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腕時計型テレビ登場!
実売2万円の“近未来”製品の実力は?
NHJ 「VTV-101」
発売日:5月上旬発売
実売価格:約2万円


■ 腕時計型テレビ登場

 「腕時計」という製品ジャンルは19世紀から存在しているらしいが、その長い歴史故か、デバイスマニアは「腕時計型の○○」というのが非常に好きなご様子。2000年には、カシオが腕時計型MP3プレーヤーや腕時計型デジタルカメラなどを投入、2003年には、NTTドコモ/セイコーインスツルメンツが腕時計型PHSをリリースしており、それぞれ結構話題になったように記憶している。

パッケージ

 正直いずれの製品も爆発的なヒットになったりはしなかったものの、「近未来的なデバイスが登場」的に、一般誌などでも広く取り上げられた。そんな中、NHJが発売したのが、携帯型テレビ「VTV-101」だ。

 今から時をさかのぼること22年前の'82年に、セイコーが世界初のテレビ機能搭載腕時計「テレビウォッチ」などを発売しているが、大きなレシーバユニットが必要で、液晶もモノクロという代物。セイコーによれば「この技術は今日の携帯型テレビの先導的役割を果たした」としているが、「腕時計型テレビの」となっていないところが、現在までその市場が立ち上がっていないことを示している。

 話題を呼ぶ割に、市場としては立ち上がらない「腕時計型○○」。今回発売される腕時計型テレビはそのジンクスを打ち破ることがでいるのか? ちなみにテレビウォッチは当時10万円以上したようだが、NHJの「VTV-101」は約2万円だ。


■ 腕時計としてはやや大きめ。本体の工作精度は高い

同梱品

 本体のほか、イヤフォンアンテナ、充電ドックを兼ねた外付電池ケース、ACアダプタ、リストバンド、ネックストラップが同梱される。

 本体は黒を基調にしたボディカラーで、スクエアなデザインを採用。リストバンドと組み合わせることで、腕時計型テレビとして利用できる。付属のネックストラップにより、首掛けでの利用も可能だ。

 本体の素材は、プラスチックを基調にアクリルパネルを前面に配しており、高級感はさほど感じられないものの、工作精度は高く、「モノとしての魅力」はなかなか高い。外形寸法は45.7×18.2×49.4mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約55g。

 前面には解像度280×220ドットの1.5型TFT液晶モニタを備えるほか、時刻表示用のLCDを装備。時刻表示のほか、チャンネルやボリューム設定なども、このLCDで確認できる。

 向かって左側面には、イヤフォンアンテナ端子と、TVボタン、DC入力端子を装備。右側面にはボリュームボタンと、SETボタンを備えている。

本体正面。1.5型液晶と時計、チャンネル表示用のLCDを装備 左側面にTVボタンとヘッドフォン端子、DC入力端子を備える 右側面にSET、ボリュームボタンを備える

付属のリストバンド リストバンドと組み合わせ、腕に装着する


 付属の外部電池ケースは、充電クレードルも兼ねている。ACアダプタを接続し、本体を電池ボックスにセット、下面からDC接続ケーブルを本体に挿すことで、充電が開始される。充電時間は約1時間30分。バッテリは内蔵リチウムポリマーで、容量は550mAh。駆動時間は約1時間となっている。

 電池ボックスの単3アルカリ電池×4での本体駆動も可能で、その際の駆動時間は約3時間となっている。また、乾電池から内蔵電池への充電も可能となっており、充電時間は約1時間30分。

外部電池ケース 背面に単3乾電池4本を収納可能 電池ケースにACアダプタを装着。電池ケースのDC接続ケーブルを本体に挿すことで充電が可能



■ シンプルなテレビ機能。画質は良好

時計機能は時間表示のみのシンプルなもの

 時計の設定は、テレビの電源をOFF状態でSETボタンを長押しし、設定画面から年/月/日を決定する。このままリストバンドと組み合わせれば、とりあえず、腕時計として利用できる。ストップウォッチなどの機能は備えておらず、あくまでシンプルな腕時計機能のみを備えている。

 腕につけてみるとやや重さを感じるし、相当ゴツイのだが、慣れてしまえば重さはさほど苦にならない。それよりアンテナを兼ねたイヤフォンが、腕に絡みつくので、なかなか取り回しが難しい。また、立ったままテレビを見る場合には掌側に回して視聴したほうが安定するように感じた。


利用にはヘッドフォンアンテナが必須となる 立ちながらテレビを見るときは、掌側に回したほうが見やすいように感じた

 本体の[TV]ボタンを長押しすることでテレビ機能がONになる。付属のイヤフォンがアンテナも兼ねているため、イヤフォンを挿していないとテレビ画面はまったく映らない。

 本体にPLLシンセサイザーチューナを内蔵。TVモードでは、右脇のボリュームボタンで音量の変更ができるほか、[SET]ボタンを押すとチャンネル切り替えモードに切り替わり、チャンネル変更ができる。チャンネル設定は1ch~63chまでで、チャンネルモードで1chづつ切替えるという方式。62chで[UP]を押すと1chに、1chで[DOWN]を押すと62chに切り替わる。

