【バックナンバーインデックス】



“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第288回:JVC Everioに、ついにHDモデルが登場
~本物のフルHDで記録する、コンシューマ唯一のカメラ~


■ SDラインナップを充実させたEverio

 昨年末何かと話題になったVictor/JVCは、CES会場にはブースを出展していない。その代わりに、ラスベガスホテル街のほぼ中央部に位置するシーザーズ パレスホテルのホールで、独自の展示を行なっている。

 同社のHDD記録型ビデオカメラ「Everio」は、今回新たに4モデルを市場投入する。今回のラインナップの特徴は、最下位機種を除いてドックを装備、MPEG-2記録のビデオカメラながらも、ドック側からDV出力が可能になっている。

上位3モデルに付属するドック 背面にDV端子を備える

 これまでも、EverioはUSB 2.0を使って映像の書き出しを行なってきたわけだが、DVDレコーダを使って映像を保存する場合は、アナログ出力をレコーダで録画するといったことしか出来なかった。だがDV出力があればDVDレコーダのi.LINK端子と接続することで、DVカメラと同じような感覚で映像を保存することが出来る。

 もちろん理想的にはMPEG-2からダイレクトにDVDが作成できるほうがロスは少ないわけだが、今回のソリューションでは、MPEG-2で記録した映像をDVに伸張、i.LINKで転送して、レコーダ側で再びMPEG-2に再圧縮する。デジタル同士で接続することにより、アナログ経由のダビングよりも利便性を高めたというところだろう。

 また最近はMacユーザーも増えてきているが、MacではFireWireが標準装備だ。これも従来のDVカメラと同じような感覚で、Everioから映像の取り込み、編集、DVD書き出しといったソリューションがそのまま使えることになる。

 さらに今回のモデルはSDカードスロットもSDHC対応となっているほか、新開発の画像処理エンジン「ギガブリッドエンジン」で、従来機に対してS/N比が30%向上したとしている。全モデルで30GBのHDDを搭載し、最高画質で7時間、最長37.5時間の撮影が可能。

 最上位モデルの「GZ-MG555」は、1/2.5型、5.37MピクセルのCCDを搭載したハイエンドモデル。光学10倍ズームレンズを備え、静止画は最大で2,592×1,944ドットの撮影が可能。静止画用フラッシュのほかに、「Illumi Light」と呼ばれるビデオライトも備えている。

5Mピクセルの静止画撮影が可能な「GZ-MG555」 液晶内部にワンタッチアーカイブボタンを装備 モードダイヤルが上部にあるのがユニーク

 モードダイヤルは本体上部に位置するなど、デザインもなかなか面白い。液晶内部にはワンタッチでDVD書き出しやPCバックアップを行なうボタンを備えている。メニュー操作などは、以前から好評だった液晶横のジョイスティックを継続して装備している。米国では3月発売で、価格は900ドル。

 「GZ-MG255」は、1/3.9型2.18MピクセルのCCDを搭載したモデル。光学10倍ズームレンズで、JVC得意の開放F値1.2という明るさを確保している。静止画の最大画素数は1,632×1,224ドット。静止画用フラッシュは備えているが、ビデオライトはない。2月発売で価格は700ドル。

 「GZ-MG155」は、1/6型1.07MピクセルのCCDを搭載した、ドック付きとしては最安モデル。32倍光学ズームレンズを備えるなど、日本ではまず見られないスペックだ。静止画の最大画素数は1,152×864ドット。静止画用フラッシュはなく、ビデオ撮影時のIllumi Lightのみ装備している。こちらも2月発売で、価格は600ドル。

 「GZ-MG130」は、ドックが付属しない廉価モデル。1/6型68万ピクセルCCD採用で、光学ズームは34倍。静止画はVGAサイズだ。こちらも静止画用フラッシュはなく、ビデオ撮影時のIllumi Lightのみ装備している。米国では1月発売で、価格は500ドル。

 日本ではすでにHDVカメラ市場はシェアで35%、金額的には50%を超える勢いである。だが米国ではまだHDVカメラ市場は小さく、シェアで2%程度、今年でもおそらくまだ5%程度までしか伸びないと予想されている。したがってSDのラインナップの充実が、米国で勝つためのポイントだと言えそうだ。

2Mピクセルモデルの「GZ-MG255」 クレードル付属では最も安い「GZ-MG155」 34倍光学ズームレンズ搭載の廉価モデル「GZ-MG130」


■ 待望のハイビジョンモデルがお目見え

 一方日本での注目は、ハイビジョン対応Everio「GZ-HD7」であろう。今回も数台実機が展示されていたが、自由に触れるようにはなっていなかった。機能的に安定するまで、もう少し時間がかかりそうだ。

