■ 大推薦を受けて……
ストレス社会の現代日本に、突如として登場した「スチーム係長」。あの「オー!マイキー」がブレイクしたテレビ東京系の日曜深夜の枠で、2005年10月2日から放送が開始された「ライブメーション」だ。現在は、定期的には放送されていないが、今後もテレビ東京で随時放映予定という。 そんな、一部でカルト的な人気を集めたスチーム係長が、なぜかパラマウント ホーム エンタテインメント ジャパンが発売元でDVD化された。 それも、3月10日に「‐お笑い芸人vs係長編‐」、3月24日に「‐係長オリジナル編‐」と、超人気シリーズのような2週間隔でのリリース。どちらも片面1層で、本編の収録時間は、それぞれ約22分、約26分と短いが、価格も各2,940円。1分あたりにすると約134円、約113円なので、それほど高くはない。 実は、個人的にはスチーム係長は、話題としては知っていたものの、テレビ東京で放送されていた時には見ていなかったので、詳しくは知らなかった。映像で見たのは、DVD版をTBS系の情報バラエティ「王様のブランチ」で、「トレインサーファー」と一緒に紹介された時というぐらい、ノーマークだった。 王様のブランチで紹介されたときも、放送で流されたわずかな映像を見た限りでは、正直なところ「ふーん」という感じで、あまりグッとこなかった。そんなこともあって購入予定には入っていなかったのだが、DVDの広報担当から「一度ご覧ください。仕事の疲れが、少し癒されるはずです!」と、大プッシュされ、それほどいうのならと、実際に購入してみた。 ただ、2,940円という価格も購入にいたった理由の一つだが、折角だからと「‐お笑い芸人vs係長編‐」の「‐係長オリジナル編‐」2本をまとめて買ったら5,000円を超えてしまった。お得なツインパックが用意されていれば嬉しかったのだが……。
■ 係長のストレスが頂点に達すると、煙突から「ポーッ!」
ある日、なぜか頭が突然煙突化した中小企業のサラリーマン。それが、「スチーム係長」。その煙突は、いつしかストレス社会の抑圧に耐えてきた彼の感情のはけ口となった……。 基本設定は以上。実写とアニメを合成した映像表現「ライブメーション」を駆使して、実写とアニメの狭間の不安定な世界観で、ベタでシュールな笑いが展開される。さらに、1話90秒完結なので、スピィーディに有無を言わせず展開。それでいて、基本は誰でもわかるような小学生が好きそうなベタネタなので、置いていかれるということはない。 また、スチーム係長のセリフはなく、ほかの登場人物でもセリフがあるのはごく僅か。やっぱり、しゃべらないというのは、のっぽさんや、トランプマン、まんまなど、観ている人を惹きつける魅力がある。さらに、スチーム係長を誰が演じているのかは、エンドロールにもクレジットされていないので、謎のままだ。 監督は、中尾浩之で、同じく「ライブメーション」を使った「トレインサーファー」も発表している、気鋭の映像ディレクター。'98年に「MTV Station-IDコンテスト」グランプリ受賞。'00年カンヌ広告祭におけるニューディレクターズショーケースで世界の新人監督8人に選ばれ、'04年Short Shorts Film Festivalにて短編映画「ZERO」グランプリ含むトリプル受賞。'05年にクレモンフェラン映画祭International部門にノミネートされたほか、カンヌ国際映画祭ショートフィルムコーナーにも出展するなど海外での評価も高い。 DVDとしては、最初に出た「スチーム係長」である「‐お笑い芸人vs係長編‐」には、ライセンス、ロバート、スピードワゴン、アメリカザリガニ、おぎやはぎの5組の若手お笑い芸人が登場。スチーム係長と対決する。お笑い芸人1組当たりVol.1、Vol.2の2本のネタ、計10本のネタが収録されている。 。 2本目となる「‐係長オリジナル編‐」は、超クセ者キャラとスチーム係長がバトルを展開する。超クセ者キャラは、ディック太郎、イクラさん、リサイクル鈴木、愛子オブトーキングマシン、芸者タンク、まるちゃん、目出太先生。合計16本のネタが収録されている。 前述のように、1、2本だけさらった観たときは「ふーん」という感じだったのだが、DVDでまとめてみると、じわじわと沁みてきた。ネタの1つ1つは非常に単純でありきたりなんだが、だんだんと癖になる不思議な感覚だ。自分のストレスも、スチーム係長の煙突を通して、スチームとして、待機に発散されている感覚なのだろうか? 個人的に、特におぎやはぎのエピソードが、おぎやはぎが元々持っているとぼけた雰囲気とスチーム係長の世界観が抜群にあっていて、かなりグッときた。
