【バックナンバーインデックス】


“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第10回:DVD-R/RW搭載新型「VAIO RX」を世界最速!?レビュー
~ スカッと焼けた! DVD-R ~

 先月のNAB2001リアルタイムレポートでもお伝えした、PioneerのDVD-R/RW「DVR-A03」を搭載したマシンがついに登場した。

 それが、今日(17日)にソニーが発表したVAIOのデスクトップ機「VAIO RX(PCV-RX72K)」だ。PCV-RX72Kには、DVD-R/RWドライブを搭載するほか、CPUはPentium 4 1.7GHzと、文句なしのフラッグシップモデルとなっている。今回、このマシンを短期間ではあるが、発売前にお借りすることができたので、さっそくレポートしてみたい。


■ いよいよ来たDVD-R/RWの世界

 PCV-RX72Kの目玉といえば、もちろんDVD-R/RWドライブ。では、DVD-R/RWで何をするか、と聞かれたら、やっぱデータ保存に尽きますなぁ、ほれHDDに貯め込んだ原稿とかのデータをドバッと……んなわきゃありませんな。そんな用途には素直にDVD-RAMとかを使えばよろしい。

 やはりDVD-Rが書けるってことはビデオでしょ動画でしょ書くでしょ書くでしょ、なのである。そう、このドライブがサポートしている「DVD-R for General Ver2.0」は、DVD-Rの一般民生用の規格で、一般のDVDプレイヤーで再生できるDVD-Videoのディスクを我々一般人でも作れちゃうのである。


■ まずはメディアだ

 よしそれではさっそく秘蔵のビデオを取り込んで書いて書いて書……。あ! メディアがねえ! だめじゃん全然書けねえじゃん! というわけで、まずはメディアをゲットだ。

 まず筆者の家から電車一本という理由だけで新宿に来てみた。ここにはカメラ系の大手量販店がひしめき合っており、メディアも手に入りやすいだろう。ところが実際に探してみると、新宿西口ヨドバシカメラマルチメディア館にVictorのDVD-RWが忘れ去られたように少しあるだけ。ビックパソコン館東南口店でようやくMaxellのDVD-Rを1種類だけ発見という、まったく選択の余地なし。まだ一般の人を対象とした大手量販店では、DVD-Rのメディアは買えたらめっけものぐらいの、かなり特殊な立場のようだ。

 それでは秋葉原はどうかというと、やはりそこは世界のアキバである。アキバにないモノは地球上にはないといわんばかりの豊富な品揃えで、TDKのDVD-RWとDVD-R、MITSUBISHIのDVD-R、MaxellのDVD-Rなどなど。DVD-Rは1,200円台から1,400円台、DVD-RWはちょっと高めの2,200円台といったところ。

 DVD-RはDVD-RAMメディアより安く、DVD-RWはDVD-RAMより高いという実に計算された微妙な値段だが、いずれにしてもCD-Rのように「箱でくれ」と言うにはまだちょっと高い感じだ。



■ ビデオをキャプチャ

 さてメディアも揃ったところで、なんのDVD-Videoを作るか。ここで1つの計画があった。実は筆者は雲をビデオで撮るのが趣味で、ここ数年間、いい雲の出ている日はだいたい撮っているという、雲マニアなのである。撮影した1時間分の雲を160倍速ぐらいにして見ると、もうそれだけですげえドラマなのだ。いやぁ諸君、雲はいいぞう。筆者は赤坂溜池の空に赤く染まる雲があまりにも切なくて、当時勤めていた会社を辞めたぐらいだ。(本当)

i.LINKなど端子類は本体前面に装備されている

 筆者の計画とは、そう、この撮り貯めた雲のDVD-Videoを作ることである。さっそくキャプチャ開始。VAIOにはDV端子つまりi.LINKからの入力と、アナログコンポジット、アナログSビデオ入力がある。今回は、撮り貯めた雲はDVテープに保存してあるので、i.LINK端子からビデオをキャプチャすることにする。

DVgate Motion
 DVのキャプチャは、VAIO専用アプリケーションの「DVgate Motion」で行なう。VAIOとDVカメラをi.LINKケーブルで接続したら、あとはDVGate Motionでテープをコントロールして、IN点とOUT点を指定してキャプチャリストを作成。そしてまとめてキャプチャを行なう。と、ここまでは慣れたものだ。


