■ 「中1映画館デビュー」キャンペーンで話題に
今回取り上げるのは、「S.W.A.T.コレクターズ・エディション」。全米で興行収入1億1,000万ドルを突破したアクション映画で、強力な武器と高度な戦術を持ち、人質の救出などの困難なミッションをこなす特殊部隊「S.W.A.T.」を描く。 日本では昨年9月27日の公開と同時に、中学1年生の劇場入場料を無料にするという「中1“映画館デビュー”応援キャンペーン」を実施。ニュース番組などでも取り上げられるなどかなり話題となった。 個人的には、変ったキャンペーンだとは思ったものの、「劇場が中学生だらけだったら嫌だな」と、むしろ劇場から足が遠のいてしまった。実際見に行ったスタッフによれば、「それほどでもないけど多かった」とのことだが、媒体露出はかなりのもので、キャンペーンとしてはまずまず成功していたように思う。 結局劇場には足を運ばなかったわけだが、公開時にはそれなりに期待はしていたタイトル。DVDとして1月28日にリリースされ、価格も3,800円とそれなりに手ごろなのでとりあえず購入してみた。ディスクは片面2層1枚で、簡単なライナーノートが付属する。ディスクもピクチャーディスクだが、そのデザインはジャケットイメージを踏襲したシンプルなものだ。
■ LAを舞台にS.W.A.T.の活躍を描く
舞台はLA市警のS.W.A.T.。銀行強盗事件現場に急行したストリート(コリン・ファレル)と、ギャンブル(ジェレミー・レナー)は、人質の危険を察知、上官の命令を無視し犯人グループを撃つ。事件は無事解決したが、上官の警部フーラの逆鱗に触れ、ギャンブルは警察を去り、ストリートはフーラの取引を受け入れて武器保管庫へ降格となる。このことで、5年間コンビを組み固い絆で結ばれていた2人の友情にも決定的な亀裂が入る。 6ヵ月後、署長の命により赴任したホンドー巡査長(サミュエル・L・ジャクソン)がストリートに目をつけ、ストリートはS.W.A.T.に復帰。同時にサンチェス(ミシェル・ロドリゲス)、ディーク(LL・クール・J)、ボクサー(ブライアン・ヴァン・ホルト)、T.J.(ジョッス・チャールズ)が、チームに加わる。 ホンドー率いるチームは、護送中の麻薬王・アレックス(オリヴィエ・マルティネス)の脱走を察知し、捕まえる。しかし、搬送中にアレックスが「俺を逃がした奴に1億ドルをやる!」と叫ぶ姿がテレビで中継されてしまう。 S.W.A.T.チームは再びアレックスの護送に踏み切るのだが、そこにはアレックスを逃がすために、襲い掛かる町中の無法者が待ち構えていた。そして、そこに現れたのはかつての朋友、手の内を知り尽くした最強の敵であった……。 凶悪犯の鎮圧などのS.W.A.T.らしい活躍は、冒頭の銀行強盗のシーンで期待通りの激しいアクションが堪能できる。しかし、その後はあまり活躍が見られず、S.W.A.T.の勇士を描くというよりは、金や名誉、自らのプライドに翻弄されるチームの面々友情とのすれ違いなどを中心にストーリーが展開する。そのストーリーも、ギャンブルの行動や、逮捕される前のアレックスが何を求めていたのかなど、今ひとつ人物像や動機がきちんと描かれていない印象を抱いた。 ストーリー展開は非常にわかりやすいが、次の展開が大体読めてしまうのがやや残念。冒頭のシーンをのぞくと、手に汗握るようなシーンや緊張感は期待していたより薄かった。娯楽映画としては悪くないのかもしれないのだが、ストリートとギャンブルの感情の行き違いなどが、もう少し丁寧に描かれてもよかったと思うのだが……。その中で、オリヴィエ・マルティネスが演じるアレックスのふてぶてしさが、妙に印象に残った。
■ 迫力重視の音響。銃撃シーン関連の特典は必見/必聴
本編ディスクは片面2層。本編が117分で、DVD Bit Rate Viewerで見た平均ビットレートは5.91Mbps。最近のDVDとしては低めに感じるが、発色は良好で極端な階調の破綻などは見られない。地下鉄の構内や、雨水坑などの暗いシーンでは、暗部をかなり落としている印象もあるが、ノイズはあまり感じない。超高画質というわけでもないが、うまくまとまっており、落ち着いて鑑賞できる。