■ 本編と特典の境はよくわからない
DVD Bit Rate Viewerで見た本編の平均ビットレートは、「‐お笑い芸人vs係長編‐」、「‐係長オリジナル編‐」ともに7.94Mbps。片面一層ではあるが、両DVDとも本編と映像特典をあわせても、収録時間は50分以下なので、ある程度のビットレートを維持している。 アスペクト比は4:3。DVDとしての画質はというと、映像自体がライブメーションでドギツイく、つぶれるほどに、彩度とコントラストが上げられているので、よくわからない。ただ、少なくとも、画質が悪いとは思わなかった。
音声はドルビーデジタル 2ch(192kbps)のみ。特に音質を気にするような作品ではないので、特に不満を感じることはなかった。ちなみに、ドルビープロロジックで再生すると、「ポーッ!」にLFEが効いて、よい感じになった。
映像特典は「‐お笑い芸人vs係長編‐」には、「実録! スチーム係長の謎」(2分38秒)、「ミュージックビデオ」(2分12秒)、「オリジナル超短編」、「俺たちのポーッ!」が収録されている。 実録! スチーム係長の謎では、モノクロでニュース映画のような雰囲気で、係長がスチーム係長になったわけが明かされる。ただし、最後は「つづく」と出て終わってしまうが、何に「つづく」はわからない。「オリジナル超短編」では、本編よりさらに短い約30秒のネタが11本収録されている。 「俺たちのポー!」では、本編に登場した5組の芸人が、秘められたストレスを暴露する。5組とも最後に意味深に数字をいうのだが、その数字の意味とは……。 「‐係長オリジナル編‐」の映像特典は、「キャラクター紹介」(8人)、「愛子オブトーキングマシンの血液型診断」、「トレインサーファー1」(1エピソード、約1分)、「ミュージックビデオ part2」(約3分13秒)。「‐お笑い芸人vs係長編‐」と比べて、本編のエピソードが多いかわりに、映像特典は少なくなっている。 「愛子オブトーキングマシーンの血液型診断」は、愛子ママが、各血液型別に約1分30秒ほど、アドバイスをまくし立ててくれる。結局、愛子ママの思い出話を無理やり聞かされるだけともいえるが。個人的には、キャラクター紹介が、「ライブメーション」での紹介ではないのが残念だった。
■ じわじわ、じんわりときます
サラリーマンであれば、かならずたどり着ける役職。それが係長。部長になれるサラリーマンは限られるので、係長はある程度キャリアを重ね、社会を見てきたサラリーマンの最大公約数なのかもしれない。 だからこそ「スチーム係長」を観て、「俺も、煙突は生やしてぇー!」と、共感ともいいきれない、不思議な気持ちになるのだろう。おそらく、1、2本を観ただけでは「こんなもんか」とか、「で?」と思ってしまうかもしれない。しかし、どんどんと重ねて観ていくうちに、癖になる。……かもしれない。 本編が20分程度短い代わりに、2,940円と買いやすい価格に設定されている。お子様にお勧めしないが、心の中でしか「ポーッ!」とできないサラリーマン諸氏には是非、観てもらいたい。
□パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパンのホームページ (2006年4月4日) [AV Watch編集部/furukawa@impress.co.jp]
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