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第218回:M-Audio初のフィジカルコントローラ「ProjectMix I/O」
~ 音質/互換性ともに高く、設定も意外に簡単 ~



 M-AudioからFireWire接続のフィジカルコントローラ兼オーディオインターフェイスがリリースされた。MackieControl互換で、TASCAMの「FW-1884」やYAMAHAの「01X」などに対抗する製品だが、ProToolsはもちろんのこと、Cubase、Logic、SONAR、Liveの設定モードをあらかじめ持っているなど、かなり便利にできている。実際に、CubaseSXやSONAR5などと接続して試してみた。



■ ありそうでなかったフィジカルコントローラ

ProjectMix I/O

 数多くのDTM/デジタルレコーディング関連製品をリリースしているM-Audioだが、これまで出していなかったのがフィジカルコントローラだ。Oxygen8やOzoneなどUSBキーボードにフェーダーやツマミを搭載した製品や、以前M-Audioが買収したevolutionからも、Oxygen8などと近いMK-461Cや、コントローラのみのUC-33eなどがあったが、モータードライブ搭載のフェーダーを装備した業務用としても利用可能なフィジカルコントローラは出ていなかった。

 フィジカルコントローラの業界標準ともいえるMackie ControlはMIDI接続ではあるが、最近主流になりつつあるのがFireWire接続でオーディオインターフェイスまで装備した製品だ。TASCAMのFW-1884やYAMAHAのmLAN製品である01Xなどがそうだが、これらに競合する製品として、M-AudioはProjectMix I/Oをリリースした。

 M-AudioがDigidesign、正確にはAvid Technologyに買収されたこともあって、最近の、各製品広告やWebサイトには、“compatible with PRO TOOLS M-POWERED 7”という大きなロゴが表示されている。そのため、ProjectMix I/OもPRO TOOLS専用コントローラなのでは、という印象を持っていたが、実際には、オールマイティーでCubaseSXやLogic、SONARなどさまざまなDAWとの互換性を保った製品に仕上がっていた。

 ProjectMix I/OはFireWire接続で、Mackie Control互換のフィジカルコントローラであり、M-Audioの最上位オーディオインターフェイス。18IN14OUTを装備したFireWire1814と同じオーディオインターフェイス機能を持ち、さらに同社のマイクプリアンプOctaneと同様の8chプリアンプを装備している。

 価格的にはM-Audioの直販価格が119,070円と決して安いものではないが、FireWire1814が72,450円、Octaneが78,750円ということを考えるれば割安ともいえそうだ。サイズには508×470×108mm(幅×奥行き×高さ)、重量7.2kgとTASCAMの1884と比較すると一回り小さめ。とはいえ、フェーダーは100mmで10bit分解能というものを8ch+マスターの計9本搭載している。

 またトランスポートコントロール部では録音、再生、停止、早送り、巻戻しにはLED装備のボタンを使い、ジョグ/シャトル・ホイールとロケートボタンで操作できる。またイン/アウト・ポイント、ズーム、リージョンナッジ、ループ等のキーも装備するなど、PC側での操作をほとんどせずに、これだけで数多くのコントロールが可能。

フェーダーは計9本 トランスポートコントロール部にはLED装備のボタンと、ジョグ/シャトル・ホイール、ロケートボタン

各チャンネルストリップには、マイク/ライン、録音、ミュート、ソロ、セレクトボタン

 さらにチャンネルストリップ8系統は、バンク+/-とチャンネル+/-を使って大きなプロジェクトでも全てのチャンネルにマップすることができ、各チャンネルストリップには、マイク/ライン、録音、ミュート、ソロ、セレクトボタンが装備されている。

 各ストリップには、エンドレスなロータリー・エンコーダノブが装備され、EQ、auxセンドなどの専用ボタン15個を使用してそれぞれのノブの機能をアサインすることができるなど、かなり充実したコントローラになっている。



■ MackieControl互換で設定が簡単

 早速、実際にPCと接続をし、SONAR5とCubaseSX3で使ってみたが、予想以上に簡単に動いてくれてビックリというのが第一印象。これまで、いろいろなフィジカルコントローラを触ってきたが、設定が大変なものが多い。使えることは確かだが、1つ1つのコントローラが何の役割をするものなのか割り振る必要があるものがかなりあったり、設定がわかりにくくて、なかなかうまく動かないものがあったりする。

 それに対し、やはりMackieControl互換というのがポイントともなっていて、とっても簡単で、すぐに利用可能だ。その秘密は電源スイッチを入れる際、AUX1、AUX2などのボタンを押しながら起動させることで、ProToolsモード、SONARモード、Cubaseモード、Logicモード、Liveモードなどに設定できることにある。たとえばSONARで使う場合、ProjectMix I/Oの電源を入れる際、AUX4を押しながら起動させ、SONAR側で、フィジカルコントローラに、MackieControlを選び、MIDIの入出力先をProjectMix Control Surface MIDIに設定するだけですぐに使えてしまう。

