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第308回:4万円を切るTASCAMのUSB 2.0オーディオ「US-1641」
~ Cubase LE 4をバンドルし、使い勝手も良好 ~




楽器フェアで登場

 すでに発売されて2カ月以上経過したが、改めてTASCAMのUSB 2.0オーディオインターフェイス「US-1641」を紹介しよう。これは1Uのラックマウントタイプのオーディオインターフェイスで16IN4OUT、最高で24bit/96kHzに対応している。

 また、初めてSteinbergのCubase LE 4というソフトをバンドルしたオーディオインターフェイスということで、ちょっと気になる存在だ。その実力をチェックした。



■ マルチ入力対応の新たな選択肢

 いまやハイグレードのオーディオインターフェイスはFireWire接続が主流という感じだが、Windows系のユーザーにとってはFireWireよりもUSBがいいという人も多いはず。ただUSB 1.1では転送レートの制限から24bit/96kHz対応だとステレオの入力のみ、もしくは出力のみとなってしまい、あまり使い物にならない。一方で、USB 2.0においては、Rolandが3年前にUA-1000、2年弱前にUA-101を対応させたほか、TASCAMが1年前にUS-122、US-144というモデルを、E-MUがEMU0404 USBを発表。BEHRINGERなど一部のメーカーが出していた程度で、特に4chを超えるマルチ入力の機材となると、Roland以外は選択肢がなかったのが事実だ。

 そんな中、TASCAMが10月にUS-1641を発表した。1Uのラックマウントでフロントには8つのXLRのマイク入力が並ぶ、いかにもプロ仕様といった感じの機材ではあるが、実売価格は39,000円前後とかなり手ごろだ。USBのオーディオインターフェイスを探しているユーザーにとっては、Roland製品と並ぶ大きな選択肢となりそうだ。


US-1641の前面と背面

 スペック上、16IN/4OUTとなっているが、そのフロントに並ぶ8つのマイク入力はもちろん+48Vのファンタム電源に対応しており、左側にあるMIC-INの1~4、5~8というスイッチでオン/オフの設定ができる。またマイク入力端子の右には通常のラインインと、ギター入力のHi-Zの切り替えスイッチがついた標準ジャックの入力が2つある。なお、これらフロントの入力の各音量調整はその右にあるつまみで行なうようになっているが、実売39,000円という価格なためか、そのつまみは少しチャチな質感であるのは仕方ないところか……。


8つのマイク入力は+48Vのファンタム電源に対応 ラインインとギター入力のHi-Zの切替がついた標準ジャックの入力が2系統



■ 使い勝手は良好だが、レベルメータは無し

 一方、リアパネルにも標準ジャックの入力が4つ並ぶ。こちらはバランス対応となっており、+4dB/-10dBの切り替えスイッチが11/12ch、13/14chそれぞれ独立して搭載されている。また出力もバランス対応の標準ジャックで1~4chとあるほか、それとは別にモニター出力もL/Rで用意されている。さらにデジタル・コアキシャルの入出力、そしてMIDIの入出力も装備されている。


モニター出力もL/Rで用意 同軸デジタル入出力、MIDI入出力も


デジタル出力は計4ch

 確かに入力はフロント、リアのアナログそしてデジタルの2chをあわせて計16chあるが、出力はその4chのほかにモニター出力、デジタル出力、さらにフロントのヘッドホンまで含めれば、計10chあるようにも思える。これはどうなっているのだろうか?

 まずモニター出力とヘッドホンについては、基本的に同じ信号で、アナログ14chの入力およびコンピュータ側から出力がミックスされた形でモニターできる。この入力と出力のバランスについてはフロントのMIXツマミで調整する。それに対しデジタル出力は、ドライバの設定画面において、1-2chか3-4chかを設定する形になっているので、やはり出力は全部で4chというわけなのだ。

 ドライバ画面についてもう少し見てみると、デジタルの入出力について、一般的なS/PDIFにするか、業務用のAES/EBUを選ぶかが選択できるようになっている。またレイテンシーの設定は5段階になっている。この設定画面はデジタル出力のチャンネル選択の項目以外はTASCAMのUS-122、US-144とほぼ同じもののようだ。また以前US-144を紹介したときにも触れたが、このドライバの画面、およびインストール画面を見る限り、ドイツのPloytecのUSBオーディオドライバとそっくりなものでもある。


S/PDIFかAES/EBUを選択 レイテンシーの設定は5段階 ドライバ設定画面はデジタル出力のチャンネル選択の項目以外はTASCAMのUS-122、US-144とほぼ同様

