■ シャープもデジタルオーディオ市場に参入 iPod shuffle以降、2005年に入ってから、フラッシュメモリ型のオーディオプレーヤー市場の拡大が著しい。その背景には、フラッシュメモリの低価格化、大容量化という要因も大きいのだろうが、昨年まではHDD搭載型に各社が力を入れいていたことを考えると、市場の流れが変わってきたことを感じさせる。 市場拡大にともない、これまで市場をHDDプレーヤーを支持してきたヘビーユーザーに加え、よりライトなユーザーからの注目度が高まっている、というのが大きな要因だろう。 そうしたフラッシュプレーヤー市場の盛り上がりにあわせて、ケンウッドやパナソニック、ソニーなどの国内メーカーも新製品を続々投入し、市場を活性化させている。そうした中、数少ないMDプレーヤー製造メーカーであるシャープもとうとうデジタルオーディオプレーヤー市場に参入してきた。それが、今回取り上げる「MP-A100/A200」だ。
同社では5年前の2000年3月に当時としては珍しいヘッドフォン型のMP3プレーヤー「イーミューゼ(WA-HP1)」を発売していたが、その後の新製品投入はなかった。新モデルとなるMP-A100/A200の最も特徴的な点はデザインだろう。カードラジオ風ともいえる、9.4mmと薄型化されており、前面パネルにアクリルを配した外装もなかなか高級感がある。また、FMトランスミッタ機能を内蔵するなど、機能面でも差別化をはかっている。 実売価格は256MBモデルの「MP-A100」が14,800円前後、512MBモデルの「MP-A200」が19,800円前後。国内メーカーの水準通りの価格設定だ。今回は256MBの「MP-A100」を購入した。
■ 高級感ある本体。USBは独自端子
同梱品は、ヘッドホンや、ACアダプタ、USBケーブル、ラインケーブル、プラグ変換ケーブル(3.5mm-2.5mm)、ソフトケースなど。 ボディカラーはレッドとホワイトが用意されている。なんといっても印象的なのは9.4mmという薄さ。いにしえのカードラジオを想起させる独特のデザインで、本体も金属の質感を生かしており、なかなか高級感がある。本体前面には、10文字×5行表示の液晶ディスプレイを装備し、中央部に再生/停止、そこを囲むようにカーソルキーを配している。 左側面にホールドスイッチと、停止ボタン、録音ボタンを、右側面に電源共用のMODEキーとMENUキー、A-Bリピートキーを装備している。下面にUSB端子を備えているが、独自の小型コネクタとなっている。MP-A100/200ではUSBとACアダプタ充電に対応しているが、ACアダプタにもこのUSBの独自端子を利用する。上面にライン入力とヘッドフォン出力、ストラップホールを備えている。 電源は内蔵のリチウムポリマー充電池を利用。最大約20時間の連続再生が行なえる。外形寸法は54×85.6×9.4mm(幅×奥行き×高さ)、充電池を含む重量は70g。
■ ユニークな歌詞表示機能も使い勝手は今一歩 付属のCD-ROMには独自の「歌詞編集ソフト」とWindows 98 SE用ドライバを収録している。USBストレージクラスに対応しており、そのままオーディオデータを転送できる。オーディオデータの格納場所はルートフォルダ以下で、フォルダ階層も2階層までは問題なく認識された。 なお、MP-A100/A200では楽曲の転送にWindows Media Player 10を利用するよう推奨しており、WMP10利用時にはWMA DRMによる著作権保護楽曲も転送可能となっている。
転送を行なった後、PCから取り外すと、[リスト作成中]という表示がでてDB構築の間、10秒以上待たされる。リストを一度作成してしまえば、次の起動時は3秒程度でメニューが立ち上がる。DBの再構築に若干時間がかかる機種があるが、フラッシュプレーヤーでは珍しいので、面食らった。 起動画面のやけに気の抜けたMP-A100のイラストに何となく海外製品の雰囲気を感じさせるが、起動後のメインメニューで音楽、ボイス、FM、設定の各機能が選択できる
音楽モードを選択すると、トップメニューには、本体で作成したプレイリスト再生を行なう[お気に入りリスト]、アルバム検索の[アルバムリスト]、アーティスト検索の[アーティストリスト]、曲ごとの検索を行なう[曲リスト]、ライン/FM録音した楽曲を検索する[録音リスト]という各リストが現れ、ここで楽曲検索方法を選択する。 再生/停止ボタンの周囲のカーソルキー上下で、検索モードを選択して選曲する。カーソルキーの左右で階層移動で、選曲のレスポンスは良好だ。再生画面もシンプルで再生中に側面のMENUボタンを押すことで、EQやリピート、シャッフルなどの再生設定が行なえる。また、[お気に入りリスト]の作成もここで行なう。リストの編集は、すべての楽曲から一曲ずつ再生したい順に選んでいくというもので、一覧性は高くないが操作自体は非常にシンプルだ。 機能的に難しい点はないのだが、悩ましいのがアルバム再生時にアルバムの曲順で再生できず、アルファベット順になってしまうこと。MP3だけでなく、Windows Media Playerで作成したWMAでも同様にアルファベット順に再生されてしまうのが残念なところ。
