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ポータブルDVDにもワンセグの波
松下電器産業 「DVD-LX97」
発売日:3月15日発売
標準価格:オープンプライス


■ ポータブルDVDにもワンセグの波

 ポータブルプレーヤー市場の最新のトレンドといえるのが「ワンセグ」だろう。4月1日の正式放送開始を前に試験放送を行なっていることもあり、年末以降、携帯電話やノートPCなどでの採用が相次いでいる。

 そのワンセグを、ポータブルDVDプレーヤーで採用したのが、松下電器の「DVD-LX97」だ。9型の大型液晶を搭載し、通常のDVDプレーヤー機能を持ちながら、ワンセグを追加した製品で、実売価格は約9万円。

 携帯電話やノートパソコンでは付加機能的な扱いだったワンセグだが、DVDプレーヤーにおいては、映像を見るという点では、ワンセグもDVDも同じ。さらに、DVD-LX97ではSDカード上のMPEG-4再生も可能となっているなど、さまざまなビデオプレーヤー機能を搭載している。


■ 大型液晶搭載。重さが気になる

同梱品

 本体やリモコンのほか、車載キットとして、カーDCアダプタや、ヘッドレストブラケット、モニターホルダなどが同梱される。

 液晶ディスプレイは9インチTFTで、解像度は480×240ドットの11万画素。バッテリ装着時の外形寸法は236.5×185×51.5mm(幅×奥行き×高さ)で、B5ファイルサイズのノートPCよりやや小型。普通のポータブルDVDプレーヤーを想像していると、ひと回りほど大きいが、液晶サイズを考えれば納得できるサイズだ。

 サイズより気になったのは、B5ファイルサイズのノートPCとあまりかわらない、約1.15kgという重量。さらに、ヒンジに金属を使っているためか、ずっしりとした重みを感じさせる。

 液晶部は、ヒンジを2カ所用いることで、細かいディスプレイの角度調整を可能にしたフリースタイル型。プレーヤーに垂直方向に立てかけるほか、折り畳んで表示することも可能。車載用のリアシートモニターなどの用途を念頭に置いていると思われるが、かなり自由度の高い表示が可能だ。

 DVDドライブは、本体中央に装備。DVDビデオに加え、DVD±R/RW、DVD-RAMの再生に対応し、DVD+R/RW、DVD+R DLはビデオモードのみサポート。その他のメディアではVRモードや、MP3/JPEGデータの加え、MPEG-4動画の再生にも対応する。

 本体右側面には、SDカードスロットやボリュームボタン、地上デジタル/アナログアンテナ端子やホイップアンテナを装備。右側面にはビデオ入出力や、アナログ/デジタル音声入出力、2系統のヘッドフォン出力を装備している。


2箇所のヒンジを備え、ディスプレイ表示方法を変更できる 9型の液晶ディスプレイを装備する
右側面。アナログ/デジタル用のテレビアンテナ端子と、ワンセグ用アンテナ、SDメモリーカードスロットなどを装備する 左側面。DC入力や、ビデオ入出力、アナログ音声/光デジタル入出力、2系統のヘッドフォン出力を装備 背面。着脱可能なバッテリを装備する
本体操作部。左右の操作ボタンでDVDやワンセグ放送の操作を行なう。右上に[AVセレクト]と[TVモード]ボタンを備えている DVDドライブ開口時 リモコンも付属する

12.1インチ液晶搭載の「Let's note CF-W4」と比較

本体にはデュアルヒンジを搭載し、さまざまな表示スタイルが選択できる


■ 安定したワンセグ受信が可能だが、画質はもう一歩

車のヘッドレスト用アダプタも付属し、リアシートで視聴可能

 まずは、ワンセグ放送を受信してみた。4月1日の正式サービス開始まで約1カ月となり、東京都心では各キー局がほぼ全時間でサイマル放送を行なっている。

 再生ボタンを長押しすると電源が入り、DVDの場合は起動時間は約3秒だが、ワンセグ受信の場合は15秒ほどかかった。DVDやSDカード、外部入力からワンセグに切り替える時には[TVモード]ボタンを押す。ワンセグへの切替時間は約15秒。

