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第154回:MTR感覚で使える簡単DAWソフト
~「Guitar Tracks Pro3」の魅力をチェック~



 最近、DTMという言葉が何を指すのかわからなくなってきている。少し前までならMIDI音源をPCに接続し、シーケンスソフトで鳴らすことを意味していたが、最近のソフトはどれもMIDIだけでなくオーディオも扱うようになり、マルチトラックで、エフェクトが使え、ソフトシンセが使え……と高機能化している。

 しかし、それに伴い、ソフトの操作が難しくなってきているのも事実。初めてこうしたソフトに触れる人にとって、何がどうなっているのか、さっぱりわからないというのが実情ではないだろうか。

 そんな中にポンと登場してきたのが、今回紹介する「Guitar Tracks Pro3」というソフト。これは完全にオーディオレコーディングソフトなのだが、難しいことを廃し、誰でも手軽に簡単に使えるようにしている。DAWの世界をまったく知らなくても、4トラックのカセットレコーダを使った人ならすぐに使えるユーザーインターフェイスだという。今のDAWと比較して何が違うのか、実際に見てみた。


■ 直感的に使えるわかりやすさ

Guitar Tracks Pro3

 Guitar Tracks Pro3はCakewalk開発のソフトで、国内ではローランドが発売元となっている。実売2万円前後と低価格ながら、SONAR3のエンジンを採用。同社ではCakewalk Home Studioというエントリー版のDAWソフトも発売されているが、そちらのエンジンはSONAR2なので、ある意味Guitar Tracks Pro3のほうが性能的に上ということもできる。

 Guitar Tracks Pro3という名称からも想像できるように、ギタリストをターゲットユーザーに絞っており、これが3番目のバージョンにあたるものだ。もともと、それほどメジャーなソフトではなかったが、使い勝手の面では以前から定評のあるソフトだった。それが、Guitar Tracks Pro3になり、機能、性能が大幅に向上したという。

 通常、高機能・多機能化すると難しくなり、初心者にとっては扱いづらいものとなっていくが、このソフトは使い勝手に気を配って開発しているようで、ほとんどの機能が直感的に使えるのが特徴だ。実際にソフトに触ってみると、さまざまな機能や画面を削りに削って、わかりやすくしていることに気付く。

WDM/ASIO両ドライバに対応する

 24bit/96kHz対応で、WDM/ASIO両ドライバもサポート。DirectXプラグインエフェクトのほか、VSTプラグインのエフェクトをVSTアダプタ経由で使えるなど、スペックは最新だ。

 画面は基本的に、ミキサー画面とトラック画面の2種類しか存在しない。つまりオーディオの波形編集専用画面もなければ、譜面入力画面もピアノロール画面も存在しない。MIDIシーケンス機能そのものが存在していないのだ。そのため、ソフトシンセもなければ、それに関連するルーティングも存在しない。

基本的にミキサー画面とトラック画面の2種類しか存在しない

 一般のDAWソフトは、起動するとアレンジ画面とかプロジェクト画面といったものが現れる。そこから自分でトラックを作り、設定を1つ1つ行なっていかなくてはならないので、初心者は、起動した瞬間に何をしたらいいかわからなくなってしまうだろう。

メトロノームはオーディオかMIDIのどちらかを選択できる

 それに対し、Guitar Tracks Pro3は起動画面がミキサー画面になっている。そして、録音したいトラックを録音モードにし、録音ボタンを押せば、メトロノームが鳴り、それに合わせて演奏すれば、そのままそこに録音できてしまう。もちろん、録音モードを解除して再生ボタンを押せば、録音した音をすぐに聴くことができるし、別のトラックを録音モードにすれば、再生音を聴きながら多重録音していくことができる。なお、メトロノームはオーディオで鳴るが、必要あればMIDIで鳴らすことも可能となっている。

 つまり、単純なマルチトラックレコーダ感覚で使えるため、PCやDAWのことは知らなくても、MTRを利用したことのある方なら違和感なく使える。


■ ギタリストにはたまらないアンププラグインを装備

 とはいえ、Guitar Tracks Pro3は単にマルチトラックレコーダを再現したソフトというわけではない。

 特徴的なのは、一般のDAWソフトと同様、プラグインのエフェクトが自由に使えるということ。ギタリスト用のソフトというだけに、標準で搭載されているのはギター系のエフェクトが中心だ。中でも一番のポイントは、IK Multimediaのアンプ・モデリング・プラグイン、Amplitube LEを搭載していることだ。

