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音楽を聴きながらMP3録音
単体ヘッドフォンにもなる高品質MP3プレーヤー
アイワ 「UZ-PS128」
発売日:3月発売
実売価格:15,000円


■ 音楽を聴きながらエンコードできるヘッドフォン

 シリコンオーディオプレーヤー市場も成熟が進み、最近ではMP3やWMA、ATRAC3、OGG Vorbisなどの多くのオーディオフォーマットに対応したり、FMチューナ/録音、ボイスレコーダ、MP3エンコードなどの機能豊富なモデルが多数リリースされている。

 形状的にもUSBメモリ型、ヘッドフォン型、ペンダント型、腕時計型などさまざまなタイプのプレーヤーがあり、そろそろ新鮮味も薄れてきた状況。しかしそんな中、地味ながらも新鮮な驚きがあったのが、ソニー(アイワブランド)の「UZ-PS128」だ。

 「UZ-PS128」は、ヘッドフォン型のMP3オーディオプレーヤー/レコーダ。ヘッドフォン型のMP3プレーヤーはいくつかあるが、この製品が新しいのは、ライン/ヘッドフォン入力を装備して普通のヘッドフォンとして利用できるほか、聞いている音楽のMP3エンコードにも対応すること。ライン入力を装備してMP3エンコード可能なMP3プレーヤーは増えてきたが、ヘッドフォン型のMP3プレーヤーでMP3エンコードに対応したのは初めてだろう。

 実売価格は15,000円程度で、128MBのシリコンオーディオプレーヤーとしては標準的な価格帯。UZ-PS128の場合、MP3プレーヤー機能の以外に、普通のヘッドフォンとも利用できるとあって買い得感は高い。


■ やや厚めのハウジング。本体の質感は高い

同梱品

 同梱品はヘッドフォン本体のほか、転送ソフト「Music Transfer Solid Memory Edition」、MP3作成/ジュークボックスソフト「MUSICMATCH Jukebox 7.5 Basic」、USBケーブル、アナログ音声ケーブル、単4乾電池など。

 本体はネックバンド式で、ハウジングはアルミ素材の質感を活かした高級感あるデザイン。やや厚めのハウジングは、左側に単4乾電池を内蔵、右側に各種操作ボタンやUSB端子、アナログ音声入力端子を配している。右ハウジングの操作ボタンは、POWER、M.D.S.E、AUTO TRACK、PLAY/STOP、スキップ/サーチ、ボリューム、REC/ERASEなど。

 PCとのインターフェイスはUSB 1.1で右ハウジングにミニUSB端子を装備する。重量は100g。本体に128MBメモリを内蔵し、MP3形式の音楽データを蓄積できる。再生周波数は20Hz~20kHz、S/N比は70dB以上。出力は7mW×2。

本体はアルミ外装を採用し、ハウジングの質感は高い ネックバンド式で、両耳で本体を保持する 左ハウジングに単4乾電池を内蔵

右ハウジングの上部に電源スイッチやM.D.S.Eスイッチを装備する 基本操作はスキップ/サーチ、再生/一時停止、ボリュームボタンで行なう

右ハウジング下部にUSB端子、ライン入力端子、REC/ERASEボタンを備えている ユニット


■ 良好な操作性と、豊富な再生機能

 UZ-PS128の最大の特徴は外部入力の音楽を聴きながら録音できることだが、本体でのMP3エンコードのほかにも、付属ソフト「Music Transfer Solid Memory Edition」を利用したMP3ファイルの音楽転送も可能。つまり、普通のヘッドフォン型オーディオプレーヤーとしても利用できる。

 まずはMusic Transferを利用して、UZ-PS128に転送してみた。対応OSはWindows 98 SE/Me/2000/XPで、Windows 2000/XPの場合、UZ-PS128の電源を入れ、パソコンとUSB接続するだけで、PCから認識される。あとは、曲を選んで再生リストを作成し、Music Transferから転送するだけだ。121.1MBのMP3データの転送時間は4分45秒。なお、本体側で曲順の変更などはできないので、再生曲順はMusic Transfer上で設定しておく必要がある。

Music Transfer Solid Memory Edition データの転送。フォントが日本メーカーらしからぬ明朝体

慣れるまでは、耳の上部が締め付けられて、やや違和感が残る

 装着してみると、普通のネックバンド型ヘッドフォンで、100gという重量もさほど気にならない。しかし、個人的には耳の上部を支点として挟み込む部分がどうもしっくりこない。使っていくうちにバンド部が柔らかくなってフィットするのかもしれないが、最初のうちは締め付けられて、フィット感はあまりよくない。とはいえ我慢できないほど痛いというものでもない。

