■ 遺跡を壊しまくる女
前作「トゥームレイダー」から早2年。最新作「トゥームレイダー2」がDVDで発売された。今回は監督に「スピード」のヤン・デ・ボン、編集にマイケル・カーン、音楽に「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のアラン・シルベストリを迎えるなど、スタッフの顔ぶれがすごい。ビデオゲームの映画化というよりは、単純にアクション大作としての期待が大きかったのではないだろうか。 もちろん主演はアンジェリーナ・ジョリー。前作でハリウッドアクション女優の代表格となり、今回も鍛え直した上で、多くのスタントを自ら志願したという。いまや1児の母だが、完全無欠なボディラインは健在。また、前作からはブライス(ノア・テイラー)とヒラリー(クリストファー・バリー)のおとぼけコンビも引き続き登場。個人的には「トータル・フィアーズ」、「ロード・トゥ・パーディション」に出ていたキアラン・ハインズの起用がうれしい。 2002年3月発売の1作目は、初回限定版のみ2枚組みで、価格は今作と同じ3,980円だった。現在、店頭で見られるのは1枚組みの通常版か、2003年9月に再販された「トゥームレイダー2劇場公開記念バージョン」だろう。 さらに今回、1作目の通常版と2作目をセットにした「トゥームレイダー2 ツインパック」が5,980円で発売された。計3枚組み(1作目1枚+2作目2枚)ながら1枚あたり1,933円とお買い得なので、前作を未購入ならツインパックを狙うのもいい。ただどうせなら、ツインパックには現在入手しづらい1作目の初回限定版を付属してほしかった。ケースはクリア素材で、2枚組みの定番となったアマレーダブルだ。封入物はチャプタリストとジェネオンの広告冊子のみとシンプル。そういえば、前作はパイオニアLDCが販売元だったが、今回、ツインパックに入っている前作のパッケージは、ジェネオンのロゴが入った新デザインになっている。
■ Panasonic好きな女
ギリシャで起きた大地震で、海底に現れた古代の神殿。調査に乗り出したララ・クロフト(アンジェリーナ・ジョリー)は、そこで黄金に輝く宝玉を発見する。だが、それは人類に災いをもたらすという「パンドラの箱」のありかを示す地図だった。ララとララの元恋人、テリー・シェリダン(ジェラルド・バトラー)は、「箱を見つけて封印せよ」との女王陛下の命を受け旅立つ。そのころ、生物兵器の権威ジョナサン・ライス博士も宝玉の謎に迫っていた。 神秘なアイテムめぐる追跡劇という点では、前作に良く似た構成となっている。ギリシャ、上海、アフリカとロケが多いのも同じだ。ララのアクションも切れ味を増しているし、トレードマークの2丁拳銃も懐かしい。前作のノリが気に入った方なら、今回も楽しめること請け合いだ。 また、製作費が1億3,000万ドルとスケールアップしたためか、色々な仕掛けがとにかく豪華になった。どこかゲームをイメージさせる演出の前作に比べると、大作にふさわしい内容になっている。オカルト色も多少薄まった。音楽も変化し、前作ではBGMの多くがバスドラ4つ打ちのダンスミュージックだったが、今回は普通にオーケストラがメインとなっている。安っぽさがなくなり、個人的には好印象だ。 そういえば、前作ではノートパソコンやPDAなど、「外見は見たことあるものの、機能が別モノ」のIT小物が特徴的だった。今回も同じくIT小物が大活躍するが、注目すべきは、それらの多くがPanasonic製になったこと。どうやらスポンサーとして参画しているらしい。 例えば第1幕に出てくるLet'snoteとおぼしきノートパソコン。天板はもちろん、液晶画面の上の縁にまでPanasonicのロゴが。しかも左上と右上の2箇所に入っているという念の入れようだ。さらに香港では、船上生活者の船の中に液晶テレビが。もちろんPanasonicブランドで、スクリーンには何度もPanasonicロゴが映る。ピントもしっかり合っている。 また、ララがやたらと取り出すのがD-snap。形や色などからSV-AV30と思われる。D-snapで録画したデータを衛星携帯電話(には見えないが)で英国の本宅へ伝送し、居残り組みのブライスとヒラリーがデータを解析するというシーンが多い。