 自動選局機能も付いており、UP/DOWNボタンを長押しすると自動的に受信チャンネルを選局する。ただし、受信チャンネルを見つけけるとそこで停止するだけで、受信可能なチャンネルだけをスキャンして、不要チャンネルを省くということはできない。チャンネル変更はあくまで1chづつとなるので、明らかに使わないチャンネルもチャンネル変更時にスキップしなければならない。できれば、利用するチャンネルを記憶する機能が欲しかったところだ。

 画質は受信状態がよければ、なかなかのクオリティでテレビを楽しむことができる。1.5型と小型の液晶ながら、野球中継で表示されるスコアや、バックネット下部の看板の文字をきっちりときちんと確認できるし、映画やバラエティ番組の字幕も読み取ることができる。色再現性も悪くない。視野角はやや狭く感じるが、実用上気になるようなレベルではない。

 ただし、アンテナが専用のイヤフォンアンテナのため、良好な受信状態を保つのはなかなか難しい。受信状態が良くない屋内などで、うまく受信できるよう調節したつもりでも、自分が動いてしまうと画面が乱れたりするので、ややストレスを感じることもあった。

 音声はモノラル。基本的にはテレビを見るというシンプルな機能のみで、録画機能などは搭載していない。


■ 電車内での受信はかなり厳しい

 次に電車に乗ってモバイル環境でのテレビ受信をテストしてみた。都営地下鉄から京王線というルートでテストしたところ、地下鉄では当然受信できないが、地上に出ると一応受信はできる。しかし、電車が動き出すと画面が乱れ、砂嵐状態になる。電車が駅に停車すると画面が確認できるようになるが、動き出すと再び乱れるといった具合。

 窓際にイヤフォンアンテナを張ってみたり試行錯誤してみたが、若干の改善はあっても、やはりザラザラとノイズがのるのは避けられず、通勤電車などでの実用性は期待できない。折角の小型テレビが移動中に利用できないというのは残念なところだ。

首から掛けて手で持ってみたほうが疲れにくい

 ついでに、腕時計で時間を確認するようなスタイルで、テレビを見ているというのはかなり奇異に映るようで、電車内ではそれなりに周囲の注目を浴びることとなった。ネックストラップを使って首掛けにし、手で持ちながら見たり、掌側に巻き込むように腕時計を装着して見るようなスタイルのほうが視聴スタイルとしてはスマートだし、なにより疲れない。

 編集部のある市ヶ谷や自宅のある調布市でテストしたところ、屋外で歩きながらテレビを見る程度であれば、問題なく受信できる。しかし、電車で利用できないとなると、利用シチュエーションがかなり限られてくるように思う。家庭であれば普通にテレビを見ればいいわけで、休憩に入った喫茶店などでテレビを見ながら時間をつぶすとか、そんな状況が多い人にはいいのだろうが……。

 また、ヘッドフォン出力が1系統で、専用のイヤフォンアンテナしか利用できないため、複数人でテレビを楽しむといった用途では利用できない。

 利用中に気になったのは、30分ほど連続利用すると本体がかなり熱くなること。リストバンドを通して熱が伝わってきて、「腕時計」としては許容範囲を超えているレベル。

 バッテリ駆動時間はカタログ値で約1時間となっているが、実際に連続駆動したところ約1時間半のテレビ受信が行なえた。なお、バッテリが切れてテレビが表示できなくなっても、腕時計はそのまま動作する。


■ 利用スタイルに合えば買い。ガジェットとしての魅力は十分

 機能的には「腕時計としても利用できる携帯テレビ」という非常にシンプルなもの。そのため、とにかくもっとも軽いテレビを持ち歩きたいという人には魅力的な製品だろう。しかし、移動中の電車などで利用できないというのはやはり残念だ。そうした制限を理解しつつ、利用シチュエーションを見つけ出せる人には魅力的な製品だろう。

 しかし、この製品の本質はおそらく別のところにある。というのも、この「腕時計がテレビになる」というコンセプトに、サイバー感というか近未来的なイメージを抱く人が多いようで、編集部界隈で利用していれば人が集まってくるし、電車内などでも結構人目を惹く。

 そうした珍しいデジタル機器/ガジェットというのが「VTV-101」の最大の魅力なのかもしれない。そう考えると、腕時計としてはやや大きく、高級感では物足りなさも残る。しかし、シンプルな機能と製品としての品質には満足でき、2万円という価格も納得がいく。非常に魅力的なデジタルガジェットといえるだろう。

□NHJのホームページ
http://www.nhjapan.co.jp/
□製品情報
http://www.nhjapan.co.jp/prod/vtv101
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-外付け乾電池の併用で最大3時間の視聴が可能
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040413/nhj.htm

(2004年5月14日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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