■ 三菱がBDレコーダ参入 そろそろオリンピック需要に向けてのレコーダ新製品も出てくる時期だが、今期の製品はダビング10対応が目玉である。6月2日からダビング10の運用開始と言われていたが、実際に運用を開始する1カ月前ぐらいから、告知を含めたプロモーション活動が行なわれるはずだった。 しかし4月25日の「デジコン委員会(デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会)」では、放送局とメーカーの足並みが揃わず、どうもこの開始日が厳しいことが明らかになった。少なくともダビング10対応の電波が出てこないことには動作検証もできないわけで、混乱はしばらく続きそうだ。 さて今回のZooma!は、扱うのは久しぶりの三菱製レコーダである。今期三菱では、BDとDVDレコーダで合計4モデルをリリースする。全シリーズでAVCRECに対応し、ハイビジョン録画と保存が可能だ。ラインナップは以下のようになっている。
中でもDVR-BZ100 (以下BZ100)は、HDDは少ないがBDドライブ搭載で、現実的な選択肢になるだろう。そもそもAVCRECで録画すれば、HDD容量も少ないとは言い切れない。BDレコーダとしてはソニー、パナソニック、シャープに続いて4社目となる三菱機の実力を、早速試してみよう。
■ 落ち着いた本体デザイン
普通はこの状態でも電源やイジェクトボタンぐらいは露出しているものだが、閉じた状態ではまったくボタン類が表面に出ないというデザインは珍しい。カバーを開けると、左側に電源や放送切り替え、チャンネルアップダウンといったボタン類がある。ドライブを挟んで右側には、録画・再生やメディア切り替えのボタン類がある。SDカード、B-CASカードスロットもここにある。
ドライブはBD-R/RE対応で、2層にも対応済み。DVD系は、R/R DL/RWの録再に対応しており、DVD-RAMは再生のみサポートしている。DVDメディアへのAVCREC記録は現時点ではR/R DLのみ対応で、RWに関しては製品発売後のアップデートで対応ということになっている。
搭載HDDは250GBとそれほど多くはないが、AVCRECの最低画質で約93時間の録画が可能だ。地デジ対応レコーダは一時期1TBぐらい搭載したモデルもあったが、AVCREC機能の登場で搭載HDDが少なくなる傾向にある。コスト削減策として有効ということなのだろう。AVCRECは、AF、AN、AEの3モードを備えている。
入出力は比較的シンプルで、アナログAV入力は前後併せて2系統、アナログ出力は映像がD4、S映像、コンポジットとアナログ音声、そのほか光デジタル音声出力がある。HDMIは1系統だ。 リモコンも見ておこう。本機にはフル機能が使える標準リモコンと、タッチパネルの液晶を採用した「液晶グット楽リモコン」の2つが付いている。 標準リモコンは大きめのボタンを配したかなり長めのもので、中央に十字キーがある。周囲のボタンは、メニュー全体にアクセスできる「ナビ」、前のメニューに戻る「戻る」ボタンが大きめにフィーチャーされている。チャンネルキーなどは下部に隠されているが、チャンネルアップダウンボタンが表にあるため、あまり不自由はないだろう。 「液晶グット楽リモコン」は、チャンネルや音量といったよく使うものは物理ボタンとして持たせており、機能操作部をいくつかの機能に切り替えできるようにしたものだ。「スタート」ボタンを押すと、「かんたん予約」「予約する」「再生する」「テレビをみる」「設定ほか」の機能が選択できる。十字キーと「戻る」ボタンもあるので、それ以外のメニュー操作も可能だ。
液晶リモコンでは、番組予約をウィザード形式で進めていけるほか、メーカー名を指定するだけでテレビのリモコンとしても使える。また三菱製エアコンのリモコンにもなるなど、リモコンの新世代を感じる作りだ。ただ単三電池を4本も入れるので、ずしりと重い。やっぱり液晶がかなり電力を食うのだろう。
■ オーソドックスな予約システム
では予約システムなどを見ていこう。番組表はGガイドを採用しており、リモコンの「番組表」ボタンで起動する。表示設定としては、表示局数が決められる程度で、拡大・縮小といった機能はない。番組予約画面は非常にあっさりしたもので、一行に情報が記されており、ユーザーが必要に応じて変更するのみだ。
