~ プロ用ミキサーをエミュレート。iTunesとも連携可能 ~ |
TRAKTOR DJ STUDIO 3.0 |
そのTRAKTOR DJ STUDIOが2.6から3.0へとメジャーアップグレードした。画面イメージもだいぶ変化したが、いろいろな機能も追加されている。その最大のポイントともいえるのは、ターンテーブルに相当するDeckをこれまでの2つから4つへと拡充したことだ。
確かに実際のDJシーンにおいてはターンテーブルを3つもしくは4つ使うというケースが多いが、それだけのターンテーブルを用意するとかなりの機材の値段になる。何よりそれに対応したDJミキサーが少なく、価格も高価であるため、素人にはなかなか手を出しづらいという状況にあった。TRAKTOR DJ STUDIO 3.0はそうした機材面での難しさをソフトウェアで解決したのだ。
Deckの数は4つまで設定可能 |
表示上のDeckの数は2つにしたり4つにしたり自由に設定できるほか、大きく表示させたり小さく表示させたりもできる。また、オーディオインターフェイスはどれでも自由に利用可能で、ASIO、MME、DirectSoundのそれぞれのドライバが利用可能。モニタ用、マスター出力、そしてブース用など出力先を自由に選べるのも大きなポイントだ。
表示の拡大/縮小も可能 | ASIO、MME、DirectSoundのドライバが利用できる | モニタ用、マスター出力、ブース用など出力先を選べる |
■ 約25万円のプロ用DJミキサーをエミュレート
ALLEN&HEATHのxone:92 |
またこのミキサーはPC内で完結させることもできるが、外部入出力もできるというのも魅力のひとつ。外部にアナログのターンテーブルをつないでPCをミキサー代わりに使うこともでき、Deckの出力を外部のミキサーへ送ることもできる。もちろん、このように使うにはマルチ入出力に対応したオーディオインターフェイスが必要ではあるが、かなり自由度の高い設計になっている。
しかも、4chのDJミキサーは、プロの世界における定番ともいえるALLEN&HEATHのxone:92をソフトウェア的にエミュレートしたもの。ホンモノを国内で購入すれば約25万円する。TRAKTOR DJ STUDIO 3.0は実売で46,800円程度ということで、かなりのコストパフォーマンスといえるだろう。さすがエミュレータの会社、Native Instrumentsだ。
もっとも、これは完全なエミュレータというわけではなく、EQ部分とフィルタ部分にxone:92をエミュレートする機能を持っている。EQはデフォルトがxone:92モードの4バンドEQとなっており、xone:92特有の無限のattenuation(カット)12dB/oct を持つLow、Highと-30dB のCutのMidとMid-High の4バンドで構成。また、チャンネルエフェクトとして、Filter:92という2ポールフィルタが搭載されている。これはLFOスピードでカットオフ周波数を調整し、リズミカルにフィルタの開きをシミュレートすることができるというもの。さらにクロスフェーダーによりボリュームを調節する代わりにフィルタを調節することもできるようになっている。
EQ部分(左)とフィルタ部分(右)にxone:92をエミュレート |
なお、EQでは、このxone:92モード以外にもEclerのNuo4 4channel DJミキサーをエミュレートした3バンドEQやより標準的な3バンドEQのClassic Equalizer、さらにはLow、Mid、Highを-26/+12dBのゲインレンジで調整が可能なP600というEQを装備していて、切り替えて利用可能となっている。同様に、Filter:92のほかにも以前からもあったFilter T2というフィルタがあるほか、ディレイ、リバーブ、フランジャー、そしてBeat Masherという6つのエフェクトが装備されている。
EQを切り替えて利用可能 | ディレイ、リバーブなど6つのエフェクトが装備 |
このBeat Masherというのは、一時的にフレーズをバッファへサンプリングしそれをリアルタイムで変換しMash(まぜあわせる)することができるというものだ。せっかくのNI製品なのだからVSTプラグイン対応などがあっても面白かったように思うが、DJ用に特化させ、わかりやすいユーザーインターフェイスにするためには、このようなビルトイン型エフェクトに留めておくほうがいいのかもしれない。
■ iPodのプレイリストも利用可能
もうひとつ今回のTRAKTOR DJ STUDIO 3.0で追加されたのが、iPodとの連携機能とiTunesからのデータインポート機能だ。プレスリリースによれば、「iPodを接続した状態でTRAKTORを起動すると、iPodがドライブとして表示され、直接TRAKTORで使用することが可能。またiPodのプレイリストの読み込みにも対応」とある。そもそもTRAKTOR DJ STUDIOの対応ファイルとしては、MP3、WAV、AIFF、AAC(DRM無し)、WMA(DRM無し)、OggVorbis、FLAC、Audio CDとなっているので、iTunes Music Storeで購入したデータはサポートしていないようだ。iPodと接続すると、ブラウザ上にiPodのアイコンが現れ、そこにはプレイリストが並ぶ。
そして、プレイリストを選択すると、曲の一覧が表示されるので、これをDeckへドラッグ&ドロップすると、内蔵HDD内にあるMP3などとまったく同様に扱うことができる。もちろん、テンポやキーなども自動分析してくれるので、テンポを変更したり、ほかのDeckとのシンクロさせたりといったことが自由にできる。
ただし、内蔵HDDと同様、日本語フォントは表示できずに文字化けしてしまう。まったく読み込めないわけではないが、TRAKTORで利用したい場合はファイル名、ID3-Tagともに日本語は使わないのが無難だ。
iPodと接続すると、プレイリストが表示された | 日本語フォントは文字化けしてしまう |
iTunesからのインポートも可能 |
一方、AACについてもMP3と同様に読み込み利用することができた。ただし、iTMSで購入したDRM付きのものは読み込めなかった。
iTunesとの直接連携についても、うまくできている。「import from iTunes」というメニューを実行すれば、プレイリストの一覧が表示され、そこからインポートが可能。iTunesで曲を管理している人にとってはなかなか便利な機能といえるだろう。これで日本語まで通ってくれれば最高なのだが、これについては今後に期待しよう。
そのほか曲を読み込む際、自動的にテンポを割り出してくれる機能は従来どおりであり、非常に高速に処理してくれる。それに伴い、4つあるDeckのテンポを合わせることもでき、再生中に4小節ごとでのループをさせるなど、操作は自由自在。DJのテクニックをまったく持っていない人でも神業的シンクロが可能になる。多少とっつきづらい部分もないではないが、とにかく誰でも簡単に扱える高性能DJソフトといって間違いないだろう。
□ランドポートのホームページ
http://www.landport.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.landport.co.jp/press/2005/12-07/index.html
□製品情報
http://www.traktor-dj.jp/traktor3/
□関連記事
【12月6日】ランドポート、iPod対応のDJソフト「TRAKTOR DJ 3.0」
-プレイリストにも対応。4台のターンテーブルを同時利用
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20051206/landp2.htm
【2001年12月17日】【DAL】目から鱗のDJソフト「TRACTOR DJ」
~アナログ感覚のプレイをPCで体験~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20011217/dal39.htm
(2005年12月19日)
= 藤本健 = | リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。 最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。 |
[Text by 藤本健]
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