■ ライティングには2種類のアプリ

 VAIO RXではDVD-Rを書き込むために、2種類のアプリケーションが用意されている。1つは毎度お馴染みソニック・ソリューションズの「DVD it! LE」をベースにした、「DVD it! for VAIO」、もう1つはイージーシステムズの「PrimoDVD」だ。

 それぞれの特徴を簡単にまとめると、DVD it! for VAIOはDVD-Videoに必要なメニューとビデオファイルのリンクといったオーサリング設定を行なった後、その状態をDVD-Videoとして書き込めるもの。PrimoDVDは従来からあるCD-Rライティングソフトの延長線上にあるもので、CD関係全般からPCデータ用DVDを書き込むものだ。手動でデータ構造さえきちんと作ることができれば、DVD-Videoも同様に作れる。またDVD-RWの初期化もPrimoDVDで行なえる。

 結局、DVD-Videoを作るには、オーサリング制作が可能なDVD it! for VAIOを使いこなすことがキーになるだろう。

DVD it! for VAIO メニューボタンのサンプルは、凝りすぎててちょっとはずかしいかも
 DVD it! for VAIOが普通のDVD it! LEと違うのは、DVカメラで撮影できる16:9の画面、いわゆるスクイーズ収録したソースにも対応している点だ。この機能はもっと上位のアプリケーションでないとサポートしていないのだが、SONY側の要請で特別に追加されたのである。でも、今回はこの機能は使用しない。

 まず試しに2つばかりのメニューを作って、実験することにした。一応ウイザードになっていて、背景、ボタン、文字と選んでいくだけで形になるんだけど、標準で入っている絵柄がどれも異様に濃い。もうちょっと普通のを用意して欲しいなぁ。もちろん、根性入れて作る場合には、自分でボタンなど作成して登録することもできる。


 さて、次はムービーデータのインポートである。DVD it!では、エクスプローラなどのファイルマネージャからドラッグ&ドロップでムービーデータをインポートできる。さっそく先程キャプチャしたAVIファイルをドラッグ&ドロップしてみたところ、あれ? サポートしていないというダイアログが出た。

 しかもこのダイアログ、OKボタンしかない。ボタンを押すと、強制的にソニック・ソリューションズのページに飛ばされる。なーんかそれって、ちょっといやーんな感じ……。for VAIO版には、どうもMPEGのエンコーダがないみたいだ。がつーん。

※編集部注:製品版の「DVDit!」シリーズは、AVI形式のインポートをサポートしています。



■ VAIOアプリでMPEG-2エンコード

 むむむ困った、困ったぞ。そうなるとDVD-Videoを作るには、DVD it! for VAIOに何とかしてMPEG-2に変換したモノを食わせなければならないわけだ。もっともMPEGエンコーダの定番「TMPEGEnc」の最新バージョンには30日限定でMPEG-2エンコードが可能だが、そういう限定品に頼るのもなぁ。そりゃ今はちょっと借りてるだけだからいいけど、今後VAIO買った人は30日限定じゃ困るよなぁ。と、天井見ながらしばらく考えたところ、あそーだ、VAIOには編集ソフトも付いてるじゃないですか。

 早速VAIO用編集アプリケーション、DVgate Assembleを起動。ありましたよファイル保存形式のところにMPEG-2が。[8Mbps-Giga Pocket高画質]と書いてあるのは、デスクトップ型VAIOには大抵テレビ録画用のGigaPocketというアプリケーションが付いており、それの録画クオリティを表わしているわけ。

 早速このフォーマットでAVIをMPEG-2に変換保存、DVD it! for VAIOにインポートしてみると、みごと登録された。やっぱりVAIO内でちゃんと完結できるようになっているのだ。(当たり前ではあるけど)

ビデオエクスプローラ
 実験ついでに、Giga Pocketの録画アプリケーション「Gigaビデオレコーダー」を使って、テレビ番組とアナログ入力のビデオもおなじMPEG-2の高画質で録画してみた。これらのファイルは、録画ファイル管理アプリ「ビデオエクスプローラ」から指定の場所に書き出すことができる。

 これもDVD it! for VAIOにインポートしてみたが、同じくMPEG-2ファイルなので、問題なく登録された。ただ市販のDVD it! LEと違ってこのDVD it! for VAIO版では、ムービーの中にインデックスが打てないという制限があるようだ。


■ スカッと焼けた!