 なお、外部アンテナを接続しない場合は、右側面のホイップアンテナをきちんと立てていないと受信できないので、利用前に必ず引き出しておく必要がある。チャンネル設定はオートスキャンで自動登録できる。また、2つのチャンネルリストを記憶できる機能も備えており、通常利用する[ホーム]設定のほか、外出先用のチャンネル設定を保存できる[おでかけ]の2つを記憶して、利用場所にあわせて選択できる。

 チャンネル切替は、本体左脇のチャンネルボタン(DVDのスキップ/バック)で変更できるほか、右脇のトップメニューボタンから、チャンネルリストを呼び出して変更できる。ボリュームは右脇の+/-ボタンで調整する。また、付属のリモコンでもチャンネル操作やボリューム変更が行なえる。

 チャンネルの切替には5秒弱かかり、やや待たさせる印象。単純に見たい番組を選局する分にはいいが、ザッピングしながら使うにはストレスを感じるレスポンスだ。また、画面表示ボタンで番組表の呼び出しや、番組内容の確認、チャンネルリスト(ホーム/おでかけ)の選択が可能。字幕や音声の切替もここから行なえる。

ワンセグ用のアンテナは収納可能だが、受信時にはアンテナを取り出す必要がある 本体左のチャンネルボタンでチャンネル操作 本体右の操作ボタン部

オートスキャンでチャンネル登録 2つのチャンネルリストを保存可能 番組表

 受信品質は良好で、アナログのようなゴーストなどは全く感じられない。ただし、ワンセグの放送波は解像度は320×240/320×180ドットのMPEG-4 AVCで、9型(480×240ドット)のパネルに引き延ばして表示するため、描写が眠くなるのは避けられない。また、フレームレートも足りず、スノーボードやフィギュアスケートを見ていると動画ボケも気になってくる。

 受信状態は安定しているので、内容を確認する分には充分な品質だが、文字は読みづらく、保険会社のCMの小さな文字の注などはまず判読不能だ。しかし、字幕放送機能を利用して、映像に重ねて表示される字幕の判読は問題ないので、音声を出さなくても映画やニュースの内容がわかる。なお、DVD-LX97では、基本的に受信信号をそのままフル画面もしくは4:3で表示し、小画面やドットバイドットでの表示はできない。

 ワンセグ放送については、W33SAやW41Hなどの携帯電話で、3型程度の液晶で視聴した際には充分満足できる表示品質と感じたが、9型の液晶では画質的には不満が残る。また、試験サービス中ということもあり、今後送出側のエンコーダの改善などもあるかもしれないが、とりあえず現状のワンセグ放送で9型という液晶サイズは大きすぎると言っていいと思う。

 編集部での受信環境は安定しており、屋外でも市ヶ谷周辺を手持ちで歩いてみたところ、ほぼ問題なく受信できた。ただし、京王線の千歳烏山-笹塚間でも利用してみたところ、かなり受信状態が不安定で、フレームや音声が途切れたり、受信不能となることもあった。

地上アナログ用のアンテナも付属する

 DVD-LX97には、地上アナログチューナも内蔵。付属のアンテナケーブルを利用して、アナログテレビ視聴が可能となっている。受信状態は不安定で、受信できるポイントを探してもプレーヤーや体の向きによって画像が激しく乱れたりするので、ポータブル用途にはあまり向かないように思える。ただし、安定した受信環境で見ると、ワンセグより精細かつ、フレームレートも60iあるので、安心して放送が楽しめる。状況によってはこちらを活用してもいいだろう。

 また、ワンセグと地上アナログの双方をサポートしたことで、まだワンセグが届いていない地域でも、しばらくは地上アナログを利用しつつ、サービスが始まり次第、ワンセグ端末として利用する、といった使い分けが可能だ。サービスの移行期の製品として、導入しやすいプレーヤーと言えそうだ。



■ DVD再生時に、液晶のドットが気になる

 DVDビデオを再生すると、さすがに画質はワンセグよりかなり上で、ワンセグに見られたようなブロックノイズや動画ボケもさほど感じられない。また、市販のDVDビデオのほか、DVD-R/RW/RAMのVRモード記録ディスクにも対応。さらに、DVD±R/RWのビデオモードディスクや、DVD-RやCD-RWに記録したMP3/JPEGデータ、MPEG-4動画の再生に対応するほか、音楽CDやDVDオーディオに対応するなど対応メディアは幅広く、非常に使いやすい。

