■ もう新モデル?
自分が買ったモノの新モデルが出るときには、いつもうれしいような口惜しいような気分を味わうことになる。ましてや今まで愛用していたものともなると、その思いもなかなか複雑だ。 以前レビューした三洋電機の「Xacti C1」(DMX-C1)だが、その後筆者は実際に購入して、取材に使っている。今までインタビューをするときにはボイスレコーダを使っていたのだが、複数の方のお話しを同時に聴く場合、あとで聞き返したときに声だけでは誰の発言だったのかわからなくなる。だがC1で顔も含めて撮っておけば、記事にまとめるときにも混乱しない。 また発表会などのときに、社長の挨拶を収録しながら同時にWeb掲載用の写真を撮るなど、従来のカメラではとてもこなせなかった作業を1台でやってのける。普通の人が使うような用途ではないが、取材する人間にとっては、確かに便利なデバイスなのである。 そんなC1も発売されて10カ月、途中カラーバリエーション展開もあったが、ついに新モデル「DMX-C4」の登場となった。あいだのC2とC3が社内的にどうなったのか知る由もないが、モニターの大型化、4MピクセルCCDなど、数々の改良が施されているようだ。今回お借りしたのはまだ最終モデルではないため、画質や動作など、若干仕様に変更があるかもしれないが、さっそく新Xactiを試してみよう。 ■ 同じようで変わったボディ
まず本体を見てみよう。デザインとサイズ感はほぼC1を継承しており、後継機というよりもリニューアルモデルといった印象だ。ボディーカラーは、今回最初からカラーバリエーション展開されるようで、アクティブオレンジ、ファンタジーゴールド、ロマンスブルーの3色がある。お借りしているのはファンタジーゴールドだが、白昼光で見るとほぼシルバーに見えるほどの、微妙な色合いだ。
本体はC1に比べると、若干下部の絞り込みがゆるやかになっている。これは液晶モニターのサイズを大きくした影響だろう。ホールド感の変化はそれなりにあり、C1のしぼり込んだ形がツルッと滑りそうな感じを受けるのに対して、C4はしっかりホールドできる。形としての面白さは若干後退したが、ホールドの安定性はC4のほうがいい感じだ。 1.5型から1.8型に変更された液晶モニターは、数字的には大した差はなさそうだが、比べてみると印象がずいぶん違う。やはり高解像度撮影ともなると、最低でもこのぐらいのモニターサイズが必要ということだろう。
光学系のスペックとしては、CCDが総画素数423万画素のものに変更され、静止画の記録画素数が伸びた。順当に行けば4Mピクセルが最高だが、最高で3,264×2,448ピクセルの8.0Mモードの存在がC4のウリとなっている。ちなみに、手元の資料には「独自のアルゴリズム」としか書かれていない。 また動画撮影時のみ、電子式手ぶれ補正が使えるようになった。手ぶれONでは画角が一段狭くなるが、カメラのサイズがサイズだけにほとんど手持ち撮影がメインになる。動画を撮る機会の多い人には、うれしい改良ポイントだろう。光学部の改良ポイントはまさにこのCCDまわりの性能アップがメインで、そのほかWide端やズーム倍率、解放F値といったスペックはまったく変わっていない。 そのほかの改良点も見ていこう。開けにくいとユーザーに不評だったSDメモリーカードスロットのフタは、ツメが引っかけられるような凹みが付けられた。細かい改良だが、使い勝手が確実に良くなっている。
ズームレバーも、以前はやや高い出っ張りが1つだけ設けられていたが、C4は背の低いギザギザに変更された。ここは親指で操作する部分だが、指先に加わる不快感がずいぶん減っている。またレバーの動き自体も若干軽くなっている。細かいところでは、スピーカーホールの形状が若干変更されているほか、液晶モニターのヒンジも若干小型化されている。 クレードルは機能的に同じだが、本体が角張った分だけ底部のサイズが違うため、本体の受け皿部の作りが若干違っている。バッテリも同じ、好評だった充電器を兼ねたACアダプタも同じものだ。