また、冒頭の銀行強盗のシーンや、護送車の襲撃シーンなど、ホームビデオのような、手ブレの多い低解像度の映像が挿入される。特典の銃撃シーン解説で、「実際のニュース映像をイメージした」とラース・ウィンサーチーフ助監督がコメントしており、粗い映像で逆にリアリティを持たせる演出が成功しているように感じた。 音声はドルビーデジタル 5.1chを448kbpsで収録する。銃声も誇張の効いた迫力あるもので、通過する銃弾などの音響も強烈な移動感が味わえる。特に冒頭の銀行強盗の鎮圧シーンでは、カメラのパンに合わせて音場が移動するなど、意欲的なサラウンド音声設計となっている。 銃撃シーン以外でも、視点移動にあわせてリア・チャンネルが活用されたり、BGMでもマルチチャンネルを生かしているなど、全般的に迫力重視の音響設計となっている。 特典はメイキングと、銃撃戦を解説した「銃撃戦大解剖」、TV版を解説した「特別狙撃隊S.W.A.T.」、未公開シーン、「S.W.A.T.の音響“究極の銃声を求めて”」、「6番通りの橋:奇想天外なシーンの完成まで」など、かなり充実している。 メイキングは各俳優やスタッフのコメントを中心にしており、ホンドー巡査部長演ずるサミュエル・L・ジャクソンへの賛辞が目立つのが印象的。また、訓練のシーンでは、実際のトレーニング中の模様が収録されており、警察技術監修のマイケル・ウォーカーが、それぞれの俳優に構えや動き、適切な武器を指示しながら、撮影を進めていったことが確認できる。 「銃撃戦大解剖」ではクラーク・ジョンソン監督が自ら解説、「実際の銃撃戦の雰囲気」を目指し、「闘争心むき出しの世界」を描きたかったという。また、銃撃戦のシーンはヘリでの空撮が非常に多くなっているが、これは監督の意向という。ニューヨーク出身の監督は、LAのイメージを「上空のカメラが映し出すカーチェイス」と語っており、そのイメージに従って空撮を増やしたという。なお、冒頭の銀行などは、実際の建物で撮影しており、企業や自治体など500以上の承認を得て、撮影にこぎつけたという。 また、興味深いのは「S.W.A.T.の音響“究極の銃声を求めて”」。音響効果編集担当のキャメロン・フランクリーが銃声の録音方法などを解説する。「耳障りな甲高い音を配し、振動を感じるような低音を目指した」として、録音には用途別に8種類のマイクを利用したという。実際に撮影で利用する銃を用意し、乾いた音を録音するために広い砂漠で、残響成分の多い銃弾を得るために、山のふもとで録音するなどの工夫を凝らしたという。 また、「キンバーカスタム II」、「AK47」、「MP5A2」、「M4A1」などの銃器のデモ映像も収録。映画での利用シーンとともに、銃器監修のマイク・パパックなどが、実弾を打ちながら特徴を解説し、操作デモを行なうというなかなかマニアックなもの。これだけのコンテンツを収録しながらも、本編の字幕では、「AK47」を「自動小銃」と訳してしまっており、S.W.A.T.らしい雰囲気が薄れているような印象も受けた。 さらに、「銃撃シーンにおけるサウンドの解体」というコンテンツも収録。これは、「銀行強盗」、「ハリウッド」、「襲撃」、「橋」という本編の4つの銃撃シーンを収めたものだが、ミックス前の銃器関連の音声を別音声トラックに収録し、聞き分けることができる。 サウンド1が銃の発射音のみを収めた[ガンショット]、サウンド2が弾丸の飛行/衝突音や、跳弾、ガラスの割れる音を収めた[インパクト]、サウンド3が銃の作動音などを収めた[メカニック]、サウンド4が銃関連の音声をミックスした[フル・エフェクト]となっている。 ガン・エフェクトのためだけにこれだけの数のオーディオトラックが使われている、というだけでも楽しめるが、跳弾音など、本編ではほとんど気に留めなかった音声まで、きっちり聞き取ることができて面白い。きちんとドルビーデジタル 5.1ch(448kbps)で収録されているのもうれしいところだ。
■ アクションファンなら買い
ストーリー的にはもう一歩深みが欲しかったという印象は残るが、画質や音質ともに満足できる内容で、価格も3,800円と妥当なところ。特典も充実しており、特に「銃撃シーンにおけるサウンドの解体」は、サラウンドのチェックやデモ用ディスクとしても重宝しそうな、うれしいおまけ。 仲間が裏切り、悪役がかっこいいなど、なぜ「中1“映画館デビュー”応援キャンペーン」の対象となったのか、イマイチ理解できないところではあるが、広くアクションファンが楽しめる作品だ。
□SPEのホームページ (2004年2月10日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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