■ 飽くなきチャレンジ(買う方も)
自分でHDDを入れ替えできるのをウリに、今年2月に発売された超禁断レコーダ「PVR-80HD」は、そのあまりにも衝撃的なアレッぷりに全品回収という、ものすごい結末を迎えるに至った。 販売元である家電量販店ノジマのEコマース会社「株式会社イーネットジャパン」(い~でじ!!)では、3月に改良した新バージョンを発売するという話であったが、現在「いーでじ」自体がリニューアル中で、家電系サイトも存在しないため、その後どうなったのか確認のしようがなくなっている。というかこれはかなり「なかったこと」になりそうな気配をモリモリ感じているのは、筆者だけだろうか。 さて、今月頭に発売になったDVDレコーダ「QV-5000PVR-J」(以下QV-5000)も、自分でHDD増設が可能なレコーダである。発売元のQuixun(クイックサン)は、Cube型ベアボーンなどを販売している会社で、現在のところそのオンラインショップ「Aziandoor」でのみ入手可能となっている。当然編集部で即買いである。 HDDが自分で増設できるということは、余ったHDDを使ってもいいし、バルクのHDDを買っても安あがりだ。本体価格も27,800円と、ホントにレコーダかと思うような金額である。QV-5000の場合は、PVR-80HDのようにHDDをリムーバブルできるタイプではなく、完全に中に組み込んでしまう方式。ただし現在のところ、ファームウェアがHDD録画に対応していないため、DVDレコーダと各種プレーヤーとしてしか動作しないという、先物買い的な状況での販売スタートである。 増設HDDレコーダの夢を託して、さっそくテストしてみよう。
■ 若干ヨーロピアン仕様
まず外観から見ていこう。全体的にガシッと角張ったイメージで、一つ一つのパーツにさほど高級感があるわけではないが、パネル材質や塗装の仕上げなどは悪くなく、見慣れてくると全体的に落ち着いた雰囲気が感じられる。 フロントパネル左には、電源ボタン、入力ステータスと録画表示のLED表示、カラオケ用マイク入力がある。電源ボタンはガシッと押し込むタイプで、こういうスイッチは久しぶりに見たような気がする。
カラオケ用マイク入力は、アジア・中東地域向けDVDプレーヤーにはよくある仕様で、国産メーカー製の廉価DVDプレーヤーにも、海外仕様のものにはマイク入力が付いているものも少なくない。しかし昔のガスレンジみたいなボリュームツマミってのも、久しぶりに見たような気がする。各種DVD系のロゴが印刷されている下に、DivXのロゴがおもいっきしシールで張られている。 中央部はドライブとステータスディスプレイ、録画ボタンがある。ドライブは、現状ではDVD+R/RWしか使えない。ファームウェアのアップデートでDVD-R/RWにも対応とあるが、今の段階でそれができてないということは、素性は+RWドライブなのだろう。しかしファーム変えるだけで他のメディアに対応しますっていうのも、大胆である。
FL管のステータスディスプレイは、時間や音声出力、再生オプションなどを表示する。ディスプレイの右にもLEDが光っているが、これはもしかして電源ランプなのだろうか。普通電源ランプって電源スイッチの近くに付けるものだと思うが、いやツッコミどころが多くて楽しすぎる。 右側には走行系のボタンが並び、その下には外部入力端子がある。この価格でDV端子まで備えているのはすごい。 背面に回ってみよう。端子類はかなりユニークだ。RFコネクタはどこの国の仕様なのかわからないが、日本では見かけない変わった同軸コネクタになっている。このため本機では、変換プラグが付属しており、これを経由してアンテナ線を接続することになる。
外部入力は前面に1系統と背面に1系統、ビデオ出力はコンポジットとS映像、コンポーネントが各1系統ずつ。S映像とコンポーネントは排他仕様になっており、メニューで切り替える。 中央部の大きなマルチコネクタは、ヨーロッパでは標準的に使用されてるSCART端子だ。アナログの映像(アナログRGBやコンポジット)、音声信号をまとめたものであるが、マニュアルには使用できないとある。アナログ音声出力は5.1ch分があり、デジタルは光と同軸両方が付いている。 リモコンも見てみよう。オーガニックな形状の平たいリモコンで、ボタン名などはすべて英語表記。十字キー以外はボタン類が整然と並んでいるだけで、特徴があまりない。再生や停止ボタンも変な位置にある。チャンネルのアップダウンボタンはないが、十字キーの上下で操作できる。
■ やっぱり開けてみないことには
まだHDDは使えないが、一応将来のために中味を見ておこう。本体は特に開けやすく作られているというわけでもなく、普通に背面のネジ4つを外して天板を開けるようになっている。背面には開けちゃだめよ封印シールが張られているが、んなこと言われたって開けなきゃHDD着けられないわけで、気にしないことにする。 内部はL字型のメイン基盤に電源部、DVDドライブというシンプルな作り。DVDドライブは、「Loader」というブランド名になっているが、知らんなぁ。その左側が、HDD用のスペースとして空いている。メイン基盤にはIDEコネクタが2つあり、HDD増設時は空いているほうを使うことになるのだろう。もちろんHDD用の電源コネクタも用意されている。