 実際に、使ってみたが確かにいろいろな入力があって、使いやすい。とりあえず、コンピュータ側でソフトを動かさなくてもモニターのミックス機能を使うことで入力した音をヘッドホンなどでモニターできるのも便利だ。またRolandのUA-101などと比較してのメリットは、コンピュータ側からの設定でサンプリングレートを自由に切り替えられること。UA-101などの場合、本体で設定し、一度電源を入れなおさないと48kHzと96kHzなどの切り替えができないので、その点では扱いやすい。一方で不便に感じるのが入力レベルメータがないこと。入力音量の調整はツマミでそれぞれ調整できるが、クリップするほど大きい信号が入っても、本体だけでは視覚的な確認ができないのだ。

 とはいえ、それ以外の使い勝手、音質的な面では非常に良好で、なかなか使いやすいオーディオインターフェイスだと思う。



■ Cubase LE 4などソフトが充実

 ところで、このUS-1641を購入する大きなメリットとして、Cubase LE 4というWindows/MacハイブリッドのDAWがバンドルされるという点がある。UA-101はSONAR 6 LEがバンドルされるので、どちらを選ぶかはCubase派なのか、SONAR派なのかというのも大きなポイントとなるかもしれない。


Cubase LE 4

 楽器フェア2007の記事でも少し触れたが、このCubase LE 4というのはCubase4と同じユーザーインターフェイス、オーディオエンジンのDAWで、US-1641で初めて世の中に登場したものだ。これまでCubase LEというソフトがあったが、これはCubaseSXの初代バージョンのLE版であったため、3世代も前のものだったが、ついに新バージョンが登場したわけだ。実は、先日Dirigentから発売されたAUDIO KONTROL 1 Producer PackにもCubase LE 4がバンドルされていたので、今後各社からCubase LE 4がバンドルされてくるものと思われるが、これがなかなかいいソフトなのだ。最大48トラックという制限や同時に使えるエフェクトやソフトシンセの数に制限はあるものの、DAWとしてかなり使える。

 基本的には、YAMAHAのn12/n8などにもバンドルされているCubase AI 4とDAW性能的には同じもの。Cubase AI 4との違いは、YAMAHA機材と有機的連動するAIエンジンが搭載されているか否かだ。

 このCubase LE 4のVSTコネクションを見ても、US-1641が16IN/4OUTとなっていることが確認できる。標準搭載のソフトシンセもCubase AI 4と同様にHALionOneのみだが、実はもうひとつ強力なソフトシンセがバンドルされている。CV Piano(Contiuuous Velocity Piano)というピアノ音源で、スタンドアロンとしてもCubase LE 4などで使うVST、さらにはRTASのプラグインとしても利用可能だ。US-122/US-144にはGigaStudio 3.0 LEがバンドルされていたが、その代わりとして登場したものだ。


VSTコネクションを見ると、US-1641が16IN/4OUTとなっている 標準搭載のソフトシンセ「HALionOne」

 実は、Powered by GVIと書かれていることからも想像できるとおり、GVIはGiga Virtual Instrumentの略でGigaStudioと同じエンジンながらピアノ専用音源としたことでより手軽に使えるようにしたもの。実際音を出してもかなりいい感じのピアノ音で、これはカワイのグランドピアノを24bitサンプリングしたものとのことだ。

 これらバンドルソフトだけでも十分39,000円程度の価値があるように思う。


CV Piano カワイのグランドピアノを24bitサンプリングしたものだという

 さて、ここでいつものようにRMAAを使っての音質チェックを行なった。24bit/96kHzおよび24bit/48kHzの2つのモードで行い、直結させるのはリアにある1/2出力と11/12ch入力。しかし、US-1641のMMEドライバは入出力が2chずつしか見えず、基本的に扱えるのがMMEドライバのみのRMAAでは測定できない。しかし、実はRMAAも前バージョンからRMAA Proというものが有料のシェアウェアとして登場し、これでASIOドライバが選択できるようになっている。最新版RMAA Pro 6も先日リリースされたので、それを入手して使ってみることにした。

 結果は以下のとおりで、THD + Noiseがイマイチ。確かに、ボリュームレベルを最大に上げると、ややノイズが気になる。だが、普通に使っている分にはほとんど問題ないように思う。


RMAA ProでASIOドライバが選択できるようになった 最新版のRMAA Pro 6

RMAA結果。左から24bit/48kHz、24bit/96kHz


□ティアックのホームページ
http://www.teac.co.jp/
□TASCAMのホームページ
http://www.tascam.jp/
□製品情報
http://www.tascam.jp/list.php?mode=99&mm=9&c2code=07&c3code=18&scode=09U1641G01
□関連記事
【11月5日】【DAL】「2007楽器フェア」レポート
~ 各社の最新機器/ソフト情報をチェック ~
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20071105/dal302.htm

(2007年12月17日)


= 藤本健 = リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。

[Text by 藤本健]


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