 さらに、UZ-PS128の厚みのあるボディとシルバーのアルミ外装の無骨なデザインは、モノとして見ると格好いいのだが、装着した姿には違和感が高い。

 装着したまま、編集部界隈を徘徊してみると、「冒険しているね」とか、「耳になんか付いている」とか、「エイプリルフール?」とか、「スーツ着た黒人が着けていたら格好いいのかも」などなど。要するに「全然似合っていない」ということらしい。

 まあ、好みの問題ということになるが、装着時には服装やスタイルを選んでしまうデザインといえるだろう。


装着例 正面から見ると厚みが強調される


■ 音質は良好。操作は慣れれば問題ない

 以前、ソニーのオープンエア型のネックバンドタイプのノイズキャンセリングヘッドフォン「MDR-G94NC」を使用した時は、低域の不足や中高域の情報量に不満を感じたものだ。

 そのため、UZ-PS128の音質にはさほど期待していなかったのだが、実際には結構良いので驚いた。高音質化機能の「M.D.S.E」をONにして聞いてみると、中高域の情報量がしっかりしており、グロッケンの響きの消え際や、ギターのトレモロなど、非常に繊細に再生される。オープンエア型のためか、ポータブル向けヘッドフォンとしては広い音場感を得られるのもポイントが高い。

 中高域に比べると、低域の弱さ、例えばバスドラやシンセベースなどの実体感/量感の不足や、クセを感じるが、さほどソースを選ばす使える印象で、満足いく再生品質だ。

 右ハウジングでON/OFF選択ができる「M.D.S.E」は、MP3 Digital Sound Enhancerの略。低域を若干持ち上げながら、解像感を向上させるような効果がある。もともとやや低域が不足していることもあり、M.D.S.EをOFFにするとややさびしく感じるし、ONにすれば明確な位相、解像力の向上が図れる。

 低域のクセを強調してしまうため、元ソースで歪んでロックなどで、ややバタつきが顕著に感じられることもあるが、基本的にはONで問題ないだろう。なお、320kbpsのMP3ファイルの場合、元ソースの音質を生かすためにM.D.S.Eは動作しないようになっている。

慣れるまで装着しながら操作は結構難しい

 ということで通勤電車でも装着してみた。自意識過剰なのかもしれないが、なんとなく周囲の視線が痛く、耳との密着度が低いため、周囲の音が結構入ってくる。しかし、オープンエア型としては、音漏れはさほど多くないようだ。

 UZ-PS128では、全ての操作を右ハウジングのボタンで行なう。装着していると「目でボタンを確認しながら操作」というわけにはいかないので、ボタン位置をきちんと記憶しておく必要がある。電車の中で外して操作して、また着けるなどしていると、かなりアヤシイので、持ち歩く前にボタン配置ををきちんと覚えておくことが必須だ。

 操作自体は、中央の再生/一時停止ボタンを基準に、上にスキップ/サーチボタン、下にボリュームボタンと覚えておくだけで、基本操作が行なえる。そのため、一度慣れてしまえばさほど困難なく利用できるだろう。なお、再生/一時停止ボタンと、曲送り/戻りではそれぞれビープ音が鳴るがボリュームボタンでは鳴らないので、当初はやや違和感を覚えた。


■ 録音は128kbpsのMP3。やや疑問の残る録音仕様

 前述のように、ライン入力端子を備えており、通常のヘッドフォンとしても利用できる。電源をONにしているとMP3プレーヤーモードとなってしまうので、通常のヘッドフォンとして利用するには、電源をOFFにしておく必要がある。そのため、ボリュームボタンも使えない。

 ヘッドフォンとして使った場合、M.D.S.Eが利用できないので、本体をプレーヤーとして利用する場合と比較すると若干物足りない印象も残る。しかし、例えばポータブルCDプレーヤーやパソコンのライン出力と接続して使う分には十分なクオリティだ。

 UZ-PS128の最大の特徴はライン入力音声をMP3として録音できること。録音は、電源をONにしてREC/ERASEボタンを押すだけ。録音開始するとインジケータが赤く点灯する。

 録音形式は44kHz/128kbpsのMP3で、ビットレートやサンプリングレートの変更はできない。ライン入力に接続したCDなどを聞いていると、自動的にMP3ファイルができるというわけで、なかなか面白い。

