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今回EDIROLブランドで登場した新製品は、ハードウェア2製品、ソフトウェア2シリーズ4製品の計6製品。一方、Rolandブランドでは計3製品が発表された。
発表製品数こそ多くないが、従来にはない面白いコンセプトで、目玉となるのがRolandの新コンセプト製品として打ち出した「R-1」というWAVE/MP3レコーダだ。
■ 24bit/44.1kHzでCFに録音可能なWAVE/MP3レコーダ
R-1は、10月末発売予定で、店頭販売価格は40,000円前後の見込み。WAVE/MP3レコーダという言葉からはあまり新しさを感じないのだが、これがなかなか画期的な製品。何が画期的かというと、これ1台で24bit/44.1kHzでのリニアPCMのレコーディングができてしまうのだ。従来、デジタルレコーダというとDATなどを除けば、会議などの音を録ることを目的としたもので、音楽録音用途というものはあまりなかった。音楽用途としてはKORGの「PANDORA PXR4」や、ZOOMの「PS-04」などコンパクトな4TRのマルチトラックレコーダは存在していたが、これらはMTRであることに主眼が置かれており、データに圧縮がかかっていたり、サンプリングレートが32kHzまでと制限があった。
WAVE/MP3レコーダ「R-1」 |
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それに対し、R-1はリニアPCMで録れるのが最大のポイントであり、メディアとしてコンパクトフラッシュを使うため、WAVEファイルとしてPCへ渡して、PC側で編集することが簡単にできる。また、USB 2.0端子も持っているので、PCとR-1を直接接続してデータを転送することも可能だ。
DAT以来、2chオーディオでそれを上回るスペックの製品、規格がほとんど存在しなかったが、R-1はその領域にチャレンジする製品だ。リニアPCMということでは、Hi-MDが話題になっているが、これはあくまでもMDの世界で閉じた話であり、PCでデータを編集することはできない。その点、プロテクトなども何もなく、PCで扱えるのは大きなアドバンテージといってもいいだろう。
もうひとつ大きなポイントが内蔵されたマイク。このR-1には、LとRの2つのマイクが内蔵されているのだが、これがなかなかの性能。こうした機材に内蔵のマイクというと、音質的には割り切ったものが多いが、R-1の内蔵マイクは高性能なバックエレクトレット・コンデンサ・マイク。このマイク自体がどこのメーカーのどんなものなのかは明らかにされなかったが、かなり高級なものを使っているとのことで、実際デモを聴く限りかなりいい音で録れている。Rolandでは、「1万円以下の外付けマイクをつけるよりも、確実に音がいい」とのことで、かなりの自信作らしい。まあ、気に入らなければ、外付けマイクも使えるが、ステレオで搭載されている無指向性のこのマイクを利用する価値はありそうだ。
さらに面白いのが、このマイクにあわせたマイクシミュレータが搭載されていること。Rolandは、マイクシミュレータや、アンプシミュレータ、さらに各種エフェクトなどを実現する「COSMテクノロジー」という技術を持っているが、これをR-1のバックエレクトレット・コンデンサ・マイク用にチューニングして搭載。その結果、某メーカーのボーカル用ダイナミックマイク風や、某メーカーのビンテージ・コンデンサマイク風などをシミュレーションできるという。
またアナログ回路へのデジタル系ノイズの進入を抑え、アナログ信号を最適なレベルでADコンバータに送る「IARC」(Isolated Adaptive Recording Circuit)という新開発の技術も採用するなど機能は盛りだくさん。
ちょっとデモ機を触らせてもらった感じでは、メニューの階層も非常に浅くできており、マニュアルなしでもほとんどの操作はできそうだ。とはいえ、展示されているものを触るだけでは、わからない点も多い。モノを借りる約束もできたので、近いうちに、R-1に関する詳細なレビューを予定している。
□「R-1」の製品情報
http://www.roland.co.jp/products/dtm/R-1.html
■ 演奏に特化した薄型キーボード「PCR-M1」
EDIROLブランドとして、もうひとつ登場したハードウェアが「PCR-M1」。店頭価格は25,000円前後で、10月末発売の予定。以前に紹介した「PCR-1」と見た目もそっくりの薄型の鍵盤で、1,400g、厚さ28mmを実現している。例の「S.L.I.Mキーボード」が使われているのだが、PCR-1からオーディオ機能を取り去る一方で、MIDIインターフェイス機能や、フットペダル接続端子を搭載した、演奏に特化したモデル。
「PCR-M1」 |
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また新開発の感圧式のプレス・バック・ベンダーとロータリー・エンコーダーを1基搭載し、27系統の操作子を装備。従来どおりUSB電源と、ACアダプタで動作するほか、単4電池4本でも動作する3電源方式となっている。
□「PCR-M1」の製品情報
http://www.roland.co.jp/products/dtm/PCR-M1.html
■ SONAR4が登場
「SONAR4 Producer Edition」 |
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ソフトウェアは、CakewalkのDAW/シーケンスソフトが4製品出ている。中でも注目されるのが「SONAR4」の登場だ。
SONAR3が登場して、ちょうど1年でバージョンアップと間隔が短くなっているが、日本では11月末に「SONAR4 Producer Edition」(店頭価格87,000円前後)と、「Studio Editon」(店頭価格50,000円前後)がそれぞれ発売される。
SONAR2からSONAR3へほどの劇的な変化はないものの、さまざまな面で強化されたほか、使いやすくなっている。実際に使ってみるとCubaseSXにあって、SONAR3になかった機能が、搭載されるとともに、Cakewalk独自のものがいくつか搭載されたといった感じだ。
「サラウンドパン」 |
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もっとも目立つのはサラウンドへの対応。1トラックでモノラル、ステレオのほかにサラウンドを扱うことができるようになるとともに、サラウンドパンも搭載され、5.1chなどの音楽制作が可能となった。性能面ではLogicやSamplitudeで搭載されているディザリングエンジン「POW-r」が搭載されたのも大きい。