本機では2系統のチューナを備えているが、特にチューナ1、2といった区別は意識する必要はない。予約がダブっても、2つまでは警告なしにそのまま予約できるし、予約が3つ重なったら、予約の重複を示す画面が出るだけで、予約自体はそのまま入る。
つまり他の予約を辞めるかなどは全く尋ねてこないので、完全に自己責任で運用することになる。考え方にもよるだろうが、レコーダがいろいろ気を遣ってくれるよりも、シンプルなほうが使いやすいとする人もいるだろう。 番組表の表示中に「サブメニュー」ボタンを押すと、番組検索機能が使える。機能的には「ジャンル検索」、「キーワード検索」、「人名検索」など基本的な機能のみだ。試しにジャンル検索で「映画」の「すべて」を検索したところ、表示が出てくるまで約30秒かかった。 CSやBSの番組表まで全部検索するので、数としては相当あるのだが、今日1日(ほぼ半日)だけの分を探すのに30秒待たされるというのは、それほど高速とは言えない。検索を開始する前に、そこでサブメニューをもう一度押して放送波を絞り込めばだいぶ早くなるのだが、この設定はいったん番組表を閉じてしまうと、次の検索をするときにはもうすっかり忘れ去られているので、こまめに注意していなければならないのが難点だ。
もう一つの「液晶グット楽リモコン」での予約を見てみよう。まず「かんたん予約」機能だが、画面内に十字キーと3つのボタンが現われる。各ボタンには数字が記されており、この数字の順番どおりにボタンを押していけば、予約が完了となる。実際にテレビ出力画面のほうも、通常の予約画面と同じものが表示されており、それらをセンターボタンで選んでいく代わりに、液晶画面上のボタンを押すということになる。 これは同じボタンがいくつかの機能を使い回す、例えばセンターボタンが各画面の「意志決定」を示すボタンであるというUIが理解しにくい高齢者などには、一つずつ機能が分かれているボタンのほうがわかりやすいのかもしれない。
もう一つの「予約する」ボタンの機能は、これよりも少し高機能だ。放送波の切り替えや、番組表の前日、翌日にジャンプできるボタンを装備するほか、予約の一覧表示や削除もできる。予約のプロセスはウィザード形式だが、必要な機能全部が1画面に集まっているわけだ。予約に関する他の機能に直接ジャンプできるため、普通のユーザーにとっても標準リモコンより便利だ。
設定としては、嗜好にあったお勧め番組を録画する「発掘型」、過去予約したことがあるのに今回は予約されていない番組を自動録画する「安心型」、その2つを組み合わせた「安心型+発掘型」の3つから選ぶことができる。
■ 充実の再生機能
注目のAVCREC機能だが、画質モード別のざっとした感想を述べておきたい。まずAFモードは、BSデジタルに対して約半分のビットレートとなるわけだが、MPEG-2ベースとMPEG-4ベースの圧縮比から考えると、妥当なレートとなる。実際に映像を見ても破綻はほとんど見られず、逆に放送時の固定ノイズも綺麗に丸めてしまうので、放送よりもツルッとした映像となる。ソースに対して忠実かと言われれば違うが、細かいディテールなどもあまり損なわれず、放送ダイレクトよりも気に入る人もいるだろう。 ANモードは、DVDに1時間番組を記録することを考えれば、妥当なレートとなる。派手な映像破綻はないが、細かいディテール部分はぼかす傾向がある。ワイドアングルの映像では厳しい部分もあるが、寄り目の絵では十分だ。人物中心のスタジオ番組ではカメラも安定しているため、このレートでもいけるだろう。
AEモードは、MPEGが弱いとされる水面やカメラの早い動きで破綻が見られる。じっくり絵を鑑賞するようなドキュメンタリーや音楽番組には向かないが、一般的な情報番組やバラエティでは十分だろう。上手くはまれば解像度はそれなりに出るので、少なくとも同ビットレートのSDで録画するぐらいなら、このモードを使うメリットはある。