付属品で違っているのは、C1が手首に通すハンドストラップであったのに対して、C4ではXactiのロゴ入りネックストラップに変更されている。レンズキャップもライトグレーからブラックになった。 付属のキャリングケースだが、布製のソフトケースに変更された。C1のケースは合皮製のハードケースで、内部にポケットも多数あり、予備バッテリや小型接続アダプタなどが一度に収納できてなかなか良かったのだが、この点が今回コストダウンのポイントなのかもしれない。
ただハードケースの場合は常時携帯するというよりも、移動中にまとめておくという用途になる。今回のソフトケースは、背面にベルト通しがあり、本体を横向きに携帯するスタイルになるため、開口部が広く取り出しやすい。常時携帯して貰おうという心づもりなのかもしれない。 付属ソフトは、編集ソフトの「Ulead Video Studio 7 SE DVD」から、オーサリングソフトの「DVD MovieWriter3 SE」に変更になった。最終形態としてDVDにして終わり、という流れはコンシューマーらしい方向性だが、Wep用の撮影モードを備える動画カメラで、MPEG-4ファイルが書き出せる編集ツールが付かなくなったのは残念だ。WebにMPEG-4動画を上げたい人は、困るだろう。 むろん別途「Video Studio 8」を購入して、さらに「MPEG-4プラグイン」まで買えば編集はできるのだろうが、別途出費がかかるのであれば、そこまでして編集する人も減るだろう。 ■ フォーカスの追従性UP
では実際に撮影してみよう。本体の外見はあまり変わらないが、内部のソフトウェアはいろいろ変わっている。C1では初心者用にBasicモード、フル機能が使えるExpartモードの2つがあったが、今回はそれらのモードを廃止し、最初からフル機能が使えるようになっている。
メニューはPAGE1、PAGE2の2面を、ジョイスティック左のアクションで入れ替えて使うスタイル。縦スクロールで隠れる項目がないので、一覧性が良くなった。またカメラのベーシックな設定を行なうOPTION設定が、通常使用するメニューとは分離したところにあり、誤って迷い込むことがない。 新設されたメニューとしては、シーンセレクトで「花火」が加わった。夏休みの思い出を撮るには若干間に合わなかった感じもするが、この夏、花火撮影でイタイ思いをした人にはグッと来るかもしれない。
その代わりといっては何だが、フィルターが若干減り、コスメ、モノクロ、セピアの3種類だけとなった。C1にあったスリム、ゴーストがなくなっている。もっともこれらはかなり特殊な効果なので、今までもあまり使われなかったことだろう。 手ぶれ補正設定があるのは当然として、そのほか「ノイズ低減」という設定ができたところは新しい。一種のノイズフィルターだろうが、シャッタースピードが1/4以下のときに動作するという。とは言ってもC4では、撮影時のシャッタスピードなんてどこにも表示が出ないので、働いたかどうかは確認できない。
画角などはC1と同じで、35mm換算でワイド端38mm、テレ端220mmの5.8倍光学ズームを搭載する。前段でも述べたとおり、手ぶれ補正を入れると画角が狭くなる。ただし手ぶれ補正が効くのは動画のみで、静止画撮影時には、静止画シャッターを半押しした時点で画角が元に戻る。
サンプルの動画を見ればおわかりかと思うが、以前C1に見られたズーム時のフォーカスのふらつきも少なく、ゲインの追従も速くなり、かなり普通のビデオカメラに近い動作をするようになった。C1もファームウェアのアップデートで、以前のレビュー時よりもフォーカスの追従はだいぶ良くなっているが、C4のほうがが速いようだ。
手ぶれ補正ON時の画角数値は資料がないが、一回り違うという表現でもおかしくないだろう。だがテレ端の時は、ビデオカメラとしてはもの足りない光学ズームを多少補ってくれるケースもある。できれば手ぶれ補正ON/OFFのショートカットが欲しかったところだ。
■ 複雑な手ぶれ補正ON時の使い勝手
