~クリエイティブ取り扱いの新モデルをチェック~ |
E-MU 0404 |
すでにご存知の方もいると思うが、1820M、1820、1212Mの3製品の発売元が6月11日にエンソニック・ジャパンからクリエイティブメディアに変更されている。輸入製品の場合、こうした国内代理店の変更というのはよくあることだが、今回のケースはちょっと事情が異なるようだ。
エンソニック・ジャパンはもともとE-MU Ensoniq(現E-mu Systems)の日本法人で、クリエイティブメディアはCreative Technologyの日本法人。E-mu SystemsはCreative Technologyの子会社という、ちょっと入り組んだ関係だったが、国内においてそうした関係の整理が行なわれた格好だ。
それとともに、従来エンソニック・ジャパンで販売されていた楽器、音源系の製品の販売は終了し(これも世界的な動きのようだ)、新製品のオーディオインターフェイスはCreative Professionalブランドの元、クリエイティブメディアから発売されることになった。また、発売元の変更に伴い、楽器店に加え、販路に家電量販店やPCショップなども加わり、流通価格も若干下がっている。
この発売元変更と同じタイミングで発表されたのが、従来の3製品の下のグレードとして位置づけられる「E-MU 0404」という実売価格が15,000円強の製品。名称からも想像できるように、オーディオチャンネル数が4IN/4OUTで、24bit/96kHz対応となったものだ。
E-MU 1820M、1820、1212Mとは、完全に別のPCIカードとなっているが、DSPにはE-mu Systems開発で32bit処理のE-DSPという従来製品と同じ強力なチップが搭載されている。また、仕様的には24bit/96kHzではあるが、DACには24bit/192kHz対応でAKMのAK4395が搭載されているなど、気合の入った製品となっている。
E-MU 0404は1枚のPCIカードで構成され、ブラケットに備える2つのD-Sub端子にブレイクアウトケーブルを接続することで、オーディオおよびMIDI1系統の入出力が可能となっている。ブレイクアウトケーブルを使う仕様は、ユーザーによって好き嫌いはあるだろうが、価格帯を考えれば納得できるのではないだろうか。
従来の3製品のアナログ端子はバランス対応となっていたが、E-MU 0404はRACピンプラグ接続となっているため、アンバランス。楽器からのレコーディングではなく、オーディオ機器との接続が目的であれば、かえって使い勝手は良いだろう。
入出力用のブレイクアウトケーブルを装着した状態 | デジタル入力はオプティカル/コアキシャルの切り替え式。同時録音は不可能 |
アナログが入出力ともにステレオ2chとなっているほかに、S/PDIF(切り替えでAES/EBUにもなる)のデジタルの入出力も装備し、計4IN/4OUTとなっている。S/PDIFは入出力ともにオプティカルとコアキシャルが装備されている。出力については同時に同じものが出ているのに対し、入力の方は切り替え式になっているため、双方から同時にレコーディングということはできない。
早速、実際にPCにセットし、ドライバ類をインストールすると、E-MU PatchMix DSPミキサーというソフトが常駐する。このソフトは、従来の3製品のものとまったく同様のものであり、非常に高機能なミキサーコンソールとなっている。これを使うことで、4IN4OUTある入出力端子と、ASIO、WDM/MMEのドライバ側を自由自在にルーティングすることが可能となる。たとえば、「S/PDIFのオプティカルに入ってきた信号をまったくレイテンシーなしにアナログ出力するとともに、リバーブ、コラース、ディレイなどのエフェクトをかけて、ASIOの7/8chでレコーディング」なんていう設定が自由にできる。そのことだけを考えても、15,000円という価格は信じられないほどの低価格だ。他社でも24bit/96kHzで4IN4OUTというPCIカードのオーディオインターフェイスは出ているが、通常は、もっと高価であるし、こんな複雑なルーティングを可能にしたものは存在しない。エフェクトについては、以前E-MU 1820Mを紹介した際に解説しているので、ここでは詳細は省くが、本当にさまざまなエフェクトが用意され、自由に設定できるようになっている。VSTエフェクトとして、DAWソフト側からハードウェアを利用可能という点でも同様である。
高機能なE-MU PatchMix DSPミキサー(左)とエフェクト(左) |
ただ、初心者ユーザーにとって、この複雑なミキサーを使いこなすというのは、かなり難しいだろう。しかし、デフォルトの設定のまま使うことができるので、初心者がトラブルことはないだろうが、使いこなすのには、かなりの知識が必要になる。
今回、E-MU 0404を試していて初めて気づいたのだが、従来3機種も含めて、MME/WDMドライバが利用可能なのは44.1kHzおよび48kHzのモードであって、96kHz以上での利用はできない。マニュアルにも書かれているのだが、現状において96kHzが利用可能なのはASIOドライバだけなのだ。ただ、今後のドライバのアップデートでWDMドライバでも96kHz対応予定であることは明言されている。
