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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第239回:CES2006番外編 会場で見つけた新デザインと新技術
~ 今年から来年へのトレンドを探る ~


■ もう一つオマケ

 CES2006レポートはお楽しみ頂けただろうか。今年のトレンドを占う意味でも、なかなか興味深い記事が沢山あり、ほかの方の書かれたレポートを現地で興味深く拝見していた。

 もうすでにレポーター陣は帰国してしまっているのだが、もう一つ最後のオマケとして、ジャンルを問わずCES会場で見つけた面白そうなものや新技術をピックアップしてみよう。


■ デザインの先進性は携帯から

 これまでAV Watch的にはあまり関係なかったのが、携帯電話である。だがデザイン的にも機能的にも優れたものが多いのもまた、この分野だ。ここではいくつかの優れたデザイン、または珍しい機能を持つものをご紹介しよう。

●DVB-H受信可能な携帯電話

 DVB-H(Digital Video Broadcasting for Handheld)は、ヨーロッパや米国の一部で行なわれている携帯電話向けデジタル放送の規格である。日本ではワンセグ放送のような立場の放送であるが、NOKIAブースでDVB-H受信対応モデルが展示されていた。

携帯といえばやはりここ、NOKIAブース DVB-Hが受信可能な「Nokia N92」

 NOKIAでは同規格対応電話を2006年に発売すると2004年の時点から言い続けていたわけだが、ようやくその実働モデルを見ることができた。「Nokia N92」はやや厚みのあるゲーム機のようなデザインで、電話機としてはかなり大仰だ。

 搭載OSはSymbianで、いわゆるスマートフォンである。音楽再生機能もあり、最大2GBのメモリーカードをサポートするという。右側の大きなヒンジ部には、2Mピクセルのカメラも備えている。さらにFMチューナも搭載しているというから、まさに何でもアリだ。画面サイズは2.8インチで、テレビ視聴は最大4時間程度。

 残念ながらDVB-Hは日本のワンセグとは互換性がないため、日本での発売はまずないだろう。N92は年内に発売予定で、価格は約600ユーロ。

●フルキーボード搭載携帯電話

 欧米ではスマートフォンやBlackBerryのヒットで、QWERTYキーボード搭載の電話機も珍しくなくなってきた。だがやはり電話機としての小型化を求めていくと、どうしてもキーボードも小型化せざるを得なくなり、あまり使い勝手が良さそうに見えない。

 そんな中で見つけたのが、UTSTARCOMというブースで見つけたこの2モデル。「PPC6700」は、Pocket PC対応モデルで、スライドするとメタリックでやや大型のキーボードが出現する。キータッチがかなり良く、キーボード付きPDA市場が崩壊してしまった現状においては、次第にこのようなモデルは貴重な存在となりつつある。

サウスホール入り口近くに広いスペースを取るUTSTARCOM 一見Pocket PCでは良くあるスタイルの「PPC6700」 画面がスライドしてフルキーボードが出現

 欲を言えば、キーボードと画面にもうちょっと角度が付けられるといいと思うが、おそらく机においての使用は想定していないのであろう。

 もう一つ、同社の「PV108GU」は、JAVA対応と謳っているだけで、Pocket PCではない。面白いのがキーボードの出現方式で、スイッチを押すと画面のほうがシュタッと180度回転して、フルキーボードが現われる。

ゲーム機を彷彿とさせる「PV108GU」 画面が180度回転する 回転しきったところ

 日本の携帯電話でも画面回転式のものが一時期流行ったが、フルキーボード対応のものはなかった。日本の携帯電話ユーザーは、フルキーボードなど必要としない人が大半であろうと思われるが、最近はシャープの「W-ZERO3」がヒット商品となっている。

 やはりPDA的なものは必要な人はいるわけだし、たまに長文のメールを打つ必要がある人間にとっては、やはりフルキーボード搭載携帯がもっとあったらいいなぁと思う。

●Samsung+Bang&Olufsen

 昨年発表になったそうだが、SamsungブースにはSamsungとBang&Olufsenのジョイントで作られた携帯電話「Serene」が展示されていた。さすがにBang&Olufsenテイストを感じさせるデザインで、同梱されると思われるイヤホンなどの小物もなかなか凝っている。

SamsungとBang&Olufsenによる携帯電話「Serene」 ルイ・ヴィトンの本革ケースも展示

 ダイヤルの中央部はホイールコントローラとなっている。画面は上下に反転表示できるようになっており、通話するときは画面を下に、それ以外の操作をするときには画面を上に、といった具合に使えるようだ。

 またルイ・ヴィトンの革製ケースも展示されており、両方合わせるとかなりの高級品となりそうな気配である。


■ SRS、新エンハンス技術SRS WOW HDを発表

 SRSは毎年ブースは構えていないが、ミーティングルームを複数借り切っていくつかの技術デモを行なっている。以前からSRS WOWというエンハンス技術はWindows Media Playerを始め多くのMP3プレーヤーなどで採用されてきたが、今回はそれを拡張した「SRS WOW HD」という技術を発表した。