送られてきた画像は、D-snapの動画にしてはかなり高解像度。これなら1台欲しいところだ。 さらに、SDメモリーカードでデータをやり取りするシーンもある。カードを出し入れするだけなのに、結構大写しだ。SDのロゴがカメラの真正面を向くよう、役者が気を使っているようにも見える。これでとどめにDVD-RAMが出ててきたらすごかったのでは。 という具合に、Panasonic製品がやたら目に付く。特に、D-snapの出現度合いはかなりのものなので、D-snapの愛用者は一見してほしい。ただし、アンジェリーナ・ジョリーが3回ぐらいレンズに指を掛けるのは見逃してもらいたい(もっとも、ブライスのノートパソコンだけは、前作に引き続きバイオ。何かこだわりがあるのだろうか)。
■ カメラへのこだわりが熱い
全体的に画質についての不満はないが、一部のワイドショットにMPEG特有のノイズを確認できる。特に見せ場の1つ、高さ300m以上のビルから飛び降りて脱出するシーンにはがっかりした。道路やビルなどの緻密な背景の上を移動し続けるというMPEGにはきつい場面だけに、輪郭のぼろつき、階調性や彩度の低さが気になる。 また、世界中でのロケを売りにしているので、香港の夜景やアフリカの大草原など、壮大なワイドショットも楽しみの1つだろう。しかし、遠景を収めた映像はあまり高画質とはいえない。解像感と彩度が落ち、少し昔風のエンコード画質になる。平均ビットレートは7.36Mbpsと高く、それ以外のほとんどのシーンで気になる点がないだけに残念だ。 音声はドルビーデジタルがまとまりが良く落ち着いた印象。帯域が狭いわけではなく、全体的に不自然さが感じられない。セリフも聞き取りやすく、屋内などの臨場感は高い。一方、DTSではダイナミックレンジが広く、銃声などの効果音に鋭さが感じられる。 困ったのはドルビーデジタル、DTS共にLFEのレベルが高いこと。最近のアクション作品は一様に低音が大きいが、この作品のLFEもものすごい。深夜の視聴時には気をつけた方が良いだろう。 さらに効果音だけでなく、シンセベースなど、BGMの一部の低音が相当大きい。爆発なら一瞬なので気にならないが、サブウーファを震わすほどのベースが持続するとなると、ちょと階下が気になる。かといって出力レベルを下げると、今度は効果音が物足りなくなりそうだ。
特典ディスクに収められたメイキング映像は「“トゥームレイダー2”トレーニング」、「“トゥームレイダー2”ウェポン&ビークル」、「スタント・オブ・“トゥームレイダー2”」、「“トゥームレイダー2”VFX」、「スコアリング」など。 そのほか、「未公開シーン集」、「ミュージック・クリップ集」、「予告編 & TVスポット集」などが収録されている。特典ディスクではないが、個人的に気に入ったのが本編ディスクのコメンタリー。解説はヤン・デ・ボン監督が務めている。 撮影監督出身だからか、カメラやフィルムへのこだわりがうるさいのが楽しい。たとえば、「私が常にパナビジョン1:2.35で撮るのは……スーパー35は使いにくいし……65mmではマットペインティングとのなじみが……」といった具合。元カメラマンらしい機材への執着ぶりが面白い。もっとも、今は監督なので「撮影監督に任せればいいのに」とも。今作でもいくつかのシーンで、自らカメラを構えて撮影したそうだ。
■ ツインパックが安くてお得
今回は新キャラクターでララの元恋人、テリーの存在のおかげで、完全無欠のララが少しだけ人間らしく感じるところも良い。また、全体的にアクション大作らしくなり、より万人に薦められる作品になった。アクションもあの手この手であきさせない。2003年のアクション作品の中ではかすみがちだったが、アクションファンなら購入しても間違いはないだろう。 いずれ再販キャンペーンの対象になることも考えられるが、ツインパックは現状でも十分安い。前作を未見の方は、ぜひツインパックも候補に入れてほしい。
□ジェネオンのホームページ (2004年2月17日) [AV Watch編集部/orimoto@impress.co.jp]
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