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第168回:オンキヨーの新サウンドカード「SE-150PCI」をテスト
~ 人気のカードが一新。外観は石油コンビナート? ~



SE-150PCI

 音質についてはマニアユーザーにも定評のあるONKYO。いまだに、「SE-80PCI」という2年以上前に出た製品を指名買いするユーザーも少なくないようだが、ようやくその後継機「SE-150PCI」が11月19日に発売となる。

 スペック的にも大きく変わり、従来の16bit/48kHzから最高24bit/96kHzに対応するとともに、出力も最高で7.1chまで利用可能となっている。



■ インパクトある外観は「石油コンビナート」風?

巨大なコンデンサ群が目立つ基板

 今回、試用したSE-150PCIは、発売直前の試作機。噂には聞いていたが、実際に実物を見ると、やはりそのカードの見た目には驚かされる。一部で「石油コンビナート」と呼んでいる人たちがいるそうだが、まさにそんな感じ。円柱状の電解コンデンサがズラリと並んでいる。これまで数多くのオーディオインターフェイスを見てきたが、やはりこれは特異な製品といえるだろう。もちろん、この電解コンデンサはノイズカットや音質向上のためだ。

 一方で、このSE-150PCIの中枢にあるのはVIA Technologiesの「Envy24HT」。24bit/192kHzに対応した非常にハイポテンシャルなチップだ。先日、VIA Technologiesのオーディオチップ関連のトップにインタビューしているのであわせて参照していただきたい。

 このチップを利用し、SE-150PCIでは24bit/96kHzで最大7.1ch出力を可能としている。PCIカード本体には、S/PDIFの光入出力とアナログのライン出力がLとRの2chという形で用意されている。その一方で、D-Sub端子があり、付属のケーブルを利用することで、ここからアナログの7.1ch出力とステレオのライン入力が利用可能となっている。

 このSE-150PCIでは、出力性能にこだわったPCIカード直付けのRCA端子でのステレオ出力と、D-Sub端子-専用ケーブル経由で接続するフロント・ステレオ端子があり、同じ信号が出力されるように設計されている。


オーディオチップはVIAの「Envy24HT」 光デジタル入出力とアナログ2ch出力、D-Sub端子を装備 付属のケーブルを利用して7.1ch出力が可能

 まずは、このSE-150PCIをPCに取り付け、ドライバをインストールした。ONKYOオリジナルのドライバというわけではなく、VIAのEnvy24HT用のドライバがそのまま使われている。その点では、ONKYOのオリジナリティーは発揮されていないのだが、これがなかなかよくできたドライバで、不足はまったく感じない。

 さすがVIAが自ら出しているドライバだけあり、Envy24HTの機能/性能を存分に使いこなすものとなっている。まずは、このドライバでどんなことができるのかを紹介していこう。



■ 柔軟な設定が可能なドライバ

 タスクトレイに常駐しているアイコンをダブルクリックすると、その設定画面が現れる。ここで目立つのは上に並んでいるボタン。2ch、4ch(2+2)、5.1ch、7.1chさらにDigital Inとあるが、これを選択することによって、SE-150PCIの役割が大きく変わるようになっている。

 普段は出力チャンネル数によって、2chにするか5.1chにするかなどを選ぶといい。その上で、再生すれば、どんなアプリケーションでもそのまま利用できる。使われているのはWDMドライバのようだが、残念ながらASIOドライバには対応していない。

上部のボタンを切り替えることでSE-150PCIの機能切り替えが行なえる 出力チャンネル設定画面。スピーカー設定ルールも装備

 とはいえ、各チャンネルごとのレベル調整がミキサー画面でできるのはもちろんのこと、スピーカーの配置やその状況などを確認するツールもあるし、サンプリングレートを44.1kHz、48kHz、96kHzから自由に選択できるようにもなっている。S/PDIFからの出力をするか否かの設定ができるとともに、必要あればAC3でのパススルー出力も可能となっている。さらにQSOUNDも搭載しているので、必要に応じてさらにステレオ感、空間の広がりを実現させることが可能だ。

ドライバはWDM サンプリングレートは44.1/48/96kHzが選択可能

Digital Inの設定画面

 ところで、レコーディング機材系のオーディオインターフェイスでは標準的なものだが、コンシューマオーディオインターフェイスとして珍しいのがデジタル入力に関する設定だ。このSE-150PCIでは、Digital Inというモードがあり、このモードにすることで、S/PDIFからの入力をレコーディング可能になっている。

 多くのサウンドカードなどにあるようなサンプリングレートコンバータは入らず、外部からの信号をそのまま受け取ってレコーディングできるようになっている。実際、入力があると、その信号が何kHzであるかを表示し、SE-150PCI自身のクロックをその外部信号のスレーブとなることもできるし、あくまでも内部のクロックで動作することも可能になっている。そのため、外部信号を100%そのままの形で捉えることができ、それをアナログアウトやS/PDIFへモニタ出力することもできる。

