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ポータブルビデオの決定打となるか?
VGA液晶/30GB HDD搭載のマルチメディアプレーヤー
クリエイティブメディア 「Zen Vision」
9月30日発売
標準価格:オープンプライス
直販価格:49,800円


■ 期待のマルチメディアプレーヤー

 デジタルオーディオプレーヤーの市場拡大が進む中、HDD/フラッシュメモリの大容量化や、カラー液晶/大型液晶化など、市場のトレンドは着実にマルチメディア化に進んでいるように思われる。

 しかし、ビデオ対応プレーヤーの決定的な製品は今のところ現れておらず、さらに、PSPやPLAY-YANなど携帯ゲームをベースに安価なビデオプレーヤーが実現できることもあり、各社のマルチメディアプレーヤーも苦戦しているようだ。かつてMicrosoftが提唱したマルチメディアプレーヤー「Windows PMC」は既に「なかったこと」になっており、大容量HDD搭載製品という点では、2004年に発売されたソニーの「HMP-A1」や「PCVA-HVP20」を除いて、大手メーカーからの新製品リリースもほとんど無い。

パッケージ

 そうした中、クリエイティブが発表したのが、3.7型/VGA液晶と30GB HDDを搭載した「Zen Vision」。久しぶりのHDD搭載ポータブルメディアプレーヤーだけに期待も高い。直販価格は49,800円と、ポータブルゲーム機ベースのビデオプレーヤーと比較すると、やや高めではあるものの、30GBという容量はHDDプレーヤーならでは。

 ビデオプレーヤーとしては、MPEG-1/2/4-SP、WMV9、MotionJPEG、DivX 4/5、XviDの動画再生に対応。さらに、MP3/WMA/WAVの音楽再生やボイスレコーダ、FMチューナ機能、800万画素までのJPEG表示に対応。CFカードスロットを備えており、デジタルカメラデータの写真取り込みも可能で、その他にもOutlookと連携したスケジュール/アドレス管理機能も搭載するなど、機能的には「全部入り」なマルチメディアプレーヤーとなっている。



■ 大型液晶が特徴

同梱品

 同梱品はキャリングポーチや、USBケーブル、ビデオ出力ケーブル、USBケーブル、ヘッドフォン、ACアダプタ、CD-ROMなど。

 本体前面に3.7型バックライト付きの640×480ドット/262,144色表示のカラー液晶を搭載。液晶右に上からMENU/Backボタン、オプションボタン、4方向のキーとセンターボタンからなるナビゲーションボタン、再生/一時停止ボタン、スキップ/バックボタンを装備。また、ボタンの上には赤外線受光部、下にはスピーカーを内蔵する。

 上部にはボリュームボタンとHOLD/電源ボタンを装備。左側面にCFカードスロット、右側面にヘッドフォン出力とDC入力、ビデオ出力端子を備えている。また、下面は専用の接続端子と、USB 2.0を備える。

 外形寸法は約124.2×20.1×74.4mm(幅×奥行き×高さ)、重量約239g(標準バッテリ装着時)。筐体はマグネシウム製で質感も十分。個人的にはスピーカー部のデザインがいまいちのようにも感じる。実際に持ってみると、大きさは手にちょうどフィットするサイズで大型液晶搭載プレーヤーとしては手頃。重量的にはやや重いが、手に持ったときに気になる程ではない。また、バックライトの点灯時には操作ボタンも青色に点灯し、暗い場所でも操作できる。

 注意したいのは、ストラップホールが無いこと。そのため、電車内などで立ちながらビデオを見たいという時には落とさないよう注意が必要だ。たぶん電車内利用を想定していないのだと思うが、このあたりは海外メーカー製品ならではかもしれない。


3.7型VGA液晶を搭載。液晶右に操作ボタンを集めている 下面にUSB 2.0と専用端子を装備する
右側面にヘッドフォン出力端子。カバーを開くとDC端子とビデオ出力が現れる 左側面にCFスロット
背面。バッテリは薄型で取り外し可能となっている