特徴のひとつのいえるのが、付属の歌詞編集ソフトで歌詞を入力できること。付属ソフトは「歌詞編集ソフト」という、直球なネーミング。ソフトの利用にはWindows Media Player 10が必要となるほか、歌詞編集の対象となるのは、WMAファイルのみとなっている。 楽曲を選択して、編集画面に移行。この編集画面に歌詞をコピー&ペーストなどして、ここで音を聞きながら歌詞が流れるタイミングを設定していくというもの。再生速度は1.4/1.6倍速が選択できる。 要するに曲を聴きながら表示する歌詞の時間を1行ずつ合わせていくというわけだ。手間がかかるうえ、設定にミスがあると「時間のタイミング情報が正しく設定されていません」というメッセージが表示されるが、どの部分がエラーになっているのかわからないのが悲しいところ。 本体で歌詞を見るときには[設定]から[歌詞表示]をONにしておく必要がある。ONにして、歌詞の無い楽曲を再生すると、「歌詞情報がありません」との警告が出たままで、曲情報が確認できないのが残念。 歌詞の設定は確かに面倒なのだが、曲にあわせて歌詞が表示される様子はなかなかおもしろい。ここで設定ミスに気づいてしまうと悲しい思いをするが……。オーディオプレーヤーの歌詞表示フォーマットがきっちり策定され、WMA対応の音楽配信サイトのサービスとして、歌詞情報の埋め込みが行なわれると、より広がりが出てくるだろう。
■ 音質は良好。FMトランスミッタのクオリティはもう一歩か
ヘッドフォンの質感はややチープ。SennheiserのMX400によく似たデザインだ。音は悪くは無いのだが、遮音性が低いために、外部音がかなり入ってくるのが気になる。できればイヤーパッドなどを別途購入して、耳との密着度を高めて遮音性を高めるなどの努力が必要だろう。 ヘッドフォン端子は2.5mmのミニミニジャックのため、通常のヘッドフォンが利用できない。好みのヘッドフォンを使いたいという場合には、付属の2.5mm-3.5mm変換アダプタを利用する必要がある。 また、MP-A100では内蔵するFMチューナ/トランスミッタのアンテナとして、イヤフォンケーブルを利用しているので、それらの機能を生かしたい人はイヤフォンを交換できない。 変換アダプタを利用してほかのヘッドフォンで聴いてみたが、やや低域の不足を感じるものの、バランスは良好でクセのない音質。ソースを選ばず楽しめるだろう。5モードのEQも比較的あっさりした音作りで、ちょっとしたアクセントが欲しいときには重宝する。
最大の特徴といえるのはFMトランスミッタ機能だろう。トランスミッタは、音楽モードで再生中にMENU画面を起動し、FMトランスミッタ画面からON/OFF設定する。周波数は87.7/87.9/88.1/88.3/88.5/88.7/88.9MHzから選択でき、カーオーディオやステレオなどFMチューナ搭載で音声受信できる。 使ってみたところ、1m以上離れるとノイズが乗りやすくなるほか、アンテナがヘッドフォンケーブルのためか安定した受信環境を作るのが難しい。好条件が整えば、音質的には満足いくものの、このケーブルを触ったり遮ったりするとノイズが入ってしまうので、環境構築時には注意が必要と感じた。
また、ライン入力端子を搭載しており、CDプレーヤーなどからの直接録音が可能。録音モードは高(128kbps)/中(112kbps)/低(96kbps)の3モードが用意される。自動曲分割機能などは備えていない。 FMラジオやボイスレコーディング機能も搭載。FMチューナは自動プリセット設定機能も搭載している。録音形式はMP3で、音質は高/中/低の3モードが用意される。薄型で内蔵マイクも小さいことから、あまり期待していなかったが、ボイス録音の品質はなかなか良好だ。 電源は内蔵のリチウムポリマー充電池で、最大約20時間の連続再生が行なえる。ただし、FMトランスミッタ使用時は最大約5時間再生となる。充電所要時間は約4時間。ACアダプタに加え、USBポートからの充電も可能となっているが、USB端子が独自コネクタとなっている。
■ ようやく出揃った国内メーカー MP-A100/A200は、取り立てて目新しい機能は無いが、シンプルで高級感のある本体デザインは国産メーカーのノウハウを感じさせる。ようやく、ソニー、松下、ケンウッド、シャープとMDプレーヤーを発売している各メーカーがデジタルオーディオでも出揃いはじめた。これから国内市場の勢力図も大きく変わっていきそうだ。 アルバム楽曲管理やフォントなど、細かい不満点もあるが、国内メーカーらしいバランス感覚を随所に感じさせる。ただ、MP-A100/A200ならではの個性というとデザイン以外はやや希薄な気もする。FMトランスミッタ機能も悪くはないが、音質にこだわるのであれば別売のFMトランスミッタを買った方が満足度は高いだろう。 そうした意味では、ピュアオーディオやホームシアター、ポータブルMDなどで採用している1ビットデジタルアンプを搭載していないのも残念。悪くはないのだが、「とりあえず市場参入第1弾として作ってみました」的な印象で、もう一歩物足りなく感じた。 □シャープのホームページ (2005年5月13日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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