左側にネジ止め用の穴が一つだけあるものの、底面が空いてないので、そんなもんどんな工具でネジ止めするのか謎だ。そもそも一カ所だけでは、HDDは固定できない。てか「オマエらHDD着けてみたことないだろ!」といいたくなる。大丈夫かホントに。
■ ソフトはマトモっぽい
今のところDVD+R/RWにしか録画できないが、一応機能の方をチェックしてみよう。すべての操作は、メインメニューに集約されている。日本語のメニューも、台湾製品にありがちなぶっ壊れた日本語ではなく、そこそこまともだ。ただ一部文字が抜けていたり、直訳っぽいところがあったり、英語ダイアログのままだったりする部分も一部残っている。
チューニングはオートCHスキャンを使用することになる。日本だけに向けた製品ではないため、放送局名を割り当てたりする機能はない。実際にチューニングしてみたところ、VHF帯域はちゃんとチューニングされたが、UHF帯域がちっとも引っかからない。キー局しかダメっていうのもどうか。 テレビのスルー映像をコンポーネント出力で見ると、色は若干アンバー系になるようだ。日本製品では、ピンクの肌を求めるためにマゼンタ系へ振っているものが多いため、若干異文化を感じる。ノイズリダクションなどがないのか、S/Nはあまりよくない。その代わりといっては変だが、輪郭や文字などはかっきりしている。全体的に「カタい絵」と言えそうだ。 再生に関する設定はかなり多く、ピクチャーモードが数種類選べたりする。音声はリミッタやPro Logicの設定が充実している。だがいちいちメニューの奥まで入っていかないと設定できないので、ソースに合わせて変更するという作りにはなっていない。
録画予約設定を見てみよう。もちろんEPG、Gコードなどに対応しているはずもなく、手動設定のみだ。「ガイド予約」は、設定項目一つ一つがウィザード形式で出てくるタイプの設定方法。「番組録画」は設定項目が一覧で表示され、必要な項目を選んで変更することで予約設定を行なう。
日にちの設定はカレンダーが出てくるので楽だが、時刻の設定がかなり面倒だ。予約しようとすると、開始時刻が現在時刻になっており、終了時刻は常に0:00になっている。ボタン長押しで数値が早く進むわけでもなく、ひたすら連打する必要がある。 録画モードは、XP、SP、LP、EP、EP+の5段階。マニュアルでのレート設定や、ジャストモードなどはない。またディスク残量などもまったく計算してくれないので、予約段階ではメディアに入るのかどうかもわからない。
録画した映像は、NRがないので画質は荒っぽい感じだが、XP、SPモードあたりなら、意外に録画に起因する画質劣化はあまり感じられない。LPでも速いシーンで若干ブロックノイズを感じる程度だ。EP、EP+はまあ、一般的な長時間モードと同等の画質だ。
再生品質もまずまずで、早送り/巻き戻しは、2,4,8,16倍速が可能。一方テレビを録画したメディアでは、早送り/巻き戻しは、2,4,6,8倍速になる。また十字キーの左右ボタンで、10秒スキップとなる。
■ 総論
QV-5000は、基本性能としてはPVR-80HDよりずいぶんマトモだと感じる。こないだのレビューではさすがに壊れてるんだろうと思って書かなかったが、実はPVR-80HD、タイマー予約するために電源を落とすと本体の内部時計も一緒に止まってしまって、一生予約録画が始まらないという、「フツー考えてソコ気付きませんか」ぐらいのレベルであったのだ。この話はその後、飲み会で受ける筆者の持ちネタとして不動の地位を築いた。 あれに比べればQV-5000は普通に動作するし、壊れてもいない。ただイマドキのレコーダと比べれば、現状は編集機能が全くなく、ホントにただ録れるだけというレコーダというのがちょっと寂しい。 肝心のHDD録画だが、ファームウェアのアップデートは10月末ごろを予定しているという。Aziandoorの製品紹介ページには、「万が一HDD後付け対応が出来ない場合、返品のご希望のお客様には対応させて戴きます」とある。ただファームの10月末というのも、納期を約束するものではないとあるので、どの時点で対応できないと判断するのかも完全に向こう任せというのが、ちょっと不安なところだ。現状で十分という人は別として、少なくともHDD録画を期待するのであれば、購入はそのファームが出てからにしておいた方が無難だろう。
また、付属のマニュアルにはHDDのことは全く触れられておらず、完全にDVDレコーダとしての記述になっている。さらにHDDの固定はどうするのか、編集機能は付くのか、てかダビングとかできるのか? 不安と期待を胸に秘めながら、10月まで待つことにしよう。 □クイックサンのホームページ (2004年8月18日)
[Reported by 小寺信良]
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