 元々SRS WOWは、複数の技術を組み合わせたものだ。まず基本的な立体音響技術であるSRS、低域特性を向上させるTruBass、音像を縦方向に移動させるFOCUSという3技術をまとめたものが、SRS WOWである。

 今回のSRS WOW HDは、上記のTruBassをアップデートして、TruBass2という技術を採用した。これまでのTruBassに比べて信号処理アルゴリズムを変更し、質感を向上させたという。また今回新たに「Definition」という技術も追加された。これはMP3などのエンコード時に失われた高域成分を再構築する技術で、圧縮音源に対して効果が高いという。

 SRS WOW HDにはスピーカー用とヘッドホン用の2バージョンがあり、国内メーカーでもテレビ用やMP3プレーヤーなどでの採用が見込まれている。

 すでにSRS WOW HDを搭載した製品がいくつか出荷されており、現時点ではSamsungからはポータブルメディアプレーヤーとして、「YH-J70/71」、「YH-J50/J51」の4モデルと、メモリ型MP3プレーヤー「YP-U1」が、Alienwareからは「CE-IV」というMP3プレーヤーが発売されている。

今年発売されるSRSサークルサラウンド用のポータブルエンコーダ

 早速Samsungのブースで訪ねてみたところ、残念ながら米国ではポータブルメディアプレーヤーは発売されていないそうである。もしかしたらYP-U1は売ってるところがあるかも、と言っていたので、ラスベガス最大の家電店「Fly's」に行ってみたが、残念ながら見あたらなかった。

 またコンシューマにはあまり関係ないかもしれないが、SRSサークルサラウンド用のポータブルエンコーダのモックアップも展示されていた。SRSサークルサラウンドは、5.1chのサラウンドオーディオを2chにエンコードする技術で、これまでのエンコーダ/デコーダはAC駆動しかできなかったため、ENGでのサラウンド収録ができなかった。

 この新エンコーダは標準的な12Vのバッテリ駆動が可能であるため、今後放送業界では重宝されるだろう。日本では今年3月あたりから出荷を開始し、米国では4月のNABショーでお披露目となる。


■ SigmaDesigns、HD対応チップをデモ

 ハードウェアデコーダチップメーカーとして知られるSigmaDesignsは、今年も会場内には出展せず、ホテルのスイート内で展示を行なっていた。

 昨年はあまりポータブルAVプレーヤーが話題にならず、そのあたりは携帯電話やiPod、PSPなどにお株を奪われた感じがあった。SigmaDesignsでは「EM8620L」を使用したポータブル機のリファレンスボードを展示していたが、今年は新たに無線LANを搭載していた。今後この手のポータブル製品は、HDDのような大容量ストレージを積む代わりに、ネットワーク経由で映像が見られるという方向の製品が出てきそうだ。

 またH.264、VC-1、MPEGのHDに対応したデュアルデコーダチップ「SMP8634」を搭載したISP向けデモユニットを展示。HDサイズのテレビに、16分割された動画やサイズ違いの4画面の動画を表示するといったデモンストレーションを行なっていた。Blu-rayのリファレンスボードも、ドライブのI/Oが付く程度で、ほぼこれと同じ構成になるという。

EM8620L搭載の無線LAN対応ポータブル製品リファレンスボード SMP8634搭載のHD対応STPデモユニット

 具体的にどのように使うかはキャリア次第だというが、単にHDを見るだけではなく、GUI画面などの動画をどうするかも、実際のアプリケーションでは重要になってくる。だが日本のARIBが決めごとを行なうと、画面の配置を含めて組み合わせ条件が厳しく、自由にGUIを作れないという面があるようだ。

 またBlu-rayやHD DVDなど次世代メディアのオーサリングも、このようなチップの能力とのすり合わせによって実現することになる。次世代チップ「SMP8644」では、Blu-rayとHD DVDを両方サポートできる予定だという。

SMP8634を搭載したフィリップスのBlu-rayプレーヤー 奥にSMP8634が見える ドライブはフィリップスとBenQの共同開発のようだ

 SigmaDesignsで今一番大きなビジネスとなっているのがHD対応STBだそうで、米国ではすでにキャリア主導でIPベースのHD配信が、具体的な動きになってきている。一方日本では、何かと決めごとが決まらないと動き出さないという習慣があるため、IPと放送の成り行きをしばらくは見守る形になるだろう。

 ブロードバンドやHD対応テレビの普及は、米国より日本のほうが進んでいる。またHDコンテンツ製作用機材も、ほとんどが日本製だ。だが具体的なアプリケーションとなると、完全に米国に出遅れてしまいそうなのは、なんとも残念である。


□2006 International CESのホームページ(英文)
http://www.cesweb.org/default_flash.asp
□関連記事
【2005年1月10日】【EZ】2005 International CESレポート【米オリジナルと新技術篇】
~ TiVoの新サービス、松下のHD対応SDカムなど ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050110/zooma188.htm

(2006年1月12日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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