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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第267回:生活防水仕様のタフボディ、三洋「DMX-CA6」
~ 斬新アプローチでシーンを盛り上げる新作Xacti ~




■ 防水はデジカメを変えるか

 デジタル一眼レフの低価格化により、デジカメの選択肢が急激に広がったような印象を持つのは、筆者だけではないだろう。そんな中、価格だけでなく機能面でも生き残りを迫られているのがコンパクトデジカメである。

 デジカメの傾向としては、すべてのシーンに対して上手く撮らせようとすれば、果てしなく多機能になるか、あるは果てしなく中庸になるかの選択になる。多機能はデジタル一眼、中庸がコンパクトデジカメということになると、コンパクトデジカメは無難だけどつまらない、ということになってしまう。

 そんな中、独特のフォルムと機能で一線を画す三洋の動画Xactiから、生活防水仕様モデル「DMX-CA6」(以下CA6)が登場する。店頭予想価格は45,000円前後と、これまでのモデルよりも大幅に安くなっているのも魅力だ。

 Xactiと言えば、動画と静止画が同時に撮影できるカメラの草分け的存在だが、もちろんその機能は健在だ。CA6のカラーはシルバーとオレンジの2色だが、今回はオレンジのほうをお借りしている。独特のフォルムを持つ新Xactiを、早速試してみよう。


■ 斬新なフォルムだが堅牢性は高い


閉じた状態でモニタが表向き

 以前から思っていることなのだが、いろんなショーで出展されている三洋のコンセプトモデルは、デザイン性が高いものが多い。だが実際に製品となると、どこでどんなフィルタがかけられるのか、「いいところ全部取り去りました」みたいなデザインで出てくるのが酷く残念であった。

 だが今回のCA6は、まるでコンセプトモデルがそのまま製品になったような、新生Xactiと呼んでも過言ではない斬新なデザインだ。大胆なのは、液晶モニタ部が最初から表向きというところである。

 これまでビデオカメラも含めてカメラというのは、液晶モニタを閉じたときには、液晶面を保護するために内側に向くというのが常識であった。それを覆しただけで、これほどまでに印象が変わるとは思わなかった。


ヒンジ部は従来機とは逆に後側に付けられている

 当然液晶ヒンジ部は、カメラ前部ではなく、後部に付けられている。したがって液晶を開くと、後ろから見たときに奥にあるのではなく、手前にあるという印象が強い。液晶部には、表面保護のため強化ガラスがはめ込まれており、強度的には心配ない。

 また、これまでモニタのヒンジは縦方向にローテーションするようになっていたが、今回はただ開くだけで、縦方向には回転しない。撮影時の取り回しは大幅に不便にはなるが、モニタの視野角がかなり広いので、多少救われている。

 全体的に角がない丸っこいデザインで、手の中に綺麗に収まるサイズだ。前面のレンズ下部には指がかけやすいよう凹みが付けられており、濡れた手で持ってもしっかりホールドできそうだ。


本体左側のカーブ面がフィット感を高めている

 液晶背面や本体左側には、かなり深いネジ穴がある。防水とはいっても、JIS保護等級4級相当のいわゆる生活防水で、水中撮影ができるわけではない。それぐらいの耐水性能となると、JIS保護等級では7級以上が求められる。

 光学部分やスペックなどは、「DMX-C6」とほぼ同じなので、以前のレビューも参考になるだろう。ただ液晶モニタは、C6が半透過型低温ポリシリコンTFTカラー液晶であったのに対し、CA6はアモルファス・シリコン液晶に変更されている。

 背面部は、基本的にこれまでのXactiと同じ操作感だ。しかしボタン類がシンメトリックに配置されて、デザイン的にまとまりがある。


カメラとしてのスペックはDMX-C6とほぼ同じ 背面のボタンはシンメトリックに配置され、だいぶすっきりした

 ズームレバーは、これまでのスライド式ではなく、シーソー型に変わっている。ただしこれまでのようにバリアブルスピードで動作するわけではなく、単にスイッチとして定速で動くだけなのは残念だ。REC/PLAYの切り替えスイッチも、スライド式ではなく、押し込み型のスイッチとなった。防水仕様にすることで、スイッチ類にはあまり選択肢がなかったようである。

