【VIERA Station】テレビから「ライフプラススクリーン」へ
新しい6軸色調整技術「ヘキサクロマドライブ」

 パナソニックから発売された新しい4Kビエラ「AX800」シリーズ。LEDサイドエッジライトを用いた部分バックライト駆動(ローカルディミング)対応の広色域4K液晶パネル採用というスペックは、昨年末に発売されたWT600シリーズ後継だ。

 しかしながら価格はよりリーズナブルは設定になりながらも、画質、音質、機能などの面でも着実に進歩している。中でも「なるほど、この手があったか」と思わせてくれたのが画質面での改善だ。前モデルから僅か半年しか経過していないが、フルHD映像の4Kアップコンバート、広色域パネルの活用という二つの技術トレンドは、ここ数年、その熟成が著しく進んでいる部分だ。

 中でもオリジナリティの高い「ヘキサクロマドライブ」から話を始めることにしよう。

“自然な”広色域を標準モードから映画モードまで幅広く実現

 「ヘキサクロマドライブ」のHexaとは「6」のこと。「ヘキサクロマドライブ」とは、色を6つの方向に調整し、自然につなげることができる新たなカラーマネジメント回路の名称だ。もっとも、映像処理について詳しい人ならば、映像を6軸で調整するカラーマネジメント処理そのものは、以前から一般的に使われていることをご存じかもしれない。

 しかし、従来からある色の6軸調整回路は、色再現範囲をRGB三原色の値を調整することで二次元的に調整するだけだ。実際の色再現は、グラフの中で“色立体”と言われる三次元形状をしている。液晶パネルの場合、暗部ではバックライトから漏れる光の影響が強まり、またRGBそれぞれのカラーフィルター透過率が異なるなどの理由で、明るい場所と同じRGB補正値を適用しただけでは正しい色再現が行えない。

 この補正をどうするのか。どのあたりにチューニングして「落としどころ」を見つけるかが、液晶テレビの絵作りを考える上でとても重要な点になるが、パナソニックにとってはもうひとつ問題があった。

 それは「これまでプラズマテレビで映画などのプレミアム映像を楽しんでいた人たちに、プラズマが持っていた良さを、液晶テレビでも提供する」ことだ。

 プラズマは自発光のため、暗部になっても色再現範囲が“ねじれる(色度マップ上の三角形が回転する)”ことがない。映画やコンサート映像はもちろん、アニメでも暗いシーンは少なくない。特に長尺映画では、シーンごとの雰囲気にメリハリを付けるため、映画の尺全体でシーンごとの明るさを変えている場合もあり、低輝度部の明暗の正確な表現はもちろん、色再現の“捻れ”がないプラズマは映画画質を表現するのに向いていた。

 ではプラズマと同じような暗部の色再現を行うために、どのようなアプローチが取れるのか。パナソニックはここで、新しい考え方を取り入れた。液晶パネルの広色域化という技術トレンドを、単に“鮮やかで派手な色”に使うのではなく、“正確な色立体で映像を見せる”ために使うことにした。

 「ヘキサクロマドライブ」は従来の平面的な6軸色調整とは異なり、3Dルックアップテーブルと高精度演算回路を用いた色空間の変換と調整機能を提供する。6軸による色調整は可能だが、その場合、3Dルックアップテーブルによる空間変換を通じて色調整がかかるため、明部と暗部で妥協点を探す必要がなく、狙い通りの映像へと追い込める。

 液晶パネルの暗部表現には“色のねじれ”以外にもうひとつ、色再現域が狭くなるという問題もある。主に漏れ光や低輝度域の液晶応答特性の悪さが理由だが、「ヘキサクロマドライブ」と広色域パネルを組み合わせるとこの問題に対処できる。

 AX800シリーズの映画モードは、X.V.Colorで鮮やかな色が入力された場合には色再現域が拡がった部分も利用するが、基本的にはBT.709という規格上決められた色再現の外には出ないよう調整されている。しかし、これはあくまで“明るい色”の部分。暗いシーンになると、前述したように色再現域が狭くなりくすんだ色になってしまう。

 広色域パネルは、もちろん明部の目の覚めるような色がさらに鮮やかになる効果もあるが、暗部に関しても色再現域が拡がる。パナソニックは「ヘキサクロマドライブ」を用い、この“暗いけど鮮やか”な部分を活用した絵作りを行ったのだ。

 量子ドットを活用したLEDバックライトなど、“広色域”を実現する技術ばかりが注目されてきたが、“映像ソフトに納められる色”は変化していない。AX800シリーズに採用されている液晶パネルは、フィルムと同等の色再現能力を持っているが、単純に“鮮やかです”だけでは、高画質にはならない。

 鮮やかさを「見栄えの良い絵を目指す標準的な画質モード」から、「作品鑑賞のための映画モード」まで、幅広く自然な絵作りの実現を目指した技術。それが「ヘキサクロマドライブ」だ。

「4Kファインリマスターエンジン」もリファイン

 今回は主に新技術である「ヘキサクロマドライブ」について話を進めてきたが、前モデルのWT600にも搭載されていた4K超解像技術「4Kファインリマスターエンジン」も、今回、その効果が変化していることに気付いた。

 「4Kファインリマスターエンジン」は、4K超解像の手法としてはスタンダードになりつつあるデータベース型超解像を採用する映像エンジンである。その特長は入力されている映像ソースの解像度を自動認識し、標準放送レベル(DVD含む)、ハイビジョン放送レベル、高画質ブルーレイソフトレベル、それに4K映像(あるいは静止画の写真)レベルで異なるデータベースを選択。さらに、4Kならではの微細領域のディテールを拡張する映像処理と組み合わせたものだ。

 WT600のときにも幅広い映像ソースへの対応が行われていたが、今回は処理手法やデータベースには手を加えていないものの、映像処理全体の整合性を見直し、パラメータ設定などもやり直しているという。パッと見の印象でも、前回よりも熟成していることを感じ取ることができた。

 次回はこの「4Kファインリマスターエンジン」と「ヘキサクロマドライブ」を合わせ、最終的にどのような画質を実現できたのか。導入した技術に対する結果を詳細に検証していくことにしよう。

>>体験動画レポートはこちら