 こちらで発表されたスペックとしては、コンシューマ向けハイビジョンカメラとしては初の1,920×1,080ドットでの動画撮影が可能。圧縮方式はMPEG-2 TSで、音声フォーマットは2chのMPEG-1 Layer2を採用している。従来Everioは、SDビデオフォーマットを採用していたが、今回はBlu-ray Discへの親和性や、PCでの編集環境への対応を重視しているようだ。まだコンシューマとしてはこの映像記録フォーマットに名称がなく、実機発売までにはなんらかのネーミングを付けて訴求したいということであった。

展示コーナーには柵が設けてあり、近づけない Everio初のHD機、「GZ-HD7」

 容量60GBのHDDを搭載し、画質モードは3種類。「FHD」は最高画質モードで、解像度は1,920×1,080i。VBRを採用し、最高30Mbps、平均26.6Mbps。録画時間は5時間となっている。「SP」は長時間対応モードで、1,440×1,080iで記録。同じくVBRで最高22Mbps、平均19Mbps。録画時間は7時間。「1440CBR」は、名前通りCBRで記録するモード。解像度は1,440×1,080iで、ビットレートは27Mbps固定。録画時間は5時間としている。

 光学系のスペックは、初めてフジノン製ビデオレンズを搭載したのも話題の一つ。プロ用ハイビジョンビデオレンズとしては、フジノンとキヤノンは非常にポピュラーに使われており、ネームバリューよりもその実績を高く評価しての採用だという。もっともJVCは、過去3CCDモデルの「GZ-MG505」でフジノン製プリズムを採用した経緯もあり、今回はさらにパートナーシップを深めたということのようだ。

 画角は35mm換算で39.2mm~392mmの光学10倍ズーム。ワイド端もそこそこ広く、F値は1.8~1.9で、テレ端でも暗くならないというのはなかなか期待が持てそうだ。また、フジノンレンズではないが、ワイド/テレの両コンバージョンレンズも同時に発売される予定。

 撮像素子は1/5型で、16:9の1,016×558ドット、プログレッシブの3CCDという構成で、画素ずらしによりフルHD解像度を得ている。なお各CCDの有効画素数は、976×548ドット。論理値としては2,032×1,116ドットの解像度が得られるとしており、有効画素数は1,952×1,096ドットとしている。

 機構としてはマニュアルフォーカスリングを装備し、マニュアルでの撮影もサポート。シャッター優先、絞り優先といった使い方もできる。またフォーカスアシストとしてピーキング表示、モノクロ表示も可能。

背面下部にHDMI端子がある

 外部出力としては、USB、HDMI、i.LINKを装備している。プレスリリースによれば、i.LINKからはフルHD解像度および1,440解像度の映像を出力することができるとしているが、現場の担当者によれば「i.LINKからフルHD解像度で出力するは検討中で、確定していない」とのことだった。

 いずれにしろ確定しているスペックとしては、内部にSDへのダウンコンバート機能も内蔵しており、DVDレコーダなどへはi.LINKを使ってSD解像度の映像ストリームを出力することができることは間違いない。なおこのモデルには、ドックは付属しない。


カメラの下にあるのが「CU-VD40」

 また同時発売予定のHD Everio Share Station「CU-VD40」は、HD EverioをUSB 2.0で接続し、フルHD解像度の映像ファイルをデジタルデータとしてDVDメディアに保存するためのDVDドライブ。DVD-R/RWに対応するほか、DVD-R DLもサポートする。

 CU-CD40にはHDMI出力もあり、HDの画像ファイルをデータ保存したDVDメディアから、HD解像度の映像を出力することができる。今のところ、CU-VD40で書き込んだハイビジョン映像は、CU-VD40でしか再生できないが、同社得意のPCレスソリューションがハイビジョンでも完結することになる。

 GZ-HD7とCU-VD40は、米国では4月に発売され、価格はそれぞれ1,800ドルと400ドル。ただ日本では3月の卒業式シーズンには間に合わせたいという意向のようだ。


□2007 International CESのホームページ(英文)
http://www.cesweb.org/
□JVC Americaのホームページ(英文)
http://www.jvc.com/
□関連記事
【2007 International CESレポートリンク集】
http://av.watch.impress.co.jp/docs/link/2007ces.htm
【1月8日】Victor、フルHD MPEG-2記録のHDDムービーカメラ
-Everio最上位モデル。60GB HDDとFUJINONレンズ搭載
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070108/victor.htm
【2006年9月29日】ビクター、フルHDビデオカメラ用システムを開発
-「FUJINONレンズ」を民生カメラで初採用
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060929/victor1.htm

(2007年1月11日)


= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]



00
00  AV Watchホームページ  00
00

AV Watch編集部av-watch@impress.co.jp
Copyright (c)2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.