 底部も丸くなっており、三脚用のネジ穴はない。自立ができないので、完全にハンディで使うことが前提となっている。

底部が丸いため、自立はできない バッテリ、メディア、端子はすべてこのフタの中

グリップベルトは手のひらに装着する

 バッテリやSDカードは、底部のフタを開けて装着する。またUSB端子/AV兼用端子も、底部のフタ内にある。フタ部分にはゴム製のパッキンが填っており、少し押しつけるようにしてフタを閉めるようになっている。

 付属のグリップベルトは、手首ではなく手のひらに装着する形になる。手首ではいちいちベルクロを外して取り外ししなければならないが、このタイプでは手を突っ込めば済むので、着脱が楽だ。このあたりの作りは、非常に上手い。

 また今回のCA6では、これまでXactiの特徴となっていたクレードルが付属しない。防滴仕様で端子が外部に出ていないため当然ではあるのだが、その分価格が安くなっているのはある意味恩恵と考えてもいいだろう。


■ 片手操作にこだわった設計

 撮影機能としてはC6と変わりないので、今回はいつものようなスタイルの撮影ではなく、使用シーンをいろいろ想定しながら撮影してみた。まずホールド感だが、人差し指を前面に回すと、親指で背面のボタンを操作したときに無理がある。これは中指を前面に回して、人差し指はレンズ脇に添える感じで持つべきだろう。

人差し指が前面に回してホールドすると、ボタン操作が不安定 中指で握って人差し指はレンズ脇に添えると、安定する

 液晶モニタは、中指を本体と液晶の間に割り込ませるようにすると、あとは自動で開く。閉じるときは親指で押せばいい。液晶の開閉と電源ON/OFFが連動しているので、完全に片手だけで操作が可能だ。

自転車に乗って手軽にスナップ。この描画力なら十分だ ズームは光学5倍。このあたりはC6と変わらない

 これは片手がふさがっていることが多いスポーツシーンでは使いやすいだろう。プールやスキー場など、これまで躊躇していた水辺でも安心して撮影できるのは大きなポイントだ。


動画サンプル

sm01.mov (33.4MB)
再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。

 ただ今回のモデルでは、キャリングポーチもレンズキャップも付属しない。割と本体むき出しのままでポケットに突っ込んでおくという使い方を想定しているのかもしれない。とはいえ、モニタ部は傷が心配なので、適当なサイズの保護フィルムを貼っておいたほうがいいだろう。

 難点を上げれば、やはりモニタ部のヒンジに回転機構がないのは、凝ったアングルで撮ろうと思ったときに辛い。例えばローアングルでの撮影では、これまでならカメラだけを下から構えればよかったが、CA6では自分もしゃがみ込まなければならなくなった点はデメリットだ。

 まあそのあたりはカンで撮ればいいというのも一つの考え方だが、レンズのワイド端がそれほど広くはない。静止画ではワイド端が38mm(35mm判換算)だが、手ブレ補正を入れた動画では相当狭くなる。なんとなく入ってればいいという感じで撮るには、難しいだろう。

 面白いのは、液晶モニタを閉じた状態でも、電源ボタンを長押しすれば電源が入り、撮影できるところだ。誰かと併走しながら撮ったり、自分の左隣の人を正面から撮るなど、面白い撮影ができそうだ。ただ液晶が閉じた状態ではマイクが塞がれてしまうので、音声の収録はあまり期待できないのは惜しい。


相変わらずマクロモードは強力 レンズの前玉はかなり奥だが、角度によってはフレアが出る



■ シーンが広がる生活防水

 CA6の特徴として、9画素混合技術の採用で最低被写体照度が7ルクスとなったようである。9画素混合技術はC6の頃から採用されているが、当時は具体的な照度値が公表されていなかった。機能的にはC6と同じかもしれないが、一般生活のレベルでどれぐらい撮れるものなのかテストしてみた。