そのほか操作上の変更点としては、ジョイスティックを下にやることで、フォーカスレンジが切り替えられるようになった。表示なしが「全域」で、以下「ノーマル」、「マニュアル」、「スーパーマクロ」とローテーションする。ヌケやナメの構図でフォーカスが合いにくい時や、素早くマクロに切り替えたいときに重宝する。 本機では手ぶれ補正が付いたために、静止画の撮り方が若干難しくなった。C1からの特徴として、このカメラは動画撮影中に高解像度の静止画が撮れるのがウリだが、手ぶれ補正ONで動画撮影中に静止画を撮影しても、動画より広い画角で撮れてしまう。これはすなわちユーザーが意図しない画角というか、モニターで見えている範囲外まで撮れるということだ。 また動画を撮影しない状態でも、モニターには手ぶれ補正ON後の狭い画角が表示されているため、静止画を撮ろうと思ってフレーミングしても、シャッター半押しした時点で画角がパッと広がってしまい、なんだよもー、ということになる。 マニュアルには、静止画撮影時は手ぶれ補正を切るよう指示されているが、それでは動画・静止画を意識しないで使えるという基本コンセプトと矛盾してしまう。メーカーとしては、だから自動で切り替えやってるんだ、ということなのかもしれない。 これは私見だが、手ぶれ補正がONのときは、静止画撮影時に画角が狭くなっても、補正を効かせて良かったのではないだろうか。パナソニックのLUMIXでは、小型のカメラだから静止画でも手ぶれ補正が必要というロジックが受けて、人気商品となっている例もある。あれは光学式だが、400万画素CCDをゼイタクに使って、電子式でトライするメリットもあっただろう。 静止画に関しては、そもそもコンパクトカメラで8Mまで要るか? という議論はあるだろう。確かにこんなちびっこいカメラで撮った写真をパネルサイズで出力するのか、という話であれば、それは機能としては可能かもしれないが、シチュエーションとしてないように思う。 だがこれだけのサイズで撮っておけば、テレ端が足りないときに中央部だけトリミングしても、そこそこの解像度になる。そう言う意味では正攻法ではないものの、ツブシが利くカメラということになるだろう。
■ 総論
三洋電機はデジカメのアセンブルなど、OEMで大手のメーカーである。そんなことから、自社の看板を背負ったデジカメを表舞台でどれぐらい頑張るのか疑問であったのだが、C1はかなり広告宣伝費を投入して、本気参戦モードであった。全車両の外側にC1の広告を貼った山手線を見たときには、ソコまでするかと思ったものである。今回のC4は最初からカラーバリエーションを用意して、かなりやる気のようだ。 今回の改良点で漏れたのは、バッテリだ。消費電力が減るどころか、若干C4では増している。SDメモリーカードは既に1GBが発売され、そこそこの画質で2~3時間撮れるようになってきているのに、バッテリが連続で1時間程度しか保たないのは辛い。筆者はインタビューなど撮っているから、ついそんなことにこだわってしまうのだが、なんとか大型バッテリを使う方法が欲しいところだ。 また今後の要望としては、ワイドアタッチメントを是非出して欲しい。筆者も以前からアピールしてきたこともあって、最近は徐々に画角の広さが意識されつつある。C1やC4にはレンズ前にネジが切られていないのだが、レンズキャップがしっかりはまるぐらいだから、なんとか方法はありそうに思えるのだが、どうだろうか。 今回のC4は、内容的にはC1の問題点の多くが改善され、旧ユーザーには魅力がわかりやすいのだが、いかんせんボディデザインがほとんど変わらないので、新規の顧客には何も変わっていないように見えてしまうのではないかという危惧を感じる。そのあたりをいかにアピールしていくのか、今後の広告展開にも注目していきたい。 □三洋電機のホームページ (2004年8月25日)
[Reported by 小寺信良]
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