 実際、このアナログ出力を使ってCDを再生してみたが、確かに非常に高音質。本連載においては、あまりニュアンス的な表現は避けたいところだが、24bit/192kHzといったものに対応するプロ用レコーディング機材で鳴らす音とは微妙に雰囲気が違い、オーディオメーカーのオーディオ機器といった雰囲気の音となっている。

 ONKYOによれば、再生でのS/Nが110dBを実現しているというから、まさに高級オーディオ機器に匹敵するスペックを打ち出した製品である。また、ONKYO独自のVLSC(Vector Linear Shaping Circuitry)という独自技術も搭載している。このVLSCのベクトル信号発生器によって、パルスノイズのない、なめらかなアナログ出力が得られるのだが、そうしたものによってある種ONKYO的なサウンドが作られるのだろう。


■ 録音品質をチェック

 では、このSE-150PCIをいつものようにテストしてみるとどうなるのだろうか。オーディオの入出力を直結してループさせる実験だ。前述したとおり、SE-150PCIの2ch出力はPCIカード本体にあるRCA出力と、D-Subを経由してのものがあるが、マニュアルなどを見ても、本体にあるもののほうが、高音質に設計されているようなので、出力はこちらを採用。これをD-Sub接続のラインインにそのまま接続してみた。

入力信号が無い状態でもレベルメータが上がっている

 しかし、ここで問題発生。何の入力もないはずなのに、レコーディング用のSoundForgeの入力レベルメーターがかなりあがっていて、-37dB程度を指している。非常に大きな音量が出力されているのではないか、マイク入力などに何か妙な信号が入っているのではないかとチェックしてみたと一通りチェックし、ライン入力以外はすべてミュートしてみたもののほとんど変化しない。

 レベル調整のために、-6dBのサイン波を出力し、入力レベルが-6dBになるように調整してみたが、それでも変わらない。そのまま無音状態で録音してみてその結果を見るとわかった。DCオフセットが乗っていたのだ。おそらく試作機のためなのだろうが、キレイな直流成分であったので、そのまま実験続行とした。


無音状態のノイズ

 左右で、DCオフセット値に違いがあったが、SoundForge側でそれぞれこの直流成分を取り除いて、拡大してみると、結果はまずまず。プロ用レコーディング機器での結果と比べるとノイズがややあるが、それでも-80dB程度だからかなりいい部類に入る。また本来SE-150PCIはレコーディングというよりも再生に重きを置いた製品であり、この実験の録音と再生を併せて計測するという方法上、SE-150PCIとしては不利になる。

 そういったことを考えれば、十分納得できる結果だ。一応、SE-150PCIは録音でも24bit/96kHzに対応しているが、この結果からはそれはオーバースペックであるといえそうだ。もちろん16bit/48kHzで利用するならば十分余裕がるあるということにはなる。

 次に、サイン波を使った実験。これは先ほどの-6dBのサイン波を使ってループ録音させたものを、WaveSpctraを用いて表示させたもの。これを見ると、非常にキレイではあるが、やや高周波成分が混じっているようで、参考値として表示されるS/Nはそれほどいい値にはならなかった。

 一方、スウィープ信号の結果としては、キレイな結果となっている。48kHzでの実験をしているので、高域の落ち具合いはプロ用機材でも変わらない感じだ。

サイン波を使った実験結果 スウィープ信号の実験結果

 なお、RMAAについて試してみたところ、DCオフセットのせいなのか、オートでは最後まで実験を進めることができず、最終的な結果を得ることができなかったので、今回は割愛する。一方、ONKYOでは、こうした入出力直結の実験ではないが、再生性能についての測定結果を発表している

 ところで、このSE-150PCIについて、インプレス内の某編集部で話をしていたが、CDを再生したときの音がSE-150PCIがいいという人と、SE-80PCIがいいという人と分かれていた。デジタル的な測定結果というよりも、オーディオメーカーのオーディオ機器としての味付けの違いがこうした印象の違いにもなってくるのかもしれない。レコーディング機材とは違うものだが、再生用のインターフェイスとして、また新しい選択肢が加わったことを歓迎したい。

□オンキヨーのホームページ
http://www.jp.onkyo.com/
□ニュースリリース
http://www2.onkyo.com/jp/what/news.nsf/view/SE-150PCI
□関連記事
【11月5日】オンキヨー、24bit/96kHz対応「SE-150PCI」を19日に発売
-有楽町ソフマップで発売直前試聴イベントを開催
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20041105/onkyo1.htm
【9月21日】オンキヨー、24bit/96kHz対応のサウンドカード
-銅バスプレート実装や大容量コンデンサで高音質化
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040921/onkyo.htm

(2004年11月15日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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