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■ Envy24を核とし、発展させたラインナップ
左から陳継健氏、廣瀬勝弘氏、張豊盛氏、VIA正規代理店であるエクセルの江頭俊彦氏。廣瀬氏は台湾勤務で日本担当のアカウントマネージャ。今回の通訳も担当してくれた |
今回VIA Techonologiesのある台湾から来日したのは、同社オーディオ・ビデオ部門統括部長の陳継健氏と、オーディオ・ビデオ部門プロダクト・マネージャの張豊盛氏の2人。VIA TechonologyiesはCPU周辺のチップセットメーカーとして非常に有名だが、オーディオおよびビデオに関連した部署は、完全に独立したビジネスユニットとなっているという。まずは、その辺の事情から伺った。(以下敬称略)
藤本:VIA Technologiesというと、どうしてもCPU周りのチップセットメーカーというイメージが強いのですが、オンキヨーや、M-Audio、EGO-Systemsなど、オーディオインターフェイスメーカーにもチップの提供をしていますよね。現在、VIA Technologiesの中で、このオーディオ関連デバイスの位置付けはどうなっていますか?
陳:おっしゃるとおり、当社ではCPUプロセッサ、チップセット、グラフィックといった関連がメインでした。しかし、PCベースでさまざまなことを行なうホームコンピューティングの市場が大きくなってきたのに伴い、当社でも方向性を変えてきています。CEOが考えているのはオーディオ/ビデオ機能で、PCに付加価値をつけていくということです。ここでユーザーから受け入れられるようにすることが、今後のキーになります。
その結果オーディオ/ビデオユニットは独立した開発部門として位置付けられるようになりました。またCEOからの指示もあって、この部署は急速に大きくなっています。共通のリソースが多いということもあり、オーディオとビデオが1つの部署になっていますが、現在、IC設計、ソフトウェア開発、アプリケーションエンジニアリングチームなど、全部で50人程度のセクションになっており、さらに人員を増強する予定です。
VIA買収前のIC Ensembleのロゴが入ったEnvy24を搭載したサウンドカード |
藤本:VIAのオーディオコントローラチップであるEnvy24はよく目にしますが、これはどのような背景で登場したチップで、これが登場する以前にも、何かオーディオコントローラチップを手がけていたのでしょうか?
陳:Envy24が大きなキーになっていることは間違いありません。実は、2000年に米国のIC Ensembleというオーディオチップメーカーを買収しています。この会社が持っていたプロダクトがまさにEnvy24であり、買収後、これを核にして、発展させていっているのです。また、買収する時点で、IC Ensembleはすでに大きなネームバリューを持っており、業界には浸透していたため、IC Ensembleという企業はなくなりましたが、現在でもブランド名「VIA ICEnsemble」として残しているのです。
藤本:なるほど、そういう背景があったんですね。これまでEnvy24HTやEnvy24MTなどいくつかのチップがありますが、現在どのくらいのラインナップがあって、その違いはどうなっているのでしょうか?
張:それについては私のほうで、説明しましょう。IC Ensembleを買収した時点ではEnvy24(ICE1712)とAC'97仕様で2chのICE1232の2種類しかありませんでした。その後、Envy24は型番をVT1712と改め、パッケージロゴなども改めたのですが、それをベースに、いろいろな製品展開を行なっています。現行の主な製品は下表のとおりです。ご覧いただくとわかるように、Envy24以外はすべて192kHzのサンプリングレートに対応しています。
また、従来PCI V2.1ベースだったものをその後、V2.2ベースにし、最新のEnvy24-II以降はV2.3対応にしていきます。なお、VT1722T、VT1720Tと最後にTが付く製品はミニPCI対応タイプ、つまりPCカードで利用することを前提とした小型のパッケージとなります。Envy24GTについてはVT1720とVT1720Tの2種類が存在しますが、大きさ以外はすべて同じスペックとなっています。
Envy24-II
Envy24
Envy24HT
Envy24GT
Envy24MT
Part #
VT1732
VT1712
VT1724
VT1722/T
VT1720T
Package
PQFP128
PQFP128
PQFP128
PQFP128,TQFP128
TQFP128
WDM Driver
NA
NA
Yes
Yes
Yes
PCI Interface
V2.3
V2.1
V2.2
V2.2
V2.2
Resolutions
24Bits
24Bits
24Bits
24Bits
24Bits
Max Sampling Rates
192KHz
96KHz
192KHz
192KHz
192KHz
I2S/AC_Link Output Pairs
8
4
4
3
1
IEC958 S/PDIF Tx
1
NA
1
1
1
I2S or AC_Link Inputs Pairs
8
4
1
1
1
I2S pair for ADC or S/PDIF In
1
1
1
1
1
Digital HW Mixer
32Bit/36ch
32bit/20ch
N
N
N
GPIO Pins
10
8
23
16
16
I2C
4
1
1
1
1
Midi Port
2
2
1
1
1
Envy24GT搭載のPCIバス用サウンドカード | サイズの小さいミニPCI用カードに搭載されたEnvy24GT |
藤本:かなり色々あるんですね。これらオーディオコントローラチップさえあれば、誰でもすぐにオーディオインターフェイスが作れるということなのでしょうか?