 うまいこと動画がDVD it! for VAIOにムービーとして登録されたので、ボタンからリンクを張って、書き込んでみる。まずはDVD-RW(Ver1.1)を使ってテストである。

いよいよ書き込みに突入
 書き込みは簡単で、ドライブにメディアをセットしたら、メニューの「ビルド」から「DVDディスクの作成」を選んでOKするだけ。実験ファイルはそう長いムービーではないので、ファイル構造を準備するビルドに2分ぐらい、書き込みはものの数分。ただ最後のリードアウトの書き込みに12分もかかるので、今回はほとんどの時間がリードアウトに費やされた。

 しかし書き込み設定の手間は全くない。色々と設定や注意点の多いCD-Rの書き込みよりは、ずいぶんシステマティックで、スマートだ。同じ光メディアでも、やっぱりCD-Rとは隔世の感がある。

自作のDVD-Videoが家庭用TVに表示された
 ほどなく書き込みが終わり、メディアが排出される。さっそく焼けたDVD-RWを、PioneerのDVDプレイヤーDV-535に突っ込んでみる。このドライブはDVD-RW Ver1.0はサポートしていないが、今回焼いたVer1.1のディスクは、Playボタンを押すと、ちゃんと再生できた。

 もちろんリンクしたボタンもちゃんと設定通り動いている。おおっ! キャプチャしたオレのオレによるオレだけの美しい雲が、テレビにちゃんと映っている! スゲー簡単。スゲーきれい。試しに録ってみたテレビ番組なんか、放送中の画質とほとんど変わらないクオリティだ。いやマジですげえ、DVD-Videoって。


■ DVD-Rサイコー!

 というわけで、とにかくVAIOでは動画をMPEG-2にさえしてしまえば、後はスカッと焼くだけでDVD-Videoが楽しめる。あるいはDVD it! SEがあればMPEG-2へのエンコードもやってくれるので、作業 的には今回の手順よりもっと簡単になるだろう。さらに市販のCD-Rライティングアプリも、一時期MP3エンコーダを搭載したように、MPEGエンコーダを搭載してDVD-R/RWに対応してくるという話も聞く。またSONYでもDVD it!バンドルで満足しないで、VAIO独自のオーサリングツールをぜひ開発して欲しい。

 ハードウエア的には、今回色々テストで焼いてみているが、オーサリングで失敗したものができることはあっても(自業自得)、書き込み自体がエラーすることは1度もなかった。ドライブの安定性はかなりいいようだ。ちなみにドライブのファームウエアのバージョンは1.4であった。

 DVD-R/RWドライブがあれば、録画したテレビ番組を整理してライブラリ化したり、先行き不安なLDソースをキャプチャしてバックアップしたりと、やるべきことは結構あるのではないだろうか。メディアは今の最安でDVD-Rが1枚1,200円ぐらいなので、1,000円を切るのは時間の問題だろう。それから先はかなり面白くなるような気がする。デスクトップ機では自作派を通している筆者も、「ああんなんかVAIOいいかも」とか悪魔に魂売っちゃいそうな気分になりましたよ、実際。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□「VAIO RX」の製品情報
http://www.sony.co.jp/sd/ProductsPark/Consumer/PCOM/PCV-RX72K/
□NAB2001リアルタイムレポート インデックス
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20010502/nabindex.htm

(2001年5月17日)


= 小寺信良 =  無類のハードウエア好きにしてスイッチ・ボタン・キーボードの類を見たら必ず押してみないと気が済まない男。こいつを軍の自動報復システムの前に座らせると世界中がかなりマズいことに。普段はAVソースを制作する側のビデオクリエーター。今日もまた究極のタッチレスポンスを求めて西へ東へ。

[Reported by 小寺信良]


00
00  AV Watchホームページ  00
00

ウォッチ編集部内AV Watch担当 av-watch@impress.co.jp

Copyright (c) 2001 impress corporation All rights reserved.