登場してきそうだ。
ちなみに、これを開発したのはwizoo。まず第1弾としてピアノ音源のGP2、オルガン音源のNB-3、デジタルアナログシンセのUS-1の計3種類が発売される模様で、β版が完成している。
ピアノ音源のGP2 | オルガン音源のNB-3 |
その動きを見せてもらったが、これもちょっと面白い。このオプションを追加することで、FMシンセシスや、ウェーブテーブルシンセシスなどの5つの音源とはまったく別のものが加わる。そのため、音色のエディット画面も大きく異なる。たとえばGP2の場合、The Grandベースのエンジンが使われているので、Hypersonicのピアノと比較してもかなりリアルなピアノ音となる。またNB-3はNativeInstrumentsのB4のような感じのオルガン音源。これまでSteinbergではオルガン音源を出していなかったので、これが初になるだ。また、音源と同時にエフェクトも追加されることになり、そのエフェクトは別のパッチに適用させることも可能だ。
国内での発売予定や価格などは決まっていないが、米国ではは99ドルで発売される見込みなので、国内では1万円強という価格が予想される。なお、国内でのwizooの代理店はクリプトン・フューチャー・メディアであるため、そちらから発売されることになるかもしれないし、Steinbergから出ることになるかもしれない。この辺は近いうちにハッキリしてくるだろう。
■ 高速動作が最大の魅力
Hypersonicはこのような音源なので、スペックだけを捉えるとその価値がなかなか捉えにくいが、やはりその軽さというのが最大の特徴となっている。音色の読み込みが速いのはもちろん、動作させてもCPU負荷が非常に小さいというのは大きなポイントだ。
こう考えていくと、曲のフレーズなどが思い浮かんだら、すぐにそのイメージを実際のものとして使えるようにするための便利な音源といえるだろう。もちろん、これですべての曲を作っていってもいいし、とりあえずこれで作って、後で少しずつほかの音源に差し替えていくというのも手だろう。wizooの拡張音源についても非常に興味をひくところだ。
CUBASE SYSTEM 4 |
最後にSteinberg関連のニュースをもう1つ。先日のNAMM Showで発表されていたUSB 1.1のオーディオインターフェイス、CUBASE SYSTEM 4が近いうちに発売になる。
これは24bit/96kHzに対応した4in4outのオーディオインターフェイスで、Cubase SL 2.0がバンドルされる。このハードにはUSBのドングル機能も含まれているので、外に持ち歩いてもドングルを紛失する可能性がなくなる。USB 1.1ということで、それほど目新しさはないが、今後触る機会があれば、またレポートしてみたいと思う。
□スタインバーグジャパンのホームページ
http://www.japan.steinberg.net/
□製品情報
http://www.japan.steinberg.net/products/hypersonic/
(2004年2月23日)
= 藤本健 = | ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL」(リットーミュージック)、「MASTER OF REASON」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。 |
[Text by 藤本健]
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