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第175回:EGOSYSの24bit/192kHz対応サウンドカードを検証
~ 実売12,000円で「Qsound」機能も搭載 ~



 先週の月曜日が成人の日で休日だったため、Digital Audio Laboratoryとしては今回が2005年の初回。今年もいろいろなデバイス、ソフトなどをチェックしていくつもりなので、よろしくお願いします。

 さて、今年の初回で取り上げるのはEGO Systemsのオーディオインターフェイス「Prodigy 192 LT」。Low Profile対応で、24bit/192kHzに対応しながら実売価格が12,000円程度と非常に低価格。実際、使えるものなのかチェックした。


■ 低価格ながらスペックは「Juli@」と大差ない

Prodigy 192 LT

 ご存知の方も多いと思うがEGO Systemsでは「ESI」と「Audiotrak」という2つのブランドでオーディオインターフェイス製品の展開を行なっている。ESIはプロレコーディング向けの製品、Audiotrakはコンシューマ向けの製品という位置付けなのだが、今回のProdigy 192 LTは、価格からも想像できる通りAudiotrakブランドの製品だ。

 そのため、アナログの入出力端子にステレオミニジャックなどが使われているが、24bit/192kHzに対応するとともに、MMEはもちろん、ASIO、WDM、GSIFに対応するなど、スペック上は以前紹介したESIブランドの「Juli@」などと大きな差はない。

 Low Profile対応ということで、Low Profile用の短いブラケットも付属しているのがProdigy 192 LTの特徴。カードのリアにはマイク入力、アナログ音声入力(ステレオミニ)、光デジタル出力を装備。さらに、ミニDIN変形の専用コネクタがあり、付属のケーブルを接続することで、ラインアウト1/2ch(フロントL/R)、ラインアウト3/4ch(リアL/R)、ラインアウト5/6ch(センター/サブウーファ)、さらにヘッドフォンアウトと同軸デジタル出力が利用できるようになる。

アプリケーションからは「ProDigy 192 LT」と「QVE 96-24」という2つのドライバが見える。ProDigy 192 LTが通常モードで、QVE 96-24がQSoundモード

 また、Audiotrakブランド製品ということで、一般のサウンドボードと同様に、PC内部で各種デバイスと接続する端子も備わっている。具体的にはCDデジタル入力端子、内部マイク入力端子(モノラル)、内部ライン入力端子(ステレオ)、内部ライン出力端子(1/2、3/4、5/6ch)、内部ヘッドフォン出力端子となっている。CD入力を別にすると、ブラケット側に出ているのと同じ端子がボードからも取り出せるようになっているわけだ。

 インストール作業自体はいたって簡単。単純にPCIスロットに挿して、ドライバのインストーラソフトを起動するだけ。あとは、ほぼ自動的に進み、再起動すればProdigy 192 LTが使えるようになる。

 実際使ってみるとわかるが、MMEドライバとして利用する際は、通常のアプリケーションからは2IN/2OUTのオーディオインターフェイスとして見える。ただし、「ProDigy 192 LT」と「QVE 96-24」という2つのドライバが見えるのが不思議なところだが、実はProDigy 192 LTという名前のドライバが通常モードのもので、QVE 96-24となっているのがQSoundモードだ。

 とりあえず通常モードで試すと、何の問題もなく普通に音が出る。ただ、デジタルアウトから出力されなかったが、これはデフォルトではデジタルアウトはCDが選択されているため。コンソールのミキサーパネルでDMAに切り替えることで音が出るようになったが、ただ切り替えただけでは、オプティカルポートが赤く光らない。アプリケーション側から出力をすると赤く光ると同時にきちんと音も出た。

 もちろん、コアキシャルのほうも同じように出力されていた。また、ミキサーパネルのDIGITAL部分の下にはCONとPROというスイッチがあるが、これはS/PDIFとAES/EBUの設定を切り替えるもので、一般的にはS/PDIFで使うユーザーが多いと思うので、デフォルトのCONの設定のままでいいだろう。

 一方、ヘッドフォンもデフォルトでは出力されておらず、やはりミキサーパネルでヘッドフォンアイコンをクリックしてオンにすると、音が出るようになる。このヘッドフォンの音を聴いてみたところ、音質はなかなかいい。モニタ用としては十分使える感じだった。

 ここでASIOデバイスをサポートとしたアプリケーションを起動すると、またちょっと違った見え方になる。たとえばCubaseSX3を使ったところ、入出力ともに8ポート見える。出力の場合、1/2がフロント、3/4がリア、5/6がセンターとサブウーファに割り振られるのとともに7/8がデジタル出力にあたる。入力も同様に割り振られているが、実際にはラインインとマイクインしかなく、それらも切り替えて使うため、基本的には1/2のみを使用する形になる。

 なお、この出力の設定で5/6を選んだ場合でもサブウーファ側には通常の信号が出るため、普通のデバイスに接続しても問題なく利用できる。こうしたことはWDMやGSIFのドライバを用いても同様のようだ。