■ 低価格オーディオインターフェイスとして優秀なパフォーマンス
では、ここで、いつものように音質に関する実験を行なってみよう。まずは、アナログの入出力を直結させて、ノイズレベルがどの程度あるかを測定した。アンバランスのRCAピンを使ったものではあるが、-100dB程度のノイズに抑えられており、なかなか優秀。さすがにE-MU 1820Mと比較するとワンランク下という感じではあるが、15,000円のカードとは思えないほどの結果である。
ノイズレベル | サイン波 | スウィープ信号 |
サイン波を使ってのS/N、歪の測定結果もなかなか優秀。高調波、低調波ともにほとんど出ておらず、87.76dBという値を出している。もう1つのスウィープ信号のほうも、非常にフラットな特性となっているのがわかるだろう。
また、RMAA(RightMark Audio Analyzer)を使っての実験もしてみたが、この結果を見ても、なかなかの好成績となっている。ここでは48kHzで実験してみたが、前述したとおり、MME/WDMで96kHzは扱えないため、96kHzでの実験は見送っている。RMAAでの結果。Summaryの全項目が「Excellent」という好結果に |
ところで、このE-MU 0404のバンドルソフトは、E-MU 1212Mのものと近い構成になっているのだが、0404の方が良い点もある。まず、同じソフトとしては波形編集ソフトとしてSteinbergの「WaveLab Lite 2.5」と、「Cubasis VST 4.0」がある。いずれも日本語版であり、とくに機能制限もないのでこれだけでもかなり楽しむことができる。また、「SFX Machine Lite」というVSTプラグインのマルチエフェクトも同梱されており、これも結構使える。もちろん、VSTエフェクトなので、WaveLabでもCubasis VSTでも利用可能だ。
WaveLab Lite 2.5 | Cubasis VST 4.0 | SFX Machine Lite |
そして、新たに加わったのがMinnetonka Audioの「discWelder BRONZE」というソフト。これは以前にも紹介したDVDオーディオのライティングソフトdiscWelder STEELの下位バージョン。WAVファイルをドラッグ&ドロップすることで、簡単にDVDオーディオを作成できるソフトだ。ただし、これは体験版となっているため、ディスクのライティングは5回までとなっている。実際に試してみたが、使い方はいたって簡単。ただし、メニュー画面などはエディットできない。
discWelder BRONZE |
せっかくこうしたソフトを同梱するくらいならば、ぜひDVDオーディオのプレーヤーソフトも添付してほしいところだ。
クリエイティブメディアでは、Sound Blaster Audigyと、E-MUシリーズの位置づけについて、前者はエンターテイメント用、後者はオーディオのリスニングやレコーディング、またDTM/DAW用途と切り分けており、DVDオーディオもエンターテイメントの1つということで、Audigyのみにプレーヤーソフトが添付されている。現状、PCでDVDオーディオを再生するためには、Audigy2が必要とされているが、ぜひ、今後E-MUシリーズにも搭載してほしいところである。
□E-MUのホームページ(英文)
http://www.emu.com/
□製品情報(英文)
http://www.emu.com/products/product.asp?product=2220&category=754&maincategory=754
□クリエイティブメディアのホームページ
http://japan.creative.com/
□ニュースリリース
http://japan.creative.com/company/press/2004/040611-0404_Professional.asp
□関連記事
【6月11日】クリエイティブ、プロ用ブランド「Creative Professional」
-E-MU製品の取り扱いを開始。低価格新モデルも発売
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040611/creat.htm
【4月5日】【DAL】E-MUの高機能/低価格オーディオインターフェイス
~ 59,800円でマスタリンググレード。「EMU-1820m」を検証~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040405/dal140.htm
(2004年7月12日)
= 藤本健 = | ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL」(リットーミュージック)、「MASTER OF REASON」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。 |
[Text by 藤本健]
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