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大河原克行のデジタル家電 -最前線-
シャープのDNAを求め、同社の歴史を訪ねる
~ 天理の歴史/技術ホールを訪問 ~



 シャープは、奈良県天理市の総合開発センター内に、同社の歴史を振り返ることができる「歴史ホール」および「技術ホール」を開設している。

天理市にあるシャープ総合開発センターの全景。この中に歴史/技術ホールがある シャープ総合開発センターの入口

 歴史ホールでは、創業者である早川徳次氏の生い立ちや、創業時のシャープペンシル事業の商品、そして同氏が常々語っていた、「他社に真似される商品をつくれ」との言葉を具現化した過去からの商品群が一堂に展示されている。

 一方、隣接する技術ホールでは、液晶や太陽電池などの同社の基幹技術の数々をわかりやすく説明。同社のモノづくりの遺伝子を感じ取ることができる。

 同じ敷地内には、液晶技術の開発を行なうディスプレイ開発技術本部のほか、技術本部、LSI事業本部などの研究開発拠点もあり、シャープの技術が集結した「総本山」ともいえる場所だ。

 このほど、歴史ホールおよび技術ホールを訪れる機会を得た。写真を中心に紹介しよう。

 なお、歴史ホールおよび技術ホールは、一般に公開しているが、見学には事前予約が必要となっているので注意が必要だ。


■ 歴史ホール

右側の低い建物が歴史/技術ホール 歴史ホールの入口。早川徳次氏のレリーフが飾られている 入口横では日本庭園が来客を迎える。海外からの来訪者にも好評

シャープの最初の製品はシャープペンシルと思っている人が多いようだが、実は、「徳尾錠」と呼ばれる好みの位置にベルトを止められるバックルが、早川氏が最初に取得した実用新案。同氏が18歳の時のこと 1915年、早川兄弟商会金属文具製作所を東京・本所に設立。早川式繰出鉛筆を発明したのもこの年。これが初期のシャープペンシル

同社が世の中に送り出したシャープペンシルの数々。欧米では、「プロペリングペンシル」と呼ばれた シャープペンシルの量産風景。流れ作業を導入している。1923年の関東大震災によって本社を大阪に移転
1925年に発売した第1号鉱石ラジオ受信機。ヘッドホンを取り付けて聞く。シャープが電機メーカーとなる基点となった歴史的商品 ラッパ型スピーカーの「シャープダイン 31型」。当時の価格は65円。いまの価格では35万円程度だという
当時のトレードマークは、Tの字を手で掴むもの。徳次のTと、テクノロジーのTの意味を持たせた 1934年に発売された「フォノラジオ575型」。木製キャビネットはすべて手作り レコードプレーヤー「PA-500」。プレーヤー装置の引き出しは当時としては斬新な製品だった(動画)

シャープの第1号白黒テレビ「TV3-14T」。公務員の初任給が8,700円の時代に17万5,000円の価格 街頭テレビの様子を再現。その横に掲示している広告を見ると…… イメージキャラクターは、朝汐関。右上の工場は、大阪のシャープ本社だ

シャープ製品を購入すると家が当たるというキャンペーンもあった 1960年に投入したシャープの第1号カラーテレビ「CV-2101」(右)。21インチで、価格は50万円。重量は78kg、消費電力は355W。2001年に発売した20インチ液晶テレビ(左)は7.8kg、53Wだ 1958年に発売したシャープ第1号となる水冷式クーラー。当時の価格は3万6,500円。井戸水を使って冷やすというもので、当時は生産が追いつかないほどの大ヒットになった

1964年発売の世界初のオールトランジスタダイオードによる電子卓上計算機。価格は53万5,000円。当時の初任給は1万9,000円 これが電卓の回路基板の一部。一桁分のものだ 液晶のシャープの礎になったとされるCOS(全機能一体化)電卓。世界で初めて液晶表示を実現した

電卓事業では、こんな製品も出していた。「ソロカル」と呼ばれるそろばんと電卓の融合製品 音声合成技術を利用した世界で初めてのしゃべる電卓。計算の正確さを飛躍的に向上させたという(動画) 歴史ホールの最後にある人工衛星うめの模型。1976年打ち上げられた同衛星には、4,940枚の太陽電池パネルが搭載されている


■ 技術ホール


技術ホールの最初は、液晶テレビを展示。65インチのAQUOSが迎え入れる 亀山第2工場で生産している液晶マザーガラスも展示されている

シャープが第3の事業の柱とする太陽電池は1959年から事業を開始している 光る太陽電池ルミウォール。昼間は光を透過し、夜間はLEDが点灯するといった使い方ができる。後ろの手が透けて見えるのがわかる 環境対策も重要な取り組み。福山工場では、廃液を水中の微生物やカキ殻、備長炭を使って、魚が住める水に浄化している

技術ホールの目玉展示のひとつが、液晶ディスプレイの歴史展示。懐かしいPCなどが目白押しだ 1983年に発売した「PC-5000」。電池駆動を可能にしているPCだ

1989年に、AX陣営だったシャープが発売したAX仕様PC「AX386LC」。10インチカラーTFT液晶を搭載していた シャープのワープロ「書院」。94年に発売し、カラー液晶が話題を呼んだ

液晶ディスプレイの構成部品を展示し、完成するまでの様子も展示している


 歴史ホール、技術ホールを通じて感じたのは、創業時から、先駆的な製品づくりに取り組んできた歴史が、シャープにはあるということだ。また、経営理念にある「いたずらに規模のみを追わず」という言葉にも重みがあることを、その歴史から感じ取ることができた。

 個人的には、創業時から1920年代の成長、1960年から70年までの高度成長期における成長において、シャープの歴史的製品が多く輩出されていることを感じた。

 そして、2001年からの現在が、それに続く、エポックメイキングな製品が登場している第3の成長期ともいえるような気がする。

 シャープの歴史を知ることで、シャープのこれからに注目したいという気持ちが改めて湧いてきた。

□シャープのホームページ
http://www.sharp.co.jp/

(2007年11月29日)


= 大河原克行 =
 (おおかわら かつゆき) 
'65年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を勤め、2001年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。BCN記者、編集長時代を通じて、15年以上に渡り、IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。

現在、ビジネス誌、パソコン誌、ウェブ媒体などで活躍中。PC Watchの「パソコン業界東奔西走」をはじめ、Enterprise Watch、ケータイWatch(以上、インプレス)、nikkeibp.jp(日経BP社)、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、月刊宝島(宝島社)、月刊アスキー(アスキー)などで定期的に記事を執筆。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社)、「松下電器 変革への挑戦」(宝島社)、「パソコンウォーズ最前線」(オーム社)など。

[Reported by 大河原克行]


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