PSPとの比較


■ 利用ファイルはDivXがベスト? WMV/MPEG-2利用には制限あり

 転送は付属の「Zen Visionメディア エクスプローラ」、もしくはWindows Media Player 10から行なう。また、WMV/320×240ドット以下のファイルであれば、USBストレージクラスでも転送可能で、本体の[メディア]-[Video]フォルダにそのまま転送できるが、そのほかフォーマット/解像度のファイルをストレージとして転送しようとすると、WMVに変換するよう促される。基本的にはWMPもしくはメディアエクスプローラを利用したほうがいいだろう。

Zen Visionメディアエクスプローラ QVGAのWMVのみUSBストレージとして転送できる MPEG-2ファイルをUSBストレージとしてフォルダにコピーを試みると、WMV変換を促すダイアログが表示される

 対応動画形式は、MPEG-1/2/4-SP、WMV9、MotionJPEG、DivX 4/5、XviD。一見ほとんど全てのMPEG系コーデックをサポートしているのだが、動作条件が厳しく、サポートする解像度とビットレートは、DivX、XviDなどのMPEG-4系ファイルが最大720×480ドット/1.5Mbps、WMVは最大320×240ドット/800kbps、MPEG-1/2は最大1Mbps程度。

 メディアエクスプローラで、4~8Mbps程度のMPEG-2ファイルを転送を試みると、WMVへのコンバートを促すダイアログが表示される。Windows Media Playerからだと大抵のMPEG-2ファイルが転送できるのだが、実際にはビットレートの制限から再生できない。

 しかし、MPEG-2でも2Mbps程度であれば再生できることが多い。1Mbps台だとほぼ問題なく再生できるのだが、2Mbps+音声だと音声が途切れてしまうこともある。最近のXCode II搭載のテレビキャプチャカードでは、2Mbps程度でもD1解像度で録画できる製品も多いが、試しにピクセラ「PIX-MPTV/P8W」の長時間モード(2Mbps+音声256kbps)だと音ズレが起きてしまった。MPEG-2でD1解像度を求めるのは難しいようだ。

 また、ドルビーデジタル音声には対応しないため、DVDレコーダやHDDカメラのLPモード(2Mbps以下)で撮影した動画などは音声が出ないので、実用的ではない。MPEG-2に関してはやや残念な仕様だが、転送時間を考えると、より高圧縮率のMPEG-4コーデックを利用した方が便利だろう。DivXであれば640×480ドットなど解像度が高く、ビットレートも十分なファイルの再生が可能。早送りや巻き戻しのレスポンスもまずまずだ。

 WMVについては、メディアエクスプローラ/WMPのいずれで転送しても、最大解像度は320×240ドット、ビットレートも800kbps程度に変換される。これはWindows MTP(Media Transfer Protocols)の仕様によるもののため、回避する方法は無さそうだ。そのため、高解像度/高画質を求める場合は、DivXを利用した方がいいだろう。

Zen Visionメディアエクスプローラ

 なお、変換ソフトとしては「Creative ビデオコンバータ」がバンドルされる。ビデオファイルをWMVに変換するソフトで、メディアエクスプローラの[ビデオ変換]から起動できる。画質モードは[高品質(320×240ドット/30fps/764kbps)]と、[最高品質(320×240ドット/30fps/855kbps)]の2モードが用意される。WMV以外の作成はできないので、DivXの作成を行ないたい場合は、別途ソフトウェアを用意する必要がある。

 なお、PSP用に作成したメモリースティックビデオや、PLAY-YAN用のSD-Videoも転送を試みたが、同様にWMVへの変換を促すダイアログが表示された。




■ シンプルな操作性

メインメニュー

 それでは動画プレーヤーとして利用してみよう。上部の電源をONにすると、メインメニューが立ち上がる。初回の起動時間は約30秒。一度起動すれば、次回からは2秒程度で起動する。メインメニューではミュージック/フォト/ビデオ/FMラジオ/マイク/オーガナイザー/エクストラ/システム/CFカードの各モードが選択できる。ここで、ビデオを選択するとビデオプレーヤーモードとなる。

