気になるグッズを衝動買い


【バックナンバーインデックス】


第4回:秋葉原で発掘! あやしい格安MP3CDプレーヤー
国籍不明!?「デンノー MPCD-455」


 AV製品はピンからキリまでいろいろありますが、いわゆるメインストリーム以外にはいろんなおもしろいアイテムがたくさんあります。ここでは思わず衝動買いしたくなるけど、冷静に考えるとどうかな~? と、気になる「モノ」に積極的なアタックを繰り広げていきます。

トレンドのポータブルMP3CDプレーヤー

 MP3再生対応ポータブルCDプレーヤー、いいですよね。CD-Rドライブさえ持っていれば、お気に入りの曲がたっぷり入ったCD-Rを1枚焼くだけで、CDの交換なしにずっと聞いていられるのだから。

 ポータブルCDプレーヤーのトレンドは、MP3対応らしい。アイワの「XP-MP3」は結構な人気を博している様だし、発売前の製品として、WMAにも対応するソニックブルーの「RioVolt」や、ケンウッドの「DPC-MP727」など、新製品のラインナップもなかなかの陣容。

 なにが言いたいかというと、MP3(を含む圧縮オーディオフォーマット)に対応するポータブルCDプレーヤーが欲しいのである。というわけで買い物に出撃した。

 自分のよく行く池袋の家電量販店で探してみたが、店頭にあったのはアイワの「XP-MP3」のみ。う~ん。これってポータブルCDプレーヤーとして見ると、デカいんだよね。厚みが通常のプレーヤーの2倍? ってくらいあるのがネック。リモコンが付いているのは高ポイントだが、イヤフォン直出しというのも引っかかる。ん~、とりあえずペンディングですな。他にどんな機種があるのかを確認するべく秋葉原へ。

 秋葉原を探し回ってみても、見かけるのはアイワの「XP-MP3」ばかり。確かに魅力的な製品ではあるのだけれど、価格も2万円前後と、即決するにはためらわれるレベル。そこに現われたのが、デンノーの「MPCD-455」である。お値段13,800円。わお、イイじゃない。サイズも、外形寸法が130×145×28mm(幅×奥行き×高さ)と、「XP-MP」と比較して薄く、通常のプレーヤーの1.3倍といったところ。許容範囲である。リモコンがないのは痛いが、ここはポータビリティを優先しよう。もちろん価格の魅力も大きいのだけれど。


製造国表示がない……。あやしさレベル急上昇

 「すいませーん、これくださーい」と言って出てきた箱は、なんとも形容のしがたいものであった。やる気のない表情をしたねーちゃんの脇に、件のプレーヤーの写真。パッケージのデザインセンスは、はっきり言ってダメ。確認できるメーカーのロゴはどうやら「COMPRO」らしい。「デンノー」じゃないの? ここで「あやしさコンディションレベル」がノーマルの「1」から、要注意の「2」へシフトしたが、「これください」と言った手前、「やっぱいいです」とは言えない小市民。まあ、モノ自体は店頭の商品と同一なのだから問題はないだろう。……多分。

 入手後、箱を開いてみると、保証書はきちんとデンノーのものであった。とりあえずはひと安心だ。しかし、続いて出てきた日本語の取扱説明書はコピーをホチキス留めしただけのもの。あやしい……。レベルは警戒の「3」に上昇。説明書の内容は、操作についての最低限の説明のみ、といったところ。詳しい内容は頑張って英語のマニュアルを参照するしかない。輸入品をほぼそのままの形で流通に流し、保証だけはつけている商品、という扱いだろうか。なるほど、秋葉原ではよく見受けられる形態である。

 一体どこの国で製造されたのか気になって、本体を調べてみたが、製造国表示は見あたらない。「そんなはずはない」、とくまなく見てみても、やっぱりない。ないものはない。あやしすぎる……。レベルは特級認定準備態勢の「4」へシフト。ちゃんと使える機器なんだろうか……。