張:誰でもすぐにという表現は正しくないかもしれませんが、われわれはターンキーソリューションとして、すべてを準備しております。したがって採用すれば、すぐに製品化してもらうことが可能だと考えております。ただ、オンキヨーさんなど、独自の技術をもったお客様は独自にドライバを開発したり、周辺回路なども独自に開発されるなど、別のアプローチで製品化されるところもあります。実際、今度リリースされるオンキヨーの「SE-150PCI」なども、かなりよくできた製品だと思っています。
藤本:このEnvy24ファミリーは、簡単にいうと、どういう接続によってオーディオインターフェイスができあがるのでしょうか?
張:下図の左を見てください。基本的にはEnvy24をPCIバスに接続した後、CODECを通じて音が出るようになっています。このCODECはI2S接続となるので、幅広い選択肢があります。たとえば、AKMやTI Burr-Brown、Wolfsonなどの高性能なものが数多くあり、これらの中から好きなものを選んで使えばいいわけです。また、Envy24HTの構成をさらに詳細に表したものが右の図です。これを見ていただけたら、どんなものと接続できるのかなどがおわかりいただけると思います。
Envy24をPCIバスに接続した後、CODECを通じて音が出る仕組み | Envy24HTの詳細 |
藤本:実際、こうしたEnvy24ファミリーを採用しているオーディオインターフェイスメーカーというのはどんなところがあるのでしょうか?
陳:前出のオンキヨーやM-Audio、Ego-SystemsのほかにもHoon-Tech、TeraTech、Philipsなど数多くのメーカーが採用しています。
藤本:それらは、やはりローエンド製品が中心になるのでしょうか?
陳:ハイエンドまでこれが使われています。たとえばM-AudioのPCIバス接続のオーディオインターフェイスはほぼすべてVIA製品が使われていると思います。VIAになる以前のIC EnsembleのころからEnvy24が使われているので、DeltaシリーズのAudiophile2496や、Delta1010などがすべてEnvy24搭載です。
藤本:そうした中、最新のEnvy24-IIというのはどんな特徴を持っているチップなのですか?
陳:仕様は先ほどの表のとおりであり、内蔵のデジタルミキサーは32bit/32chにも対応しているのが最大のポイントです。今後、これを搭載した強力なオーディオインターフェイスが各社から登場してくると思います。またメーカーの名前はここでは出せませんが、上記のメーカー以外にヨーロッパと日本のメーカーから年内に製品が登場することになっていますよ。
□関連記事
【2003年2月3日】【DAL】PC用オーディオデバイスの音質をチェックする
~ その2:普及価格帯PCIオーディオカードの実力 ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030203/dal86.htm
■ HD AudioはPC用チップセットの1つとして対応
藤本:ところで、RealtekはHD Audio対応のオーディオコントローラを出していますが、VIA TechnologiesではHD Audio対応のものは出さないのでしょうか?
陳:我々もHD Audio(Azalia)については、かなり研究を続けてきました。しかし簡単にいえば、Azaliaはやはりプロオーディオ用の製品ではありません。PCのマザーボードなどで利用するとにかくローコストなチップなのです。結果としてS/N、TMD、そしてジッターなどが大きく犠牲になる製品となってしまいます。
それに対し、Envyはハイクオリティーにすることができ、ジッタも抑えられます。またレイテンシを非常に小さくできるというのも重要な要素となっています。さらに、I2Sを利用できるなどオープンな設計になっていますから、優秀なCODECと組み合わせることで、さらに高性能に仕上げることが可能になります。
藤本:つまり、HD Audioはやらないということですね?
陳:ちょっと矛盾してしまいますが、当社としては、それでもAzaliaはやっていきます。これは、オーディオインターフェイスメーカー向けに出すものではなく、PCのチップセットの1つとして、マザーボード用に出していきます。やはり、我々にとってそこが非常に大きなマーケットですから、外すことはできないんです。量が多いという面では、まだしばらくAC97も続けていきます。VT1618というAC97の8chという製品も持っていますから。
藤本:ところで、USB 2.0やFireWire対応のチップを手がける予定はないのでしょうか?
陳:USB 2.0については、まだお話をすることができません。が、非常に近い将来、製品を出す予定で進めていることだけは確かです。
藤本:私の知っている限りでは、USB 2.0対応のオーディオインターフェイスを出しているのはRolandとCreativeだけですが、VIAのUSB対応オーディオコントローラチップが登場すれば、どのメーカーでも簡単に参入できることになりますよね。
張:そうですね。これが出てしまえば、すぐに製品化が可能になるでしょう。それによってオーディオインターフェイスの世界が大きく変化するかもしれません。
陳:一方のFireWireについては、現在のところ予定はありません。やはりUSBと比較すると非常に小さなマーケットなので、どうしても先に優先すべきものがいろいろあるからです。
藤本:最後に、VIA Technologiesとして、今後、オーディオ分野において、どんな取り組みをしていくのか教えてください。
陳:USB 2.0対応したり、新しいテクノロジーにチャレンジしていく一方、DSPソリューションやオーディオエフェクトについても取り組んでいく予定です。そして、これらを近いうちに統合していく考えでいます。
藤本:ありがとうございました。年内に登場するという日本とヨーロッパのメーカーの製品や、今後出てくるUSB 2.0対応製品などを楽しみにしています。
□VIAのホームページ
http://www.viatech.co.jp/jp/index/index.jsp
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(2004年11月1日)
= 藤本健 = | リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。 最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。 |
[Text by 藤本健]
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