 [ビデオ]モードでは、ビデオ/テレビ/インポートファイル/最近見たビデオの4つの検索メニューを用意。テレビはWindows MCEで録画したファイル用で、WMPやメディアエクスプローラから転送した映像は[ビデオ]に収納される。

 基本操作は液晶右脇の十字キーを中心に上下/左右移動が可能で、十字キー中央のOKボタンを2度押しすることで決定。動画の再生が始まる。また、任意のビデオを選択して、再生/一時停止ボタンでも同様に、再生が開始される。


ビデオモード ビデオの検索画面 再生画面

表示モードも切り替えられる

 再生ボタン下のスキップ/バックボタンで、早送り/巻き戻しに対応。DivXファイルでもスムーズな送り/戻しが可能だが、送り倍速の変更はできない。

 表示モードは自動認識のほか、再生中にオプションボタンでサブメニューを立ち上げると、フィットスクリーン/フルストレッチ/オリジナルサイズの3つの表示方法を選択できる。

 液晶の表示画質は良好で、特に高解像度映像ではスペックからも分かるとおり、クラス最高の精細感が味わえる。PSPと比較しても十分精細感があり、字幕のエッジ崩れもほとんど無い。

 色再現については、全体的にやや色が薄目の傾向。全体的にやや青よりで、白を表示するとうっすらと青みがかった印象を受ける。フロントバックライトの影響からか、液晶の視野角はあまり広くなく、斜め45度ぐらいからのぞき込んでも、色再現の低下と白浮きが目立つ。また、黒色もバックライトの影響から全体的に浮き気味ではある。とはいえ、このサイズの動画の再生には十分なクオリティで、映画なども十分楽しめる。

 また、ポータブル用と考えれば、視野角の狭さも必ずしもマイナス要因というわけでもないだろう。電車の中で1人で見る、といったシチュエーションではむしろ歓迎できることだ。


■ 音楽プレーヤー機能も充実。音質も良好

ミュージックのトップページ

 メインメニューから[ミュージック]を選択することで、音楽プレーヤーとしても利用できる。ミュージックモードでは、[プレイリスト]、[アルバム]、[アーティスト]、[ジャンル]、「全てのトラック」、「レコーディング」、「ブックマーク」、[DJ]などの検索モードを用意する。

 操作は[ビデオ]モードとほぼ共通で、液晶右の十字キーを中心に楽曲を検索し、十字キー中央のOKボタンを2度押しすることで決定。十字キー下の再生/一時停止やスキップ/バックボタン、戻るボタン、サブメニューボタンなどを組み合わせて簡単に操作できる。

 大量の楽曲を管理している場合でも、リスト表示された楽曲の右側にアルファベット順のショートカットを用意。十字キーの右ボタンで任意のアルファベットを選択して、選曲できる。検索や再生のレスポンスは良好だ。

アルバム検索画面 アルファベット順でショートカット移動も可能 再生画面

 Windows Media Playerで作成したプレイリストの再生にも対応。また、楽曲を選択して、サブメニューから[再生リストに追加]を押すと、[再生リスト]に追加。本体上で利用可能な楽曲リストが作成できる。

 さらに、再生リストを選んでサブメニューから[プレイリスト保存]を選択、名前を入力するとプレイリストに保存され、PCにも転送できるプレイリストとして保存できる。

楽曲を選んで再生リストに登録 再生リストの再生中にサブメニューからプレイリストに保存 プレイリストとしてと登録される

DJ機能

 [DJ]では、[本日のお勧めアルバム]や[オールシャッフル]、[良く再生するトラック]などのプレイリストを本体で自動作成して再生できるなど、検索機能は専用プレーヤー並に充実している。

 大型液晶を搭載しているにもかかわらず、ジャケット再生ができない点はやや残念。また、イコライザ設定はメインメニュー以外からは変更できないなど、オーディオ専用プレーヤーと比べると、細かい箇所ではかなわない点もあるが、基本的なオーディオプレーヤーとしての機能は充実している。