本体の厚みは、ひと昔前のポータブルCDプレーヤー程度 パッケージ。ここには「デンノー」の文字は確認できない

日本語の説明書と英語のマニュアル 保証書にある会社の住所は国内


使わないような機能もついてます

 パッケージの同梱品は、単3型ニッケル水素充電池×2、ACアダプタ、イヤフォン、ステレオミニプラグ/RCAケーブル、CDプレーヤーケースといったところ。なぜかMP3データの入ったCDも付いており、そのタイトルが「Tokyo Rhapsody」。……一応パッケージには対応する各国の表記があり、この箱には「Japan」にチェックが入っている。日本市場用のおまけなのだろうか? しかし、CDのレーベルもシュリンクも表記は英語なのですが。疑問は増すばかりである。

 ともあれ、仕様を確認してみよう。電源は付属の充電池とACアダプタのみに対応。再生可能メディアはCDとCD-R。CD-RWには対応しない。再生可能なファイルは、CD-DAとビットレート32~224KHzのMP3。バッファメモリにより音飛びを回避する「音飛びガード」はCDが5秒、MP3は45秒まで対応。音質改善機能を搭載し、モードは5つ。ID3タグの表示は未対応で、ディスプレイ表示は数字のみだが、フォルダ内のファイル再生には対応し、最大256ディレクトリ、512ファイルの再生が可能である。

 特筆すべきは録音機能であろう。音飛び対策のバッファメモリに、約500秒(本体のカウンタでは8分30秒)の録音が可能なのである。ただし、マイクは内蔵しておらず、ミニプラグのマイク端子にマイクを接続しなくてはならない。

パッケージ同梱品。ほかに本体ケースがある


「こ、これは……」、と声の漏れる録音機能

 とりあえず、気になった録音機能を確かめてみる。マイク端子にミニプラグをつなぎ、ミニコンポのヘッドフォン端子からのCD音声を録音した。

 録音は本体側面のスライドスイッチを「PLAYER」から「RECORDER」へ切り替えることで可能になる。録音ボタンはプレイ時のディレクトリ指定ボタンが当てられている。録音を開始すると、ディスプレイには録音可能時間のカウントが始まる。録音は、録音中に停止ボタンを押すことで録音自体は中止できるが、続けての録音は不可能。再度録音ボタンを押すと、最初から記録される。また、録音中の音声をモニターする事も不可能。記録した音声は、レコーダーモード時に再生ボタンを押すことで再生され、プレーヤーモードに切り替えると消去される。

 ここまででの説明で、この機能の使用感を想像していただけると思うが、極めつけはその音質であろう。一言で表わせば「ダメ」。とにかく音が歪むのである。感触としは、受信状況の悪いAMラジオからノイズを取った音、だろうか。ボイスメモの用途に使用したとしても、よほど静かな所でないと、バックグラウンドノイズで声が聞き取れなくなる様なレベルである。こ、これは……、やはり意味のない機能ではないのか?

上記の記述を読んだ読者より「マイク端子にはライン接続を行なってはいけない」という旨の指摘を受けました。マイクでの入力にて録音を試したところ、音の歪みはライン入力時より軽減しています。ただ、かなりのノイズを確認でき、やはりボイスメモの用途には厳しいレベルであると思われます(3月8日追加)

本体右側面のスライドスイッチで録音/再生機能を切り替える


MP3再生は、おおむねマトモ……だと思われる

 録音機能は付加機能なので、無視することにしよう。これはMP3プレーヤーなのだから。とりあえず、同梱CDの「Tokyo Rhapsody」を聴く。収録内容はいわゆる「テクノ」系の音楽。自分は3年ほど前まで結構聴き込んでいたので、違和感なくリスニングできたが、なんだか古い感じのする音づくりであった。しかし、なぜテクノ? また謎だ。