ドットの黒枠がかなり気になる

 ただしディスプレイのサイズは大きいのに、解像度が480×240ドットと物足りない。そのため、ドットの黒枠がかなり気になる。例えば電車のシートに座りながら、DVDを視聴するという状況だと、ディスプレイまでの距離は約50cm程度だが、この距離だとかなりドットが際だって見えてしまう。ワンセグだともともとの解像度やフレームレートが足りなかったのでさほど気にならなかったが、DVDでは1m程度まで離れないと黒枠が気になってしまう。

 また、ドットが大きいために、斜め線の表現などもイマイチ。ジャギーがかなり見えるほか、シーン変化時に引っかかりを感じる。色再現などは悪くないが、DVD再生の画質を求めるのであれば、もう少し解像度が欲しかった。リアシートで家族で視聴するという分には1m程度離れるかもしれないが、出張の際に新幹線や飛行機で利用したいという人には、物足りなく感じるだろう。

 画質モードは、ノーマル/シネマ1/シネマ2/ユーザーの4モードが用意。シネマ1はやや輝度を抑えめで、色温度も低めで映画らしい落ち着いた画質モード。シネマ2は色温度を抑えながら、シネマ1より輝度を上げたモードのようだ。

 本体の操作はごく普通のDVDプレーヤーなので戸惑うことはほとんど無いだろう。リモコンでも全ての操作が可能で、据え置きプレーヤーとしても活用できる。

 また、SDメモリーカード内のMPEG-4動画や、JPEG画像の再生機能も搭載。SD-Picture/SD-Video形式の写真/ビデオを再生できる。SD-Videoは、ルートフォルダ以下に[SD_VIDEO]-[PRL***]-[MOL***.ASF]という名称でファイルを保存する必要がある。

 再生機能としてはDVDとほぼ同等で早送りや巻き戻しのレスポンスなども良好。プレイやん用に作成した「MediaStage for Nitendo」の[高画質(240×176ドット/480kbps/30fps)]ファイルなどがきちんと表示できた。

 ただし、静止画表示についてはやはり液晶の解像度が足りないため、特に斜め線がきちんとでないのが気になる。ビューワとして皆が楽しむには悪くはないのかもしれないが、もう少し上のクオリティを望みたい。

画質モードの選択 SDカード上のビデオや写真を再生できる

付属のバッテリ

 拡張機能としては、FMトランスミッタも内蔵しており、再生音をFMの電波として送信可能。車載キットの同梱も含め、基本的に車載用途を強く意識したパッケージングと言えるだろう。なお、FMトランスミッタでは、地上アナログ放送の音声は送信できない。

 電源は付属のバッテリーパック「VUADBLX97」を使用。連続再生時間はDVDが6時間、テレビ視聴が9時間、MPEG-4再生時が7.5時間。また、別売の大容量タイプ「DY-DBLS55」(26,250円)も用意され、同バッテリ利用時の再生時間はDVDが約12時間、テレビ視聴が約18時間、MPEG-4再生が約15時間となっている。



■ ユニークなワンセグ対応も液晶のスペックに不満

 ポータブルDVDプレーヤーとしての独自性という点では、ワンセグ対応は他にはない大きな利点。ある程度のクオリティを保ちながら、安定した受信ができるというのは非常に魅力的だ。

 ただ、ワンセグ対応に限って言えばもう少し小さなディスプレイの方が、魅力を発揮できるようにも感じる。チャンネル切替のレスポンスなどももう一段の改善を望みたいところだ。それでもワンセグ対応の魅力は充分感じさせてくれる。今後、DVDとの2画面表示やPinP表示などができるようになれば、よりユニークな製品になっていくと感じる。

 残念なのはやはり液晶の解像度。9型の大きなディスプレイを搭載しながら、480×240ドット(11万画素)という解像度は物足りない。ワンセグとの相性は悪くないかもしれないが、DVDソース(720×480ドット)に対して、ディスプレイ側の表示能力がかなり劣っているため、ドットの存在やジャギーを感じさせてしまう。“ワンセグが見られる”という付加価値は確かに魅力的だが、それもDVDプレーヤーとしての基本性能があってこそ。せめて一般的な用途でもドットを感じさせないレベルの液晶を搭載して欲しかった。

□松下電器のホームページ
http://panasonic.co.jp/
□ニュースリリース
http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn060206-1/jn060206-1.html
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(2006年2月24日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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