SONARモード Cubaseモード フィジカルコントローラはMackieControl、MIDI入出力先をProjectMix Control Surface MIDIに設定すれば使える

 またオーディオインターフェイスはWDMでも、ASIOでも利用可能。同様にCubaseSXの場合は、AUX2を押しながら電源を入れるとCubaseモードになるので、その後、MackieControlを追加して、MIDIの入出力先をProjectMix Control Surface MIDIに設定するとともに、オーディオインターフェイスを設定すれば完了だ。

WDMでも利用可能 MIDIの入出力先をProjectMix Control Surface MIDIに設定 オーディオインターフェイスを設定

各コントローラの割り振りも設定可能

 このように設定すると、ProjectMix I/OのLCDディスプレイには各トラックの名前が表示されたり、動かすパラメータの内容が表示されるなど、とにかくわかりやすく使える。ナッジやスクラブなども含め、トランスポートコントローラでの使用感も抜群だ。

 なお、各コントローラに何を割り振るかを設定することも可能。そのためのユーティリティも配布されており、未対応のソフトに対応させることができる。



■ オーディオインターフェイスとしても満足度が高い

2つのヘッドフォン端子がフロントに

 ではオーディオインターフェイスとしてはどうなのだろうか? こちらもなかなかいい出来だ。基本的にはフィジカルコントローラ機能とオーディオインターフェイス機能はまったくの別ものであり、DAWを使う際、フィジカルコントローラのみ、ProjectMix I/Oを使って、オーディオインターフェイスは別のものを使うこともできる。ただ、オーディオインターフェイスとてもいっしょに利用することで、非常に親和性の高いシステムになる。

 最初に便利に思ったのが、フロントにある2つのヘッドフォン端子。それぞれ独立したものとなっており、何をモニタするかは、ドライバ側の設定で選択することができる。この画面を見て気づく人もいるはずだが、これはM-AudioのFireWire1814やFireWire410などのドライバとまったく同じもの。以前FireWire410をレビューした際に紹介しているので、ここでは詳しくは述べないが、非常にフレキシビリティの高いものとなっている。


何をモニタするかは、ドライバ側の設定で選択 M-AudioのFireWire1814やFireWire410などのドライバと同じ

 リアには入出力端子がズラリと並び、オプティカル入出力はS/PDIFおよびADATの切り替えとなっている。またマイク端子はすべてファンタム電源対応で、プリアンプ内蔵。こうした点でもなかなかしっかりしている。先ほどオーディオインターフェイス機能はFireWire1814相当と書いたが、正確にいうとちょっとだけ違うところがある。それはFireWire1814は1ch/2chのみ24bit/192kHzのレコーディングができるようになっているが、ProjectMix I/Oはすべてが24bit/96kHzまでの対応。ただ、この辺はそれほど大きな問題にはならないだろう。

背面 マイク端子はすべてファンタム電源対応で、プリアンプ内蔵

 ヘッドフォンでモニタしてみると、かなりいい音に聞こえる。強いて言うとやや硬いかなとは思ったが、かなり音を忠実に再現している感じだ。そこで、例によってオーディオインターフェイスの性能テストを行ってみることにした。ノイズの影響をさけるため、短いケーブルを使っているが、それで届くように配線するために、アナログの3/4chの出力をアナログの7/8chに直結して行なった。

 最初は24bit/48kHzの設定において、ノイズを測定したところ、最高とはいえないまでもなかなかいい結果となった。同様にサイン波を使ったS/N測定でもいい結果だ。スウィープを鳴らすと、やや不安定な面もあったが、概ね良好といったところである。

24bit/48kHzでのノイズ測定結果 サイン波を使ったS/N測定結果 スウィープ信号では、やや不安定な面もあったが、概ね良好

 ついでに、RMAA5.5を使い、同じ配線のもと24bit/48kHzと24bit/96kHzのそれぞれで実験した。その結果は、すべてExcelentという非常にいい結果となった。オーディオインターフェイスとしてもかなり満足度の高そうな製品に仕上がっている。

48kHz 96kHz

 以上、M-AudioのProjectMix I/Oについて見てきたがいかがだっただろうか? 個人的にもぜひ欲しい製品である。難点をあげるとすると、100V電源との直結ではなく、ACアダプタを利用するということ、FW-1884よりは小さいとはいえ、まだちょっとサイズ的に大きめで、個人ユーザーの部屋に置くのはなかなか厳しいことなどがある。とはいえ、これだけしっかりした作りの製品であるだけに、なんとか部屋の場所を確保して、置いてみたくなった。


□M-AUDIOのホームページ
http://www.m-audio.com/
□製品情報
http://www.m-audio.com/products/jp_jp/ProjectMixIO-main.html
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(2005年12月26日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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