Amplitube LE

 詳細は省くが、アンプヘッドを模したパネル上でさまざまなギターサウンドを再現することができる。オーディオインターフェイスにエレキギターの出力をそのまま接続し、Guitar Tracks Pro3でAmplitube LEを通すだけで、驚くような迫力あるサウンドが飛び出してくる。レコーディングはともかく、このAmplitube LEの音を使うだけで、ギタリストなら何時間でも楽しめてしまうはずだ。もちろん、さまざまなプリセットサウンドが用意されているので、まずはそれを選び、細かくは調整してみるといいだろう。

 そのほかにも、GT・FX SuiteというCakewalk製の6種類のエフェクトも用意されている。具体的には「Phaze」、「Squeeze」、「Verb」、「Modulate」、「Echo」、「Q」の6つ。それなりに使いやすいエフェクト群だが、ギター用としては、もっと単純でいいからディストーション、ディレイ、コンプ、コラース、フランジャー……といった種類を揃えてもらいたかった気もする。

Phaze Modulate

 とはいえ、ギター1本あれば、全部できてしまうこの便利さはなかなかなもの。これらプラグインはすべてDirectXプラグインなので、DirectXプラグインであれば、即追加できるほか、VSTアダプタが搭載されているので、VSTプラグインも利用可能となる。

ギターチューナも搭載している

 また、各トラックに直接エフェクトを設定し、インサーションエフェクトとして利用できるほか、AUXも用意されているので、センドエフェクトとしても利用可能。だからディストーションはインサーションエフェクトとして、リバーブはセンドエフェクトでといった使い方も可能なのだ。

 なお、このエフェクトを使ってトラックに録音した音自体は、エフェクトのかかっていないクリーンなギターサウンドとなる。もちろん、何も触らずに再生すれば、各トラックのエフェクトの設定はそのままなので、録音したときと同じエフェクトのかかった音で再生可能なのだが、あとでエフェクトの設定をいじって音を変えることも可能となっている。この辺も音作りの面で非常に便利なところだ。

 また、エフェクトとはちょっと別だが、ギター用ということで、ギターチューナも搭載されているの。使い方はエフェクトと同様に設定してつなぎ、あとはギターを鳴らしてメーターの動きを確認するだけ。これはなかなか便利である。


■ DTM入門にもオススメ

 以上のように、Guitar Tracsk Pro3はほとんどの操作をミキサー画面上で行なうことができるが、必要であればトラック画面に移り、録音した波形を目で確認することもできる。もちろん、単に見るだけでなく、拡大表示させて波形そのものをエディットすることも可能。

 音量やパンの動きなどを書き込むこともできる。当然、こうしたフェーダーの動きはミキサー画面上でマウス操作したものを記録させる以外にも、フィジカルコントローラーを接続していれば、そちらの動きを記録し、トラック画面で修正するといったことも可能である。

波形を表示・編集することもできる 音量やパンを書き込む機能も装備

ループシーケンス機能を使って手軽にフレーズが作れる

 さらに、トラック画面でできる便利な機能がループシーケンス機能だ。SONARやCakewalk Home StudioなどにはACID互換のループシーケンス機能が用意されており、これで簡単にフレーズを作れる。

 元となるグルーブデータは世の中一般に広く普及しているが、この製品のCD-ROM内にも数多くのライブラリが用意されているから、これらを使えば簡単に曲が作れる。一般的な使い方としては、これでドラムフレーズやベースフレーズなどを簡単に仕上げておき、そこに自分で演奏するギターの音をかぶせていくという方法。これなら、10分もあればちょっとした曲が仕上げられてしまうのだ。

 約2万円と比較的安価なソフトだが、DAWソフトがより高性能化、高機能化して難しくなる中、とにかく手軽で簡単というアプローチを行なっている。

 もちろんギタリストだけでなく、誰でもがMTR感覚で使えるソフトなので、これからDTMをはじめてみたいという人はもちろん、DAWを使っているが操作が面倒だという人にもオススメできるソフトである。


□ローランドのホームページ
http://www.roland.co.jp/
□製品情報
http://www.roland.co.jp/products/dtm/CW-GP3.html
□関連記事
【6月14日】ローランド、24/96対応USBオーディオインターフェイス
-USBバスパワードで動作し、リミッターも搭載
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040614/roland.htm

(2004年7月26日)


= 藤本健 = ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL」(リットーミュージック)、「MASTER OF REASON」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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