 ともあれ、使用感をチェック。やはりID3タグが使えないのは不便である。再生順は、ファイル名のアルファベット順になるのだが、数字で表記されるため、どの曲なのかさっぱりわからない。ディレクトリの順序も、フォルダ名のアルファベット順。やはりさっぱりわからない。曲のスキップもワンテンポ遅れる感じだ。検索性はかなり悪い。CD-Rの作成の際には、ファイル名、フォルダ名を厳選しておかないと、なかなか目的の曲にはたどり着けないだろう。

 音質改善機能は5モードだが、劇的に低音が強調されたり、高音が強調される、という感じではない。違いはさほど大きくないので、好みのモードを見つけるには多少使い込まないといけないと感じる。

 音質については、PCで聴くMP3の音と同等という感触。特に問題は感じない。音飛びついては、歩きながらの使用でもほとんど確認できなかったが、ゼロではなかった。そして、据え置いての使用時でも音飛びの発生を確認できた。音飛びの原因は衝撃ではなく、本体の側に問題があると考えられる。CD-Rメディアに焼いたファイルの再生でも、音質や、音飛び発生頻度は同梱CDと同じ。傷の目立つCD-Rでも、症状に相違は見られなかった。まあ、音飛びも頻繁に発生するわけではないので、自分としては気にならないレベルだ。

5つの音質改善モードはこの「SOUND」ボタンで切り替え 本体ディスプレイ。表示は数字のみ


これはスゴイ! 文句なしで「あやしさ満点」認定!

 ここまでは、まあ、許そう。許してしまおう。……個人的にとても問題にしたい点はまだある。まずは電源。持たないんだな、これが。満充電状態で再生時間は約3時間。しかも、同梱の充電池か充電可能なニッケル水素電池以外使ってはいけないのですよ。アルカリ電池など使ったら破損の可能性ありなのだそうですよ。これは、「ポータブルプレーヤーとして、どうよ?」と感じる部分ではあるまいか。

 究極の問題点は、CDで音飛びしたこと。それも傷のほとんど確認できない市販のCDで。リスニングした「子門真人ヴォーカル・コンピレーション<赤盤>」は、通常のCDプレーヤーでは問題なく再生できるが、「MPCD-455」ではリスニングに支障が出る頻度で音飛びを確認。おいおい、まずいでしょうそれは……。

 ここまでじっと我慢してきたが、個人的見解でここに認定しよう。してしまおう。この「MPCD-455」は、あやしさレベル「5」、つまり「特級」、即ち「満点」であることを。

 MP3を焼いたCD-Rを再生可能なのは便利だと思う。しかし、プレーヤーとしての基本がなっていないのは考えもの。多少の音飛びを覚悟し、MP3専用プレーヤーと思って使うにしても検索性は劣悪。録音機能は使い物にならない。CD再生は音飛びだらけ。バッテリの持ちが悪い上に、市販の電池も使えない。……すばらしいプレーヤーだ。

 我慢して使っていけないこともないが、かなりの忍耐力を持った人でないと、遠からず押入れの肥やしになってしまうと思われる。いやはや、ここまで色々な問題を抱えている機器が売られているのは、それほどないことだろう。この「あやしさ満点」プレーヤーは、それだけで価値があるかもしれない。なにせ自分が「満点」なんて認定したのってAV機器では初めてですよ、ええ。

 P.S.実は、会社の同僚も「MPCD-455」を買ってました。もしかしてこれらの問題点は自分の個体だけなのではと思い、症状を確認しました。……同じでした……。やっぱスゲェ……。

□デンノーのホームページ
http://www.dennow.co.jp
□製品情報
http://www.dennow.co.jp/html/products/mpcd/index.html
□関連記事
【2月19日】ソニックブルー、Rio初のMP3対応ポータブルCDドライブを国内販売
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010219/sonic.htm
【3月1日】ケンウッド、WMAを再生できるポータブル音楽CDプレーヤー
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010301/kenwood.htm

(2001年3月6日)

[fujiwa-y@impress.co.jp]


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ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

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