付属のイヤフォン

 本体の再生性能は従来のクリエイティブ製品を踏襲した、ニュートラルな音で、低域から高域までしっかり出力してくれる。派手さはないがソースを選ばず、利用できそうだ。

 イヤフォンは、バーが長く、最近のオーディオテクニカ製品などでもよく見られる形。艶やかな中高域と広めの音場が特徴で、プレーヤー付属のイヤフォンとしてはかなり高レベル。低域はさほど強くないが、耳のフィット感が良く、個人的にはかなり好印象。

 密閉性はさほど高くないので地下鉄ではかなり外部音が入ってきてしまうのが難点と言えば難点だが、一昔前のクリエイティブ製品のイヤフォンを思えば、隔世の感すらある出来の良いイヤフォンだ。



■ 付加機能も満載

フォトビューワ機能。レスポンスは今ひとつ

 [フォト]は写真ビューワ機能で最大800万画素のJPEG画像を表示できるフォトビューワ機能。500万画素のデータ282枚のフォルダを転送し、40枚のサムネイル表示を行なうと、全サムネイル表示にかなりの時間を要し、レスポンスもあまり良くない。画質はVGA液晶ということもあり、かなり精細なのだが、やや白浮き傾向が気になる。また、ズーム機能などは備えていない。

 CFカードスロットを搭載し、CFカードやMicrodriveからデジタルカメラの撮影データ(JPEG)などを読み込み可能。読み込み可能ファイルはJPEGのみ。これらの機能については僚誌デジカメWatchで詳細にレポートする。

 [オーガナイザー]はOutlook連携機能で、予定表や、アドレスデータをZen Visionで確認できる機能。また、ボイスレコーダや、アラームクロック機能、ビデオ出力機能も搭載している。

CFからのコピー機能を搭載 Outlook連係機能を搭載。予定表やアドレスデータを持ち出せる 時計も内蔵。アラームクロックとしても利用できる

 バッテリは交換可能なリチウムイオンで、連続再生時間は、音楽再生時最大約13時間(MP3、128kbps再生時)、動画再生時は最大約4.5時間(MPEG4-SP、500kbps再生時)。


■ 日常的に使えるメディアプレーヤー

 動画プレーヤーとしての使い勝手は良く、さらにDivXというPCの世界では汎用的なフォーマットに対応する点はポイントが高い。対応ファイル作成について多くの選択肢が用意されているという点は大きなアピールポイントだろう。

 MPEG-2をそのまま再生できれば、HDD搭載動画プレーヤーの決定版となっただけに残念だが、MPEG-2対応のソニー「HMP-A1」やNEXX「PMP-1200」も、液晶の解像度はZen Visionの及ばず、解像度のアドバンテージは現時点では非常に大きい。

 ゲーム機ベースのプレーヤーに対しても、HDDの大容量を活かせば、1クールのドラマを全て収録して持ち運んだり、オーディオプレーヤーとの両立も容易になるので、十分差別化を図れそうだ。DivX/XviDのトランスコード環境さえ作れば、活用シーンはかなり広がる。音楽プレーヤーやとしても専用機と張り合えるレベル。日常的に使えるポータブルメディアプレーヤーの、有力な選択肢の登場といえるだろう。

□クリエイティブのホームページ
http://jp.creative.com/
□ニュースリリース
http://jp.creative.com/corporate/pressroom/releases/welcome.asp?pid=12193
□製品情報
http://jp.creative.com/products/product.asp?category=210&subcategory=211&product=12985
□関連記事
【9月28日】クリエイティブ、「Zen Vision」値下げして発売日決定
-9月30日発売。3千円値下げで直販49,800円
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050928/creat.htm
【9月9日】クリエイティブ、WMV/DivX/MPEG対応プレーヤー
-3.7型VGA液晶/30GB HDD搭載。FMチューナも内蔵
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050909/creat1.htm
【2004年9月3日】Windows PMCはビデオプレーヤー市場を切り開くか?
20GB HDD搭載のマルチメディアプレーヤー
Creative 「Zen Portable Media Center」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040903/dev084.htm

(2005年9月30日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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AV Watch編集部

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