使い勝手の面では、ナビゲーターというプロジェクト全体を見る画面ができた。全体の中から見たいところを範囲選択すれば、それがトラックとして大きく表示されるようになっている。
またトラックビューにおけるレベルメーター表示が見やすくなったのも大きなポイントだろう。表示が大きくなったのとともに、どのくらいの細かさでリフレッシュするか、ピークのホールドタイムをどの程度にするのかなどを設定させるダイアログなども搭載し、より見やすくなっている。
さらにCubaseSXなどでは以前からあったトラックフォルダ機能を装備したり、オーディオのメトロノームが搭載されたり、ソフトシンセの負荷を減らすフリーズ機能も搭載された。
一方、おそらくCakewalkオリジナルと思われる、トラック上でのミュート機能がなかなか便利。トラックの中の一部のフレーズを選んで、そこをミュートすることで、曲作りが非常にしやすくなるのだ。ほかにも、ループ録音した際、すべてのテイクを表示させる機能やスライスした音に対し、スライスごとに、ピッチを変えたり、レベルを変えたりすることができる機能などが搭載されている。
さらにDXiの新プラグイン、ソフトシンセとしてCakewalk、Rolandの共同開発の「TTS-1」というGM2対応シンセも搭載されている。なお、Producer EditonとStudio Editionの主な違いはサラウンド機能、POW-rのディザリング機能がStudio Editionにはない。またLexicon Pantheon Surround Reverb、Sonitus Surround Compressor、Sonitus fx SuiteなどのプラグインエフェクトがStudio Editionにはついていないことなどだ。そのほかプラグインに関しては、SONAR3には搭載されていたVsamplerが削られている。
なお10月9日より店頭で販売されるSONAR3のパッケージはSONAR4への無償アップグレードパスが用意される。たとえばSONAR3のProducer EditionならVSamplerを手に入れた上で、SONAR4で使うということができるほか、若干SONAR3のほうが安いので、いま購入するのが得かもしれない。
「ミュージック・クリエーター2」 |
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Cakewalk製品は、そのほかにエントリー向けのパッケージとして「ミュージック・クリエーター2」(標準価格7,800円)、「ミュージック・クリエーターPRO2」(標準価格11,000円)も発売される。これらは従来の「今日からはじめるパソコンミュージック」の置き換えとなるモデル。
従来の名称から、よりすっきりとした名称に変え、エンジンをSONAR1ベースのものからSONAR2ベースのものにアップさせている。なお2製品の違いは、PRO2が24bit/96kHz対応していることと、FXPadを搭載していることだ。
そのほか、新製品というわけではないが、オーディオデバイスのMacintoshのドライバが新たに登場することが発表がされている。具体的にはOSX用のCore Audioに対応させたUSB機器のVer2.0ドライバで、UA-3FX、UA-20、UA-25、UA-5、UA-700、PCR-1、PCR-A30、UR-80、SD-90、SC-D70、M-100FXのそれぞれが順次公開される。またFA-101用のMac OS 9のドライバもまもなく登場するとのことだ。
□「SONAR4」の製品情報
http://www.roland.co.jp/products/dtm/CW-SN4.html
□「ミュージック・クリエーター2」の製品情報
http://www.roland.co.jp/products/dtm/CW-MC22.html
■ デジタル楽器「Vアコーディオン」
以上のようなPCベースのEDIROLブランド製品とは別に、Rolandブランドの製品も発表されているが、その中で特に目を引いたのがアコーディオン。
なぜ、アコーディオンがこんなところにあるのか?、と思ったのだが、これはRolandが展開しているVシリーズの最新作で「Vアコーディオン」というデジタル機器だ。見た目はアコースティックのアコーディオンそのもので、使い勝手や感覚もアナログ機器と同じだ。
デジタル化したメリットが何かといえば、さまざまなアコーディオンをモデリングによってシミュレーションできることだ。国内ではあまり知られていないが、アコーディオンは国によってタイプや音色、また操作に違いがあるが、それらを簡単に再現でき、いまでは希少価値となっているようなモデルまでこれで実現できるようになっている。
「Vアコーディオン」 |
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この中には空気のセンサーなども入っており、ベローズを使って動かす空気の動きを感知し、それを演奏に反映させているほか、キータッチやキーをリリースした際のカチッという音までも再現させているこだわりよう。
見た感じではデジタルのかけらも感じないのだが、よく見てみると演奏する際の上の面に小さな液晶が置かれているほか、下の面にはラインアウトなども装備されている。
この製品、すでに3月にドイツで開催されたミュージック・メッセでは参考出品されていたとのことだが、国内では初お披露目。アンプ、スピーカー内蔵の「FR-7」とそれらを搭載しない「FR-5」があり、発売時期と店頭予想価格はFR-7が12月で60万円前後、FR-5が2005年2月で50万円前後になる模様だ。
「エントリー・モデル」 |
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今回もうひとつ発表されたのはグランドピアノの音色と表現力を備えたHPシリーズのエントリー・モデルとなるエレクトリック・ピアノだ。
ライトチェリー調仕上げと、マホガニー調仕立ての2モデルが用意されともに10月末発売で店頭予想価格が150,000円前後となっている。
□ローランドのホームページ
http://www.roland.co.jp/top.html
(2004年10月5日)
= 藤本健 = | リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。 最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。 |
[Text by 藤本健]
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