ミキサーパネルでデジタル出力を切り替えると音が出るようになった ASIOデバイスをサポートとしたCubaseSX3からは、入出力ともに8ポート見える

DirectWIRE機能を利用し、MME、ASIO、WDM、GSIFにおける入出力を自由に振りわけられる

 また、EGO Systemsお得意のE-WDMドライバにより、DirectWIRE機能がサポートしているのも嬉しいところ。つまり、MME、ASIO、WDM、GSIFにおける入出力を自由に振り分けられるようになっている。詳細については以前、Juli@のときに紹介しているので割愛するが、この機能により異なるアプリケーション間でもバーチャルな接続が可能となる。

 また、これを使うことで、ASIOの入力において1/2以外も有効に利用することが可能になるわけだ。また、ASIOでのレイテンシは48サンプルまで絞り込むことで、96kHzの場合、2.00msecとまですることができた。

ASIOでのレイテンシは48サンプルまで絞り込むことで、96kHzの場合、2.00msecとまですることができた


■ 豊富な機能が魅力のQsound

2ch出力時には擬似サラウンドを、マルチチャンネル時ではQMSSが機能し、ステレオの音源をサウンドに変換する

 さて次に、先ほど少し触れたQsoundについて見ていこう。Prodigy 192 LTはドライバ側でQsoundをフルサポートしている。コンソールパネルでQボタンをオンにすると機能が有効になり、Windowsのシステムでのオーディオポートの出力割り当てが自動的にQVE 96-24に切り替わるようになっている。

 この状態で音を出力すれば、Qsoundによるサラウンドを楽しむことができる。ヘッドフォンや2chのステレオ出力の際にはQExpanderが機能して擬似サラウンドを、また4chや5.1chでの出力時にはQMSSが機能してステレオのサウンドをサラウンド化してくれる。

 音場の広がりを設定できるほか、「QSizzle」という高域強調、「QRumble」という低域強調の設定ができたり、各音声の音量を均等化するNomalize機能も利用できるようになっている。そのほか、EAXと同様のリバーブ系の音響効果を実現するQEM(QSound Environmental Modeling)機能が利用できたり、イコライザが利用できるなど、かなり多機能になっている。

リバーブ系の音響効果を実現するQEM機能やイコライザなど、機能は豊富

マルチチャンネルのテスト機能も装備

 またサラウンドスピーカーを接続した際のテスト機能も備えている。なお、Qsoundを使う場合、利用可能なサンプリングレートは44.1kHz、48kHz、96kHzの3種類に絞られるようになっている。


■ 音質も及第点。コストパフォーマンスの高さが光る

 ここでいつものように音質テストをしようと思ったのだが、ちょっと困ったことが起こった。ここまでのテストは主にS/PDIFの出力とヘッドフォンモニタを用いて行なっていたのだが、いざアナログの出力をしてみようと思ったが、フロントのRチャンネルが断線していたようで、機能しなかっだ。本来はメーカーに頼んでケーブルの交換をお願いすべきだったのだが、時間がなかったので、応急措置としてフロントの出力の代わりにリアの出力を使った。

 通常ならフロントの出力とライン入力を直結してループバックさせた状態で実験するのだが、リアの出力とライン入力を直結した。そのため、MMEのみに対応のアプリケーションでは利用できないので、ここではASIOに対応した「Sound It! 4.0」を利用して出力するとともに、Sound Forgeでその信号を受け取った。その結果は以下のとおり。

ノイズレベル 1kHzサイン波 スウィープ信号

 ノイズレベルはプロ仕様のオーディオインターフェイス、たとえばJuli@と比較すれば明らかに大きいものであるが、12,000円のコンシューマ製品と考えれば十分納得の行くレベルだろう。この実験では24bit/48kHzしか使っていないので、96kHzや192kHz動作時でどうなのかは見えてこないが、1kHzのサイン波を使ったS/Nの測定やスウィープ信号の結果も悪くない。

 これに加えて、いつもはRMAAを使った測定も行っているが、断線のため今回は見送ることにしたが、うまく動作してくれれば、そこそこの結果になったように思える。

 このように、低価格ながら、なかなかのパフォーマンスを見せてくれるProdigy 192 LT。DTM/デジタルレコーディング用途とすると、光デジタル入力がなかったり、アナログ出力がステレオミニしかサポートされていないなどやや物足りなさを感じるが、一般の利用ならば十分すぎる機能・性能を持っていると言っていいのではないだろうか。

□EGOSYSのホームページ
http://www.egosys.co.jp/
□製品情報のページ
http://www.egosys.co.jp/bbs/view.php?id=ATinfo&no=55
□関連記事
【2004年12月1日】EGOSYS、24bit/192kHz対応のLowProfile PCIサウンドカード
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20041201/egosys.htm
【2004年8月9日】【DAL】分離・合体できるオーディオカード「Juli@」を試す
~“ターンヘッドソケット方式”の使い勝手は? ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040809/dal156.htm

(2005年1月17日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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