 ライン入力の録音品質はなかなかよく、うまくレベル設定できればなかなか高音質なMP3ファイルの作成が可能だ。PCでのリッピングと比較すれば粗が目立つ箇所もあるが、付属のケーブルを使う限りでは、十分な品質のMP3の作成が可能だ。

 なお、UZ-PS128の電源をONにした状態では、RECボタンを押さない限り再生状態をモニタできないので、録音した曲のレベルがまちまちになってしまうのが気になった。

録音レベル設定がうまくいかないと曲が細切れに分割されてしまう

 録音前にAUTO TRACKスイッチをONにしておくと、無音状態が3秒続くと自動的に録音を一時停止し、それまでの曲を1ファイルとして保存。新たに音声入力を感知すると新しい曲として録音する「オートトラック機能」も搭載している。きちんと入力信号を感知できれば、アルバム1枚聞いているうちに自動的に曲分割して、MP3化できるわけで、非常に便利な機能なはず。

 実際に、セリーヌ・ディオンのアルバム「ア・ニュー・デイ・ハズ・カム」を録音してみると、明らかに曲の途中で切れて録音され、アルバム4曲までをキャプチャしたつもりが、11曲にも分割されていて驚いた。録音した曲のレベル設定が低かったようで、録音レベルを高めにして(出力側のCDプレーヤーのボリュームを上げて)やりなおすと、ほぼ曲単位で分割できた。

 また、無音に近い部分が多いアコースティックギターソロのパット・メセニー「ONE QUIET NIGHT」でも、レベル設定がうまくいけばそれなりにうまく分割が行なえるが、無音部の誤検出は前述のセリーヌ・ディオンのアルバムより多かった。ただし、こちらも元ソースの音量をさらに上げると、ほぼ曲どおりに分割できた。できれば、レベルメータなどの基準がほしいところだが、液晶ディスプレイが無いので、このあたりも慣れるしかないだろう。

 再生してみると曲間でつなぎ目を意識させること無く、普通にCDアルバムを聞いているのと同じように再生できる。完璧な曲分割はできなくても、曲をとばしたい時の目安として分割しておいたほうがいいだろう。

 録音したファイルは本体上での消去も可能。録音機能で気になるのは、内蔵メモリがいっぱいになると、自動的に最初の曲を消去して録音を続けてしまうという仕様。内蔵メモリがいっぱいになったら録音を停止するほうがいいと思うのだが……。また、録音したMP3ファイルはMusic Transfer上で認識されるものの、PCへの転送はできないというのも残念。

 連続再生時間は約10時間で、連続録音時間は約7時間。再生時間に不満は無いのだが、オートパワーOFFなどの機能がないため、電池を入れっぱなしにして放置しておくと、いざ使おうという時に“電池切れ”ということが結構あった。無音状態が続いたら自動的に電源をOFFにしてほしかった。


■ 価格のわりに充実の機能。最大の壁は「デザイン」?

 UZ-PS128は、ポータブルプレーヤー兼外出先でのPCやオーディオ機器用のヘッドフォンとして利用できるという意味では非常に画期的な製品。1月のアイワの発表会ではPevitプレーヤーやHDDプレーヤーに隠れた形となっていたが、機能的には一番意欲的な製品とも言えそうだ。

 実売価格も15,000円強と、普通の128MB容量のシリコンオーディオプレーヤーにややプラス程度の価格。録音機能の熟成や電源管理機能などでもう一歩がんばってほしかった箇所もあるが、音質もよく、価格から考えると機能的には十分すぎるスペックをもっている。非常に魅力的な製品に仕上がっていると思う。

 ただ、デザインがかなり若者向けなので、学生が張り切ってつけているのはいいのかもしれないが、私のようなサラリーマンがしているとなんとなく違和感があるのも事実。逆にアナログ出力のあるポータブルプレーヤーさえあればいいという意味では、うまくマーケティングすれば、パソコンをもっていない若者向けに、シリコンオーディオの使い勝手を浸透させるような製品になる、という気もする。

 製品としての品質や機能は満足いくものだと思うので、近くに試聴できる店舗があれば、試聴だけでなく、鏡持参で試着してみて、似合うかどうか確認してみることをお勧めする。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□アイワのホームページ
http://www.jp.aiwa.com/
□製品情報
http://www.jp.aiwa.com/USB/data/headphones/UZPS128/
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-“デュアルセンター”方式採用のUSBスピーカーも発売
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040114/aiwa04.htm

(2004年4月2日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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