この番組の再生時に、サブメニューから「オートカットi再生」を選ぶと、番組だけ、またはCMだけを自動再生することができる。さらにこの再生機能を使ってBDなどへムーブも可能だ。 スポーツ番組では、盛り上がったシーンだけを再生する「ハイライト再生」機能も備えている。これで再生を始めると、画面上に音声レベルと思われるヒストグラムが表示され、どのぐらい盛り上がったところを再生するかの線引きを、自分で設定できる。過去に同様の機能を備えたレコーダはあったが、自分で視覚的にレベル調整ができるのは珍しい。 ただハイライト再生中はこの表示が消せないのは、いただけない。今どのあたりを再生しているかがだいたいわかって便利ではあるが、ちょうど選手名などのスーパーに被るので、どう善意に解釈しようとしても、まあ普通に邪魔である。せっかくの機能が台無しだ。
サラウンド放送の番組では、「DIATONE サラウンド HEADPHONE」が使える。サラウンド番組は一時期増加傾向にあったが、最近はどうも頭打ちのようだ。どちらかと言えばDVDやBDの市販タイトルで使うというのが、現実的なところだろう。ヘッドホンでバーチャルサラウンドを楽しめる機能を標準装備したのは、面白いアプローチだ。
■ AVCHDにも「一部」対応
部分削除は、削除する部分のIN点とOUT点を指定するタイプだ。映像の早送りやコマ送りなど、レスポンスは十分で、さすがに今時のレコーダである。カットポイントは、連続して数カ所を指定することができ、最後にまとめて削除を実行するというスタイルである。 編集の都合を考えると、リモコンのポーズボタンはもっと大きい方が良かった。頻繁に使う割には、サイズが小さく場所も微妙なのは残念だ。だが「オートカットi」機能もあることだし、編集してから保存するという人も次第に減ってきているようなので、もはやそのあたりのプライオリティは高くないのかもしれない。 外部メディアへのダビングは、現時点では、BDやDVDなどへの単純ムーブになってしまう。ダビング10になればまた事情が違うのだろうが、現時点では検証する術がない。また本機にはi.LINK端子もないので、外部HDDなどへのムーブ機能もなく、ダビング関係はシンプルな機能にとどまるもののようだ。
現在SDカードにAVCHDで記録できるのは、パナソニック全般とキヤノンのHF10しかない。だがパナソニックのカメラを持っている人は、VIERA Linkでの利便性まで考えたら、DIGAを買うほうがメリットがある。本機にはUSBポートもないので、実質組み合わせてメリットがあるカメラは、キヤノンのHF10だけということになりそうだ。
レコーダによるAVCHDのサポートは、もはやメリットがはっきり見えている道なので、SDカードスロットを搭載するよりもUSBポートを積んで、幅広くサポートしたほうが得策だったろう。
■ 総論 レコーダの方向性として、いろんなAV機器に繋がり、規格ぎりぎりまで攻め込んだダビング機能や、モバイル機器へ転送できるという高機能方向と、操作性をシンプルにしてやれることだけやるという方向の2つが出てきた。 それはとりもなおさず、テレビの視聴者がそういう具合に二分化していっているということであろう。本機は後者に分類される機器だと思うが、それを決定付けているのが「液晶グット楽リモコン」だ。 これまでリモコンは、VHS時代に比べて液晶表示部が省かれたりと、低コスト化を進めてきたわけだが、「液晶グット楽リモコン」はこれだけのコストをかけながら、できることは高機能ではなく、単にわかりやすくするためだけに存在する。これだけのハードウェアなら、もっといろいろできそうだが、敢えて録画と再生に絞っている。 面白いアプローチだが、本格的にやろうと思えばまだ改善点はある。例えばお年寄りにとっては、もっと字が大きい方がいいだろうし、設定途中でバックライトが消えたときにどうすればいいのか、といった戸惑いもあるだろう。だがこれなら年齢やユーザーレベルに応じてメニューが変えられる可能性もあり、将来の夢も広がる。あとは三菱がどれぐらいこれを続けられるかという、決意の問題だろう。
レコーダとしてはデザインも良く、ヘッドホンのサラウンド出力に注目するなど、再生機能面でも他社がやらない部分を押さえている。DIATONEはオーディオの高級ブランドだが、映像では高画質とか多機能にこだわらず、ある意味カウンターカルチャー的な立場で進んでいくのであれば、MITSUBISHIブランドで立ち位置を作ることができるだろう。
□三菱電機のホームページ (2008年4月30日)
[Reported by 小寺信良]
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