 撮影は通常のダイニングで、蛍光灯の明かりのみである。CA6にはフラッシュも装備されているが、動画撮影中の静止画では発光しない。

 以下に一覧でまとめるが、AUTOの場合はISO感度が100に設定された。室内でも写らないことはないが、手動でISO400などに設定しない限り、シャッタースピードが1/30を超えることがないので、人物など動いている被写体はほとんど無理だろう。また静止画には手ブレ補正が効かない点は、イマドキのデジカメとしては機能的に不満が残る。

静止画サンプル
ISO設定 シャッタースピード 絞り サンプル
AUTO(100) 1/10 3.5
50 1/6 3.5
100 1/8 3.5
200 1/15 3.5
400 1/30 3.5

 一方動画では9画素混合の威力もあって、30fpsでも問題なく撮影できる。多少S/Nは悪い感じはあるが、色痩せもなくしっかりしている。デジカメ派生型の動画カメラとしては、よく健闘してるほうだろう。

 また水に強いと言うことで、お風呂で撮影してみた。それほど明るくもないが、問題なく撮影できる。ただやはり子供を撮るならば、もう少しワイド端が欲しいところだ。ただ、これまでならばまず撮影できなかったシーンが撮れるということでは、このカメラの価値はある。

動画サンプル

sm_room.mov (7.91MB)

sm_bath.mov (7.19MB)
同条件ながら動画では30fpsで問題なく撮影可能 お風呂の中でも躊躇なく撮れるのはメリット

 実はこの子をモデルに、プールでも連れて行ってテスト撮影しようと思っていたのだが、あいにく週末に熱を出してしまって、水まわりのテストはこれだけになってしまった。まあ長い連載なので、たまにはこういう失敗もある。耐水性のテストを期待していた読者諸氏には、ご迷惑をおかけする。


■ 総論

 CA6は、カメラとしての機能、すなわち中味はC6と変わらない。だが生活防水という付加価値を付けることで、格段に魅力的に見せることに成功した例だと言える。液晶モニタが回転しないなど、機能的な制約はあるものの、デザインと着眼点の面白さがそれをカバーしている。

 また防水機能だけでなく、撮影時、撮影終了時のアクションの少なさも特徴だ。これまでのXactiでは、液晶を開いたあとに90度回転させなければならなかったため、完全に片手での操作は難しい。だがCA6は電源ON、撮影、電源OFFまでの一連の流れが、片手でできる。無造作にポケットに突っ込んでおいて、ちょっといいなと思ったシーンをスナップするといった使い方にも便利だ。

 今後コンパクトデジカメが生き残りの道を模索するのであれば、特殊用途に向けて特化するというのは、アリだと思う。冒頭でも述べたが、あれもこれもできますとして無難で面白みのないものになるよりも、一部分の特性を極端に伸ばしてやるような試みは、デジカメの使用シーンの多様化という流れに上手くマッチするだろう。

 またビデオカメラとして見た場合にも、メモリ記録型の特性として防塵・防水はアピールポイントである。振動にも強いことから、車載型などのバリエーションも考えられるだろう。車、バイク、自転車など、いろいろな車載撮影は需要があると思うが、どうだろうか。

 これからいろいろなシーンに向けて特化していくのであれば、カメラとしての中身も、徐々にこれまでのような中庸では済まなくなることは予想される。モノゴトとは、常にエスカレートするものなのである。

 CA6にしても、水際で撮影するというシチュエーションに対して、カメラ性能がC6と同じで十分かという疑問はある。だがまずは最初のステップとして、違った切り口で市場を広げるトライアルは、高く評価できる。


□三洋電機のホームページ
http://www.sanyo.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sanyo.co.jp/koho/hypertext4/0607news-j/0721-2.html
□製品情報
http://www.sanyo-dsc.com/products/lineup/dmx_ca6/index.html
□関連記事
【7月21日】三洋、生活防水仕様のSDHC対応ムービー「Xacti」
-雨でも撮影可能。SD解像度用で実売45,000円
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060721/sanyo2.htm
【2005年11月30日】【EZ】ついに600万画素到達の三洋「Xacti C6」
~ 唯一無比の動画デジカメはサンヨーを救えるか ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20051130/zooma231.htm

(2006年8月2日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



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